非情怪談
最寄りの駅は2階で、長いエスカレータ―を上がると改札がある。並行して階段もあるが、やっぱりエスカレーターが便利だ。時間ギリギリのときは早足で登れば電車がつかまる。それに、縦じまのある銀色の肌がしゅるしゅると現れ、パックリ割れて角ができるエスカレーターは、夏の怪談、いや階段にふさわしい。
その日は外回りの仕事で帰りが遅くなり、薄暗い駅に着くと人影もなかった。疲れ切った体でいつも通りエスカレーターに乗ろうとして、愕然とした。段がない!縦じまのある銀色の肌は、角を生み出すことはなくのっぺりと平面のままはるか下まで流れている。並行している階段を見ると、こちらも段がないコンクリートの急斜面だ。
これじゃとても降りられない。ふと見ると駅員らしい男性の後姿が・・・・
「すみません!エスカレーターに段がないんです!」
ふりかえった男の顔は銀色の縦じまがありパックリ割れた口から不気味な笑い声が漏れた。
「フフフ角は食べてしまってね」
おわり (411文字)
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