幽霊花の咲く頃に ~第十一話~

【燦】
燦々と太陽の光が窓から射し込んでくる。何時の間にか雨は止んだらしい。
「傘、いらなくなっちゃったね」
傍らに無造作に置かれていた傘を見ながら呟くとリンも傘を見た。ついで私を見て涙の痕が残る笑顔を向けてきた。
「でも持ってくよ……大切なものだから」
「そっか。リンがそうしたいなら私は止めないよ」
「うん。ありがとう」
嬉しそうなリンから視線を室内に移した。
此処は今まで見てきた部屋の何倍もの広さを誇っている。床の間に掛けられた掛軸とその前に鎮座する大きな壺、部屋の上部には額に入れられた水墨画が幾つも並んでいた。
隅に積んで置かれた座布団から、此処は特定の誰かの部屋ではなく、多くの人が何らかの用事がある時に集まる大広間のようなものだと推測出来た。
確かに広くて落ち着かないが、意識を失う要因になりそうなものは見当たらない。何かないかと見渡していると頭痛に襲われた。軽いがこのまま此処にいると悪化するような気がした。一刻も早く部屋から出ようと立ち上がった。
「大丈夫、なの?」
「大丈夫だから別の場所行こ?」
リンは何か言いたげな顔をしていたが気付かなかったフリをして、足早に部屋を後にした。

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