心理的安全性(Psychological Safety)
心理的安全性
エイミー・エドモンドソン(Amy C. Edmondson)が提唱
過度の不安には学習を妨げるマイナス要素がある
デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)
何かに集中しておらず、ぼんやりしている時に活性化する脳の神経回路
DMNが活性化すると、脳に取り入れられた情報を任意につなぐ効果がある
ぬるま湯職場
メンバーは成長が感じられないので辞めてしまう
ブラックな職場
上司への対策に時間を費やしてしまう
学習する職場
健全な衝突が発生する
健全な衝突
チームに信頼関係ができていれば、コンフリクトしても壊れる⼼配がない
軋轢を恐れず、結果にこだわる = Challenge & Conflict(挑戦と衝突)
前提となる考え⽅
既存の組織的・⽂化的基準への挑戦は、変化を起こす時には不可⽋である
挑戦と衝突は⽇々のコミュニケーションの中で不可避である
挑戦と衝突はInnovationを推進する
全員⼀致の組織からInnovationは起こらない
衝突(Conflict)を避けることのリスク
裏⼯作の増加
発⾔しない、アイデアが出ない
グループとして意思決定ができない
アウトプットの質が低下
グループ決定に対するコミットメントの⽋如
心理的安全性を阻害する4つの不安
「無知な人物」と評価されることへの不安
「こんな単純なことも分からないの?」と言われそう
知識がない、頭が悪い、と評価されそう
この不安により、質問をすることができなくなる
「無能な人物」と評価されることへの不安
「こんな簡単なこともできないの?」と言われそう
仕事ができないと評価されそう
この不安により、間違いを認める、支援を求める、ということができなくなる
「否定的な人物」と評価されることへの不安
気分を害して自己評価や人間関係を傷つけたくない
この不安により、他の人と違う意見を言う、反対意見を言う、ことができなくなる
「邪魔な人物」と評価されることへの不安
和を乱す人、かかわると面倒な人、と評価されそう
この不安により、他者の時間を奪う、決定を覆す、ことができなくなる
心理的に安全な場づくりのプロセス
共感デザイン
個々のメンバーが自然体で他者を共感する感覚を持つ
ホールネス、他社の尊重、相互理解の3つのステップで信頼関係を作り、コンフォートゾーンに入る
ホールネス
×:人の期待に応える
〇:自然体の自分に戻る
他者の尊重
×:他者をコントロールする
〇:他者を人間として尊重する
「われとそれ」ではなく「われとなんじ」の関係性を作る
人を利益を生むための道具として見ないで、尊重する
相互理解
×:ビジネスライクに付き合う
〇:本音で話せる間柄になる
他者の「ナラティブ」を積極的に理解しようと努める
想像力をフルに働かせて他者の話を聴き、他者の視点に立つ
ジョハリの窓
自己を開示し、相手の言葉を傾聴する
開放の窓を互いに広げる
ラポールを形成する
双方の心に橋(ラポール)を掛ける
価値デザイン
率直な意見を出し合い、それを集約し、価値を創造する
パーパスの共有、第三案の共創、安心の醸成、の3つのステップで集団的知性を発揮し、ラーニングゾーンに入る
パーパスの共有
×:意識を人間関係に向ける
〇:意識を価値創造に向ける
メンバーがリーダーに意識を向け、リーダーの意見に合わせて動くようになってしまうとダメ
メンバー・リーダー共に意識を顧客に向け、リーダーは自分と異なる視点から価値を創造できる人に敬意を払うようにする
第三案の共創
×:思い込みで先走る
〇:建設的に第三案を共創する
議論の場では早く結論に達しようとするため、推論のはしごを駆け上がってします
強い思い込みを持って対話するのではなく、推論のはしごをゆっくり登る。穏やかな問いかけによって、お互いが観察していること、意味づけ、推論にかけ違いがないか確認する。
安心の醸成
×:場の雰囲気に飲まれる
〇:場に安心感を生む
チームのパフォーマンスは帰属シグナル(Social Signal)と強い相関関係がある
帰属シグナル
安全なつながりを構築するような態度
笑顔、物理的な近さ、アイコンタクト、相手との同一の動作など
心理的安全性を壊すリーダーの思考
完璧主義
他者の全ての行動に完璧さを求める
コントロール欲求
他者の思考や行動を自分の制御下におきたい
過度の所属欲求
同じ価値観や意見を持ち、一体感ある仲間でいたい
犯人探しの本能
悪いことが起きると、犯人を探して非難したい
心理的安全性を醸成するリーダーの行動
直接話のできる、親しみやすい人になる
現在持っている知識の限界を認める
自分もよく間違うことを積極的に示す
参加を促す
失敗は学習する機会であることを強調する
具体的な言葉を使う
境界(規範)を設け、その意味を伝える
心理的安全性の落とし穴
空気読みすぎ体質
相手の反応や顔色をうかがうことが習慣化し、自分を主張できなくなる
「集団浅慮」と呼ばれる状態になる
解決策:いつでも自然体に、ウチからソトに意識を向ける
決められない組織
一人ひとりの意見を大切にすべき、という考えが強くなる
結論先延ばし か 多数決になってしまう
解決策:たいわによってパーパスを共有し、走りながら考える
相互作用による問題解決法
学習課題の共有
メンバーが抱える問題を共有して提案を募る。ファシリテーターは判断を下さない
第三案の共創
それをベースに修正や改善が加えられて、全員で第三案としての解決策が創られる
信念に基づき実行
多数決はしない。信念に基づいて異議を唱えるメンバーがいなければ解決策が採用される
話し合い万能主義
話し合えばすべてが解決すると考えてしまうが、実際には解決しない
解決策:発散と収束を意識して、チームと個人の相互作用を最大化する
参考文献
斉藤 徹『だから僕たちは、組織を変えていける』