幽霊花の咲く頃に ~第六話~
【傘】
傘だ。黒い和傘が窓辺に無造作に置かれていた。気になり手に取ってみた。模様が描かれているみたいだが、閉じた状態では何が描かれているのかは解らない。リンさんが咎めないのを見る限り、開いても大丈夫そうだ。ゆっくりと傘を広げ、息をのんだ。
模様の正体は彼岸花だった。黒地に赤と白の彼岸花が散りばめられた和傘は綺麗で思わず見惚れた。
「気に入った?」
リンさんの問いかけに頷く。
「そっか。綺麗だもんね」
歩み寄ってきたリンさんが柄を握る。その姿が妙にしっくりきており、ついじっと見てしまった。
「視線がくすぐったいよ」
「あ、ごめん」
「折角だから持っていこうか。雨降ってるし」
和傘を閉じて片手に持ったリンさんが立ち上がる。何処に行くのか、聞くのは野暮な気がして私は無言でリンさんの後を追った。