見出し画像

夜更かしが好きな私の「特別な曲」

10代の頃から夜更かしが好きでした。

夜更かしの目的は様々で、インターネットで好奇心を満たすためだったり、音楽や本の世界に浸っていたかったからだったり。

自分の中のごちゃごちゃした感情を表出するために言葉を紡いでみたり、絵を描いてみたりもしました。

絵が上手くなりたくて夜な夜な練習したこともあったし、楽器の練習が出来ない夜中こそテスト勉強の時間という認識の時期もありました。

大学に入学してからは課題のためにオールすることもしばしば(オールするつもりだったのに寝落ちすることもしょっちゅう)ありました。



実家の私の部屋は窓が東側にあって、太陽が昇るにつれて空が表情を変えていくのを観察することも出来ました。夜が明けるときの、闇を押し上げていくオレンジ色が堪らなく好きで、太陽が完全に姿を現した時にはそんな面影もない位淡い水色になっている点も含めて気に入っていました。

そしてそんな景色は、深夜テンションの脳内をエモい気分にしてしまうのでした。欲望を曝け出すように筆を走らせていても、夜が明け始めた空を眺めるともっと綺麗な言葉を使いたくなってしまうものなのです。



夜更かしをする時、「時間が足りない」という焦りが付き纏っていました。それゆえに「夜更かしをしよう」と行動していた時もあれば、焦りからくるストレスで眠れない身体になっていただけのような時もありました。

しかし夜更かしは、自分が「孤独を愛している」人間だということを教えてくれました。焦燥感とは裏腹に、自分のペースで考えたいことを考え、見たいものを見るということは「癒し」でした。

そして一晩中もがいた所に差し込む朝日の魔力たるや。その夜に何かを成し遂げられなくても、この時間が自分をほんの少しだけ豊かな人間にしたような感覚に陥らせてくれます。



社会人になってからは、家に帰ると疲れですぐ寝てしまいます。疲れてない日も、仕事に差し支えないようきちんと寝るようになりました。やりたいことをやりきって寝るのは週末くらいです。

10代の頃に感じていた「時間が足りない」という焦燥感も上手く付き合えるようになりました。人生長いんだし毎日ほんの少しずつやっていけば良いじゃんと、1日にやりたかったことをやりきらなくても自分を許してしまいます。


それでも、時々あの頃の睡眠時間を削ってでもやりたいことに夢中になったり、納得がいくまで没頭したりといったとき特有の「生きている」という感覚を思い出します。

一晩中もがいて窓の外を見ると、夜が明け始めていて、これから朝日が私を照らしてくれるから大丈夫だと思わされる感覚。



そんな感覚をいつまでも忘れないでおきたい。そんな夜の風景や夜中に考えていたあらゆる悶え、あのときの「生きている」感覚を全て閉じ込めて、いつでも思い出させてくれる宝石箱のような曲が私にはあります。STU48の『暗闇』という曲です。



そしてこの動画は、AKB48とSKE48を兼任している岡田奈々さんが一人で歌っているものです。岡田奈々さんの歌声は孤独に寄り添ってもくれるし、暗闇を照らす朝日のような生命力もあり、この曲にぴったりだと思います。


当時、夜更かしのお供にしていた思い出の曲もいくつかあるのですが。この曲はリリースされた時すでに私は社会人で、あの頃を俯瞰するような感覚で聴いているので少し特別なのです。


生きることに傷つきうろたえて 無様でいたい


サビのこの一節がすごく好きで、あの頃の眠れないほどの焦燥感やもがきは確かに「無様」でした。それゆえに「生きていた」と思っていたのです。綺麗に生きようと、波風たたぬよう生きようとしてしまいがちな時に響く一節です。


原曲もとても良くて、このジャケット写真の空の色がめちゃくちゃ好きです。




夜更かし大好きっ子は社会人になり、二交代制の仕事を約5年ほどしています。夜勤の良いところは、帰り道や残業をしている時に、夜が明けていく空を見ることができることです。

夜明けの空の下、『暗闇』を聴きながら人や車がほとんどいない道を歩く時の「この美しい時間を全身で感じることができる」幸せ。

すぐ青空になってしまうのは、いつの間にか満開のピークが過ぎている桜のようで尊く、そういう一瞬の美がこの世界には溢れていて見逃しているだけなんだと思わせてくれます。そして朝日を浴びながら自分がアップデートされたような気分になるのでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?