可能性を模索したディッキンソニアは、

今日は書くのが面倒なので前に別のところで書いたものを。
今回の話はディッキンソニアという、知る人ぞ知る、たいていの人は全く知らない生き物の話です。

それではどうぞ。。。

生き物はいろんな種類のカテゴリで分けられている。動物だったら人間が含まれる哺乳類とか、爬虫類とか鳥類とか、頭足類とか昆虫とかその他いろいろ。

これは所詮人間が決めたカテゴリなので後からもっと合理的な分け方が見つかったりして、分類が変わったり細かいマイナーチェンジが起きたりしてるらしい。
特にDNAが使われるようになってからはこの生き物とこの生き物がどのくらい近いかみたいな議論が定量的にできるようになって、まさに激動の時代だったみたいなんだけどまあそれは置いといて。

そんな風にいくつかの特徴から生き物はカテゴリ分けされている。
どうしてそのカテゴリの生き物がみんなその同じ特徴を持っているかというと、まあそうやって分類したからなんだけど、進化的・遺伝的にはもうちょっと深い理由がある。

その理由というのは生き物が1つの種から分化して発生したから。

魚が進化して両生類が生まれた。
両生類が進化して爬虫類が、爬虫類が進化して哺乳類が生まれた。
まあ進化の過程の生き物をそれぞれ両生類とか爬虫類とかって呼ぶのかって問題はこの際置いておこう。

新しい種は進化によって特徴を新しく身につけたり失ったりする。
けれど、全ての特徴が消えて無くなるわけではない。

魚だったら、例えば彼らが持っている背骨は移動する際なんかにかなり便利だから、それを捨てると生きていく上でかなり不利になってしまう。
だから背骨は魚から鳥類、哺乳類に至るまで、全ての子孫たちが失うことなく引き継いでいる。

そんな感じで、進化していろんな特徴が新しく身についたり消えたりするんだけど、その中にはずーっと昔の祖先から失うことなく引き継いできた特徴がある。
ある種から派生して生まれた生き物たちはみんな共通の特徴を持っているというわけ。
こうした近縁の種が共有している共通の特徴のことを生物の基本設計(ボディプラン)なんて言ったりする。

祖先からずっと受け継いできた特徴をもとに分類しているから、“○○類は△△類から進化した”みたいに分類全体が同じ進化の道筋をたどっているものとして話ができるというわけ。

じゃあ魚からもっと遡ってもそれは同じはず。
虫だってイカだってウニだってクラゲだってどんどん遡っていけば1つの種に行きつくはずなんだから、そこから分岐した生き物たちはみんな共通の特徴を持っているはず。
魚から進化した生き物たちがみんな脊椎を持っていたみたいに、そこには何かしら共通の特徴があるはず。

魚と虫とイカ、ウニ、クラゲ。
全然違う生き物に見えて、これらの生き物には共通点がある。
“体が細胞でできている”なんていうそれらが分岐するもっとずっと前に生まれた特徴もあるんだけど、ここで取り上げたいのは体の対称性。

今地球上にいる全ての動物は、左右対称か回転対称の体を持って生まれる。
右と左が同じ形をしているか、特定の角度で回転させたときに同じ形になるか。
どうやら今生きている生き物を見ると、左右対称の体は方向を定めて進むのに適していて、回転対称の体は岩場なんかに固着して生きるのに適しているらしい。

これはなにもたまたまそう分けられるってわけじゃなくて、ホメオティック遺伝子とやらが関わっているそうなんだけど、僕は詳しくは知らない。(そのうち調べてまとめたい)
まあでもちゃんと同じ遺伝子が関わっているっていうことなんで、対称性なんてどうにでもなりそうなものの割に、これも祖先から受け継いできた特徴らしい。

対称性が祖先から受け継いだ特徴だっていうんだから、多細胞性物が生まれてから魚やウニなんかに分岐するまでの間にこれらの対称性が生まれたことになる。
時系列で見ていくと、ある時この地球に細胞が生まれて、たくさんの細胞が集まるようになって、それらの細胞が役割分担している多細胞生物が生まれて、それからずーっと経ってから多細胞生物の子孫がどこかで分岐して魚とかイカとかウニとかが生まれた。
多細胞生物が生まれる → 左右対称・回転対称の生物が生まれる → 魚、虫、イカ、ウニ、クラゲ等々いろんな現生の生物へと分岐していく、というわけ。

で、ここでちょっと考えてみて欲しいのが、多細胞生物が生まれる → 左右対称・回転対称の生物が生まれる、の間で左右対称でも回転対称でもない生物が生まれたんじゃないの?ってこと。
というわけで、満を持して登場するのがディッキンソニア。

ディッキンソニアは体の一節一節が左右交互に並んでいる、左右非対称の体を持った生物。(言葉で説明するの難しい)
要は現存しているあらゆる動物と異なった対称性を持つ動物。
現生の動物とあまりに姿が違うものだから植物なんじゃないかっていう人もいたんだけど、化石からコレステロールが見つかったことかられっきとした動物だってことがわかっている。

このディッキンソニアが生きていたのが、今から6億年くらい前のエディアカラ紀。
化石記録による証拠から、今いるほとんどの生物のボディプランはこのエディアカラ紀に生まれたって言われているらしい。
動物がまだ別れたて、分岐したてホヤホヤの時代だ。

この時代はまだ生き物のデザインが洗練されていなくて、餌を取るための目や牙、身を守る骨や殻がまだなかった時代だった。
ディッキンソニアは、この動物がまだ洗練されてない、試行錯誤をしている途中の時代に生きていた生き物だったというわけ。

でも、このディッキンソニアの左右非対称の体は、それ以降に生まれる動物のスタンダードとして採用されることはなかったらしい。
左右対称でも回転対称でもない動物は長い長い進化の歴史の冒頭で、厳しい競争にさらされて1匹残らず死んでしまった。

エディアカラ紀、まだ生物が試行錯誤をしていた頃、ディッキンソニアは他の動物たちが選択していない可能性に挑戦した。
その子孫が今も生きていれば、今いるあらゆる動物の共通祖先とは別の系譜に連なる動物としてきっと研究者たちを悩ませたことだろう。

でも事実はそうはならなかった。
可能性を模索したディッキンソニアは1匹の子孫を残すことなく息絶えてしまった。

そんなわけで、かつて新たな道を模索してついに生き残ることができなかったちょっと悲しい生き物、ディッキンソニアのお話でした。
といいつつ、深海とかで見つかったら面白いけどね。

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