mouth washing(ゲーム)の感想
内容が内容なので、グロが苦手な方は閲覧注意です。
ネタバレも含みます。
発売されたのはもう3ヶ月以上前なんですね、私はつい最近知りました…。
結論として、今年(2024年)一番の鬱ゲームだなあと思いました。けどやっぱりこういった内容の話はしばらく引きずるけども本当に面白いです。印象に残りやすいですしね。
考察などはゲームの文面を読んだ通りだし、もっと面白い考え方できる人私以外にもたくさんいるしな、と思うのでゲームの感想を中心に書きたいと思います。
感想
早い人は一番初めの操縦席の位置の時点で「これやったの副操縦士では?」と勘づいた人もいるみたいですね。(そういう知識はどこから手に入れるんだ…)
こういう「まず初めにクライマックスを見せる」みたいなやり方は結構好きでした。何があってこうなるのかと、その後の展開も注視するようになりますね。実際のクライマックスはもっと別でしたけど。
序盤の感想は「SFもの理解できるかな…」という感じでした。宇宙船が舞台の近未来(その割に色々とアナログだけど)なのでその時は若干抵抗がありました。私はインターステラーなんかもあんまり深くは理解できなかった人間なので…。(次元の話とか)
けど実際のところは「閉鎖空間での絶望的なサバイバル」だった訳ですね。
明らかに足りない食糧と酸素残量に加えて、突然一方的に告げられたほぼ全員の解雇、助けが来ないという状況、そして運んでいた荷物を開けてみたら全てマウスウォッシュという、酒として飲もうと思えば飲める物であった事が彼らの精神状態を悪化させていったと。最悪ですね。
この物語はとにかく船が損傷する前と損傷してからの描写を繰り返しながら徐々に謎が明かされていきます。作者さんもインタビューで、ゲームを作る上で単調にならないようにこのような形式にしたと語っているみたいですね。
私はこのやり方が結構気に入っています。キャラクターがみんな魅力があるので、船の損傷後に死んだあとでも、過去に戻ってまた登場してくれるのが私は好きでした。
私の知り合いはこの形式のせいで話があまり理解できなかったとも言っていたので、合わない人もいるのかもしれません…。
けど、よく見るとちゃんと法則があって進んでいく部分もあります。
例えば、船が損傷する前にアーニャが意味深な発言をしたあと、損傷後が描写されてアーニャがどのように死んだかを表現しますね。また、ダイスケがなぜ怪我をするに至ったのかを描写したあと、ダイスケがどのように死んだかを描写しています。
こんな感じで割と一人一人のキャラクターに焦点を当てて進んでいくので、話がわからなくてめちゃくちゃに混乱するというほどでもなかったです。ジミーの妄想も交えながらだとかなり訳が分からなくなりそうな所を、上手くまとめられているなあと思いました。
船の損傷を防ぐ方法が、「船が壊れた部分から泡が出てきて固まる」という方法なのが面白くて好きです。初見は船が泡だらけでびっくりしました。
けど泡のせいで棚なんかまで埋まってしまった。そして泡を壊せば宇宙空間に放り出される訳なので壊したくても壊せない。そのため余計に物資が不足したんですね。
解雇される前から会社が潰れる予兆があったにも関わらず、この五人はそれぞれの理由で残っていました。この辺りであの最悪の出来事を回避する道もあったんだろうな…と思うとやるせなくなりますね。それにしても航宙の最中に一方的にクビを宣言して終わりにしたのは本当に酷いですけども。
かなり危ない人間は一人いますけど、その他の人が善人というわけでもなく、各キャラもよく見ていくとおや?と思う節はいくつかあると思います。多分あの惨劇に至るまでにそれぞれのそう言った部分の積み重ねもあるんだろうなと思いましたね。むしろこういうところが一番人間らしく感じて好きな描写だったりするんですが。
でも一番悪いのはポニー運送だと言い張ります。あの劣悪な環境が元々あったそれぞれのキャラクターの負の部分を強化していったんですね。特にジミー。
船内に貼ってあるポスターが綺麗事ばかりで、いかにも口先だけの危ない会社だなというのがよく伝わってきます。
ポニー運送の広告もトムとジェリーみたいなアニメ調でしたけど、実際にあんな感じでアニメを使って企業の宣伝をする事ってあるんですかね。
それにしても内容を見てると、ポニー運送が悪ふざけで作らせたと言われても不思議じゃない。
各キャラクターについて
・ジミー
今回の戦犯。本当に救いようがない程認知が歪んでいて辛い。
クビを宣告されてから全員の為に心中を図るとは言いつつも、ただ自分がこれまでにやらかした事から逃げたかっただけですね。そもそも誰に相談もせず一方的にやり始めた事だし。結局カーリーの代わりに船長になったものの、船長の器ですらなかった。
どうにもならない状況で俺が何とかする、俺が何とかすると言い続ける様はかなり怖かったです。
アーニャを襲ったのが船に乗る前なのか乗ってからなのかがはっきりすると、かなり印象が変わると思います。
ただ一応彼もブラック会社の被害者だと言うことは忘れないようにしたいです。こういう時に個人だけを責めると逆に状況が悪化しがちだと思ってます。
・アーニャ
医者になりたいとは言え何度も試験に落ちています。ポニー運送の研修程度しか知識がない看護師、というのがカーリーを更に苦しめました。
それでもアーニャが船内の看護師としていられたのも、悪く言えば実際のところ治療させるための人間ではなくて「娯楽」扱いだからだったんですもんね…。しかも1年以上の航宙なのに女性はアーニャ一人で、寝室にロックもかけられない。この辺りの配置は本当にクソ会社でした。
・スウォンジー
名前の響きがなんか良いですね。典型的な融通のきかない頑固な親父だと思いきや、もっとアカン人間が船内に居たおかげで彼こそが一番の善人でした。アーニャが残ったメンバーの中で一番信頼して全てを話したぐらいです。
そもそも怒りっぽいのも、船の安全を守る責任がある事を考えると当然の事。
一人だけ使えるコールドスリープ用のケースを見つけて、誰に使うか悩みに悩んだ挙句、一番若くて未来のあるダイスケにしようと決めて行動する辺りは本当にカッコいい男でした。
・ダイスケ
頭の中であの曲が流れますね。おそらく日本人で、最も若く、この暗い船内での唯一の太陽です。こう言った系統の作品に出てくる日本人でこの役回りは珍しいですよね。
マウスウォッシュを飲んで、酔って出てきた泣き言が母への心配であるので、めっちゃ良い子です。彼が死んだ瞬間が一番胸が痛みました。この後のダイスケのお母さんの心境を考えるとかなり辛いです。
特にダイスケを一番可愛がっていたスウォンジーに殺させるのが本当に、何というかもう…。
・カーリー
あのレベルの全身火傷で生かし続けられるという惨さ。初めはカーリーがやらかした事だから、という罰としての扱いだったのが、ただの被害者である事が発覚した瞬間のあの感情はかなりキツイですね。結局最後までジミーの一人芝居に付き合わされました。
口が焼けてるので何も言えず、手足が無いので仲間を助けられず、瞼がないので目の前の惨劇から目を逸らせない、というように設計してるのがめちゃくちゃえげつないです。
この状況で生き続けるのは割とファンタジーだなあとは思います。眼球丸出しなのは乾いたりしないんだろうか…。寝返りは?睡眠は?ご飯と排泄はどうしていたんだろう。
看護の知識がないゆえに、鎮痛薬を固形のまま無理やり飲まされたりもします。せめて水に溶かしてやって…。
ゲーム性について
ホラーゲームってこういう荒いポリゴンのモデルとか、わざと操作しずらい、視野を暗くするなどの要素が相まって雰囲気を出しますね。
それから3時間程度でサクッと終わるのも、一本の映画を観てるみたいでちょうど良かったです。
ファンアートについて
ファンアートを漁るのが好きな人間なので、一応触れておきたいです。当然、海外のミームネタが多いですね。知らない物も多いけど、数ヶ月経った今でもまだ観ています。
ところでこう言ったゲームは逆に明るいイラストが多くなりますよね。もしみんな真っ当に生きていたらなど。心が痛い…。
まだまだ書きたいところはあるけど、長くなり過ぎるのでここまでにします。多分もう何ヶ月かファンアートを見続けるだろうなと思います。めっちゃハマりました。