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キャバ嬢の営業

勤めていたネイルサロンが恵比寿だった為、
お客さんは一駅隣の六本木のお姉さん方が多かった。

ネイルの施術中は片手をネイリストに預けて、
もう片手は携帯をいじり、客に営業電話をかけている人がそこそこいた。

20歳の色白、金髪
目鼻立ちくっきり美人。

ネイリストからは問題児扱いされているお客さん。
注文が細かく、キレる、キツイ、それにおどおどしてしまうとなめられて威圧的な態度をとってくるヤバ客。
謎に入店した瞬間から既にイラている客も多かった魔の巣窟ネイルサロン。
仕事かプライベートでイラついたことはネイリストに当たる。
お金を払ってるんだから勿論私が上だよね?
と、ネイリストを目下に見て奴隷のような扱いをする客が多かったが、
そのキャバ嬢ももちろんその1人。

その日担当になってしまった私はサッサと手を動かし終わらせてしまおうと黙々と作業をする。
何かちょっとでも機嫌を損ね、地雷を踏む事無く無事にこのお客さんを終わらせなければ!!
スカルプネイルって1客約2時間はかかるからね。
しかも2時間丸ごと対面していないといけないから、
神経を尖らせて細心の注意で仕事をしなくてはないらない!!
片手はネイリストの私に差し出して、
もう片方で携帯をいじり次々にキャバクラの客に営業電話をかけるキャバ嬢。

「ねぇねぇ〜今日ご飯行こうよ〜」

甘くまとわりつくような声で
お客さんに電話をかけている。

「え〜ん、良いじゃん、うん、そうなの〜残念、
また連れて行ってね〜じゃあね〜はーい」

お客さんから同伴を断られたようだ。
電話を切るなり、
「ったく、ジジイうぜぇんだよ!!ふざけんな!」

悪態をつくキャバ嬢。
やばいまじ怖い。
ジジイ、頼むからキャバ嬢の機嫌を損ねないでくれ。
そして次々に営業電話をかける。

「もしも〜し、久しぶり〜元気?
◯◯だけど〜またご飯行こうよ〜」

またも甘い媚びるような声で営業をするキャバ嬢。

「え〜、そうなの?いいじゃん、え?
だめ〜??じゃあ今度ね、また連れて行ってね?
楽しみにしてるから〜はーいまたねー」

断られた。
電話を切るなり、

「っうぜぇなジジイ!せっかく私が誘ってやってんだよっざけんなよ!!クソが!」

悪態をつくキャバ嬢。
怖い。本当に怖い。
ブチギレてるキャバ嬢と対面してるネイリストの私はわずか60センチの距離にいる。
自分が怒られていないにしろ、この近距離でブチギレているのはまじで怖いのよ。

結果5件ほど電話をかけて見事に全員に断られたキャバ嬢。
自分の目下に見ている奴隷ネイリストの目の前で自分の無惨な姿を見られているので、
客であるジジイの悪口を言わなければ体裁とプライドを保てないのであった。
何とも哀れな姿だろう。

キャバ嬢の裏と表が見られるネイリストは、
スリリングだった。



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