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最後の日 #シロクマ文芸部

最後の日は今日かもしれない・・・シンデレラはベッドに横たわり、窓の外に遥かに広がる冬空を見ていた。このお城に来てからもう50年、王子様は王となり、この世を去った。今では息子が国王だ。私も年を取った・・

そのとき、空の彼方で小さな光がピカリっときらめいた。あ、あの光見たことがある・・・たしかあの日と同じだ。シンデレラが瞳を凝らすと
その光の中から魔法使いが現れて言った。
「シンデレラ、お城での暮らしはどうだった?楽しかったかい?」
「ええ、とっても」
「おや、元気がないねぇ」
「ええ、もうすぐ星になるの」
「そうかい、じゃ、わたしに任せて!」
魔法使いが杖をふるうと、窓際にあった鳥かごの扉がギイと開き、カナリアが飛び出した。カナリアの身体はぐんぐん大きくなり、ベッドの横にふわりと止まった。
魔法使いがもう一度杖をふると、シンデレラは輝くばかりに蒼いあの日と同じドレス姿になった。
「さぁ私の背中にどうぞ、ピイ」
カナリアが言った。
弱っていたはずの身体がスイと軽くなり、シンデレラはその背中に乗った。カナリアは金色の羽をきらめかせながら空へと飛びあがった。

しばらくすると、雲のあいだから空に向かう幾筋もの階段が見えてきた。
どこの階段を登ったらいいのだろう?そのとき一つの階段の途中に
キラリと輝くガラスの靴が見えた。
「あの階段だ!」
片足だけガラスの靴をはいているのに気づいたシンデレラは、迷わず駆け上がった。
両手を広げた王子様がゆっくりと階段を降りてきて、微笑みながら言った。
「姫、また会いましたね」
二人は手を取り合って階段を登って行った。

お城では悲しみの鐘が鳴り響いた。シンデレラ皇太后がこの世を去ったのだ。しかし、彼女の顔は幸せに微笑んでいるように見えたのだった。

           おわり

小牧さんの企画に参加させてください。
小牧さんお世話をおかけしますがよろしくお願いいたします

幸せな「最後の日」を書いてみました。これが今年の最後の投稿です。
この一年、記事を読んで下さった方、スキフォローを下さった方、
本当にありがとうございました。
来年は1月5日から投稿を始めます。皆さんのところにも時間がある限り
お邪魔しますのでまたよろしくお願いいたします。
皆さま良いお年を😊


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チズ
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