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九つの短詩

浴室の蛇口に映る
わたしのヌード
角度次第で
伸びてモジリアニ
ゆがんでピカソ
 

赤いTシャツと洗ったら
洗濯物がみんな
ピンクに染まった
うちのベランダだけ
夕焼けだ


玉杓子の中の味噌を
クルクルと溶くように
心のわだかまりを
時という菜箸が
ゆっくりと溶かしてゆく


空気入れたてタイヤの
自転車は
そんなに嬉しいのか
砂利道を
スキップして走る

すれ違う老女と女子高生
若い日をなつかしむ目と
老いた日など
考えもしない目とが
チラリ合う

胸のあたりに
掃除機にあるような
切り替えボタンが欲しい
嬉しいときには強
悲しいときには弱を押すから

背中に耳をあて
空中に放たれる前の
君の声
独り占めして
聞いている

グレープフルーツサワー
君の指で絞られた
果汁を混ぜれば
心も身体も
ほんのりと酔う

心いっぱいに
広がっているのに
届かない
去っていった君は
空のよう

             以上9編

 
一昨年、noteに初めて投稿した詩です。
手を加えて再投稿しました。😊

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