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【温もり】

今日は大晦日。
火葬場の外に出ると既に夕暮れ時になっていた。

葬儀場に戻るバスへ向かう最中、僕の腕の中に納まった父はまだ温かかった。白布で包まれた箱の底から伝わる温もり、病床で最後に触れた父の肌の温もり。

その感覚が様々な記憶を呼び覚ます。
今日は散々泣いて、泣き疲れているのに…まだまだ涙が溢れてくる。

お父さん、これはどうしちゃったんだろうね。
今日は朝から涙が止まらないや。

こうなることはもちろん…覚悟はしてたし、
自分が喪主になり、見送る事など想定をしていた。
でもね、やっぱり無理だね。
そんな事を考えても涙は抑えられない。寂しさは止まらない。

バスは葬儀場へ行きと違う道で走り出した。
窓から見上げた空は、夜を迎える青色と朱色の雲の
コントラストが明日の準備をしている。

明日は正月か…
お父さん、1月9日に本葬を行うから。
少し間があくけど、ごめんね。
でも喪主って…悪くないね。今日不思議とそう思ったよ。

この経験を通じてまた一つ色々な事が見えた気がする。

ありがとう、お父さん。
25年前。貴方の大切な娘さんと結婚させてもらい、
養子にして頂き、大事にして頂きいて。

本当に感謝してます。
ありがとう。
そして83年間、お疲れ様でした。
そちらに自分が行ったら、また一緒にお酒を飲みましょうね。

※写真は愛知県豊田市の古瀬間火葬場
 あまり好きな場所ではないけれど‥ロビーから見える庭が美しい。

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