1月のバランス調整から運営の真の意図を読む【スプラトゥーン3】
※ 今回、私見多めです。
1.はじめに
ひさびさに記事を書いてます。フローズンズンやまです。ご無沙汰しておりました。
先日、1月17日にスプラトゥーン3のバランス調整が発表されましたね。いろいろ強化が入ったり、弱体化されたり、という感じでしたが、みなさんの使ってるブキはイカがでしたでしょうか。ちなみに私の使ってるソイチューバーはノータッチでした。
バランス調整の内容はともかく、今回のバランス調整ではその意図がかなり細かく書かれていて、非常にいいなと思いましたね。スプラトゥーン2では、「意味わかんねぇ弱体化してんな?」みたいな部分も多々あったので、そういった意図を明らかにするのは大事ですし、作り手としての説明責任の重要性を任天堂が意識しているというのは好感が持てます。
さて、その意図の内容ですが、
となっているようです。
まあ、これだけ書いてくれたのである程度は運営側のやりたいことは伝わるのですが、個人的に真意はこういうことだろ、と思うところがあったので、そこについて言及してみることにし、その真意から今後の調整方針を予測してみることにしようと思います。
2.編成事故防止論
運営が最重要視しているものは「編成事故の防止」である。
編成事故というのは、ピーキーなブキ同士が味方同士で重なってしまって、本来は実力のあるプレイヤーなのに負けてしまうことがある、スプラトゥーンあるあるのことです。
スプラトゥーンはめちゃくちゃにブキの種類が豊富なので、キルが得意なブキや塗りが得意なブキなど、様々な特性を持っているブキがありますが、そうなってくると"キルは得意だけど塗りはまったくできないブキ"、"塗りは得意だけどキルはほとんどできないブキ"と、得意不得意が明確だが、同時にやれることが限られている、つまり「硬直的なブキ」が存在しているわけです。
ハイドラントというブキは射程が長く圧倒的なキル速度を持ちますが、その代償として長大なチャージ時間と塗りの弱さ、鈍足という特徴があり、ステージを塗り広げるのには向いていません。このようなブキが味方に2-3枚いるという状況だと、残りブキはある程度軽量かつ塗りが強いブキでないと、かなり動き辛くなります。そういう状況に限って残りの短射程がブラスター(塗りが弱い)とかだともう救いがないのですが、スプラトゥーン2ではこれが頻繁に起こりました。
スプラトゥーン2では「編成を射程で分ける」というアップデートが入ったので、片方のチームには最長射程のリッターがいて、片方のチームは短射程シューターだけ、ということはだいぶ減ったのですが、それでも射程で分けられても、塗り力やキル力のバランスは取れていませんでした。
そして、スプラトゥーン3では同種のブキ同士をブキプールにまとめ、そのブキプールの中でのマッチングをすることにより、塗りとキルのバランスを両チーム同じくらいにしようという試みがされています。
調べてくれた方の根気には脱帽です。
ブキプールはこのようになっているようで、マッチングシステムによりある程度の編成事故を防止しつつ、編成事故が怒ったとしても編成事故同士をマッチングさせて、対戦のバランスを取ったんですね。
この試み自体はある程度評価できると思います。ブキプール内のバランスがイカれてる(ノヴァと洗濯機が同じとこにいるのはどういうことなんじゃ?)ということを除けば、という話ですが……。
ここまでの話の要点は、「対戦のバランスは取れるようにしたが、それでもなお、編成事故は起こり得る」ということです。
さて、今回の調整の話に戻りますが、気になるのはバランス調整の意図に書かれた次の点です。
「スペシャル必要量を減らす調整の一部は、使用率の高いブキに近い射程を持つブキを強化することで、選択肢を増やすことを意図して行いました。」
具体的には、次の調整です。
このうち、着目すべきはスプラシューターと52ガロンの調整です。この2つはさきほどのブキプールでは同じプールの中にいます。そして、運営の言う"同種の使用率の高いブキ"、つまり同じブキプールの競合相手は、ほぼ間違いなく、環境トップのシャープマーカーだと思います。
つまり、シャープマーカーに流れてしまっている大部分のシュータープレイヤーを、今後はスプラシューター、52ガロンに分散したいという意図があるということです。
ここで考えたいのは、スプラシューターと52ガロンの使用率です。
表については引用見つけられなくてすみません。あくまでも参考としてください。ですが、だいたい体感と近い内容ではないかと思います。
この表を見ると、短射程シューターのブキプール上はたしかにシャープマーカーに一極集中しているものの、全体としてはスプラシューターと52ガロンは決して低い使用率ではないんです。これに比べたら、今回なんの調整もなかったクラッシュブラスターとかH3リールガンとかパラシェルターとかソイチューバーの方が圧倒的に使用率は低いんですよね。
なぜ、ブキプールとしてはシャープマーカーにトップの座を奪われているものの、これだけ高い使用率を誇るスプラシューターや52ガロンに強化が入ったのか。そして、最大の疑問である、環境トップであることが明らかすぎるシャープマーカーに弱体化が入らないのか。
結局のところ、答えは一つしかありません。
「短射程シューター種を使うプレイヤーを増やしたいから」です。
◯シューターの優遇の理由
シャープマーカー、52ガロン、スプラシューターに共通する特徴が、「塗りもキルも高水準にこなせて、長射程に対応できるスペシャルを持つ」という点です。簡潔に言えば、「編成に応じて塗りブキにもキルブキにもなれて、射程差を覆せる」なので、これらのブキが編成に1枚いればある程度の編成事故が防止できるんですよね。だから、編成事故という実力に起因しない敗北を極力防止するために、これらのブキを意図的に強くし、人口を増やすことで編成事故を防止していると私は考えます。
マッチングシステムでは解決できない編成事故の問題を、シューター環境にすることで無理やり解決しようとしている、というのが私の予想です。
ここで、一つ参考になるのが、スプラトゥーン2の最終環境です。
スプラトゥーン2の最終環境はシューター環境であると言われていました。主に使われていたのは次の4つのシューターです。
・スプラシューターベッチュー
バランスの取れた塗りとキル、対長射程用スペシャルを持つ。
・NZAP85
機動力と塗り広げの速さ、スペシャルのサポート力が高い。
・52ガロン
高いヘイトを買う力と高火力。
・シャープマーカー
塗りキルどちらもでき、スペシャルの制圧力が高い。
私の印象では、スプラトゥーン2の終盤はこれらのシューターが2枚はいるのが対抗戦の常だったような気がします。逆にこれらのシューターをメタるためのブキもそれなりに編成に組み込まれていたので、メタが回っているという意味ではバランスは良かったのかなとも思っています。
なんとなくの推測でしかありませんが、この4つのシューターに関しては運営側の「使ってほしい」という思いを感じます。なぜなら、前回のバランス調整で真っ先にスペシャルポイントが減されて強化されたのがNZAP85だからです。
先ほどのシャープマーカー、52ガロン、スプラシューターの特徴は「塗りもキルも高水準にこなせて、長射程に対応できるスペシャルを持つ」と書きましたが、スプラトゥーン3ではZAPのスペシャルはエナジースタンドであるから、4つのシューターの中で唯一「長射程への対抗手段がない」シューターになります。また、前作のインクアーマーとは異なり、長射程の一方的な攻撃を耐える性能もなく、なんなら復活ペナルティアップギアで復活短縮を相殺されるなど、4つのシューターの中では極端に長射程に弱い、かなり不遇な扱いでした。
そういうこともあり、真っ先に強化が入ったわけですが、実はZAP自体も当時に使用率が低すぎたかと言えば、そうではありません。(環境が固まってきて今は相当減りましたが)
なので、前回のバランス調整時点では使用率が低すぎるわけではないが強化が入ったことからも、やはり運営のZAPを使って欲しいという思いが伝わってきます。今回のエナジースタンドの強化も(エナジースタンド自体が弱すぎたのも問題ですが)、ZAPを意識した調整かと思います。
明らかな環境トップであるシャープマーカーに弱体化がなかった理由も、「クソ編成だけど、シャプマ一本いればなんとかなる」という状況を作りたいのではないかなーとも思いました。
もう一点、理由があって、先に挙げた四つのシューターは撃ち合いを積極的に絡ませるブキでもあります。同じブキプールでも、わかばシューターやもみじシューターなんかはサブウェポンが主体ですし、このようなメインウェポンのキル性能が低いブキはサブスペに頼りがちですが、このあたりのブキを強化しすぎると、あくまでもシューティングゲームである本作がカジュアルすぎる内容になるのを避ける目的があるのだと思われます。
◯中射程規制論
・メイン性能アップの功罪
本作には射程の概念がありますが、短射程と長射程の中間にあたるブキ、中射程のブキがあります。これらのブキの特徴としては、前線の味方の支援に長けた能力を持っているという点です。短射程シューターよりも射程が長いため、広範囲の味方のカバーキルを受け持つことができ、敵前線の追撃から後衛を守ることにも向いています。具体的には、プライムシューター、デュアルスイーパー、14式竹筒銃などが該当するでしょうか。
上記のような立ち回りが中衛の理想ですが、スプラトゥーン2ではメイン性能アップというギアが実装されたことにより、これらのブキが猛威を奮った時期がありました。特にデュアルスイーパーと竹に関してはそれが顕著で、中射程の距離から短射程シューター並みのキル速度を出すことができました。このメイン性能アップギアの搭載でなにが起こったのかと言うと、短射程シューターの環境からの消滅でした。
さらに、当時はパラシェルター、キャンピングシェルターの、いわるゆシューターメタブキである両者が流行っていたこともあり、この短射程シューターの減少にさらなる拍車をかけました。結果として、パラシェルター、デュアルスイーパー、14式竹筒銃は「三種の神器」と呼ばれ、これらのメタであるラピッドブラスター等の中衛が流行り始めたことで、環境が一気に中射程でどくせんされていくようになったのです。
短射程シューターは扱いやすく、安定した強さがあることや、場面ごとの柔軟性が高く、言うまでもないのですが人気ブキでした。その短射程シューターが、この三種の神器環境では完全に不要となったことで、環境に適合できないプレイヤーは軒並み引退していきました。私の知り合いもこの時期に相当スプラから離れた印象です。
この頃に竹やラピッドブラスターを練習し始めましたが、それまでの私の持ちブキはスプラシューターコラボやホットブラスターカスタムだったので、かなり苦痛な期間が続きましたね。たぶん、一緒遊んでくれるフレンドがいなかったら辞めてたと思います。
というような、トンデモナイ時代があり、そこからいろいろ環境が是正されて、最終的にスプラトゥーン2は前述した4大シューターの時代で終焉を迎えました。特に、52ガロンに強化が入り、前線の主役がデュアルスイーパーから52ガロンに移っていったのが分かりやすい変化でしたね。
スプラトゥーン3のアップデートを見ると、ZAP、52、スシはすぐ上方修正されたものの、中射程のブキはあまり目立った強化はありません。一方で、スクリュースロッシャーはメイン、サブ、スペシャルポイントが修正される等、たしかにサブスペに恵まれた構成をしていたとはいえ、やりすぎなほどにマイナス調整されています。中射程のブキは弱くても強化されることはないですが、悪目立ちすると露骨に調整を受ける可能性が見えてきました。
このような経緯から、任天堂は安定していて人気のブキである短射程を優遇し、中射程のブキが短射程の立ち位置を奪い取ることをしないようにしているのではないかと考えます。
4.まとめに
これまで、運営が最重要視していることは「編成事故の防止」と「中射程の規制」であることを、述べてきました。
この理由はひとえに、「ユーザー離れ」を防ぐためだと思います。(当たり前の話ですが)
やはり、安定した強さ、扱いやすさのあるシューターはそもそも人口が多いですから、シューターを冷遇するような調整があれば人が離れてしまいます。そして、ピーキーなブキを使っている人からしても、編成にシューターがいなければ不快なゲームになりがちです。編成事故が続けば、それもまたユーザー離れに繋がることかと思います。なので、任天堂は今後も短射程シューターを中心に環境を作っていくと思いますし、おそらく中射程ブキが爆発的な強化を受けることは今後はないのではないかと思っています。
こう考えると、かなり保守的な姿勢が伺えますが、スプラトゥーンももう3作目。ここまで獲得したユーザーを簡単には手放したくないという考えその根底にあるわけです。運営側の考えも分からなくありません。
しかしながら、では短射程シューターばかりのゲームが面白いか、と言われればそうではないというのも事実です。様々な個性のブキが坩堝になっているのがスプラトゥーンの最大の魅力ですし、ブキの特性を理解して、自分の得意なことをしつつ、相手の苦手なところを攻めるのが対戦ゲームの醍醐味というものです。みんなグーしか出さないジャンケンで殴り合っているような状況は極力避けたいものです。
ぜひ、任天堂にはマンネリした環境にカンフル剤を打ち込む勇気を見せてほしいなとは思います。それがバカみたいな調整でも、ゲームそのものが魅力的であればユーザーは残り続けると思います。
最後に。スプラトゥーン1は革新的なゲーム性で少ないWiiUのプレイ人口を相当増やしました。その伝えきれなかった魅力をスプラトゥーン2で広く頒布し、1では叶わなかった対戦ゲームとしてEスポーツを意識した調整をし続けました。スプラトゥーン3は2で獲得したユーザーを繋ぎ止め、ノウハウを活かして発売当初から相当高いゲームバランスを見せてくれています。私は2で散々雑魚と言われたソイチューバーを趣味で使ってましたが、スプラ3でトーピードとマルチミサイルが与えられたことでバンカラマッチに持っていくぐらいの余裕が生まれました。弱いブキをある程度救済しているのは、やはりこれまでの積み上げの結果です。
しかし、永遠にバランスの良い環境は適正かとは思いますが、果たして新作ゲームとしては正しい
のでしょうか。安定とは停滞することと同じです。私は3ヶ月のシーズン制の中で、淀んだ川にいる魚のような気持ちを味わっています。見慣れたブキしかいないからというのもそうですが、「今月こそソイチューバー強化!(素振り)」みたいな気持ちを抱く回数が減ってるからです笑
情報化が加速する現代社会では、重大な出来事もすぐ過去のものになります。Twitterで話題になったことは次の日には誰も覚えていなく、日常で思い返すこともありません。更新されないYouTuberは忘却の彼方へ追いやられ、いつか再生されなくなるように、現代のユーザーは常に新しいものを待ち望み、更新と変化を楽しみに生きています。それが良いことか悪いことかはさておき、最新のゲームにはそれが必要です。
だから、ここらで一つ、バカをやってみてはいかがでしょうかと私は思います。もし、バカすぎる調整であれば、すぐ修正すればいいことです。変なブキが1ヶ月天下を取っていることぐらい、正直気にしません。大事なことはアップデートの頻度だと思います。「あのブキ壊れたけど、また来月にはいなくなってるだろ」という希望を抱かせることの方が嬉しいわけです。
今のシューター環境は、最終環境を常に見据えているような気がして、少し勿体無いなと感じます。本当に最後でいいんですよね、全体がフラットになるのは。その間は嵐でいいんです。運営は我々ユーザーに狂嵐の海の中を泳がせるくらいの変化をくれる方が、むしろ初期としては好ましいのではないかと思います。
スプラトゥーン1が発売されたとき、最初に流行ったブキはローラーと金モデラーでした。クイックボムは爆風50ダメ近くを4連投できたし、スーパーショットは発動後すぐ撃てて当たり判定クソガバだったし、ダイオウイカは対処の手段がありませんでした。今思えばバカゲーの極みという感じですが、そこから考えれば今の環境は相当洗練されています。なら、ちょっとくらいバカをやっても甲子園前にナーフすればいいだけのことです。
だから私は運営には自信を持って「やらかした」調整をしてほしいですね。大丈夫です、だって我々はこれまでもそういう杜撰な調整に文句を言いながら、イカれたスプラトゥーンを愛してきたんですから。
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