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箱たちの話#シロクマ文芸部

 りんご箱は自慢げに言った。
 「僕がいるからりんごたちを遠くまで運ぶことができるんだ。日本全国
いや、外国にだってね」

 その声を聞きつけて赤い箱がトコトコとやって来た。
 「僕がいるから、みんなの手紙が遠い相手にも届くんだよ。ほらこうして口を開けて立っているからね」ポストは、にっと口を横に開いて見せた。

 「あらわたしがいるからお茶がしっけずに運べるのよ。お茶を使いきった後は、衣装箱にも使えるの。お茶には殺菌作用があるからよ」
内側に貼られた銀色のステンレスを光らせながら、ちょっとレトロな茶箱がスルリと近づいて言った。

 「僕なんか大勢のヒトが寝泊まりしていたんだよ」
 箱型のビルがドシンドシン、と地面を震わせながら歩いてくると言った。
かの有名なカプセルタワービルだ。半透明なのは2022年に壊されてしまったから、らしい。それにしてもなんと沢山の箱の集合体だろう!
(ヘッダー参照)

 そのとき長方形の箱が静かに近づいて来た。
「僕は重要な箱らしいよ。
周りにヒトが集まって泣いたり、すがったりする。
お花に飾られてきれいだけど、焼かれてしまうんだ」

 箱たちは、その言葉に、シン!と鎮まった。

 りんご箱が口を開いた。
 「そうか、僕たち『箱』は無くてはならないものなんだね!」

りんごの甘い香りがほんのりと漂った。

           おわり


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