原作ファンが【 ポーの一族 】 ミュージカルを観劇したお話
一番好きなアニメ監督はと聞かれたら幾原邦彦と答え、一番好きな漫画家はと聞かれたら萩尾望都と答える私。
ポーの一族に始めた出会ったのは小学3年生の時、地元の図書館だった。
最初は美麗な画に惹かれたのが、読み進めるうちにその独特な世界観、そして漫画なのに文学以上に文学を感じる言葉たちに惹かれて何度も何度も借りては読み、大学生になった時には先生の作品のほとんどを買い揃えた。
小池修一郎氏がいつか「ポーの一族」を舞台でやりたいと何十年も前から意気込んでいらっしゃったのは1998年に1版が刊行されたポーの一族1巻の単行本のあとがきで拝見して存じていた。
そして数年前、小池氏が数十年越しで念願の舞台化を宝塚で叶えたのを知ってはいたのだけれども、Twitterで「ポーの一族が舞台化するから見てみようかしらと思っている原作ファンの方、そもそも宝塚は宝塚自体がチケット取るの大変なんですよ!」というつぶやきを発見して「宝塚自体のファンではない私が行くのはおこがましいのでは・・・」という謎の遠慮に駆られ応募するのも断念してしまった。
そして萩尾先生デビュー50周年の萩尾望都展で宝塚舞台化の映像や衣装をみて「行けてたらどんなものだったのだろうか・・・」と思い馳せていたのだけれども、2021年の2月、幸運にも梅芸主催の「ポーの一族」を観れることになったのだった。(しかも前から10列目で非常に観やすかった)
観終わって色々な感想が芽生えたので、ここで綴ろうと思う。
【感想】
非常に素晴らしいミュージカルでした。(小並感)
一言でまとめると稚拙になってしまうので、観点を変えて描写したいと思います。
<キャストに関して>
先ず、明日海りおさんの歌と舞いが非常に軽やかでエドガーとして違和感がなかった。人間時代のエドガー、バンパネラになってからのエドガーの演じ分けが見事。そして、あんなに美麗で妖しげなバンパネラを演じられるのに、カーテンコールになった瞬間ぽわぽわ癒し系の話し方をなされるのがギャップ萌えでやられてしまいました。
アランは正直、原作を読んだときからビジュアルは京本大我さんがぴったりと思っていたので最初千葉雄大さんどうだろうと思っていたけれども、しっくり合っていて良かったです。驚いたのは初ミュージカルとは思えない程違和感なく素敵な歌声でした。原作ではアランはもっと生意気で甘えたな話し方のイメージだったのでどちらかというと話し方が少しアランぽくないなと思ったのですが、それは演出の違いかもしれないです。(千葉アランは最初から多少反抗はしつつも素直で従順な性格が見え隠れしてる話し方に感じました)
そして流石の涼風真世様。物腰、話し方が完全に老ハンナポーでしたし、オリジナルキャラクターの降霊師の役もポーの世界観にすごく馴染んでいました。
夢咲ねねさん演じるシーラは個人的には一番原作のイメージに近い役作りだった気がします。自らの意思でバンパネラになった後に後悔してないのかエドガーに聞かれた後の「なぜ?」の言い方は正しく原作のシーラそのものでした。バンパネラになりたての20歳のシーラと長く時を超えたブラックプールでの手練れたシーラの演じ分けも見事。
メインではないながらも印象に残ったのは、元乃木坂の能條愛未さん。20代のジェインと30代のマルグリットは話し方、立ち方、物腰、全てが別人で、歌声も素晴らしかったです。舞台ウテナで主人公を演じられていたのは存じていましたが、原作が好きすぎて観る勇気がなかったので、「観ておけば良かった!」とジェイン演じる能條さんを観て後悔しました。
<物語の構成に関して>
原作と違って、ほとんど時系列で舞台が進むので初見さんでもプロットが理解しやすい。ただ、原作ファンとしては、スターウォーズと同じで時系列順の構成でないからこその台詞の深み(「100歳も年上みたいな目をして」の部分とか)や伏線がこの作品の好きなところなのでやはり舞台だとそういったところは味わえないのだな・・・と(舞台という特性上仕方ないのですけど)
そして時系列でないからこそ、原作で個人的に特に面白いギムナジウム編や魔法使い編(本当だ、あなた魔法使いの目をしてる、のやつ)はほぼ登場しないというのも少し残念。(仕方ないのですけど)
原作はアランとの旅がメインであって、そもそもなぜこの2人は時を超えた長い長い旅をしているのかというところでメリーベルやポーの村のエピソードが生きると思うので、時系列でやらないといけない舞台というのは、やはり特性が違うので別物になってしまいますね。
もちろん、肉声、音楽など舞台でしか出会えないエドガーたちというのは間違いなくそこにあって、ミュージカルとしては非常に素晴らしい作品でした。もう一度観る機会があるのであれば迷わず行きたいです。
以上が原作ファンがポーの一族ミュージカルを観劇しての感想となります。
余談ですが、観劇を終えて萩尾先生の作品で他に舞台化向いているのって何だろうと勝手に妄想が始まりました。
トーマの心臓なんか良いのではと思いつつ(ギムナジウム舞台化見たいだけ)、アガペーとかそのあたりのテーマの理解なくあんなの初見で見たら混乱するだけかと思ったり・・・意外とスターレッドなんか良いのかもしれない、舞台化・・・
ポーの一族はアニメ化してほしいと昔は思ってたのですが、今はあの作画はアニメでは無理だろうと冷静になりました。(でもバルバラ異界あたりはアニメ化して欲しいな)
萩尾先生愛は今日も止まりません。
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