動物・植物の誕生の話(細胞内共生)
今日の話は、シアノバクテリアの細胞内共生と弥生時代の歴史ってなんかちょっと似てるって話、にしようと思ったんだけど前半の細胞内共生まで。
まずは細胞内共生の話、の前に植物がこの世界で担っている重要な役割について話をしようかな。
そんなことを言うと、光合成によって酸素を生み出していることを思い浮かべる人が多いんじゃないかと思うんだけど、ここではもう1つ光合成の別の側面に着目してみようと思う。
この世界には動物、植物、微生物、様々な生物が存在する。
実はこの分け方は、生物の分類方法としては古い分け方だったりもするんだけど、まあそれでもこの世界にどんな生物がいるかを表すにはそれなりに使える分け方だと思う。
動くものと動かないものとちっちゃいもの。
実にわかりやすい。
このうち、ほとんどの動物と、微生物の一部は呼吸をしながら生きている。
正確には好気呼吸だ。
好気呼吸っていうのは酸素を使って有機物を分解して、エネルギーを生み出すこと。
このメカニズムは炭を燃やすのと同じって思っていいかな。
炭も有機物だし、燃えるっていうのは有機物に含まれる炭素が酸素と結合することでエネルギー発生して熱が発生している状態のことだから。
燃料がなくなると動かなくなる機械と同じように、生物もエネルギーがないと活動できない。
だから、このエネルギー源である有機物がないと、呼吸する生き物達は死んでしまう。
だから呼吸する生き物しかいない場合有機物は減っていくばかりで、いつかは枯渇して生き物が全滅してしまう。
呼吸する生き物が長い期間安定して存在し続けるには、消費した有機物を補充する方法が必要になる。
言うまでもなく、この消費した有機物を補充する方法というのは光合成のことだ。
太陽から降り注ぐエネルギーを使って、二酸化炭素と水から有機物を合成する。
植物は昼間の間に有機物を溜め込んで、日光の届かない夜のうちはその溜め込んだ有機物を分解してエネルギーを生み出す。
僕ら動物はそうした植物を食べることで、補充された有機物をかすめ取って生活しているのだ。
そんなわけなので動物は植物がいないと生きていけない。
なので、当然この世界に生まれた順番も植物が生まれた後に動物が生まれた、かと思いきや実はその逆だ。
大気中の二酸化炭素から有機物を作りだす植物よりも、植物がいないといずれは行き詰まる動物の方が先に生まれた。
この謎解きの準備として動物と植物の細胞についてまず説明しよう。
動物の細胞はさっき書いた好気呼吸をするために、ミトコンドリアという器官を持っている。
ミトコンドリアは好気呼吸を行う場で、酸素を使って有機物からエネルギーを生み出す際に必要となる。
もっと細かく言うと、糖を分解してピルビン酸っていう物質を作り出す酵素が細胞質にあって、ミトコンドリアはそのピルビン酸を酸化させてエネルギー(正確にはATPと呼ばれる生物がエネルギーを使うために用いる物質)を取り出している。
このミトコンドリアを、人間もアリもクラゲもアメーバも持っているというわけ。
植物の細胞は光合成をするために葉緑体を持っている。
葉緑体は光合成をおこなう器官で、光のエネルギーと水と二酸化炭素を使って有機物(+ATP)を生み出す。
それに加えて植物は細胞の中にミトコンドリアも持っているので、日光の届かない夜の間も体内の有機物を使って生き延びることができる。
ミトコンドリアしか持たない細胞は有機物をどこかから手に入れないといけないから、必然的に動き回れないと生きていけないことになる。
一方で、葉緑体も合わせ持っていると動かなくても有機物が手に入るから、体を大きくしたり表面積を増やしたりして、エネルギー消費を抑えつつ光の吸収量を増やすような戦略がとれるようになる。
両方ともにミトコンドリアを持っていることを踏まえると、全く独立して同じものが生まれるって可能性はかなり低いから、まずミトコンドリアを持った生物が生まれて、その後にその中の一部から葉緑体を持った生物が生まれた、植物より先に動物が生まれたってことがわかる。
そしてここからがやっと本題、細胞内共生の話。
動物や植物、これらは真核生物ってグループに入れられる。
これはDNAを束ねた染色体が脂質でできた膜で包まれているって意味なんだけど、“真核”ってわざわざ言うくらいだから当然そうじゃない生き物もいる。
それがバクテリア(細菌)とかアーキア(古細菌)っていう原核生物って言われる生き物で、染色体が膜につつまれていなかったり真核生物とは違った構造をしている。
真核生物が生まれる前はその原核生物がこの世界で繁栄していて、その中には好気呼吸をするやつとか嫌気呼吸をするやつとか光合成をするやつとか、いろんなのがいたらしい。
嫌気呼吸っていうのは初めて出てきたけど、要は酸素を使わずにエネルギー(ATP)を作り出す方法のこと。
有機物をアルコールとか乳酸に分解するのもいれば、硝酸塩とか硫酸塩を使うのもいたり、いろいろなのがいる。
で、話は変わるんだけど、ミトコンドリアや葉緑体を調べたら、その細胞のものとは独立したDNAを持っていることがわかったんだよね。
多細胞生物はたくさんの種類の細胞を持っていて、それぞれがいろんな機能を果たしているけれど、全ての細胞が同じDNAを持っている。
だって生物は最初は1個の大きな細胞(いわゆる卵子)からできていて、それがどんどん割れて隣のものと別のものになっていってやがて1匹の生物になるんだから。
細胞どうしどんなに姿が違っても、もとは1つの細胞だから同じDNAを持っているわけだ。
だけど、ミトコンドリアと葉緑体はそれらのDNAとは全く別個のDNAを持っていた。
まあミトコンドリアや葉緑体は細胞の中にある器官だから細胞そのものと同じようには語れないかもしれないけど、やっぱり同じ生物の中に違うDNAっていうのは驚きだったわけだよ。
で、このDNAをバクテリアのものと比較してみた。
そしたら、ミトコンドリアはプロテオバクテリアっていうバクテリアの1種と、葉緑体はシアノバクテリアっていう光合成をするバクテリアと近縁だってことがわかった。
真核生物の細胞の1器官に過ぎないと思っていたものがその本体である真核生物と別個のDNAを持っていて、それが原核生物のDNAと近縁だった。
この近縁だったっていうのは、生物の種としての類縁関係、血縁関係が近いっていう意味で、DNAを調べたらクジラは実はカバの仲間だってわかった、みたいなノリでミトコンドリアだとか葉緑体がバクテリアと近縁だってことがわかっちゃったんだよ。
じゃあこれがなんでそんなことになったのかってことなんだけど。。。
まずある種のバクテリアにプロテオバクテリアが寄生したか、あるいはプロテオバクテリアは捕食されたんだけれども、そいつが他のバクテリアの体内でも生きられるような防御機構を進化させて生き残ったからなんじゃないかなんて言われている。
プロテオバクテリアの1種であるピロリ菌が僕らの胃の中で生きていられるのもなんかそんなのに似てる気がする。
ちなみに真核生物の染色体が膜で包まれているのは体内のバクテリアから染色体を守るためだったんじゃないかなんて説もある。
もともとのバクテリアは嫌気性の呼吸をする生物で糖からピルビン酸(+ATP)を生成していて、取り込まれたプロテオバクテリアがピルビン酸を酸化させてエネルギー(ATP)を取り出す生物だったから、うまく機能が噛み合ってその後繁栄したんじゃないかなんて言われている。
その後に、その中の一部の生物が今度はシアノバクテリアを取り込んで植物細胞が生まれた。
ミトコンドリアを取り込んで好気呼吸をするようになった生物がさらにはシアノバクテリアまでをも取り込んで、そうして生まれた植物が有機物を補充することで、人間その他の動物が地上を闊歩する今のような世界ができた、というわけ。
じゃあ一体それの何が弥生時代の歴史と似てるんだって話は明日書こうかな。
それでは。