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【闇の戦場】自律型致死兵器システム【コラム】

こないだの「シビルウォー」のレビュー記事でも書きましたが、アレは現代戦は全く描かれていない謎の寓話のような映画であった。個人的には現実と空想が逆転した感じがしてショッキングである。

ブラッドランド

ロシア及びウクライナの総力戦は延べ2年半に及んでいる。ロシアとドイツに挟まれた地域は、イェール大学教授ティモシー・スナイダーにより流血地帯(bloodland)として世に知られるようになった。かつてソ連とナチドイツの権力がぶつかり合い、膨大な人々が犠牲になったからだ。

図らずとも今この土地で、ドイツ主体のEUとロシア連邦がぶつかり合い、かつての惨劇が繰り返されている。因縁の土地だ。正しくブラッドランドである。

膨大な戦死者

ウクライナはロシア主敵の代理者として、常にその矢面に立たされてきた。今や青年男子のほとんどは動員され、国内で若い男の姿を見ることは少なくなったという。それどころか、30〜50代のいわゆる軍務に適さない年齢の男性まで動員され、後方勤務ではなく最前線で銃を握らされ地雷を踏まないか毎日怯えている。

あり得ないことだ。軍隊では30以上は爺さんだ。将校や将軍でもない限り、普通は前線に立つことはない。この事実から見てもウクライナがもはや末期的な戦況でぎりぎり持ち堪えているのだとわかる。

ロシア国内も似た状況だ。噂レベルではあるが、ロシア国防省は国内の刑務所を開け放ち、凶悪犯を徴兵して銃を握らせている。

それだけではない。
ロシア連邦の小共和国の独裁的な私兵集団が前線に投入されたのは戦争のごくごく初期段階でのことだった。最近では北朝鮮軍の将校が前線で戦死したとの報道があった。既に朝鮮人民軍までもがロシア連邦の同盟軍として轡を並べている。イランは無人機や弾薬を提供。ロシアは西側から見ると孤立しているのだが、案外に同盟国が多い。プーチンはこの日のために圧倒的な力の哲学で周辺国を飼い慣らしていたのだ。

とはいえ、この戦いに人民解放軍(中国共産党の私兵集団)が加わる可能性は低い。人民解放軍はいまや台湾「解放」を真剣に検討しているからだ。インドとも国境紛争を起こしたばかり。そして何より人民解放軍の1番の仕事は15億に及ぶ自国民を暴力と銃口で黙らせることだ。ロシアに手を貸す余裕はない。

ウクライナもロシアも長引く戦争で人手が足りない。とにかく兵隊の数が足りない。特に空軍パイロットは一人前に要請するのに何年もかかる。何年もかけて育てた逸材がたった一度の戦闘で撃墜されて死亡するのはいつの時代でも悲劇である。そこで無人機が開発されると早速導入された。

無人航空機

その無人機は、最初はドローンなんて名前でスネ夫が空き地で飛ばしてるラジコンと大同小異のシロモノだったが、今や遠距離を飛び荷物を配達したり、カメラを搭載して市民を監視したり、警察が暴徒鎮圧のために実戦投入するまでになった。 

戦争に使われない理由はない。無人機は正しく「無人の神風特攻隊」だ。データ収集や偵察、ジャミングなどはかわいいものでいまや攻撃機として活躍している。

無人機の攻撃機としての運用は、アメリカの対テロ戦争によって飛躍的に技術が向上した。アメリカ人は中東の訳わかんないテロ組織との戦いなどで死にたくなかったのだろう。無人のステルス攻撃機を地上の管制センターから遠隔操作して爆弾やミサイルを落とす戦い方が常態化したのだ。

中国軍はこれを見て衝撃を受け、自らも開発を強化。一方日本の自衛隊は不必要と考え何もしなかった。この差はのちのち大きく出ることになる。

自爆突入型無人攻撃機

そして、ロシア・ウクライナ戦争ではアメリカの自爆突入型無人攻撃機、別名として徘徊型兵器とも呼ばれるものが大活躍している。
徘徊型兵器は1994年にイスラエル軍が「ハーピー」を実戦投入し、今はアメリカの「スイッチブレード」と呼ばれるタイプが主流だ。これは標的に向かって自ら飛んで行き、搭載した爆薬もろとも自爆攻撃を行うものである。これは離陸した時には標的がまだ見つかっていないこともあるが、標的が見つかった場合、地上管制センターからの指示によって自爆突入を行う。正に「無人の神風」だ。

ついに戦争はここまで来てしまったのだ。そして更なる絶望がこのブラッドランドに惨劇をもたらそうとしている。それが自律型致死兵器システム(LAWS)の誕生である。

自律型致死兵器システム(LAWS)

LAWSはこれまでの無人機と異なり、人間の意志を介在することなく殺傷する対象をAIが自ら判断して自ら攻撃することができる。正しく「ターミネーター」である。殺人ロボットとも呼ばれている。このような兵器が既に開発されている。実戦投入は間近、或いは既に為されていると推測されている。2020年のリビア内戦で既に実戦投入された疑惑があるのだ。

ロシアとウクライナの絶滅戦争はこの惑星のブラックホールと化しており、正確な情報はほとんど入ってきていない。もはや無人機は縦横無尽に空を飛び回っており、それが有人の管制センターの指揮下にあるのかAIによる自律行動なのかは撃たれる人間には最期までわからない。
LAWSに関しては大急ぎで国際的なルール作りが為されようとしているが、もはや実戦投入されるのを止めることはできない。間違いなく、既に実戦投入されていると見るべきだ。(実際に報告も多数上がっている)

自律型致死兵器システムは、これまでは飛行機一辺倒だった業界の慣わしのようなものも変えた。地上を歩行して戦うロボットも登場している。

インターネットでは犬のように4足歩行し、機関銃を装備したロボットの映像を見ることができる。これもAIがあらゆる妨害電波など知らん顔で、自ら撮影した映像などから自分で考えて判断し、対象を何の情もなく殺すことができるのだ。自動車が人体を感知して衝突を回避するのとは正反対だが、技術の核心はほとんど同じ。「回避」を「抹殺」に切り替えるだけである。技術的にはとっくに実用段階なのだ。

このLAWSは日本政府も反対を表明し、開発しないと言っている。一方でアメリカ、ロシア、ウクライナだけでなく中国や韓国も開発を急いでいるという。

悲劇が最高潮に達するのは、AI兵器と戦って血肉を持った人間が死ぬことである。かつて旧日本軍の兵隊はその勇猛さで知られたが、大陸の戦場で地雷が埋設されているとわかると一歩も動けなくなった。彼らは名誉ある死を望んでおり、無人の荒野で地雷を踏んで、誰にも看取られずに惨めに死ぬことは名誉とは程遠く、遺族年金が出るのかも不明確であったので嫌がった。(当たり前だけど)

八路軍は日本兵のこの性質をよく理解し、地雷を最後まで頼りにしていたとされる。

いまや地雷は自ら動き回って対象を抹殺する恐るべき兵器へと進化した。日本はAI兵器が非人道的だからと開発を渋っているが愚の骨頂だ。
悪夢の如き少子高齢化により、日本こそAI兵器を必要としているのだ。人間がAIを相手に命を散らすことはあってはならない。AIの相手はAIにさせるべきである。

人民解放軍の台湾侵攻は秒読み段階だ。日本も必ず巻き込まれる。中国はAI兵器をフル活用するだろう。それに自らの体を張るのはあまりに愚かだ。

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