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「自由な表現の場創り」 Q&A その1

2019年から こどもたちがより自由に表現できる場を考える芸術教育研究会、UMUMアートラボeduを定期的に開催しています。
これまで幼稚園教諭、保育士、学童支援員、栄養士、こども教室の講師やオーガナイザー、教科書出版社の方など、たくさんの「こどもとアート」に関わる方が参加してくださいました。

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1/11(土)、2020年1回目のアートラボeduを開催しました。
この日のメニューは、UMUMのアトリエやワークショップの実践や大切にしていることを紹介するレクチャーと、それを踏まえて明日の現場で実践できるポイント/難しいポイントを深めるセッション。

後半で、自由な表現の場作りについて質問がたくさんあったので、ここでUMUMなりの回答を書きたいと思います。
あくまで現段階のUMUMとしての回答なので、これが正解!というものではありません。
何かの参考になれば嬉しいです○


Q1.画材もったいない問題

Q:自由に表現する場では、画材の選択や使い方などこどもたちに委ねることが増える一方で、どうしても保育者の立場から「もったいない」と思ってしまうことがあります。そう思うことはありますか?その場合、どのように対応していますか?

A:めちゃめちゃあります。
最近も、「もったいない」ってなんだろう?って考えていました。
ここでいう「もったいない」とは、「その画材を使い切っていない」こと。
逆に使い切っている状態とは、その素材の全面に何かが描かれていたり
材料に手が加えられていることだと思います。
では、白い画用紙全面に何かが描かれていないと絵は完成ではないのか
材料があまることなく使い切れればアートなのか
と言われると、決してそうではない。
逆にアートの文脈でいえば、余白が豊かなことがよかったりもする。
保育教育の現場では、その画材にかかわることで、こどもたちの学びが深まることが本当の意味で画材を「使い切った」ことになるのではないかなあと。
だから、その材料が「もったいない」かどうかは「おとなの思う完成」に基づいたものではなく「こどもたちの学びが深まることに役だったか」という目線で見極めたいなあと思いました。

もちろんなんでもバカスカ使っていいということではないので
あまった折り紙はきれいな部分を▲や◇に切ったりして切り絵に使うなど
再利用できるものは再利用し
新しいものを使わなくても、その子の目的が達成できる状況であれば
それは丁寧におとなが伝えてゆくべきだと思います。

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余白がかっこいいアーティストの作品
 篠田桃紅「無題」
(https://nagasaki-hamaya.jp/kindaikougei1802/)


Q2:作ったもの「いらない」問題

Q:園の製作で頑張って作ったものを、こどもたちが「いらない」と持って帰らないことがあります。掘り下げると保護者の方に認めてもらえない、捨てられるから、などの理由があったりするのですが(こどもたちの作品を全て保管できない保護者の気持ちも理解した上で)こういう時どうしたらよいと思いますか?

A:まず、作品に対して作った本人が愛着を持てるかは、作品に満足しているか、もしくはその作品にかける努力に比例すると思います。
これは大人も一緒ですよね。
こどもたちの努力を支えるポイントは、「頑張れる!」と思える見通し(やる気)と自信を、見守る大人が後押しできるかだと思います。
具体的には、こどもたちがイメージを具体化できるよう「それはどんなもの?」「おおきさは?」など質問を繰り返します。
イメージが共有できたら、それを形に起こす/形をイメージに近づけるために、できそうな方法や画材をいくつか提案します。もちろんこどもが積極的であれば、余計なことは口出ししません。
そして一番大事なことは、どんな小さなことでも、できたこと、すてきなこと、長所は言葉でわかりやすく具体的に伝えることです。

また、保護者の方に、作品の製作プロセスを伝えるようにしています。
ワークショップが終わり、お迎えにきた保護者のかたが
「これは一体...なに??」と思うような作品でも
こどもたちがどんなコンセプトの元、どんなことを頑張り、どんなドラマがあったかをお伝えします。
私が直接保護者の方となかなか会う機会がない保育園や施設での芸術指導では、年に一回保護者への報告会を設けるようにしています。
こどもたちがどれだけ頑張ったかが伝われば、その結晶である作品に対してネガティブな反応はしないと思うのです。
保護者の方が作品にポジティブな反応をすれば、自然とこどもたちは喜んで持ち帰り、家族に見せたがるようになると思います。

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壁に貼った紙の上部から絵の具を垂らし
「重力で描いた絵」
発見がもりだくさんの作品でした


Q3:上司へのプレゼン問題

Q:自由な表現や、プロセスを重視する製作あそびを園で導入したいのですが、新しい取り組みを上司に理解してもらえるようなプレゼンの仕方があれば教えてください。

A:わたしはずっとフリーランスで仕事をしているので、なかなか上司にプレゼンするという場面はないのですが苦笑
アートも教育もすぐに結果が出るものではないし(でも予算や手間はかかるし)非常に価値を伝えづらい領域なので、UMUMの活動を知ってもらうために制作する資料では先行研究や実践、数字を載せるようにしています。

例えば、日本に比べ西洋ではアートへの信頼が非常に厚く、芸術を積極的に導入した教育実践(レッジョエミリアやシュタイナーなど)もあります。そのような方針の国では、国民の自己肯定感や愛国心が高いという数字もでています。
最近では国内でもテクノロジーの発達に伴って、アイディアやクリエイティビティの価値が重要視されるようになってきました。
2018年導入の新保育指針には「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿(10の姿)」が示され、そのなかのひとつに「豊かな感性と表現」という項目があります。
このあたりを背景に、個性を尊重するアートや表現の重要性を伝えていくとわかりやすいのではと思います。



ーーー長くなってきたので今日はここまで!
熱いパッションをもったみなさんの質問はまだまだ続きます。



<次回の研究会開催のお知らせ>

UMUMアートラボ edu 参加申し込み受付中!
日時:1月25日(土)10:00~13:00
会場:立川市子ども未来センター
  (〒190-0022 立川市錦町3丁目2番26号)
対象:18歳以上の保育、教育関係者
「こどもとアート」に興味のある方
詳細、お申し込みはこちらから↓

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【UMUMのお知らせ】
立川、池袋など様々な場所で
こどものアトリエ、おとなのアトリエ
研究会を開催しています◎
企画詳細&お申し込みはこちら
https://umum.peatix.com/
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<UMUMオーダー 随時受付中!>
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オーダーをもとに企画をつくり
UMUMがおじゃまして美術表現の場をひらく「UMUMオーダー」。
こどもたちの造形、絵画表現活動はもちろん
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お問い合わせはhello✴︎umum.artまで。
(✴︎を@にご変更ください)
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いつも長文を読んでいただきありがとうございます! サポートは、企画のための画材&情報収集に活用させていただきます。