水葬
金魚が死んだ
鱗がまつぼっくりのやうに
なって
具合が悪そうだった
朝起きたら濾過機に吸われていた
心臓がばっと冷たくなった
死にかけの姿を見ながら
ぼんやりと頭のなかでいつつぎの金魚を買いに行くかと考えている自分に気づき、絶望した
仕事から帰ってくると部屋が死の匂いで満たされている
まるで家が水槽になったようだった
彼は沈むでもなく 浮きもせず
水中に浮遊していた
触りたくなかった
ビニール袋越しにぬるくて柔らかい腹を撫でた
死にたい
川で泣きながら水葬した
死にたかった
剥がれた鱗がきらきらとひかった
すごくきれいだった
雨が降っていた
気づくと、帰りのスーパーで何故かひらすの切り身を買っていた
刺身で食べた
吐きそうだった
ビートルズでさえも私情なしでは聴けなくなってしまった5月
ほんとうの一人暮らしがはじまる