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短編小説「雪の日にもの思う」
はら はら はら
ふわ ふわ ふわ
雪が 染める
視界を 染める
白一面に 染める
しん しん しん
しん しん しん
音が 消える
世界から 音が
無音の音が
耳を 震わせる
「ああ。また雪か」
空を見上げて、ぽつりとひとりごと。
返す声も なく。
「つまんね。」
ひんやりとした 地面を蹴る。
ぶるりと 身震い。
雪が 降ろうと。
雨が 降ろうと。
わたしの生活は 変わらない。
仕事。仕事。仕事。
でも。
でも。
真っ青な空と。
ひんやりと、でも ぴんと張りつめた 空気。
それが在るだけで、今日も生きて行ける。
雪は 凍った吐息の 滴。
これは わたしの ため息のせい?
「・・・つまんね。」
もう一度、地面を蹴る。
こん、こん こん
小石が転がる。
あしたは きっと いちめん 銀世界。
「・・・早くかえろ」
紅茶にはちみつを溶かして。
ミルクをとろりとかき混ぜて。
冬の日は 家にかえろう。
いつもと変わらない日々を過ごそう。
それが、わたしなのだから。
了
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