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Q. フリーランス向けの「健康管理ガイドライン」ができたって本当ですか?!
会社員の時は、年に一度、総務部から受診を催促されていた健康診断。
「そういえばフリーランスになってから受けていない!」という人もいるのではないでしょうか。
実際、厚生労働省の調べによると、市町村で実施している健康診査も含めた健康診断を受けていない個人事業主等が約35%にのぼるとのこと。大多数は受診しているとはいえ、35%も未受診とは無視できない数字です。
さて、そんな方々にこそ届けたいのが、2024年5月に公開された「個人事業者等の健康管理に関するガイドライン」です。
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本ガイドラインは、フリーランスや個人事業主等が健康に働けるよう、フリーランス自身や発注者等の自主的な取組みを促すことが目的で策定されました。
あくまで自主的な取組み促進なので義務ではありませんが、フリーランスが継続的に事業を行ううえで、「⾃らの⼼⾝の健康に配慮することが重要」との考えに基づき、その大切さを伝えるための広報を国が後押ししているというわけです。
ちなみにここでいう「フリーランスや個人事業主等」は従業員を雇っていないフリーランスや個人事業主、中小企業の事業主、役員を指しています。
本ガイドラインは2つのターゲット層に書かれており、1つ目が「フリーランスや個人事業主等が実施する事項」。2つ目は「注文者(発注者)等が実施する事項」です。
この記事では、フリーランス当事者に関係が深い「フリーランスや個人事業主等が実施する事項」を抜粋して解説していきます。
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上記のリストは、フリーランス向けに推奨されている実施事項です。どれも大事そうに見えますが、具体的に何に気を付ければ良いのかわからないですよね。
ガイドラインには、具体的な対策が書かれているものと、そうでないものもあるので、以下に情報を補足しながら解説していきます。
フリーランスや個人事業主等が実施する事項をどのように気を付ければ良いのか参考にしてください。
①健康管理に関する意識の向上
【フリーランスが取り組めること】
→企業が取り組んでいる健康経営などを参考にする。
②危険有害業務による健康障害リスクの理解
【フリーランスが取り組めること】
→危険性を理解する。
【国による支援窓口や関連情報】
●ケミガイド〜職場の化学物質管理の道しるべ〜
③定期的な健康診断の受診による健康管理
【フリーランスが取り組めること】
→自治体の健康診断を受診。
→受診を忘れないように1年に1回受診する月を決める(例:誕生月など)。
④⻑時間の就業による健康障害の防⽌
【フリーランスが取り組めること】
→業務量や稼働時間を可視化する。
【国による支援窓口や関連情報】
●マルチジョブ健康管理ツール
●疲労蓄積度セルフチェック
⑤メンタルヘルス不調の予防
【フリーランスが取り組めること】
→定期的にストレスのセルフチェックをする。
→相談窓口を見つけておく。
【国による支援窓口や関連情報】
●フリーランスの方のメンタルヘルスケア(こころの耳)
⑥腰痛の防止
【フリーランスが取り組めること】
→体格に合った椅子等を利用する。
→ストレッチや休憩をこまめに取り入れる。
【国による支援窓口や関連情報】
●腰痛予防対策
⑦情報機器作業における労働衛⽣管理
【フリーランスが取り組めること】
→デスク周りの明るさやディスプレイを工夫する。
→PCやスマホを利用する時間を調整する。
【国による支援窓口や関連情報】
●情報機器作業における労働衛⽣管理のためのガイドライン
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⑧適切な作業環境の確保
【フリーランスが取り組めること】
→チェックリストを利用し、仕事場の環境を整える。
【国による支援窓口や関連情報】
●⾃宅等でテレワークを⾏う際の作業環境を確認するためのチェックリスト
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予防、相談先の把握、仕事環境の整備が大事
このように、フリーランスや個人事業主等が実施する事項の項目を見ると、ダウンしてしまう前に心身の健康チェックをして病気になるのを予防したり、相談先を把握しておいたり、仕事をする環境を整えたりと基本が大切だということがわかります。
とはいえ、基本が大切だとわかりつつも、フリーランスは働き方が自由な反面、働きすぎになりがち。
そんな時に参考になるのが会社が実施しているルールです。
もちろんそのまま取り入れる必要はありませんが、今、雇用されて働いている人の健康を守るために企業がどのようなことを実施しなければいけないのか、または自主的にどんなことを取り入れているのかを把握しておくだけで、働きすぎ防止のラインを意識できるようになるかもしれません。
それでは具体的にどのようなものがあるのか見ていきましょう。
有給休暇制度:休日を計画的に取ることは大切な戦略のひとつ
有給休暇は一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇で、会社員の方には権利として与えられています。
法律で決まっている日数がどれくらいかというと、フルタイム勤務の方の場合、入社後6ヶ月で10日与えられます。その後は1年6ヶ月後に11日、2年6ヶ月後に12日というように付与日数は増えていきます。
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さらに、働き方改革の一環で、年次有給休暇が10日以上付与される労働者に対して、最低でも年5日の年次有給休暇を取得させることが義務化されました。
従来は有給休暇を取得するかどうかは労働者の任意でした。5日間は義務になったというのがポイントで、権利として有給休暇はあるけど、周囲への気兼ねで休むことにためらう人が多かったのが課題になっていたためです。
フリーランスの人たちは、取引先の要望にいつでも応えるためにとか、収入のためにとか仕事が楽しいからという理由で休みを取らずについつい働き続けてしまうこともあるでしょう。
ですが、フリーランスにとっても働きすぎを防止し、健康を守るためにも、休日を計画的に取ることは大切な戦略のひとつです。
ちなみに令和5年の厚生労働省の調査では労働者 1 人の年間休日総数の平均は 115.6 日でした。こちらはあくまでも平均ですが、会社に勤務している人がどれぐらい休んでいるのかを目安にして、新年や年度初など節目の時に年間の休日スケジュールを立ててみるのも良いかもしれません。
勤務間インターバル制度:1日の中できっちりと休める時間を確保
続いて、参考になるのは2019年4月から企業に導入が努力義務化された「勤務間インターバル制度」です。
どういったものかというと、終業時刻から次の始業時刻の間に、一定時間以上の休息時間(インターバル時間)を入れるというもの。
有給休暇が年間の中できっちりと休む日を決めるものだとすると、勤務間インターバル制度は、1日の中できっちりと休める時間を確保しましょうというものです。
従業員の生活時間や睡眠時間をきちんと確保して、ワーク・ライフ・バランスを保ちながら働き続けてもらおうという意味合いがあります。
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生活時間や睡眠時間が大切なのはフリーランスも同じ。自分がダウンしてしまうと収入が即途絶えてしまうという意味では、フリーランスこそ休息時間も必須の時間だと考える必要がありそうです。
自律するとは、健康管理を意識するということ
以上、健康管理ガイドラインに加えて、フリーランスが参考にしたい会社の制度について解説しました。
ガイドラインのパンフレットに紹介されているQ&Aに、気になる質問がありました。
自律して働く個⼈事業者等の健康管理について、国がガイドラインを⽰してその確保を図ろうとするのはなぜですか?
その答えとして、太字のように示してあるのが印象的でした。
労働者と同じ場所で就業する⽅や、労働者とは異なる場所で就業する場合であっても、労働者が⾏うのと類似の作業を⾏う⽅については、労働者であるか否かにかかわらず、労働者と同じ安全衛生水準を享受すべきです。個⼈事業者等として事業を⾏う上では、⾃らの⼼⾝の健康に配慮することが重要です。個⼈事業者等は、各種⽀援を活⽤しつつ⾃らで健康管理を⾏うことが基本ですが、同時に、注⽂者等による注文条件等が個人事業者等の心身の健康に影響を及ぼす可能性もあることから、その影響の程度に応じて、注⽂者等が必要な措置を講じることが重要です。厚⽣労働省ではガイドラインにより、個⼈事業者等が健康に就業するために、個⼈事業者等が⾃⾝で⾏うべき事項、個⼈事業者等に仕事を注⽂する注⽂者等が⾏うべき事項や配慮すべき事項等を周知し、それぞれの⽴場での⾃主的な取組の実施を促してまいります。なお、本ガイドラインは、個⼈事業者等及び注⽂者等が⾏うべき基本的な事項を⽰したものです。本ガイドラインを参考に、個人事業者等や注文者等の団体、仲介業者等によって、それぞれの業種・職種の実情や商慣習に応じた具体的内容や追加事項を示した業種・職種別のガイドラインが策定されている場合には、そちらも参照ください。
つまり、今後はフリーランス自らが「安全衛生水準」を享受しているか、そして心身が健康かどうかを意識することが重要になってくると言えるでしょう。
(寄稿)山口 あす香
プレインスタイル代表/社会保険労務士/国家資格キャリアコンサルタント
/健康経営エキスパートアドバイザー/フリーランス&パラレルキャリア支援アドバイザー
大学卒業後、金融機関に入社。その後、ライフスタイルの変化に応じて正社員や派遣社員、パートタイム社員など様々な形態での働き方を経験する。ユーザー系IT企業では、管理、総務部門に8年間所属。現在は社会保険労務士、キャリアコンサルタントとして活動しながら一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会のジョブ創出プロジェクトに従事。「健やかに自分らしく働く」人を増やしたいとの想いで活動中。
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