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兼業人材こそイノベーター! 創業76年の化学品商社がフリーランスを活用しまくる理由/トリイ株式会社
フリーランス・パラレルワーカーが参画することで、チーム一丸で大きな成果を上げたプロジェクトにスポットを当て、フリーランスと組織の理想的な関係構築のあり方や共創意義を賞賛する「フリーランスパートナーシップアワード 2024」。本記事は、1次審査を通過したファイナリスト 5 組のうち、トリイ株式会社の事例をご紹介します。
愛知県西尾市にある化学品商社のトリイは、新型コロナで客先への往訪ができなくなったのをきっかけに、兼業人材と新たな顧客アプローチの検討に着手。これまでなかなか手が回らずにいたB to C(生活者向け)商材について、SNSやブログを使ってユーザーに直接働きかける広報に取り組みます。
プロジェクトを通じ、社内にない経験やナレッジとの化学反応に開眼。以降、他の領域でも積極的に、副業・兼業人材の受け入れを行っています。「パラレルワーカーは、当社にとってイノベーターなんです」と断言し、業務未経験者も登用する背景とは。
今回はトリイの鳥居宏臣社長と、兼業プロジェクトにプロボノで参加し、現在はトリイに転職された竹田梨紗さんにお話を伺いました。
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新型コロナで往訪営業ストップ! 兼業プロジェクトで次の一手を模索
――御社はどのような事業を手がけているのですか。
鳥居:トリイは1948年に、染料の販売からスタートした化学品の専門商社です。事業は大きく、化学薬品を扱う「化学エンジニアリング事業」と、排水処理や貯水槽管理などの水処理をトータルでサポートする「環境エンジニアリング事業」、食の安全やおいしさにまつわる「食品エンジニアリング事業」の3つを主軸としています。
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取引の大半はB to B(事業者向け)で、染色業や食品メーカー、化学工業、水処理施設などの公共施設などが主な顧客です。さまざまな化学品や設備を取り揃えていることから、取引先に合わせて分量や配合を調整したり、お客様の設備の使用を検討したりと、オーダーメイドな提案が当社の強みです。
また近年は一般の人に向けて化学をわかりやすく伝えることにも力を入れていて、祖業である染色にまつわる消費者向けの商品開発にも取り組んでいます。
――竹田さんは、今は社員としてトリイに勤務されているのですね。
竹田:2021年にトリイの兼業プロジェクトに参画し、昨年から社員になりました。前職は自動車メーカーで、生産管理の仕事をしていました。並行して絵画の創作活動に励んでいて、今は鳥居社長からの提案もあり、在宅勤務も組み合わせながら働いています。
鳥居:竹田さんはプロボノの形で2年ほど、複数の兼業プロジェクトに参画してくれていました。新しいことに積極的だし仕事もできる。社内にすごくいい作用をもたらしてくれたんですね。それでずっと一緒に働けたらと、お誘いしたのです。当社では竹田さんが社員になって以降も、さまざまなプロジェクトや職種で、副業・兼業人材に入っていただいています。
――どうして兼業人材の登用に力を入れるようになったのですか。
鳥居:直接の契機は2020年の新型コロナショックですね。弊社の事業はB to Bが圧倒的ですから、営業活動も現場に通い、足で稼ぐのが当たり前でした。それが緊急事態宣言によって一変します。客先に赴こうとも、取引先がそれを望んでいないのですから。当時はこれまでの往訪を中心とした、ビジネスモデルそのものが崩れてしまうのではと、不安でいっぱいになりました。
そこで目をつけたのがB to C事業です。会社の持続可能性を視野に入れて、コロナ以前から実験的に商品化に取り組んできていましたが、新規参入のため販路を開拓できていません。それで往訪とは異なるアプローチで、商品の認知を広めたり顧客獲得の機会を設けたりする必要がありました。
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具体的にはSNSによるPRや広報に、もっと力を入れていこうと考えたのです。ここで成功パターンを見出せれば、既存のB to Bの営業活動にも応用できるかもしれないからです。ところがいざInstagramに投稿しようとなっても、どういう画像にすればターゲットにささるのかもわからないし、社内にデザインを勉強したことのある人もいません。私も試しに投稿画像をつくってみたものの、どうもしっくりきません。
またSNSに限らず、商品と生活者の接点を設けるしかけをいろんな切り口で編み出したいとなったときに、自分たちだけで考えても埒が明かない。それなら会社の外に助けを求めようと、NPO法人G-netが運営する「ふるさと兼業」を使って、2020年の10月にプロジェクトの参画者を募ったのが始まりです。
「仕事がある」のは当たり前じゃない 新型コロナを機に何でもやる精神を発揮
――どのようなプロジェクトだったのでしょう。
鳥居:「フラワーパレット」という、切り花の染色剤の流通プロジェクトです。フラワーパレットを溶かした水に淡い色の花を挿して置くと、花が水を吸い上げて数十分で花びらがたちまちカラフルになります。フラワーパレットの濃度や茎の挿し方を工夫することで、虹色の花など幻想的でオリジナリティに溢れた花をつくり出すことができます。
染色剤自体は30年以上前に開発されてB to B向け商材として展開していましたが、あまり注力してきませんでした。それをB to C商材に転換したらどうかと思い立ち、10年ほど前に夏休みの自由研究教材として売り出してみました。するとAmazonからの注文が相次ぐなど、反応もよかったんですね。それで会社が窮地にある今、きちんと取り組めば新たなニーズを掘り起こせるのではと、プロジェクトを立ち上げたのです。
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流通プロジェクトでは、関東在住のデザイナーとライターの方に入ってもらって、フォトコンテストを企画しました。フラワーパレットを使った染め花のアレンジメントの写真を、Instagram上に規定のハッシュタグやフラワーパレットの公式アカウントをメンションして投稿してもらうことで、個性豊かな作品が集まりました。
翌年には地元の輪菊生産組合と、クラウドファンディングを行いました。当社のある西尾市は花きの一大生産地なのですが、コロナショックで生花の流通量が大きく減ってしまっていたのです。中でも葬儀の縮小により以前より需要が7割も減ってしまったキクを、フラワーパレットとのセットで販売する企画を立ち上げました。
このタイミングで竹田さんが参画し、サムネイルの作成に、SNSやブログの運用など、週1日のペースでフラワーパレットの広報を手伝ってもらうようになったのです。
――竹田さんは、なぜプロジェクトに参画しようと思ったのですか。
竹田:以前の会社での仕事も自分なりにやりがいを感じてはいたのですが、コロナ禍になって自分と向き合ったとき、10年後の未来を描けませんでした。緊急事態宣言の最中ですから、気晴らしに友達と会ったり、出かけたりするわけにもいきません。
世の中が休業・廃業を余儀なくされる中、“仕事がある”って当たり前じゃないんだと痛感します。同時に何かの弾みで仕事を失ったとしたら、自分には必要とされるスキルが足りていないかもしれないと、不安に感じたのです。
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そうしたとき、たまたま知人から「ふるさと兼業」を紹介してもらい、会社に勤める以外にも、キャリアを積み上げる方法があるのかと知ったのです。そこでクラウドファンディングのPRプロジェクトに出会いました。
これまで広報やPRの仕事はしたことがなく、初めての挑戦でした。もちろん自分にできるのかな…という不安もあったのですが、行動しなければ変わらないという思いのほうが強かったですね。とりあえず、「何でもやる」精神でここまで来ています。
プロボノ人材の活躍でコンスタントに売上増に成功 採用プロセスに兼業期間を設けるように
――竹田さんの参画によって、どのような変化がありましたか。
鳥居: Instagramの公式SNSにはコンスタントに投稿できるようになりましたし、何より竹田さんがフラワーパレットの持つ世界観に合わせた投稿画像を作成してくれています。フラワーパレットのターゲットにあたる、お花や創作活動が好きな女性を中心に、3年間で300人超、今は1000人を越えるフォロワーを獲得しています。
竹田:商品自体も出荷ピークにあたる夏休み以外の時期にも出るようになり、毎年10~20%ずつ売上を伸ばしている状況です。
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――トリイでは、他にもフリーランス人材の活用に取り組まれています。
鳥居:最近4年間では兼業やプロボノの人材を受け入れるプロジェクトや、大手企業の越境研修プログラムなどを5つほど行ってきました。これまで受け入れたフリーランスやパラレルワーカーは15人ほどになります。昨年からは、「お試し転職プロジェクト」を始めました。
そもそもトリイの扱う化学薬品は、食品のように私たちの暮らしに身近なところから、水処理や魚の養殖まで非常に幅広く使われている一方、日ごろ目にする場面はほとんどありません。そのため採用を行っても入社時点での仕事理解が十分に図られず、ミスマッチにつながっているかもしれないと感じていました。
そこで当社への転職に関心のある方を対象に、兼業やプロボノの形で当社の事業に触れる中でマッチングを図る仕組みをつくりました。
具体的には、毎週オンラインでのミーティングを設定し、化学の基礎や自社のサービスなど私が説明した内容を元に、ブログ原稿を執筆する仕事です。説明した内容だけで執筆するのは難しく、自分で調べながら書き上げる必要があります。
――自分の言葉で説明することを通じ、仕事の理解を深めていくのですね。
鳥居:なかなか骨の折れる業務だと思いますが、主体性を発揮しながら知識をうまく消化させたうえで、自分のやりたい仕事かどうかを検討することができます。
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昨年度のプロジェクトでマッチングした営業職の社員は、11月の入社1週目から客先に往訪し、専門用語もスムーズに使いこなしていました。お客様も「新人さんなのに、すごく詳しいね!」と驚きの様子で、信頼構築にさっそく一役買っていました。
この方法は現場の受け入れや、オンボーディング面でもメリットが多いことから、社員採用のプロセスに、数カ月の兼業期間を導入することにしました。面接だけで採否を決めるのとは違い、参画者と企業が互いにフラットな関係で見極めを行える点も大きいと感じています。会社側も、仕事のおもしろさやワクワク感を参画者にどう伝えていくか、いい意味で緊張感があり、創意工夫が求められます。
「やるよ」ではなく「やるの!」 イノベーターの提案を尊重し自社のリソースを拡張する
――これまでの兼業プロジェクトでは、未経験者の登用も積極的に行っているようですね。
鳥居:兼業人材を求める根底に、「イノベーターとの出会い」を期待しているんですよね。ロジャーズ教授が提唱するイノベーター理論でいえば、市場におけるイノベーターの存在はおよそ2.5%とされます。彼らは感度が高く、新しいものを真っ先に取り入れることができる人たちです。
そして兼業やプロボノをされる方もまた、変化を厭わず、挑戦の気質に長け、積極性を持ち合わせています。社会全体における兼業人材はまだ一部に限られていることを踏まえると、イノベーターに出会える確率は格段に高いと見ています。また実際にプロジェクトを通じていろんな方とお話しすると、本当に優秀な仕事力の高い方が本当に多い。どのプロジェクトも不採用にするには惜しい人ばかりだったのです。
イノベーターのみなさんは私より120%優れた方ばかりですから、プロジェクトでは彼らの突き抜けた部分を生かすことが大事だと考えています。だから基本的には彼らの邪魔をしない、提案してくれたことは全部とは言わずとも8割はやるのが基本です。
もし私たちが「ダメだ」と言ったら、トリイの思考の範疇にとどまってしまうわけです。でも兼業人材が活躍して、これまでにない何かに取り組めるとしたら、自分たちのリソースが拡張されていくことは間違いない。なので、任せた以上は、すべてを受け入れる。これが大切だと考えています。
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――社員から反発を受けることはなかったですか。
鳥居:私自身は家業に入る以前、東京のITメガベンチャーでエンジニアをしていました。業界的に人の流動性が高く、業務委託で入る方も多い環境にいたので、外から人がやって来ることにまったく抵抗がないんですよね。むしろ大歓迎というか。
それに竹田さんが参画したような初期のプロジェクトは、B to C領域ということもあって、社内で携わっている人がそもそもほとんどいなかった。その後のB to B向けのプロジェクトを進めたときは、初期段階で現場から若干の抵抗を感じたのは確かでしたが、そのまま押し切りました。でも進めていくうちに、社員たちからも「やってよかった」という声が聞こえるようになりました。
それ以降、兼業人材に対してポジティブなイメージが全社に定着しましたよね。やっぱりどこかのタイミングでは、「やるよ」ではなく、「やるの!」という、トップの強い意志を示すことが大事なのだと思います。
――竹田さんは参画にあたり、どのような点を意識していましたか。
竹田:鳥居社長は、基本的にNoと言わないんですよね。裏を返せば、こちらは何で価値貢献できるかを常に考え続ける必要がありました。私の場合はコロナショックを機に、Webデザイナーのオンライン講座を受講していたので、そこで学んだことを生かしたいという思いがありました。
実際の業務となると、クライアントが求めているものや、フラワーパレットの魅力を最大限に引き出す要素など、自分で解を見出す必要が出てきます。自分で何をすべきか考えて行動する力が育ったように思います。また限られた時間でアウトプットを出していくのに、時間管理力もつきました。
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後は社長が寛容過ぎて、たまに大事なところが抜け落ちていることがあるんですよね(笑)。当初は社員になるとは思ってもいませんでしたが、参画を通じて風通しのいい組織であることは実感していたので、安心して入社できました。
――最後に、今後の兼業プロジェクトの展望や、ビジョンなどをお聞かせください。
鳥居:直近で言えば、既存事業の営業を変えていきたいですよね。コロナ前と同様に足で稼ぐ営業が主軸になっているので、これをインバウンド型にしたいと目論んでいます。具体的にはブログやメルマガ経由で問い合わせが来るような、デジタルマーケティングの強化です。本格的な着手には、兼業人材の伴走が欠かせないと見ています。
「お試し転職プロジェクト」の終了後の面談では、残念ながら採用の合意に至らない場合もあります。けれども兼業の形で、引き続きトリイと関わりを持ち続ける方もいらっしゃいます。また別のプロジェクトで出会った方々と今もつながっていて、東京近郊に住む兼業人材4,5人と「何か面白いことやろうぜ!」と意気投合し、熊本で近々合宿を組む予定です。化学薬品界隈では、ちょうど熊本県の動きがアツいんです。
兼業人材とのパートナーシップで、いつか当社から業界の常識を揺るがすイノベーションが生まれるんじゃないかと思うと、ワクワクが止まりません!
――兼業人材をイノベーターであると信じ、ポテンシャル発揮につながるコミュニケーションを意識されている鳥居社長。竹田さんのお話からも、一つひとつの出会いを大切にし、挑戦を後押しする雰囲気が伝わってきました。本日はありがとうございました。
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■フリーランスパートナーシップアワードとは
フリーランスパートナーシップアワードは、フリーランス(プロ人材、副業人材など)と企業が良いパートナーシップを築き、チーム一丸となって成果を出したプロジェクトに光を当て、讃えることで、企業がフリーランスをチームに迎え入れることの意義や成果を広く発信するものです。
書類審査による予選を勝ち抜いたファイナリスト5組の中から、Web投票により大賞が選ばれます。また、本選でのプレゼンテーションを踏まえた特別審査員賞も選出されます。
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▽その他のファイナリスト一覧
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・杉浦味淋株式会社
1000人超えのファンの力でコロナ禍を乗りきった! "愛されるみりん"のデジタルマーケ戦略
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松山発・新種のパプリカを全国区へ! 自走する6人のプロボノチーム
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