エレベーター
11階に住むわたしには、エレベーターは必需品だ。 越してきたばかりの頃は、故障して閉じ込められたらどうしよう、なんてドキドキしていたのに、今はすっかり慣れて当然のように乗り降りしている。
けれども、エレベーターほどサスペンスドラマ(SUSPENCE)の舞台に使われるものはない、そうだ。エレベーターはつりさげられているから(SUSPENDED)なんて、ギャグはともかく・・・
風間トオルさん扮する刑事が、女性の殺人犯とエレベーターに閉じ込められる、という古い再放送ドラマを見た。風間さんは、目の病気で、すぐに手術しないと失明してしまう、という深刻な状況。おまけに殺人犯の女性は、彼が刑事と知って凶器のナイフをとりだして、刺し殺そうとまでする。なんと、もったいない!風間トオルとだったら閉じ込められてもいいな……でも、彼はいやがるだろうな、なんて胸をうずかせながら、ハラハラ。柴田恭兵演じる刑事があわや、というところで2人を発見して助け出すのだが。
池澤夏樹のエッセイでエレベーターの話がある。
アラビアの王様が、ニューヨークの有名ホテルのロビーに座っていると、目の前の小さな部屋のドアが開き、年輩の女性が入って行った。しばらくして、ドアが開くと今度は若くて美しい女性が出てきた。彼は驚嘆して
「素晴らしい部屋だ!妻に一部屋みやげに買おう!」
毎日エレベーターに乗り降りしているが、未だに絶世の美女にはなれない。エレベーターは気紛れでもあるらしい。
おわり
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