失恋墓地
パリ郊外のペール・ラシューズ墓地を訪れたのは、晩秋の乾いた風が吹きすさぶ寒い日だった。ここは43ヘクタールもある広い墓地で、有名人の墓も多く観光スポットにもなってる。その一郭、モジリアニの墓に近づくと、一人の若い女性が膝まづいて祈る姿が見えた。彼女は泣いているらしく
ハンカチを目に当て、なんと生後間もない赤ん坊を抱いていた。この寒い日に・・・
そのとき、パーン!と乾いた音を立て、マロニエの実が爆ぜ頭上の枝から私の顔に落ちてきた。一瞬目をつぶり、そっと開けてみると彼女の姿は消えていた・・・
数日後、オランジェリー美術館で、モジリアニの絵を見つけ、わたしは
「あっ」と声を上げた。「ジャンヌ」と書かれた絵は数日前あの墓地で会った女性そのものだったから。彼女はモジリアニの恋人で、彼の死の翌日、22歳の若さで投身自殺した、そのときみごっもっていた、と書かれていた。
よく見ると彼女の頬には乾ききらない涙の痕が残っていた。
おわり(420文字)
たらはかにさんの企画に応募させていただきます。
よろしくお願いいたします。
ペール・ラシューズ墓地は43ヘクタールもある広大な墓地で
ショパン、バルザック、ドラクロワ 、ロッシーニ、オスカー・ワイルド、モディリアニ などの墓があります。
モジリアニは売れない画家のまま35歳で亡くなりました。ジャンヌは
その翌日アパートから身を投げて死んだのですが、そのとき2番目の子を
身ごもっていたそうです。実際は同じ墓に葬られているので、これはフィクションですが、この墓地には秘められたいろいろのストーリーが渦巻いているように感じました。
よろしければサポートお願いします。いただいたサポートはアイデアの卵を産み育てる資金として大切に使わせていただきます。