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ジミー

 青海エイミーさんはわたしがnoteを始めたばかりのころ、3番目にフォローしてくれた大事なnote友の一人である。なんと、単身マレーシアに渡り、数々の苦難を超えて、クンダリーニヨガを極め、今は教えている、というバイタリティあふれる方だ。最近ご自身の動画もアップされているので、よけいに親しくなった感があるが、その親しみ溢れる笑顔、自分の想いを一心に伝えようとする眼差しは、思ったとおり、いや思った以上に魅力的だ。書かれる文章も、詩も、エイミー節ともいえる味があり、フォロワー数をみても人気の高さがうかがわれる。そのエイミーさんが、初めて小説を出版された。それが「ジミー」である。

 帰国子女の男子編入生が来るというところからこの物語は始まる。期待いっぱいで待つ女子高生たちの前に現れたのは

 もう少しでおかっぱになりそうな髪は、中途半端な長さで寝ぐせがついている。セルロイドのこげ茶メガネの奥には、特徴のない小さな目。その横の地味な鼻。ひどいブサイクという訳ではないけど、どこにいても、誰の興味も惹かないだろう外見。
 打ち捨てられるにふさわしい。プラス要素はまったくなし。
 失望のため息が、クラスを覆った。

ジミーより

 彼の自己紹介の言葉はひとこと
「ジミーです」
 本名は純一郎だが、呼ばれやすいようにそう名乗っている。バンコクから来た、と後に明かされる。
 彼の英語の発音は抜群だが、それもからかいの的になり、クラスカーストの下層と決まった。

 クラスの中に階級がある、とはドラマでは知っているが、私にとっては驚きだ。今の高校は難しい世界、そんな中に身を置いたことがない自分にほっとした。主人公マイの言葉には、ますます憂鬱になる。
 「高校ってリラックスするところじゃない。
 生き残るため日々気を張り続ける」
 これはしんどい。職場以上だ。その中のマイと飛び込んできた無防備のジミー・・・
 
 マイには「二十代イケメンサラリーマン」の「彼氏」がいる。
月二回会ってご馳走してもらい、ホテルへ行ってお小遣いをもらう。可愛いといって優しくしてくれるが、それだけの間柄。マイの心情は次のように書かれている。

 ただおかしいかもしれないけど、並んだ中で一番いいな、と選ばれるのではなくて、どこにいても、その人には私の存在だけがぴかっと光って
「おお、彼女になってくれ」と思われたい。贅沢なのだろうか。
  つまらない。

ジミーより

 ここを読んで、ドキリとした。大好きな吉本ばななさんの表現に似ている。さりげなく心の琴線に触れてくる表現。そう言ってほしかった、私もそうよ、と心が震える。

 マイは自宅でこっそりジミーに国語を教えることになる。ミロを飲みながらの場面は、懐かしいオレンジ色の日に照らされて見える。

 小学生のころ私は「何考えているか分からない」「気持ち悪い」と仲間外れにされた。すれ違いざま、耳のそばで「バカ」と言われたこともある。私にだけ聞こえる、私だけに向けられた「バカ」。我慢しきれず母に話した日、涙が止まらなくなった。数日後、父が仕事帰りにミロを買って来て
 「これ飲むと強い子になるんだよ」と、水に溶いてくれた。
 緑色のパッケージに入った、ココアのような飲み物で、あまりおいしいとも、強い子になれるとも思わなかったが、いつもは気難しい父の笑顔が嬉しかった。若かった父の笑顔、近所の雑貨屋に一緒に行ったらおやじさんから
 「りっぱなお父さんだね」
 と言われた日・・・

 小説ジミーのなかには、そんな懐かしさ、切なさがある。エイミーさんの文は、心の奥にさざ波のように起きた動きを巧みにすくいあげる。けらけら笑ったり、妙に理屈っぽかったり、あれ?と思うほど素直だったり、私のなかにもマイとジミーは住んでいる。きっとエイミーさんのなかにも住んでいるのだろう。 
 
 物語はこれからまだまだ進み、どんどん引き込まれていくのだが、まだ発売されて間がない本で、エイミーさんから
 「感想はできたら、ぼんやり書いて」
 という、もっともな希望もあり、以下は気になったらぜひお読みください、とお伝えして終わりにします。

         ということでおわり


 エイミーさんのページ👇



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