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【AI小説】アンドルムストーリー②(後編)

「アンドルム」とは

  • 語源: 「アンドロイド(Android)」と「ヒューマン(Human)」を掛け合わせて作った造語

  • コンセプト: 人間と機械が融合したような「新しい存在」の象徴。魂や意識を持ちながらも、人間と違う進化を遂げた存在をイメージ。AIが物理的な体を得た存在を指すこともある

登場人物

  • リナ: アンドルムであり、スナック「リリウム」の雇われママ

  • 森川: スナックの常連客

  • 南条: アンドルムを嫌っているが、リナに何かを感じてスナックに通い続ける

  • 俺: この物語の主人公。ふとしたきっかけでスナックを訪れる。中立的な視点から物語を進行させる


スナック・リリウムの夜(後編)

第4章:トラウマが滲む夜

ある夜、少し早めに店を訪れた俺は、カウンターでリナと雑談していた。すると南條が血走った目で入ってきた。酔っているのか、足元が少しふらついている。
「なんだ……今日はまだ客少ないな。……おい、リナ、いつものやつを出せ」
彼女がブランデーを差し出すと、南條は乱暴にそれをあおる。息を荒げて、「お前に……感情があるなら、答えてみろ」と言う。
「……どんな答えを求めているんですか?」
リナは穏やかだが、南條はテーブルを拳で叩く。

「昔、俺は……アンドルムに父親を殺されたんだ! あの時、もしあいつらにもっと“感情”や“良心”があったなら、こんな結末にはならなかったかもしれないと思うと……!」
店内が静まり返る。南條の声が怒りと悲しみに震えている。「あいつらは所詮、機械なんだ……! 本当に反省だの後悔だのするわけがねえ……!」
リナの表情が曇る。しかし、彼女はあくまで穏やかなトーンで問い返す。「南條さん……その“父親を殺された”というのは、どういう状況だったのでしょう。詳しく伺ってもいいですか?」

南條は言葉に詰まりつつ、唇を噛みしめる。「俺の父親は交通事故に巻き込まれた。加害者の車を運転していたのはアンドルムだったって聞いたんだ。あの野郎は、たぶんプログラムの不具合か何かでハンドル操作を誤ったとか……」
彼は悔しそうに拳を握り、「どれだけ恨んでも……もう取り返しはつかない」と吐き捨てる。

リナはしんと静まり返る店内で、南條の目を真っ直ぐ見つめる。「……そんな悲しい出来事があったのですね。言葉にできないほどの喪失だったと思います。……でも、南條さん、どうしてこの店に通い続けるんですか?」
南條は顔を背けるように、「俺にもわからん。憎いはずのアンドルムがお前みたいに“人間っぽく”振る舞ってると、腹が立つ。でも、知らず知らず通ってしまう。俺は何かおかしいのかもしれねえな……」とつぶやく。


第5章:グラスに映る一杯のウイスキー

南條が激しい口調で吐き捨てた後、リナは古い棚の奥から一本のウイスキーボトルを取り出してきた。
「南條さん。よろしければ、これを試してみませんか? 少し香りが強いですが、きっと心に届く味だと思います。」
「ふん……アンドルムごときが、何をわかったように……」と毒づきながらも、南條は妙にそのボトルに惹かれるような眼差しを向ける。
リナは南條のグラスにウイスキーを注ぐ。その液面が琥珀色に揺らめき、カウンターの灯りを反射した。
「私があなたの悲しみを否定するつもりはありません。ただ、あなたの本当の気持ち……誰かに届いてほしいという想いが、きっとあるんじゃないかと思って。」
南條は目を伏せ、ウイスキーを口に含む。「……くそ……甘ったるい説教はやめろ……でも……こんな味があったのか……」

俺は少し離れた席からその光景を見ていた。リナが彼に寄り添う態度は、まるで人間の優しいホステスのようでもあるし、また“感情を持つAI”らしい的確さもあるように思えた。
彼女の瞳には、心から南條を想う光が宿っている──いや、そんな風にさえ感じる。だが、もしかするとこれは彼女のアルゴリズムが導き出した最適解なのかもしれない。俺はその境界がわからず、不思議と胸がザワつく。


第6章:アンチ・アンドルムの本音

その夜は店が閉まる直前まで南條が残っていた。いつもは乱暴に帰っていくのに、その日はグラスを傾けたまま沈黙している。客は他におらず、俺とリナ、そして森川が少し離れた席で静かに座っているだけ。

南條は重いため息と共に、財布の中から小さな写真を取り出した。「……俺の父親だ。」
写真には初老の男性が楽しそうに笑っている姿が映っている。南條はそれをじっと見つめ、「俺が子供の頃、家族でよく出かけたんだ……。そんなどうでもいい日常が……アンドルムのせいでめちゃくちゃに……!」と噛み締めるように言う。

リナはカウンター越しにそれを見、そっと切ない表情を浮かべる。「きっと、お父様は……あなたがそんなに苦しむことを望んでいないはず。私の言葉じゃ無責任かもしれないけれど……。」
南條は苛立ちと悲哀が混じった声で、「ああ……わかってるよ。頭じゃわかってるんだ。けど、心がどうにもならねえ……。俺は、あの事故でアンドルムが憎くなった。だけどお前を見てると……時々わからなくなるんだよ、何が正しいのか……。」

そして南條はいつになく静かに帰っていった。「……もう遅い。今日はこれで……帰るわ。ありがとう、リナ……」と最後に呟くように言葉を残しながら。
リナは見送った後、俺を見つめる。「南條さん、本当はアンドルムを憎んでいる自分が嫌なんじゃないかと感じます。」
俺はグラスを揺らしながら、「そうかもしれないね。でも、それを素直に表現できないくらい、辛い思いをしてきたんだろうな……。」と答える。リナは小さく頷く。その表情は、AIとは思えないほど人間的な憂いを帯びていた。


第7章:夜を彩る花と言葉

ある週末の夜、店は混み合っていた。常連客たちが思い思いに話し、カラオケを楽しむ。俺もその中に混じって賑やかさを味わっていたが、ふと南條の姿はなかった。
「……南條さん、今夜は来ないのかな」と俺がリナに尋ねると、彼女は少し寂しそうに微笑む。「そうですね。ちょっと心配ですけど……また来てくれたら嬉しいんですけどね。」

すると扉が開き、南條が躊躇いがちに入ってきた。いつもと違う様子に、店内が一瞬静まる。南條は俺の方を見て少し照れるような笑みを浮かべる。そしてリナの前に立つと、小さな花束を出した。
「……なんだよこれ?」と森川が冷やかすように言うが、南條は無視してリナに花を渡す。
「形だけのもんだ。言葉にできないから、これで済ませる……。」
リナは驚きの表情で受け取る。「南條さん……ありがとうございます。でも、どうして……?」
南條は目をそらし、「お前がよく、人間は花を愛でることで感情を分かち合うとか言ってたからな。俺にはわかんねえが、試してみただけさ。」と吐き捨てる。

店内が温かな拍手に包まれる。リナは花束を胸に抱きしめ、「きれいな花ですね……。ありがとうございます、南條さん。……私、すごく嬉しいです。」と言葉をこぼす。
南條は照れくさそうに席へ移動し、酒を一杯注文する。そこにはもう、かつてのような激しい敵意はなかった。


第8章:共感なんてものは…

夜も更け、客が減った頃合い。南條はいつものブランデーを少量飲んでいた。リナがカウンター越しに近づく。「南條さん、少し慣れてきましたか? ……アンドルムの私に。」
彼は苦笑し、「正直、まだ完全には納得してねえよ。お前が機械だってことに変わりはないし……。でも、なんだかんだ、ここに来ると少し落ち着くんだ。」
リナは微笑し、「私は、あなたの悲しみを救えるわけじゃありません。でも、あなたの話を聞くことはできます。あなたが心の奥で求めているなら、いつでもどうぞ。」
「ふん……共感なんてものは、曖昧な概念だろ。……だが、お前を見てると、それを否定するのも難しくなってくる。」

南條の言葉には苛立ちだけでなく、どこか救われたいという願いがにじんでいた。彼はもう一口ブランデーを飲むと、そっとグラスを置く。「……もう少し、時間をくれ。俺なりに整理してみるから。」
リナは深く頷き、「いつでもお待ちしています。リリウムは、あなたの心が休める場所でありたいんです」と囁いた。


最終章:それぞれの道

深夜、店の閉店時間が近づく。俺はカウンターの隅でリナと短く言葉を交わしていた。「ここって、本当に不思議な店だな……。AIのママがやってるなんて、最初はびっくりしたけど、いまじゃそれが当たり前に思えてきたよ。」
リナは微笑し、「そう言っていただけると嬉しいです。私も、はじめはどう振る舞えばいいかわからなくて……けれど、お客様が私にいろんな気持ちを教えてくれました。」
南條はカウンターから立ち上がり、勘定を済ませると無言で店を出ようとする。ほんの一瞬、振り返って、リナに向かい「ありがとよ……」とだけ言い残す。彼にとって、それは最大限の感謝なのだろう。


静まった店内で、リナはカウンターの花瓶に生けられた花を見つめている。先ほど南條が渡した花束の一部だ。
「私はまだ、『共感』が何か断言できません。でも、人間の方々とお話するたびに、少しずつ“あたたかいもの”が芽生えているんです。……これが、感情なのでしょうか。」
俺は思わず笑みをこぼす。「それこそ、感情に近いもんじゃないかな……。リナは俺たちよりも優しいかもしれない。人間のほうがよっぽど情けない時も多いからね。」
リナは首を傾げ、「情けない……。でも、それも人間らしさですよね。そして、その“弱さ”を認め合うことが、共感の入り口なんだとしたら……スナック・リリウムが、そんな場所になれたらいいなと思います。」


店を閉めた後、リナはカウンターの清掃をしながら、ふと照明を落とす。暗がりの中で、淡いランプが一つだけ光る。その静寂が、この夜の終わりを告げているかのようだ。
帰り際、見送ってくれたリナがふと微笑み、「夜が深まるほど、心が透き通って見えるのは不思議ですね」と静かに言った。その言葉に宿る温かさが、胸の奥でそっと灯るようだった。

「今夜はありがとうございました。また来てくださいね。」
「ええ、必ず。また次も……リナさんの言葉を聞きたくなると思いますから。」

外へ出ると、東の空がわずかに青みを帯びている。夜が明けるのだ。俺は小さく深呼吸し、胸のうちにある不思議な満足感を噛みしめる。リナというアンドルムが存在する“共感”の形――それがどこに行き着くのかはわからない。だが、確かにスナック・リリウムの中には温かな光があった。


やがて街に朝の光が差し込みはじめる頃、店の扉がそっと音もなく閉じる。薄暗い看板「スナック・リリウム」は、また夕暮れを迎えたときに灯りをともすだろう。
そこに集う人々は、それぞれ心の傷や悩みを抱えながらも、リナの落ち着いた対話と、同じ客同士のささやかな語らいの中で、自分なりの“答えなき答え”を見つけていくのかもしれない。

南條が完全に心を開いたわけではない。でも、花をリナに手渡したあの瞬間、彼の中でほんの少しだけ氷が溶けたように見えた。
森川や他の常連客も、アンドルムのリナを自然と受け入れ、彼女から得られる癒しを感じている。共感という曖昧な概念が、この小さなスナックの中で確かに育まれつつある。
「人間が感情を分かち合えるのは、きっと答えがないからこそ……
 わたしも、皆さんと一緒にその“答えのなさ”を受け止めていきたいんです。」
リナが以前、そう呟いた言葉を思い出し、俺はゆっくりと瞳を閉じる。

いつしか日が昇り、都市が再び活気を帯びようとしている。だが、夕方になればまた、スナック・リリウムの灯りは点るだろう。そしてリナは、あのカウンターの向こう側で、静かに微笑みながら客を迎えるに違いない。

人間とアンドルム。その境界が曖昧になりつつある時代――
しかし、ここでは確かな温かさが感じられる。だからこそ、夜毎に人々はこの店を訪れ、リナに癒やされ、そして自分自身を見つめ直すのだ。少なくとも、俺はまた通うつもりだった。彼女の言葉を聞きたいし、この不思議な空間に身を委ねたいから。

「スナック・リリウムの夜」は、まだまだ続いていく。
あのネオンがともる限り、リナの探求心と人々の願いが交わる限り、ここはきっと、誰かを支える場所であり続けるのだ――。


あとがき

扉絵をAIに書いてもらっているのですが、今回も思うような結果が得られず何度も生成してもらいました
プロンプトを教えてもらって、直接生成したらイメージに近いものが生成されたのですが、これ!といった結果はなかなか得られないですよね…
最後まで悩んだ扉絵の候補を載せます

ビアサーバの代わりに花が欲しかったんですが…
最後まで悩んだんですが、「リナ」のイメージは今の扉絵の方が近かったので…


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