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古典文学お手軽読本その21 雨月物語編

はじめに


 『雨月物語』は、江戸時代に上田秋成という人が書いた恐いお話集という感じで、同じ著者で『春雨物語』と言うのもあります。
 話は九編からなっています。
①『白峯』
 放浪の歌人の西行が、四国に旅したとき、崇徳院の墓の前で崇徳院の霊と話をして、成仏させようとしていく話です。
②『菊花の約』
 義兄弟の契りを結んで、旅立った友が、帰ってくる約束を果せず、自ら命を絶ち霊となって約束を果たそうとした話です。
③『浅茅が宿』
 都で一旗揚げようと旅立った夫を待ちわびる妻、戦乱に巻き込まれ死んだ妻は、久々に帰ってきた夫を持てなすが・・・。
④『夢応の鯉魚』
 鯉の絵を書くのが得意な僧が、あるとき病気で倒れてしまった。夢の中で鯉となって自由に琵琶湖を泳ぎ回ったが、空腹に耐えられずに釣り人の餌に食らいつき、料理される寸前に目が覚めて・・。
⑤『仏法僧』
 高野山に詣でて夜野宿していると、豊臣秀次とその取り巻きの霊が宴会を始めて、そこに参加することになり・・・。
⑥『吉備津の釜』
 吉備津神社の神主の娘、娶った放蕩息子は、妻をだまして出奔してしまう。妻はもののけがついたようになり死んでしまい、亡霊となって放蕩息子に取り憑き・・・。こわっ!
⑦『蛇性の婬』
 雨宿りしていて、美女と出会ったが、美女の正体は蛇で、付きまとわれる形となって・・・。
⑧『青頭巾』
 食人鬼となった僧を成仏させるため、言葉を授けて・・・。
⑨『貧福論』
 岡左内という金銭を尊ぶ武士のところに、黄金の精霊が現れ問答をする。富を蓄えても驕らぬはいにしえの聖人の道と解く。この話は、怖くはありません。
 小泉八雲なども、取り上げている話もあります。
 石川淳さんの秋成私論では、日本の江戸時代の文学は、秋成の形式から発展していけば良かったのに、その後の滝沢馬琴などは、ただ長いだけの文章で発展しなかったと述べています。なるほど。

1.現代語訳


◎『ビギナーズクラシックス 雨月物語』
 佐藤至子:編 KADOKAWA 角川ソフィア文庫
(あらすじと有名な文章の現代語訳と原文の読み下し文、解説、さらには、原本の挿絵の解説まで入っています。雨月物語の大まかな内容をつかむことができます。)

◎『大庭みな子の雨月物語』 わたしの古典シリーズ⑲
 大庭みな子:著 集英社 集英社文庫
(雨月物語だけでなく春雨物語も入っています。序文もしっかり訳しています。雨月物語の怖さをしっかりと訳してくれていす。巻末に板坂則子さんの「解説」と、高樹のぶ子さんの「鑑賞」が入っています。)

◎『新釈雨月物語・新釈春雨物語』
 石川 淳:著 筑摩書房 ちくま文庫
(訳が若干古いので、読むのに多少集中力が必要かもしれませんが、しっかり訳しています。巻末に、『秋成詩論』というのが入っていて、解説も自分で書いたという感じです。
 「解説」を書いているのが、三島由紀夫さんです。戦前(体をマッチョにする前)の三島さんの座右の書は『上田秋成全集』だったそうです。戦争中の体験が彼を何か違う方向へ導いてしまったようです。)

◎『新釈 雨月物語』
 石川 淳:著 KADOKAWA 角川文庫
(こちらの、角川文庫版は雨月物語のみの訳と、秋成私論が入っていますが、文章はちくま文庫版と同じです。巻頭と、各物語の所々に岡田嘉夫さんのおどろおどろしいイラストが入っていて、話の内容の怖さを引き立てています。)

2.漫画


◎『水木しげるの雨月物語』
 水木しげる:著 河出書房新社 河出文庫
(雨月物語の内、『吉備津の釜』・『夢応の鯉魚』・『蛇性の婬』の三編の現代語訳の絵から構成されています。漫画と言うよりは、絵本みたいな感じですね。)

◎『雨月物語』 マンガ日本の古典28
 木原敏江:著 中央公論新社 中公文庫
(雨月物語の全九編の内、『菊花の約』・『浅茅が宿』・『吉備津の釜』・『蛇性の婬』の四編が漫画化されています。なかなか恐ろしく書かれています。子供向けにはこのような怖い話を読ませていいんですかね? )

扉の写真
 静岡市のとある銀行の前にあるプラモデル風の看板。


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