ハルスベリヤ叙事詩2について
このゲームの名前を別の場所で見たことがある人物が記事のタイトルを見た時、「ああ、またオタクが自己満クソ記事を書きやがった」と思うだろう。このゲームはフリーゲームで、アップデートは2年も前に終了している。良く言えば完成されたゲームで、悪く言えばフリーゲームという流動性の高い世界の中で流れが止まってしまった存在だ。このゲームはフリーゲームという枠組みの中ではそれなりに遊ばれていたのだが、コミュニティも小規模になって久しい。しかし、これは私が青春を捧げたゲームでもあるのだ。
このゲームはジャンル名を言えば、SLG+RTSだ。特徴としては『信長の野望』シリーズが近いだろう。作者はRTSの大家であるAoE2に多大な影響を受けているので、そちらの戦闘バランスに近いものがあるかもしれない。
このゲームはオリジナルのファンタジーな世界観で起こった、百年戦争と呼ばれる長い戦争の末期を描く物だ。『剣を握る者が英雄となれた、最後の時代。』プレイヤーは群雄割拠の時代に一つの勢力を選び、兵士たちを上手く指揮し、自らの勢力を勝利に導く。よって、ストーリーはその国の主の物語となる。
一応、この世界には史実がある。『戦役』という公式シナリオが存在し、それではこの戦争がこれからどうなり、最終勝者は誰になりそうなのかが描かれている。しかしそれは重要ではない。プレイヤーが実際に見るのは「もしその国が勝ったら世界はどうなり、その国の人々がどうなるか」という、いわばIFであるからだ。
ストーリーについて
このゲームのストーリーは国によって異なる。史実であったら一瞬で滅ぼされる様な勢力もプレイヤーの力によって覇権国家となる事が出来るため、ストーリーもまるで異なる物になるのだ。戦乱のごたごたで出来た空白地帯で民衆を扇動して教祖として独立勢力の主となったペテン師の女(と、それに従う女)や、その血筋によって傀儡の総主教となった幼女、圧倒的な実力によって一人で砦を落とし、そのカリスマで世界を征さんとする齢70の豪傑、等、魅力的な人物達が、それぞれの思惑で大陸に覇を唱えんとする。彼、彼女らを勝利に導けるのはあなただけだ。
このゲームの文章は重厚だ。文体はそこそこ固めで、キャラクターの造形は深い。世界観も作り込まれている。世界観は世界史や思想史、現代作品などのオマージュの集合体の様になっており、キャラクターにはそれぞれ複数の元ネタがあり、それらが良好なバランスで散りばめられて、その間を一定の美学が宿ったオリジナリティが埋めている。
なんだか、ここまで聞いてると「世界史オタクが作った世界史オタクの為のゲームか?」と思われるかもしれないが、まあ、これらの元ネタは本筋に関わってこない。あくまでオマージュ元であり、ストーリーを理解する上で元ネタを理解する必要は無い。ファンコミュニティの中でも「元ネタを全て理解するのは不可能だ」と言われており、分かる人には分かる、位のネタが大量に散りばめられていると言って良い。
ゲームシステムについて
このゲームのゲームシステムの話をする事は、腰の引ける作業だ。てっぺんから爪先まで話すと死ぬほど長くなってしまうので、端的に話そう。
先程も言った通り、このゲームのジャンルはSLG+RTSだ。どちらも日本人に余り親しみの無い単語だ。SLGというのはストラテジーゲーム、戦略ゲームの事だ。有名どころで言うとHoiとかCivとかになるだろうか。占領している土地から収入を得て兵士を生産し、その兵士を戦わせて新しい土地を得るジャンル。
そして、RTSとはリアルタイムストラテジーの略で、リアルタイムに兵士たちを動かして敵を撃破するタイプの戦略ゲームの事だ。このゲームはSLGを基本としていて、新しい土地を占領する時に、当然兵士たちはその土地の兵士たちと戦闘になるが、その戦闘をリアルタイムに制御するという訳だ。
なんだかやることが多そうに感じるが、SLG部分は兵士の生産→戦闘→兵士の生産→戦闘→兵士の生産……というサイクルを回すゲームだ。これを繰り返していく内に土地が増え、土地が一定以上になると出現するボスを倒したらほぼクリアとなる。
奥が深いのがRTSの部分。こちらも目標は単純で、制限時間内に敵軍を一人残さず撃破すればクリア。敵には様々な兵科があるので、それに合わせた対応をして美味いこと撃破まで持っていくのだ!
基本、このゲームは相性ゲーだ。このゲームの各攻撃には属性があり、各属性に合わせた耐性もある。例えば、槍衾を敷ける重装槍兵は騎兵突撃に耐性があり、かつ槍衾は騎兵をズタズタに出来る。
騎兵はその機動力と破壊力を活かして敵後衛を一瞬で撃破可能。後衛は基本的に遠距離破壊力に長け、至近距離攻撃手段しか持たない敵前衛をけちょんけちょんに出来る。
槍兵は弓に弱いので、味方に弓兵が居れば弓で右往左往する槍兵を一方的に撃破出来る。敵後衛も基本的に弓には耐えられないのでするする溶けていくだろう。
召喚獣を使える魔法兵が居れば敵の遠距離攻撃を逸らし、こちらだけが攻撃出来る。回復魔法を使えるヒーラーが居れば粘り強い戦いが可能だ。
このように、どんなに強そうに思える兵科にも『正答』があり、また、どんなに弱そうに思える兵科にも活躍出来る場面はあるのだ(まあ、本当に限られた場面でしか活躍できない兵科というのもあるが)。これらを上手く使いこなし、大陸に覇を唱えよう。
ここで一旦CMです(ダウンロードの手引)
ゲームの紹介はここまでで一旦終わり。次からはしつこいオタク語りが挟まるので、ダウンロードへの手引を貼っておこうと思う。
上のサイトが公式wikiで、一番上の見出しの所の二行目にアップローダーへのリンクが貼ってある。ハルスベリヤ叙事詩101e.zipではなく
ハルスベリヤ叙事詩2Ver1.20d.rarの方をダウンロードしよう。rarファイルを7zip(高機能)やらLhaplus(比較的使いやすい)やらで解凍して、readmeや基本的な操作などのテキスト類に一応目を通して、Vahren.exeを起動したら準備完了だ。細かい所はわからないだろうから、wikiの初心者向けのページを見ると良いだろう。人材やクラスの使い方がわからないときも、wikiの該当ページを見るとだいたいの使い方が書いてある。
ゲーム体験について
これからは、私の個人的な感想に入る。いわゆるオタク語りというやつだ。(今まではオタク語りじゃなかったってこと?)私はこのゲームを最高難易度で遊ぶのが好きだ。EasyがEasyしてねえと言われるこのゲームで、最高難易度を遊ぶのは意外と骨が折れる。しかし、その大変さを乗り越えてまで味わいたい体験がそこにはあるのだ。
敵が強い
何を当たり前の事を、と思われるかもしれないが、声を大にして言いたい。敵がほどよく強い事より重要な事があるか!?実際、ゲームにおいて敵の強さというのは鼻血が出るほど重要だ。敵は強すぎてもいけない。弱すぎてもいけない。ちょうど良いバランスをマーケティング対象のプレイヤーに提供し続けられるからこそ、そのゲームは良いゲームなのだ。私の場合、このゲームにこなれてきて、一度撃破したらそうそう最高練度の敵が復活してこない様な状況にヌルさを感じてしまうのでこの難易度にしてある。また、私にとって、敵が強い事は単純に強い以上に重要な事なのだ。
みなさん、単純に、こう思った事は無いだろうか。強くてカッコいい。強い方がカッコいい。強いのだから、その強さには理由があるはず。私は強力なユニットに対して、脳内で「なぜ強いのか」を考え、勝手に物語性を補ってしまう癖がある。このゲームはそれを加速させる要素がいくつもある。
例えば、重装槍兵を持ってしても止まらない超重騎兵たち、いくら矢で射抜こうとびくともしない槍兵、こちらを前衛後衛関係なしにボコボコにしてくる砲兵、こちらの召喚獣を全て殺して前衛をぎったんぎったんにしてくる無双人材……ゲーム画面を通してプレイヤーの脳内に構成される錯覚のような物語を私は楽しんでいて、その助けになる要素の一つがストーリーであり、国・兵科の設定であり、キャラクターの人格であり、そして強さなのだ。私は強さを感じないと少しその物語性に陰りが出る様に感じてしまうので、高難易度で楽しんでいる、という訳なんです……
もちろん、初心者の方にも高難易度で楽しんでもらいたい!とかは思っていない。というか、このゲームはEasyでも十分に難しいし、ちゃんとしたチュートリアルとかも無いので、wikiの初心者向けのページや操作説明、兵科相性などをよく読んでチャレンジしてみて欲しい。初めて後衛への騎兵による奇襲が決まった時や、自分で考え出した戦術が決まった時の快感は唯一無二で、このゲームの楽しさを占める大きな一部だからだ。
文章を読むのが楽しい
これも上のトピックと近い話だが、このゲームはフレーバーテキストが豊富だ。実はこのゲームはヴァーレントゥーガというゲームに使用されていたエンジンを流用した、言わば大規模MODのようなゲームなので、同じシステムのゲームがいっぱいあるのだが、このタイトルほど文章が凝られているものはそう無い。
文章としては、少しハイコンテクストに過ぎる所はあるが意外とジョークに富んでいて情景も豊か。フリーゲームならではの作者が書きたいことだけ書かれているこれは、部分部分が美意識やロマン、心地よい台詞や展開にあふれている。正直に言って、このゲームが戦闘をウリにしたゲームだったら、私はあそこまでのめり込みはしなかっただろう。学校から帰れば、私はTV棚の下段で埃をかぶっているPS3に見向きもせず、PCに向かい、エクスプローラーをカチカチやって、Vahren.exeをダブルクリック。ロードが終われば、慣れた手付きでコンテニューから自動セーブを選ぶ。敵国との外交状況や味方の配置からなんとなくの状況を思い出し、授業中に幾度となくリフレインしたストーリーの続きを見たいが為に兵隊を次の領地へ侵攻させる……私は上で書いた様なゲーム体験に心を惹かれていたが、それを大きく支えていたのはこの魅力的でちょっと難解なストーリー群だった。この"読書体験"は私に世界史・ミリタリー趣味を植え付け、ろくに知識もない癖にそういうコンテンツに手を出す原体験となった。だからこそ、このインターネットの片隅で薄く埃が積もっている様なコンテンツを引っ張り出し、あなた達に勧めているのだ。
おわりに
ここまで読んでくれてありがとう。インターネットの片隅のアホほどかったるい文章を5000文字も読むとは変態的な忍耐力だ。あなたならきっとハルスベリヤ叙事詩2をプレイ出来るはず。ダウンロードの手引に従って、ダウンロードして遊んでみて欲しい。癖は強いが、きっと面白いゲームなので。