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小さなやさしさ体験記


これは、以前あるコンテストに応募して、またまた見事落選した作品です。字数がキッチリ指定されていて、かなり書くのがたいへんだったんですが・・・ちょっとテーマとずれてたのかなぁ・・・

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「マンションの和室はね、障子だけだと朝早くから明るくなっちゃうわよ。内側にロールカーテンをつけるといいよ。」

転居が決まったわたしに、友達がこう忠告してくれた。窓のサイズをきっちり測り、ロールカーテンを買いに行った。ところが既成のものは8センチ丈がたりない。オ-ダ-すると、6万円もかかることが分かり、当惑してしまった。

もう少し丈の長い既製品はないものか、と3軒目のT店に行き、店員にわけを話した。彼は少し考えた後歯切れよく答えてくれた。

「既成カーテンの大きさは決められているので、これ以上丈の長いのはありません。けれど、ロールの分だけ下にずらしてとりつければ、2センチは丈がのびます。カーテンの丈はロールに一巻残した丈になっているので、最後にグっとひっぱれば、残りの6センチは伸びます。オーダーすると値段がはりますから、8センチ丈が不足なだけなら、こうしたらいいと思います」

まさに目からうろこだった。彼はそのあと、カーテンのとりつけ方を、見本を使ってていねいに教えてくれた。彼はプロとして、当然のアドバイスをしただけかもしれない。でも、わたしにはその優しさがうれしかった。
カーテンは、我が家で大活躍をしている。

 今、バーゲンまっさかりだ。商品を手にとっていると、さっそく口出ししてくるわずらわしい店員も多い。さりげなくアドバイスをし、それが「優しさ」として客の心に残る。本当のプロの店員は、そんな人だと思う。

             
              おわり

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