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朝焼け#青ブラ文学部
窓の外の空が白み、ほのかな紅色が広がり始めた。「ああ、朝焼けだ」
生まれて初めて試験勉強で徹夜した朝のことだ。
英文学史の試験には泣かされた。英文が一行書かれていて、これを書いた作家名と作品名を書くという問題がずらり、と並ぶ。
To be or not to be ,That is a guestion.
ならば Shakespeare の Hamlet とすぐ分かるが、こんなに分かりやすい問題はでない。もちろんシェイクスピアのスペリングが間違っても✖だ。
膨大な英文学の作品を原書で読んでおかないと、この問題は答えられない。でもそんな時間はない。ではどうするか。
まず出そうな作家の作品の日本語訳が書かれている本を探す。当時ネット検索なんかなかったから、あちらこちらの図書館に行く。国会図書館に行ったことさえある。ざっと読んで要点を頭に入れる。これを繰り返す。友達と分担して要点を調べたこともある。
そして試験に出された一文を読んで、頭の中に叩き込んでおいた作品の要点と作家を「これじゃないかな」と探しだして答える。
もうあてずっぽうもいいとこだ。幸運にもあっていたのに、作家名のスペリングが一文字間違えた、とわかったときの悔しさ!
そんなこんなで必修科目であるのに一年目は合格点が取れず、二年目を迎えた。もう必死・・・それで徹夜となったのだ。なんとか卒業できたから、二年目は合格点だったんだろうが、もうあんな勉強はこりごりだ。
私が調べた作品とそのあらすじを書いたノートを読んで、なんと、本人のわたしよりいい点をとった友達もいて嫉妬にくるったりもした。
試験の点なんて大人になったらなんてことのないのに・・・でも合格点が取れなくて卒業できなかったら、やっぱりあとあとまで響くのかな。
覚えたはずの膨大な作家名と作品はすっかり忘れてしまったのに、きっちり覚えている作家がいる。コベントリーパットモアだ。その名前だけが今でもふいに頭に浮かぶ。今日調べたらイギリスの詩人、とあった。なぜパットモアさんだけは忘れないのか、全く不思議だ。
もしかしたら、私、その頃幸せな結婚に憧れていたのかな、今となったら記憶のかなた、朝焼けの空の色しか記憶に残っていないのだが。
おわり
山根あきらさんの企画に参加させてください。
あきらさんはもしかしてパットモアさんをご存じかも😊
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