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目標は、他人に考えてもらう方がうまくいく?! 2024年度は「タニモク」を自主開催してみよう!

まもなくやってくる2024年。
みなさんは来年をどんな年にしたいと考えていますか?

今年を振り返りつつ、新しい年にむけて考えを整理できる年末年始は、一年の目標をたてるのにピッタリの時期。とはいえ、「なかなか目標が見つからない」「毎年、同じような目標をたててしまう」など、目標探しに困っている人も少なくないのではないでしょうか。

そこで、他人に目標を考えてもらうワークショップ「タニモク」を開発した、パーソルキャリア株式会社の三石さんに、「タニモク」を効果的に自主開催する方法を伺いました。

三石原士(みついし・もとし)さん

大学卒業後、渡独。設計事務所からキャリアをスタートさせ、帰国後にパーソルキャリア株式会社(旧インテリジェンス)に入社。転職サービス「doda」の立ち上げを行う。2011年より、マーケティング部門にてコンテンツ企画を担当後、2017年に「タニモク」を開発。「タニモク」のプロジェクトマネジャーやはたらく個人がキャリアオーナーシップを育むためのプログラム開発などに従事している。
タニモク:https://tani-moku.jp/
タニモクnote:https://note.tani-moku.jp/
X:https://twitter.com/m_mitsuishi

「思いもよらない目標」が出てくるのが面白い

2018年からプロジェクト化されたワークショップ「タニモク」。誕生からわずか5年ほどにもかかわらず、現在では、企業の人事部向けのアンケートによると認知度が3割強まで及んでおり、利用意向も右肩上がりになっています。

企業の研修だけでなく、高校や大学の現場でもワークショップが取り入れられており、実施した人数はのべ数万人単位にも及ぶそう。

このように、多くの人に支持されるタニモク。その魅力は三石さん曰く、「参加者が互いにオープンに対話する状況を作ることで、自分の考えの枠を飛び越えた、新しい切り口での目標が見つかること」にあるのだそう。

一人で目標を考えようとすると、自分の思考の枠の中で納まってしまうことが多いもの。しかしタニモクを実施することで、それを打破できると言います。

「目標ややりたいことは、自分で決めるというイメージを持っている方が多いはず。しかし、他人との対話を通して目標を形作るのが『タニモク』です。
タニモクは、コーチングと同じ『自分の話を聞いてもらう』、『他人から質問をしてもらう』、『話した内容を相手に受け止めてもらう。そして、目標を提案してもらう』、『提案してもらった目標を参考にして目標を自己決定して行動する』というプロセスを踏み、メンバー同士がコーチングし合っている状況を作り出しているのです。
他者からの質問を受けることで自分の意見が引き出され、自己理解が深まり、新しい視点の目標に目が向くようになります」と三石さん。

さらに目標を提案する側にも、「他者の人生を疑似体験でき、多角的な視点を手に入れられる」というメリットがあるそう。

またリスクを恐れるあまり、慎重になってしまうタイプのフリーランスにこそ「タニモクをおすすめをしたい」と、三石さん。

リスクを過度に見積もり、慎重になることにより、実は機会を損失している可能性もあります。他人が考える大胆で冒険的な目標は、そうした機会も表面化させ、新しい可能性を開いてくれます。
フリーランスの方は、会社員の方と比較して裁量権が大きいので、その分可能性の幅も大きい。フリーランス向けの方にタニモクを実施すると、幅広い考えが展開されてとても盛り上がるんですよ」(三石さん)

過去に「タニモク」を実施した人の中には、これをきっかけにキャリアを転換させた人もいるそう。

「企業の広報として活躍していたある方は、タニモクを経験したことで『絶対にならない』と決めていたフリーランスに転身され、大活躍しています。
また商社でエンジニアをしていたある方は、タニモクで『エンジニアのための学校を作ってみては?』という提案を元に寺子屋を主宰したところ、社内での影響力が増し、今ではシリコンバレーで勤務するようになりました」(三石さん)

タニモクは、基本的に4人1組で実施するワーク。開催時間は3時間程度を見積もっておくと良いでしょう。3人1組ならば、2時間程度です。

三石さん曰く「ワークショップを効果的にするためには、時間配分や実施の前のマインドセットが重要。ファシリテーターを1名、設けることをおすすめします」とのこと。

1人あたりのターンを25分と仮定した場合の手順と時間配分の目安は、以下の通りです。

▼タニモクの実施手順(1人あたりの所要時間)

①それぞれが「今置かれている状況」を絵にする
なるべく文字を使わず、図や形、線で自分の状況を絵にします。絵は会話のきっかけなので、上手い下手は問いません。

②「主人公」が、現状について絵を使い簡単に説明する(3分)
グループの中で1人「主人公」を決めて、自分の置かれている状況を口頭で簡単にグループの人たちに説明します。特に、今もやもやしていることや悩んでいることを中心に話すと良いでしょう。この後、メンバーからの質疑があるので、詳しく話す必要はありません。

③主人公が質疑応答を受ける(9分)
主人公以外のメンバーが、目標をたてるために必要な情報を主人公に質問します。質問が多く上がったほうが主人公が新しい切り口で物事を考えられますので、どんどん質問をしましょう。

④他の人が主人公の「目標」を考え、まとめる(3分)
主人公以外の人達が、目標や目標を達成するためのアクションを具体的にまとめます。その時、紙に「私が◯◯(主人公の名前)さんだったら」という枕詞をつけるのを忘れないようにしましょう。目標やアクションは、文章ではなく絵で描いてもOKです。
ちなみにうまく目標が考えつかないのは、主人公を思いすぎている証拠。目標に正解や不正解はないので、大胆に考えてみましょう。

⑤他の人が考えた「目標」を、主人公にプレゼンする(10分)
主人公以外のメンバーが主人公に目標をプレゼンします。その際は必ず「私が◯◯(主人公の名前)さんだったら」という枕詞をつけましょう。

⑥(個々のワークが終わったら)それぞれが目標を考え、行動計画に落とし込む(3分)
主人公は、他者が考えてくれた目標を聞き終わり新しい視点を手に入れたら、忘れないうちに目標を言語化し、紙に書き記します。今すぐはじめること、1カ月後までにはじめることと、半年後までに準備して行動することのの3つをまとめられるとベストです。

開催前に知っておきたいこと

「タニモク」の流れが理解できたところで、自主開催する上で事前に知っておくと良いポイントを三石さんに聞いてみましょう。

▼参加者を集める際の注意点

「質問する」「聞く」「話す」のバランスが良く、かつ多角的な視点を得られるオススメの人数は4人1組ですが、3人1組の実施も可能とのこと。

「ただし5人1組は避けたほうがベター。人が多く、会話に参加しにくいという現象が起こり得ます」(三石さん)

また「自主性が大切なため、希望者を募って実施することが重要」だと言う三石さん。「目標をたてたい」という意思がある人と実施したほうが対話が活発になるので、参加意志を示した人が加われるような建付けにすると良いでしょう。

▼タニモクを実施する会場の選び方

オフラインで「タニモク」を実施する場合、望ましいのは数組がワークショップを行える、少し広めのスペース。

「数組が会することで活気あふれる雰囲気が生まれ、和やかに進行できます。」(三石さん)

ちなみに「タニモク」は、オンラインでの実施も可能。
「オンラインでもオフラインのどちらでも、効果は変わりません」と三石さん。年末の忙しい時期でも、遠方に住むフリーランス仲間とオンラインで実施できるのはありがたいですね。

ただし、開催メリットとデメリットはそれぞれ異なるため、効果以外の部分を考慮して開催方法を選択しましょう。

◯オフライン
開催メリット:関係性をより深めることができる
開催デメリット:開催場所により時間やコストの制限を受けやすい
◯オンライン
開催メリット:場所、時間、費用の制限がない
開催デメリット:関係性を深める機会が比較して乏しい

▼ファシリテーターが気をつけるべきポイント

三石さん曰く、マインドセット以外で気をつけるべきポイントは「時間配分」だそう。

「私の経験上、1人の方の話が長くなってしまうと、他の方の満足度が下がる傾向にあります。逆にバランスよく対話が進むと、『話を受け止めてくれた上で、質問や提案をもらえた』という気持ちから、満足度が高まります。
満足度が高ければ高いほど、意識と行動の変容を促します。結果に結びつけるためにも、時間配分は重要ですのでファシリテーターが時間をコントロールしましょう」(三石さん)

1人の目標を決めるのに最適な時間は25分程度です。しかし参加人数が少なかったり、参加者同士の関係がある程度築けており、現状の説明が不要な場合などは、時間を短縮してもOK。

「ワークショップが終わった後、『もう少し話したいな』と思うくらいのボリュームが最適です」(三石さん)

「タニモク」の効果を高めるためのヒント

せっかく時間を使ってワークショップをするのだから、効果を享受したいもの。三石さんに、手順ごとの効果を最大化するヒントを伺いました。

▼実施手順①「『今の状況』を絵にする」について

「今の状況」を絵にする際は、未来の絵を描かないことが鉄則!

「未来の絵を書くと、すでに自分が持っている目標や未来像を描いてしまうことが多いんです。そうすると、未来を踏まえて他人が目標を考えてしまうので、ワークショップの意義がなくなってしまいます」(三石さん)

他者が未来を想像したほうが大胆なアクションを想起できます。「現在の絵」もしくは「過去からみた現在の自分の絵」を描くようにしましょう。

▼実施手順②「主人公が、絵を使って現状について簡単に説明する」について

三石さんによると「自分のことはついつい説明をしたくなってしまうのですが、話しすぎないことが重要です」とのこと。

「手順②では、新しい視点を手に入れるためにも数多くの質問を受けることを目標にしましょう。他者に質問をもらったほうが、自分だけでは思いが巡らなかったことに考えが思い至るようになります」(三石さん)

あくまで質問を受けることを念頭に置いて、簡潔に説明することを心がけましょう。

▼実施手順③「主人公が質疑応答を受ける」について

絵を前にするとついついそれについての質問をしてしまいますが、この時、絵に書かれていないようなプライベートについての質問をするのも有効だそう。

「仕事上で自分を理想の状態に近づけていくためには、家庭環境もいち要素として考える必要があります。例えば『子供の塾の送り迎えがあるので、毎週◯曜日は残業をしない』など、ワークスタイルにも影響を及ぼす可能性がありますよね。プライベートもキャリアを考える上で切っても切り離せない要素ですので、質問の中に入れ込めると良いでしょう」(三石さん)

▼実施手順④「他の人が主人公の「目標」を考え、紙にメモする」について

手順④で重要なのは、「目標を考える人」のマインドセット。

「ワークに入る前にファシリテーターが音頭を取り、①目標を『決める』のは主人公である、②『主観で』『無責任に』『大胆に』目標を考える、③目標に正解・不正解はないので的を射た提案ばかりしなくてもOK、④ただし、『自分だったらやらないな』という目標は提案しない、という4つのマインドセットを行いましょう」(三石さん)

このマインドセットを丁寧に行うことで、自分では思いもしないような目標を提案してもらえます。

▼実施手順⑤「他の人が考えた目標を、主人公にプレゼンする」について

目標をプレゼンするときは「『私が●●さんだったら、△△って考えるなぁ』『私が●●さんだったら、□□□って行動してみるなぁ』と言うようにしましょう」と三石さん。相手の立場に立って話し、押し付けがましさを排除するのが重要だそう。

「『〇〇(主人公)は、△△すべき』『〇〇(主人公)は、□□□した方がいい』と言われると、押し付けがましさを感じて、選択しにくくなってしまうもの。主人公が内発的に『これをやってみたい』と思わないと意味がないですから、相手の立場に立ったプレゼンを心がけましょう」(三石さん)

また主人公(提案してもらう側)も、目標を否定しないことがポイントだそう。

「せっかく他人が与えてくれた新しい切り口なので、否定をしないようにしましょう。否定をされると相手が萎縮し、自由で斬新な目標を提案しにくくなります。もしそういう場面に遭遇したらファシリテーターが声を掛けると良いでしょう」(三石さん)

▼実施手順⑥「それぞれが目標を考え、行動計画に落とし込む」について

他人に考えてもらった目標を確認したら、「今すぐ・1カ月後まで・半年後までに準備して行動すること」をまとめるのがおすすめです。1つ目標を決めて実行すると、ドミノ倒しのように行動が変わっていく人もいるとか。

「ただし、無理に3つの行動を決める必要はありません。1つでも2つでも構いませんので、心に引っかかったものだけを書き出して、行動してみましょう。もしなにも心に引っかからなくても、その目標や行動はいまの自分には必要なかったということがわかっただけで、収穫があったということです」(三石さん)

また他者への目標宣言も、無理して行わなくてOK。

「目標の宣言には『言ったからにはやらないと』と自分自身にプレッシャーをかける役割があります。
しかし逆に実行や達成をできなかった際に落ち込んでしまうくらいなら、他者に伝えなくてもよいです」(三石さん)

会が盛り上がると、半年後などに「報告会」と称して再会の約束をする人もいるそう。

タニモクは、関係性が深いほど更に的確なものになります。もしグループの方と気が合えば、2回、3回と開催を重ねていくのも良いでしょう」(三石さん)

新たな年に相応しい、新たな角度からの「目標」を

毎年同じような目標を考えてしまうあなた。
「タニモク」で得た新しい角度からの「目標」を携えて、2024年はスタートダッシュを切ってみませんか?

▼タニモク自主開催時のマニュアルはこちら

「タニモク」はオープンソースなので、誰でも資料をダウンロードして自主開催することが可能です。

ライター:市川みさき
アパレルECサイト運営会社にてCSとマーケティングを担当したのち、2022年にライターとして独立。現在は栃木県に在住し、ビジネス系メディアを中心にインタビュー記事を執筆中。
X:https://twitter.com/ickwmsk59
note:https://note.com/ichikawamisaki_3/n/nc44edf02ed02


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