大切にしている言葉#虎吉の交流部屋プチ企画
大切にしている言葉は「じっと待つ」です。
といっても演歌でくり返し歌われている「去って行った男をひたすら待つ女」が好きなわけではありません。
わたしにとって立ち上がれないほどの重大事が起こったとき、姉が言ってくれました。
「今はじっと待つしかないよ。通り過ぎて行くのを。頭の上を通っていく台風をやりすごすみたいに、身をかがめてね」
姉もまた数年前、幼い子供二人を残して夫が急死する、という重大事があったばかりのころでした。「頑張れ」でも、「気を落とすな」でもないその言葉はなんにもやる気もなく絶望したわたしにぴったりでした。わたしはじっと待った、というよりわたしの頭の上を時が過ぎて行ってくれた、という方が正確でしょう。そしてなんとかこの辛さを背負って生きて行こうと思えるまでになりました。
本当に辛いことはとても言葉には表せない。誰にも話したくないもの。逆に
「こんなに大変だったの~」と口に出せるのは、大したことじゃない、か、時がたって乗り越えられたとき、と思います。
友達に重大なことが起こった場合もそうです。「大変ね、困ったら何でも言ってね」と、言いたくなりますが、我慢する。そう言われたら自分に大変なことが起こったのだ、と自覚してよけい辛くなると知っているからです。
言葉はあるときは人の一生を変えるほどの力がありますが、あるときは情けないほど無力です。
さりげなく接する。この世に辛いことなんかない顔をして。そして友が「実はね」と言い出すまで、じっと待つ。待つのは辛いものですが、心の扉が開かれるのをじっと待ちます。
時期が来るまで、じっと待てる人、わたしはそうありたい、と思っているのです。
おわり
虎吉さんのプチ企画に参加させていただきます。ちょっと字数が足りなくて
スミマセン。よろしくお願いいたします。