ヘルパー日記後編6(ハアソレカラドシタ)
またまた、新しく担当になりました。Sさん、男性75歳です。
バス通りから少し入った路地奥のアパートの一階に一人で住んでいられました。サービスは家事援助で、掃除、調理が主なのに、Sさんは、大の話好きで、なんにもしなくていいから、話相手になってくれ、というタイプ、と、聞いていたけれど、そのとおりでした。(^^)
だからといって、なんにもしないで、話し相手だけっていうのは、介護保険もからんでいることだし、当然NGです。
コーデネーターのMさん(初めて行く家にはついてきてくれる、いわば主任)と、最初の15分くらいは、話相手をしていて、では、と、必死で話をうちきりました。わたしは、夕食の材料を買いに、Mさんは残ってお風呂場の掃除ということになったのに、あまりの茶羽ゴキブリの多さにMさんは
怖気づいて、
「あの、私、買い物にいってくるから、掃除してくれる?」
と、わたしと、Sさんと、ゴキブリたちをおいて出かけてしまいました。
ずっと一人暮らしで、掃除はいつしたんだろう?というお風呂場をみがき、トイレも(ユニットになってる)きれいにし、買い物から帰ったMさんから肉じゃがの材料を受け取って(ここでMさんは帰った)料理。
Sさんは、その間中もうしゃべる、しゃべる・・・・
ここで、聞き上手とは?について考えてみましょう。
1。当然ながら、ちゃんと相手の話を聞くこと。
2。いい間であいづちをうつこと。つまり、民謡でいう合いの手の要領です。
ハぁー北海め~い~ぶ~つ ハア、ドウシタドシタ
かあずかぁずこりゃああれどよ~~~ ハア、ソレカラドシタ
と、まあ、こんなタイミングで。
話手ががちょっとめげているときは、控えめに
「実は離婚したんだよ、母ちゃんの浮気でさ」ときたら
「そうなんですか・・・」と、トーンを落として。
ちょっと自慢入っているときはテンションあげて
「会社やっててね、いちおう社長だったんだよ」
「社長さんだったんですか!!」
と、相手のいいたいことをリピートするといい。
なあんて、解説するほどのことでもなく、誰でもやってますよね(^^;;
Sさんは、競輪の選手で年収5000万だったそうで、収入は十分で奥さんにも贅沢させてたのに、奥さんが保険の外交なんかやりたいと言い出し、押し切られ、奥さんは、友達の後輩と浮気・・・で、離婚して一人暮らしなのだそうです。
その後、脳梗塞で倒れ半身不随になったけれど、今はリハビリの功あって、言葉もちょっとろれつが回らない程度、左手だけに麻痺が残っている状態です。
別れるとき、
「トイレがピカピカで、まぶしくて落ち着かなかったよ、ありがと!ありがと!」
と、右手を上げてにっこりしてくれました。
その身体には、お世辞ぬきで、鍛えられた競輪選手のおもかげがありました。
ヘルパー日記後編6おわり