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伊那谷日記⑱雪国の人達を尊敬している

今日も伊那谷には雪が舞っている。
今年になって何回目だろうか。よく降っている。
今年は長野県北部も11月まで暖かかったのに、11月末になって急に雪が積もりだし、また何度かドカ雪に見舞われた結果、例年より積雪量が多くなったようだ。
長野県は雪国のイメージがあるかもしれないが、松本市のある中信や、ここ伊那谷のある南信はあまり雪が積もることは無い。

南信で雪が降るとき、「上雪」と呼ばれることがある。
南岸低気圧で雪が降る時で、県の北側よりも南側で雪が降りドカ雪になりやすい。
年に数回しかないのだが、除雪能力の低い中信、南信エリアにおいてはドカ雪は荷が重い


長野市や白馬村あたりなら、雪が降りだしたとあれば夜明け前から幹線道路を大きな除雪車が走りまわり、歩道はともかく車の道が確保される。
会社や個人でも除雪機を保有している場合が多く、大変ではあるが何とかしてしまう。それが雪とともに生きている人達のすごさだ。

もちろん南信であってもちょこちょこ雪は降るので皆雪には慣れているし、上雪に備えて雪かき棒、融雪剤、長靴くらいはそろえている。
除雪機もあるところにはある。
しかし、除雪車が圧倒的に少ない。建設会社のブルドーザーが頼みの綱だ。ドカ雪に対抗するための武器が少なすぎる。

上雪はドカ雪になることも多いので、一晩で40センチとか60センチとか降られたら、除雪車は来ないので道路はボコボコ、いたるところに車が突っ込んみ、重たい雪をかかなければ家の玄関から道路まで行けない、などなど色んなことが起こるのである。
しかし、ふだんそんなに降らないし、数年に一度の大雪のために除雪車や除雪機を準備しておくのはコスパが悪いわけで。
なんとなく上雪という言葉にびくびくしながらも、のんきに暮らしている。

これだけの雪でもうれしくなる
空は晴れたり曇ったり

私もそんなのんき者のひとりに間違いなく、なぜだか雪が降るとテンションが上がる。
雪が降っていると聞けば、普段は開けないカーテンを開けて窓の外をのぞき込み、外に出ればスマホで写真を撮ったりする。
やっぱり雪はめずらしく、わくわくすることこの上ない。
昼に日差しが出ればあっという間に道路の雪は溶けてしまうのだが、それを少し寂しく感じてしまうくらいだ。
一日に何度も雪かきをせざるを得ない豪雪地域の方々には申し訳ないのだけれど。
ひとえに太平洋側で生まれ育ったせいなのだと思う。

冬の太平洋側はずっと青空だ。空気が乾燥していて、体育の授業の持久走の練習は口の中が血の味がした。
冬のイメージは青い空と埃っぽい茶色のグラウンド。
雪はめったに降らない。
もし降ったならば、泥がくっついた汚い雪であろうが、雪ダルマ作りにいそしむ。すぐに溶けてしまう短い雪との戯れを存分に楽しむ。
そのくらい雪は降らないし、冬はたいてい晴れるものだと刷り込まれていた。

それから何年かたって、はじめて北信、長野市に住むことになった。
長野市の冬は辛かった。
雪の量は多いけど、除雪能力が高いのでそれは苦にならなかった。
かえって雪かきがめずらしくムキになってやっていたところもある。
問題は天気だった。

冬の間、青空を拝めることが少なく、毎日重たい灰色の空を眺めていると、気分も落ち込んでくる。
これが日本海側の気候か。
布団も外に干すことができず、部屋の中もじっとり湿度で重い。
青空が見られないことがこんなにもストレスになるなんて思ってもみなかった。早く長野市を離れたい気待ちでいっぱいだった。

雪国の人達が忍耐強いといわれるのは、きっとこういうことなんだろう。
あの重たい空にたえて春を待てる、待たなきゃならない境遇。
私には無理だった。
きっとこれからも日本海側では生きて行けない。

雪も降るけど、結構晴れてる、そんなところはないだろうか?

雪があることで受ける恩恵もたくさんある。でもそれは雪国の人たちの忍耐力があってこその恵みである。
私のように太平洋側で育った忍耐力のない人間は、やすやすとその恩恵にあずかってはいけない気がするのである。

雪国のみなさんに敬意を込めて。
寒波の襲来のおり、皆様のご無事をお祈りしております。

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