マガジンのカバー画像

エッセイ

169
エレベーター・やさしい人(中島みゆきの歌によせて)・分身の術など あれこれ
運営しているクリエイター

#毎週ショートショートnote

残り物には懺悔がある

残り物には懺悔がある

深夜のコンビニ、棚の上の売れ残りたちがひそひそ話している。
塩にぎり「あ~あ一日中ここにいたのに買ってもえらなかったなぁ」
ネバネバサラダ「わたしだってそうよ。夕方来たお姉さんたち、歯にくっつくとか唇につくと痒くなるとか買いそうだったのにやめてったし。体にいいのにね」
三色弁当「値下げして売ったりしないのかしら」
天ぷらそば「値下げするより捨てる方が儲かるみたいだせ。ほら、恵方巻さん、可愛そうだっ

もっとみる
伝説の安心感

伝説の安心感

父のお気に入りにスーッとする塗薬があり、手のひび割れ、逆むけ、
虫さされに愛用していました。
私が自転車で転んでひざを擦りむいたり、あかぎれが出来た時も
「ほら、これ塗っときなさい」
と、ちいさな箱に入った缶を指し出してくれました。箱の裏には
父の律儀な文字で開封したときの日付が書いてあり、中の缶の
蓋には可愛い看護師さんの顔がありました。

あるとき、足の親指が赤く腫れあがり、父はせっせと
その

もっとみる