結紀はるか

独り言の多い物書き。面白そうなことには積極的に首を突っ込むスタイルです(*`・ω・)ゞ

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私の書く小説は ・幽霊 ・死にたがり ・雨が降っている ・空を見ている ・電車が出てくる ・夢を見ていた ・電話が鳴る 以上のどれかしらが含まれている。

    • 折本配信について

      • 一人ぼっちの海

        海が橙色に染まっていた。沈みかけの太陽を反射させた海面が眩しくて仕方ない。目を細めながら、押しては引いてを繰り返す波に素足をさらす。春と夏の中間の今、水はまだ冷たいがそれがまた心地よかった。 鼻歌を歌いながら波で遊ぶ。砂を踏みしめる音が近付いてきたが、気付かないフリをした。 足音が止まり、腕を掴まれる。残念ながら今日の遊びはここまでだ。わざとゆっくり振り返れば、顔をしかめた彼が立っていた。 「またここにいたんだね」 「うん」 「風邪引くよ」 「うん」 「帰ろう」 「……うん」

        • 閉じこめられて ~第三話~

          意識がゆっくりと浮上する。覚醒しきる前に覚えた違和感の正体は解りきっていた。また何処かに閉じ込められたのだ。見慣れない部屋がそれを突き付けてくる。 此処が何処なのか、なんて考えるだけ無駄だ。私がすべきことは現状の把握だった。 上体を起こして周囲を見回す。小窓の脇には下に収納スペースが設けられたベッド、反対側の壁にはテレビと小さな本棚が五つ並べられている。ベランダへと続くガラス性の扉は閉めきられており、カーテンが開いているお陰で外の様子が窺えた。雲一つない青空が見えるだけで他に

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        私の書く小説は ・幽霊 ・死にたがり ・雨が降っている ・空を見ている ・電車が出てくる ・夢を見ていた ・電話が鳴る 以上のどれかしらが含まれている。

          閉じこめられて ~第二話~

          ※ 注意 ※ この小説には人が死ぬ、流血、その他残酷な表現が多く含まれています。苦手な方は読むのをお控え下さい。 大丈夫な方はどうぞ、ごゆるりとお楽しみ下さい。 「明日なんて来なければいいのに」 感情の抜け落ちた声で呟いた夕映さんに何と返事をしたのか、忘れてしまった。つい数分前のことなのに何十年も昔のやりとりに感じられたのは、置かれている状況が現実離れしているからだろう。 木製の格子がついた窓の向こうは濃い橙色に染まっていた。見渡す限り室内には物がない。あまりにも殺風景だっ

          閉じこめられて ~第二話~

          幽霊花の咲く頃に ~第十一話~

          【燦】 燦々と太陽の光が窓から射し込んでくる。何時の間にか雨は止んだらしい。 「傘、いらなくなっちゃったね」 傍らに無造作に置かれていた傘を見ながら呟くとリンも傘を見た。ついで私を見て涙の痕が残る笑顔を向けてきた。 「でも持ってくよ……大切なものだから」 「そっか。リンがそうしたいなら私は止めないよ」 「うん。ありがとう」 嬉しそうなリンから視線を室内に移した。 此処は今まで見てきた部屋の何倍もの広さを誇っている。床の間に掛けられた掛軸とその前に鎮座する大きな壺、部屋の上部に

          幽霊花の咲く頃に ~第十一話~

          幽霊花の咲く頃に ~第十話~

          【恋】 恋しい恋しいと誰かが言う声が聞こえた。声が大きくなるのに比例して視界が明るくなっていく。最初にはっきり見えたのは泣きそうな顔で見下ろしているリンだった。目があった瞬間、目の縁に溜まっていた涙が一粒溢れ落ちた。 「よかった……リコちゃん……起きてくれた……」 「……何があったの?」 記憶の糸を辿ってみるも襖を開けてからは何も覚えていない。体を起こしながら尋ねる。 「中に入った瞬間倒れたんだよ。何回呼んでも起きてくれないし……このまま目覚ましてくれないかと思った……」 話

          幽霊花の咲く頃に ~第十話~

          幽霊花の咲く頃に ~第九話~

          ※ 流血表現があります。苦手な方はご注意下さい。 【桁】 桁違いな血の量だった。倒れ伏す人物から流れ出る血は何時の間にか足元に到達していた。 「彼岸花の赤ってね、血の色なんだよ」 足元の血に目を向けているともう一人の私が口を開いた。顔を上げると満面の笑みを浮かべた自分と目があって、逸らしたくなった。なのに視線は縫い止められたかのように動かない。 「死んだ人の血を吸って赤くなるんだよ。ほら」 死体の周りに咲いていた白い彼岸花が次々に赤く染まっていく。目の前の自分の発言を証明す

          幽霊花の咲く頃に ~第九話~

          幽霊花の咲く頃に ~第八話~

          ※ 流血表現があります。苦手な方はご注意下さい。 【靴】 靴が転がっていた。赤と白の彼岸花が一面に咲き誇る野原のような場所に靴が片方だけ転がっている。もう片方は何処なのか。靴を始点に伸びる赤い跡を追いかける。何かを引きずったような赤い跡に嫌な予感が募っていく。これ以上は追いかけない方がいい、と脳が警鐘を鳴らしている。しかし目は赤い跡を追いかけ続け、ついには靴の主の元に辿り着いた。 喉元まで出かかった悲鳴を飲み込む。血溜まりに倒れ伏す人影の正体は見当もつかなかったが、傍らに佇

          幽霊花の咲く頃に ~第八話~

          幽霊花の咲く頃に ~第七話~

          【菊】 菊の花が描かれている襖の前でリンさんが足を止めた。長い廊下の突き当たりでそこは行き止まりとなっている。戻るか開けるかの二択だがリンさんは襖を睨み付けたまた動かない。 「リンさん?」 「リン、でいいよ」 鋭い視線が私を見た瞬間に緩む。別人なのではないかと疑いたくなるくらいの変わりようだった。驚きはしたものの、まずは会話を続けるのが先決だ。 「でも」 「敬称つけられるとこそばゆくなっちゃうの」 「えー……」 初対面の人を呼び捨てにするのは勇気がいるが、リンさんは期待をこめ

          幽霊花の咲く頃に ~第七話~

          幽霊花の咲く頃に ~第六話~

          【傘】 傘だ。黒い和傘が窓辺に無造作に置かれていた。気になり手に取ってみた。模様が描かれているみたいだが、閉じた状態では何が描かれているのかは解らない。リンさんが咎めないのを見る限り、開いても大丈夫そうだ。ゆっくりと傘を広げ、息をのんだ。 模様の正体は彼岸花だった。黒地に赤と白の彼岸花が散りばめられた和傘は綺麗で思わず見惚れた。 「気に入った?」 リンさんの問いかけに頷く。 「そっか。綺麗だもんね」 歩み寄ってきたリンさんが柄を握る。その姿が妙にしっくりきており、ついじっと見

          幽霊花の咲く頃に ~第六話~

          幽霊花の咲く頃に ~第五話~

          【音】 音が消えたような気がした。初対面のはずの人に名前を言い当てられ、少なからず混乱する。 「何で」 「さあ。何ででしょうか?」 小首を傾げて問い返す女の子、リンさんに悪意や敵意といったものは感じられない。驚きはしたが、怖くはなかった。 何でなのか。聞いたところで答えてくれそうになさそうだった。そもそもいきなり全く知らない場所に誰かしらによって置き去りにされたのだ。見ず知らずの女の子が自分の名前を知っている、という怪現象が起こっても不思議ではない。 私は思考を放棄して意識を

          幽霊花の咲く頃に ~第五話~

          幽霊花の咲く頃に ~第四話~

          【駅】 駅みたいな数多の人が行き交う場所で見かけたことがあったのか、目の前の女の子に何となく懐かしさを感じた。 「大丈夫?」 「え……あ……大丈夫、です」 「でも此処から離れた方がよさそうだね」 女の子は私越しに女の人の死体を見て顔をしかめた。私の腕を掴んで向かいの襖を開ける。死体に気をとられていてよく見られなかったが、部屋の構造は最初に居たものと大差なかった。 女の子は部屋の真ん中辺りに座り、手招きした。素直に従い、向かい合うようにして座った。 「えっと……はじめまして、で

          幽霊花の咲く頃に ~第四話~

          幽霊花の咲く頃に ~第三話~

          ※ 今回は流血表現がありますので苦手な方はご注意下さい。 【海】 海が広がっていた。赤い赤い血の海が。 変わらない景色に嫌気がさし、意を決して適当な襖を開けてみた。そうしたら血の海が広がっていたのだ。 畳を赤く染める血の海の中心に仰向けに倒れる女の人。胸元から流れ出る血の勢いは止まるところを知らなかった。目を反らしたいのに視線は金縛りにあったかのように女の人から離れてくれなくて、ただひたすら広がる血の海を眺めていた。 じっと見ていると懐かしさを感じた。女の人のことは知らない

          幽霊花の咲く頃に ~第三話~

          幽霊花の咲く頃に ~第二話~

          ※ タイトルはまだ決まりません。暫くこのままでお付き合い下さい※ 【息】 息が荒くなっているのが解った。片手で胸の辺りを押さえつつ、襖に手をかける。覚悟を決めて横に引いた。 襖の向こうは真っ直ぐに伸びた廊下だった。等間隔で襖が並んでいるのが薄らと見えるが、暗くて全貌は確認出来ない。恐る恐る顔を出してみる。私がいる部屋の両隣にも同じように襖があった。部屋が幾つも続いているみたいだが、それ以上のことは解らない。 廊下に出てみる。人の気配が一切感じられないのは不気味なことこの上な

          幽霊花の咲く頃に ~第二話~

          幽霊花の咲く頃に ~第一話~

          【雨】 雨音が聞こえた。重たい目蓋をゆっくりと上げ、違和感に気付いた。まず視界に映ったのは畳の目、ついで木製の箪笥や机などの家具の数々。自らの部屋とは異なる趣に意識は一気に覚醒した。勢いよく体を起こして辺りを見渡す。 正面には襖、背後には障子が貼られた小さな窓、左右の壁沿いには家具が整然と並んでいる。 「此処は何処?」 部屋に響く自分の声が震えていた。つい先程までは学校で授業を受けていたはずなのに、瞬きした一瞬で見ず知らずの場所に連れてこられたのだ。動揺しない方がおかしい。

          幽霊花の咲く頃に ~第一話~