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【日記】好機は何時でもあなたの目の前に

月曜、朝起きて旅行の身支度。二泊三日の旅なので、あれもこれもと詰め込んでいたらあっという間にこの夏フェス用にと新調したリュックがパンパンになってしまう。かといってキャリーケースに入れるには余白が広く、結局リュックとトートバックの二刀流で家を出ることにした。

10時半の新幹線に乗り京都へ。前回の日記に書いた盗作疑惑についての問い合わせの件は一旦旅行中においては忘れることにした。以前札幌に出向いた際に当時持っていたクライアント案件で大失敗をして旅行中気が気でなかったので、今回以降仕事にかかわる有象無象はその一切を東京に置いていくぞと心に誓ったのだ。ということで、行きの車内では前回分の日記を書き進めたりぼんやりと本を読み進めたりしていた。

京都駅に降り立ったのはちょうど昼時だった。思い返せば京都に訪れたのは修学旅行で一度行ったのと、今はとっくに疎遠になってしまった当時の友人と行ったという浅薄な記憶しかないのでほぼ初めてと言っても差し支えがなく、JRの駅構内のモールを見て回るだけでも既に楽しかった。不動産との約束まで時間があるので、とりあえずは観光のため錦市場へ。

錦市場の入り口に立てば、その先に見えるのはここは海外かと見紛うほどの外国人観光客でひしめいており、まるで日本人である自分がマイノリティなのではないかと思えるほどだった。あえて人が集中しない平日のしかも週前半に予定を組んだのだが、これがもし週末だったらと考えるだけでおぞましい。ぢんどらという京七味の店でびりびり山椒を買い、先から先までを舐めるように見てから市場を出、そのまま休憩がてらSUGITORAというカフェ併設のジェラート屋へ。かわいい虎が描かれたクッキーが飾られたパフェが有名らしいが、無視して抹茶ときなこのジェラートをダブルで頼み、店の扉脇にあるベンチに腰かけて食した。昨日の夜から何も食べていない上、暑かったので京都観光バイアスもあって余計に美味しく感じる。甘さもちょうど良かった。

ジェラートを食べ終えて、四条烏丸方面へ向かう。今回の旅行のイベントその1、家の内見をするため不動産屋を訪れたのだった。いや、実際のところは転職活動中でどうなるかわからないし、現実的にすぐの引越しはおそらくほぼ不可能なのだが、どれほどの条件でどんな物件があるのかだけ把握しておきたかった。担当の方に事前にオンラインで伝えていた条件を打ち込んでもらい、これとこれとこれが良いですねと3軒ピックアップする。アクセス面などについては自分が京都の土地勘0であるため担当の方に色々と教示してもらった。

実際にその選んだ3軒を見て回ったのだが、地方特有の「中心地から少し離れたらすぐ山」を体験して自分がどれだけ東京の街に馴染んできたかを意図せず思い知ることとなった。東京と言っても生まれは都心から遠く離れた郊外なので、どちらかというと「そっち寄り」であるという認識が自分の中にはあったのだけど、実家を出てから都市部ばかりを転々とするうちにすっかり薄まってしまったらしい。ここのスーパーを逃したらあとは道中家だけとか、中心地以外は全て住宅街に集約されることとか、そういうのって東京の中心部に住む人間からしたらある意味で新鮮に思えるのだ。事実、自分の今の家の周りにはスーパーが徒歩5分圏内に3つある。

最後に内見した本命の物件が写真通りにとても可愛く、住むなら絶対ここがいいなと思ったけど好条件ですぐに埋まりそうなのでおそらく縁がないだろうと思い、不動産屋からはまた決まりましたらご連絡お願いしますと言われ、ああはいと適当に返して店を出た。商売にしている側には申し訳ないけどあくまで雰囲気を確かめたかっただけなので。時計を見ると15時を過ぎていて、ちょうどいい頃合いだったので予約していたゲストハウスへ向かった。今回宿泊したのは京都河原町にあるLentというカフェバーをかねた宿泊施設で、昨日たまたま居合わせたWateringholeのデザイナーさんもあそこ良いですよと推していたので心底楽しみにしていた。

おしゃれな外観のガラス戸を開けると、木製の温かみのあるテーブルに海外客が談笑しているのが見えた。自分の前に一組チェックインカウンターで手続きをしていたので、待っていると長テーブルの上で別のスタッフの方が手続きの対応をしてくれた。ショーケースには京都醸造を始めとした国内外のクラフトビールが陳列され、もう自分いっちゃっていいですか!?と開けたくなったが夜は夜で行きたい店があるのでそれまでアルコールは我慢。チェックインを済ませエレベーターを昇り、5階にある女性専用ドミトリールームへ。伝えられた鍵番号を押しても開かず、あれ?となり何回かやり直したが開く気配がなかったので、フロントに戻って申し伝えると暗証番号を間違えて伝えてしまったとのことで安堵した。昨年ロンドンに行ったときはホテルのカードキーでつまづき、フロントのスタッフに言ったらただ自分の開け方が悪かっただけだったので、もしそうだったらまた恥ずかしい思いをするなあと思っていたからだ。とはいえ、なんでかホテルの部屋の扉とつくづく相容れない人間だと思う。

ドミトリーのベッドを一通りセッティングして、荷物の整理と服をハンガーにかけるなど済ませ、汗をかいていたので夕食前に一度シャワ-を浴びることにした。本当はすぐにでも梅湯に行きたかったが、この時点でかなり歩いていた(しかも7cmあるマーチンのサンダルで)ので明日に回すことに。少し休んで、全面鏡の前で身だしなみを整えてから京都の夜に出発。出かけの際、スタッフの方たちに「いってらっしゃい」と見送られて、嬉しさと恥ずかしさと入り交じって背中で会釈をした。

バスに乗って新風館を目指す。ゲストハウスから二駅ほどのところで降りて、そこからは町屋が並ぶ一本道を突っ切っていくだけだったのでわかりやすく(それは京都の都市区画自体が碁盤の目状になっているからで、この二泊三日旅行において地図読めない代表の自分もほとんど道に迷うことがなかった)、途中左へ曲がった先に明るいライトで照らされた新風館が見えた。アパレルなど何店舗か入っているらしいが、今回のお目当ては言わずもがな正面入口のすぐ横にあるDIG THE LINEである。原宿店には何回か行ったことあったので、京都本店をいざ目の前にするとおお、と思わず感嘆の声が漏れた。

中に入ろうとしたら、ちょうど自分と僅差で前に社会人グループ(おそらく新卒?)の飲み会の集まりがあって、すみませんちょっと待ってくださいね、とstaffの方に言われ、全然大丈夫です〜と答えながら、カウンターの脇に陳列されたボトルを眺めて時間を潰すことに。さすがインポーターも取り扱うブルワリーというだけあって、海外産の見たことないようなビールも多かった。京都醸造、奈良醸造のビールが多く占める中でも愛知のTotopiaや三重のひみつビールは特に推されているようで、やはりトレンドは国内共通なのだなと思った。

お待たせしましたと再び声をかけていただき、8つか9つのタップビールの中からまずは低アルコールで飲みやすいBrewskiのフルーツエールを注文した。まだ18時を少し過ぎた頃であったし、エールやIPAやらは二軒目で楽しむことにしよう。Brewskiはショートケーキやトロピカルジュースの描かれたジャケットが目を引くフルーツエールやサワーの使い手なのだが、タップで飲むのは初めてだった。レアチーズパイ、なるほど確かにと頷く味。あまりにも飲みやすく、ハーフサイズをすぐに飲み干して20分弱居座って、BGMの音量で大して聞こえもしないのに新卒社会人の近況に耳をそばだてながら会計した。

DIG THE LINEから15分ほど歩き、今回の京都旅行の主目的であったTAKUMIYAへお邪魔する。月曜の夜だったがカウンターはちらほらと埋まっていて、欧米育ちのナイスガイ三人衆が楽しそうに雑談していた。

一度入口扉のすぐ目の前の席に座りかけたが、冷房が直撃する席で不安になり一番奥の席でもいいですかと聞いて立ち上がった。一杯目にこの店の親会社が展開しているnude beerのヘイジーを頼み、シェフ兼店長を務めるタイチさんと会話する。今日は東京から来たんです、近所の京都人(Kさん)にすすめられて、とKさんの名前を出すと「よく知ってますよ!」と返されなんだか嬉しかった。そのことをリアルタイムでKさんに連絡したら「今日ってあのビールが繋がってる日やん!うらやましいわ〜」と返信をもらった。ほどなくして隣席に常連と思しき男性が座り、話を聞くと数年前まで東京で働いていた方らしく、住んでた頃は〇〇とかよく行ってましたよ、と地方にいるのに東京のビアバー談義に花を咲かせた。また少し経って、今度は伊勢角屋ブルワリーの山宮さんとエンカウント。正直イセカドはほとんど飲まないのであまり気を利かせたお話ができず申し訳なかったが、色々と昨今の国内ブルワリーの市場について教えていただき大変楽しく暖かい時間となった。すべてハーフパイントだったのと、nude beerのビールがどれもホップ感控えめで飲みやすいものばかりだったのと、会話の肴に注文したフィッシュアンドチップスがイギリス仕様の豪快なサイズ感かつ柴漬けタルタルがたっぷり乗っかっていてとても美味しかったので、なんだかんだ5〜6杯ほど飲んで会計した。タイチさんをはじめ、その他の常連さん方に「京都の夜を楽しんで!」と見送られて店を出た。

三軒目に先ほどタイチさんから教えてもらった夢詠ミへいきたかったのだが、あえなく月曜定休日ということで断念し、アプリでタクシーを呼んでゲストハウスに戻る選択をした。宿に戻り、一度荷物を置いてブレスレットや指輪やらを外してベッドに投げ、身軽になった状態で併設の1Fカフェバーへ。着席してからそこそこ酔っていることに気付いたのだが、無理じゃないなと押し通すことにして京都醸造の「太陽の恵み」というブルーベリーとカシスの効いたサワーエールを注文した。お腹もまだいけるかもと思い、ついでにマスタードとベビーリーフの添えられたチョリソーも。スタッフの方々から今日はどこ行かれたんですか、この辺だとあそこおすすめですよ、と話を聞きながら、Xに写真を投稿しているとすぐに今野ぽたさんから〇〇ですね!とリプライをいただき、さすがぽたさんだなあとローカルの飲める店への感度に驚くと同時に嬉しくなった。しかしほどなくして酔いと満腹度が10/10まで来てしまい、飲める分だけ飲んでから足早にエレベーターに乗ってドミトリーへ戻った。シャワーを浴びたら少し酔いもさめてきて、引き続きXに京都所感のポストを垂れ流して、明日も良い日にしたいなと胸を馳せながら1時過ぎに寝た。

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