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ごはん杖

自分が杖だ、と信じ込む人が現れ、急激に増え続けている。
特徴は、自分が好む素材の杖になったつもりになること。金が好きな者は
自分は金の杖になったと信じ、人を支えようとする。
「僕はこんなに光っているから夜道でも大丈夫、君を支えてあげるよ」と人に近づく。といっても姿は人のままだからややこしい。

ごはんが好きな人はごはんを固めて作った杖になったつもりになり、小腹が空いたとき、思わず自分の指を噛み切って救急搬送されるという事件も起きた。

交差点では「支えましょう」という人たちがもみ合い、信号が赤に変わっても、渡り切れない人だらけで、渋谷駅前は大混乱。

研究の結果、恐るべき原因が判明した。それは、支え合おうとしない人に取りつく「杖妄想ウイルス」の感染だったのだ。このウイルスに効くワクチンの開発が急がれているが、追いつきそうもない。

今日、ごはん杖になったつもりの人たちが、あの戦闘地へ赴いた。食糧危機に陥って いる人々に身を投じるために。

          おわり(412文字)

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