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べこクイーン鉄塔

僕は美容師でけっこうモテる。女の子を誘うと、ほぼほぼOK、泊まりに来た子さえいる。
ある日初めてのお客さんが来た。僕より10歳は歳上かな、シャンプー中に
気分が悪くなり、美容室の隣の僕の部屋で休んでもらうことにした。
訳アリの様子だったが「泊まっていきません?」と誘ってみると、迷いながらも頷き、その日から深い仲になった。彼女は僕の手料理を嬉しそうに食べ、僕の知らない英単語を教えてくれた。秋田訛りがかわいい、と僕を
「べこちゃん」と呼んで笑った。僕は心の中で彼女のことをクイーンと呼んでいた。気品があって憧れの女性に見えたから。

僕の部屋からは鉄塔が見え、彼女は僕の腕の中で
「あの鉄塔を見ながらこうしているのが一番幸せ」と微笑んだ。

その彼女が急にいなくなったのは、雪の舞う頃だった。
夫と話し合いに横浜へ帰る、とラインを残して。

そのあとは連絡がとれないまま…

…ある朝、窓の外を見ると一本のはずの鉄塔が二本になっていた。

          おわり(423文字)

         

たらはにかさんの企画に参加させていただきます。
「ネコクインテット」の裏お題「べこクイーン鉄塔」です。


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