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GⅡオールカマー

序文:君は無邪気な鉄の女王

競馬の寄稿文において度々目にする言葉に「無事之名馬」がある。これは読んで字のごとく、競走馬を指して「能力が多少劣っていても、怪我なく無事に走り続ける馬は名馬である」という考え方を表した格言である。
この格言は昭和の作家であり、馬主としても活動していた菊池寛によるものとして有名だが、実際は時事新報社(福沢諭吉創設の戦前5大新聞)の岡田浩一郎によるものだった。岡田氏はこの造語を臨済宗の語録の中にある『臨済録』に求めており、その中の「無事之貴人(ぶじこれきにん)」から着想を得たとしている。
1941年(昭和16年)『優駿』6月号へ菊池寛が寄せた随筆のタイトルがこの「無事之名馬」である。自身の馬主としての経験を綴ったうえで、以下のように書き連ねている。

「樂しみを覺える割合ひに較べれば、心配や憂鬱を味はふ時の方が多い。馬を持つてゐることの樂しみが二、三割だとすれば、心配や憂鬱の率は、まづ七、八割にも及ぶであらう。それも、大部分は馬の故障から来るのだ、(中略)馬主にとつては、少しぐらゐ素質の秀でてゐるといふことよりも、常に無事であつてくれることが望ましい。『無事之名馬』の所以である」

この考えは馬主のみならず多くの競馬関係者の共感を呼び、以後「無事之名馬」は頑健に走る馬を賞賛する言葉として使用されている。
大きなレースに出走するのも、賞金を稼ぎ積み重ねていくのも、そして引退後にその血を受け継がせていくのも、全ては無事でいてくれればこそ。競走馬とは、先ず以って無事でなければならない。この漢字5文字の羅列には、「怪我無く健康でいて欲しい」という馬主の気持ちが普く込められているような、そんな言葉である。

さて翻って現代。数々の名馬が名勝負を繰り広げていた平成の世に、頑健で故障しらず、まさに「無事之名馬」を地でいく一頭の牝馬がいた。

イクノディクタスは92年オールカマー制覇。
通算51戦。競馬ファンから”鉄の女”の愛称で親しまれた。

イクノディクタスは1987年、北海道は浦川の牧場で産まれた。馬主は勝野憲明という人物で、イクノディクタスと共に80年代後半から90年代前半に活躍した人物だった。当時イクノの他には”ダンディ”の冠名を持つ馬を多く所有していたが、03年を最後に馬主としての活動を退いている。
イクノディクタスは、1988年夏の2歳馬セリ市にて930万円で購入された。彼女の父はフランスのディクタスという馬で、71年に母国のGⅠジャック・ル・マロワ賞を勝利、72年引退後は種牡馬として活躍していた。80年に日本の社台グループに購入されると、81年に社台スタリオンステーションにて繋養。スクラムダイナ、サッカーボーイといったGⅠ馬を輩出していた。
母ダイナランディングはJRA1勝のみで終った牝馬だったが、その父はノーザンテースト。かのノーザンダンサーの実子で、75年に同じく日本の社台グループが輸入しており、日本ダービーを制したダイナガリバーはじめ、数々の名馬を輩出してきた。ノーザンテーストはその後82年~93年までの11年間、JRAリーディングサイアーに君臨し続けた。
間違いなく良血と言える血統構成だったが、当時は「天馬」トウショウボーイや、鳴り物入りで輸入されたクリスタルパレスが種牡馬のトレンドだったため、比較的安価で購入することが出来たのだろう。後々の成績を加味しなくても、イクノディクタスにつけられた980万という値札は破格だったと思う。

そんなわけで特段注目されていなかったイクノディクタスだが、その評価はデビュー戦を経て一変することとなる。89年夏、小倉競馬場の新馬戦。後の重賞馬ロングアートを破り勝利を飾ると、2戦目のフェニックス賞ではクラシック候補として名高いハギノハイタッチらを下し、連勝を飾ったのだ。この活躍によりイクノディクタスの評価は一気に高まり、クラシックの有力候補として数えられるようになった。
しかしここから、イクノディクタスは大きなスランプを味わうことになる。50戦以上に及ぶ彼女の長く遠い旅路は、まだ始まったばかりだった。
イクノディクタスの同期は、牝馬だけに限定しても多くの才女を輩出した特別な世代だった。桜花賞を勝つアグネスフローラを筆頭に、エイシンサニー、キョウエイタップ、「華麗なる一族」ダイイチルビー。皆一様に冠名を持ち、その出自の宿命を背負った牝馬たちだった。
イクノディクタスの管理は栗東の福島信晴調教師が務めていた。調教師としての彼を語る上で外せない馬が一頭いる。ミスタートウジンという馬である。イクノの1年前88年にデビューすると、2000年までの12年間現役で走り続けた。数えること99戦、JRAの史上最高齢記録である15歳まで現役だった。
福島には確固たる信念があった。それは「競走馬として生まれた限り、走ることこそが幸福なのだ」という考え方である。この理念には当時でも反発を抱く者が少なくなかった。未来のある馬へ限られた出走枠を譲るべき、衰えた馬に鞭を打つなど可哀そうだ、と様々な批判が寄せられた。それでも福島は己の信念を曲げることはなかった。レースに出られるということは、その馬が元気で丈夫な証明である。故に馬もまた幸せに暮らせるのである。実際、福島は自分が管理した馬に決して無理を強いらなかった。ミスタートウジンもイクノディクタスも、疲労の蓄積が見えればすぐにリフレッシュ放牧などの休養を与え、休ませるときはしっかり休ませた。一方で重賞の連闘など、使い込むときは徹底して走らせた。
その馬に見合った走らせるべきレースで走らせる。走らせるレースがなければ休ませる。そしてその繰り返しに耐えうるべく、頑健な馬体に仕上げる。シンプルだが迷いのない、調教師然とした考え方だった。

イクノディクタス3戦目にして重賞初挑戦となった小倉3歳Sでは、重馬場に脚を取られ思うように力を発揮できないまま9着に敗れた。ここでリズムを乱したのか、以後の3戦全て敗退し年内を終えた。翌年、GⅡ4歳牝馬特別を始動戦とするも11着に敗れ、続く桜花賞も全くいいところがなく11着敗退。その後もオークスでアグネスフローラの後塵を拝し9着と、完全にスランプに陥ってしまった。
この頃、陣営は主戦を務めていた西浦勝一、仲舘英二を降ろし村本善之に乗り替りを指名した。この時デビュー16年目を迎えていた村本は、これまでにも80年ニチドウタローで天皇賞春、86年スズカコバンで宝塚記念と、既にGⅠ勝ちの実績を持った名手だった。この実直で生真面目な騎手と共に、イクノディクタスは力をつけていくこととなる。
村本を背にしてからの3戦、サファイヤSで3着、ローズSで2着と堅実な結果を残すことが出来た。続くGⅠエリザベス女王杯ではキョウエイタップの4着と、GⅠ馬には及ばないまでも、その力が決して通用しないわけではないことを証明した。
結局この年は1勝も挙げることはなかったが、それでも周囲の評価とは真逆に陣営は確かな成長を感じていた。
年明け2月に2戦、GⅢとOP戦を7着4着で終えると3戦目のマイラーズカップで3着。またしても勝ちきれなかったが、このレースで鞍上の村本は手応えを感じると、次走のコーラルSで久しぶりの勝利を挙げた。重賞ではなくOP特別だったが、相手にはデイリー杯3歳S勝ちのヤマニングローバルら、強豪揃いの一戦だった。次走の京王杯SCは道中の不利もあり11着に敗れたが、続く京阪杯では不得手とする稍重の馬場、さらにはスタートの出遅れがあったにもかかわらず、直線で差し切り勝ち。この重賞初勝利には村本や福島だけでなく、ファンや関係者も彼女の実力を認めざるを得なかった。これ以降競馬ファンにとってイクノの存在は、混合重賞に頻繁に顔を出しては好走する、お馴染みの存在となっていった。

また、この頃からイクノの鞍上は村本に完全に固定され、イクノディクタスと言えば村本と認知されるようになっていた。
村本は少々武骨者のきらいがあったが、実際は生真面目で一本気な性格の男だった。強面の外見も相まって当時の若手騎手たちからは少し敬遠されていたが、それでも「いぶし銀」と称されるその走りに魅了されるファンは多かった。ここ一番での勝負強さや、なぜか最終レースでよく勝鞍を上がることから「最終の村本」などとも言われていた。
村本はフェアプレーを第一の心情に掲げる騎手だった。たとえ勝負事であってもまずは安全第一。「人の進路を押しのけてまで乗りたくない」が彼の口癖だった。
村本にはかつて一頭のお手馬がいた。メジロデュレンという馬で、デビューから引退まで一貫して村本が主戦を務めていた。
その冠名が示す通りメジロ牧場出身で、あのメジロマックイーンの半兄だった。デビュー当時はマックイーンを凌駕するほどの人気と期待を背負っていた。皐月賞・ダービーと出走は叶わなかったが、4歳秋にそのスタミナの才能が開花。6人気からの逆転で菊花賞を制覇した。
メジロデュレンのGⅠ2勝目となった87年有馬記念、この時期は不調が続き10番人気と支持されていなかった。レースでは上位人気の一角、メリーナイスがスタートと同時に躓いて落馬。さらに同じく人気のサクラスターオーが競争中に故障を発し、波乱ムードとなった。デュレンはスターオーが後退したことによって生まれたスペースを利用し、好位から直線に進出。結果として勝利することができた。大波乱の幕引きに中山は湧いたが、故障に泣いた2頭を思い、村本が表彰の時に笑顔を浮かべることはなかった。
翌年の有馬記念も村本はメジロデュレンとのコンビで出走した。
この昭和最後となった有馬記念は、芦毛馬2頭によるデッド―ヒート、オグリキャップとタマモクロスの壮絶な叩き合いにより歴史に残る名勝負となった。
最終の直線、前を行く2頭を捉えようと菊花賞馬スーパークリークがスパートをかけた。鞍上は「天才」と呼ばれていた武豊だった。芦毛2頭には及ばなかったものの3着に入線したスーパークリークだったが、レース後に審議のランプが点灯。直線時の斜行によりメジロデュレンを妨害したとして、レース後失格処分を受けた。
このクリークの走りに激昂したのが村本だった。
クリークの失格を受け、メジロデュレンの最終的な順位は5着。優勝はなくとも、不利がなければもっと上位を目指せたかもしれない。だがレースの勝敗に怒ったわけではなかった。勝利を渇望しすぎるあまり、安全性を欠いた若き騎手の走りに怒りを覚えたのだった。
レース後、村本は武を怒鳴りつけた。「天才」と称される逸材が相手でも関係なかった。むしろこの若者の将来を真剣に思えばこそ、心を鬼にしなければならない。
一方、日本競馬史上最高の名声を手に入れることになる、この若き天才にも譲れないプライドがあったのだろう。武は反省の弁を口にしつつも「勝つためには仕方がなかった」と己の姿勢を貫いていた。

村本は周囲からどう思われようと、先ず安全を第一に考えた騎乗を心掛け、決して馬に無理をさせなかった。イクノディクタスの騎乗にもその姿勢は現れた。狭い直線や馬群を割って進出することはなく、もし出遅れれば直線は大外からその末脚に賭けた。馬券を握るものからすれば、歯痒く感じられるような場面も多々あったはずだ。だが村本のこの騎乗スタイルが、過酷なローテを強いられたイクノディクタスの走りに合ったのだろう。二人は騎乗するごとに絆を深め、少しずつ勝利を積み重ねていくようになった。
92年6歳で本格化を迎えたイクノディクタスだったが、ここまで大きな怪我もなく、この年には3つのGⅢを含む4勝を挙げる活躍を見せた。9月にはオールカマー(当時はGⅢ)を制すると、その後毎日王冠2着を挟みGⅠ戦線へと臨んだ。天皇賞秋、マイルCS、ジャパンC、そして有馬記念と、すべて掲示板外に終わったが、綺羅星の如く輝くGⅠ馬たちを相手に全4走を走り抜いた。あのオグリキャップを彷彿とさせる、現代では考えられない常道外のローテーションである。
翌年7歳を迎えても、イクノディクタスは元気に走っていた。春の天皇賞こそ11着に敗れたが、その後の安田記念ではヤマニンゼファーの2着に奮戦。14人気から6万円を超える馬連馬券を演出した。この激走ぶりには陣営も鞍上の村本も流石に驚いたようで、レース後には「出走させてみるものですね」とコメントを残していた。

この馬はまだまだ走れる。そう確信した村本と陣営は、出走叶ったGⅠ宝塚記念へ自信をもって臨んでいった。
レース当日、出走直前に声をかける者があった。圧倒的1人気を誇るメジロマックイーンとその鞍上・武豊だった。このコンビとは3度目の対戦となる。
世間はこの若者のことを「天才」と形容するが、村本から言わせればこの男は天才ではなく「変人」だった。俺から怒鳴りつけられて避けるようになった若手はごまんといたが、変わらず平然と声をかけてくる奴はこいつくらいなもんだ。
微笑みまじりに武は言った。
「いつも元気ですね」
俺のことを揶揄しているのかと思ったが、彼の視線は少し下に向けられていた。馬へ向けて言っているのだとすぐに気づいた。
「そうだな」
確かにいつも元気な相棒だった。過酷なローテーションにも嫌がる素振り一つみせない。いつも精一杯走ってくれている。
「マックイーンは、どうもその仔が好きみたいなんですよね」
まるで馬の気持ちが分かっているかのような口ぶりに、村本はぽかんと口を開けた。GⅠレース直前に言うことだろうか。本当に変わった男だ。

各馬がゲートに入っていく。村本とイクノも続いた。後輩に言われた一言が胸の内で響いていた。
いつも元気ですね、か。本当にそうだ。怪我も病気も関係ない、いつも元気に走ってくれている。ここまでこの馬と何回走ったかすら覚えていない。長くて遠い道のりだった。
出走直前に感傷的になるのは珍しいことだったが、ただなんとなく、いつもは口にしないような言葉でこの仔を労ってやりたくなった。

「元気でいてくれてありがとう。
 ここまで来たら、一度くらいGⅠ勝ちたいよな」

ゲートが開いた。各馬一斉に飛び出していく。内枠2番を引いたイクノディクタスだったが、二の脚の速い馬ではない。荒れた内馬場を避けるため、敢えて出足を鈍らせ最後方から外枠を走る策をとった。
馬場が荒れている。開催最終週で内は酷い状況だ、前方から蹴りだされたターフの破片が襲ってきた。先頭までは良く見えないが、メジロパーマーがペースを作るだろう。マックイーンは恐らく先行の位置取り、どう考えてもイクノディクタスにとっては不利な展開になりそうだった。道中じっと息をひそめると、瞬く間に最終直線を迎えた。荒れた馬場を避け大外から一気にスパートをかける。イクノは前走の善戦があっても、8人気と実力をフロック視されていた。だが村本には分かっていた。この馬はまだ調子を上げている。夏が得意な「鉄の女」はここから本領を発揮するのだ。
前にいた牡馬たちを一気に抜き去った。マックイーンと武の背中が見えた。ギリギリ届かないか、内ラチ沿いで粘るオースミロッチ、こいつは交わせるな。それでも最後まで諦めたくはない。村本は懸命に追ったが、惜しくも届かなかった。
結果は、日本最強のステイヤーに1馬身半差に迫る2着。2戦連続のGⅠ2着だった。ゴール板前では紙くずになった馬券が派手に舞っていたが、観客はこの牝馬と鞍上へ惜しみのない拍手を送った。
デビューから46戦目、こつこつと積み上げてきた賞金額はこの瞬間に5億円を突破。牝馬としてはJRA史上初の快挙だった。
レース後、村本は晴れやかな気持ちでいっぱいだった。後輩の武に「おめでとう」と言葉を送った。
この感情はどこから湧いてくるのだろう。予想以上の結果を手にしたから?最強のステイヤーにあと少しまで迫ったから?
どちらでもなかった。ただ今日も無事に走り抜けたことが、村本は何よりも嬉しかった。

その後イクノディクタスは2週間後に行われたOP特別、愛知杯へ出走。圧倒的1人気に応え優勝を飾ったが、結果としてこれが彼女にとって最後の勝利となった。93年11月の富士S8着を以ってその長い旅路を終えることになった。51戦9勝。獲得賞金5億3112万4000円。GⅠどころかGⅡも未勝利のまま、賞金女王となったことはやはり快挙と言えるだろう。この記録を塗り替えるのは、2年後の「女帝」エアグルーヴ登場まで待たされることになる。
今でこそ牝馬が、牡馬たちに囲まれながら結果を残すことは珍しくない。ただ牝馬不遇の当時にあって一度も大きな故障をすることなく戦い抜いたその様は、まさに「鉄の女」であり「無事是名馬」であることに異論を挟む余地はないはずだ。
引退後は北海道の五丸農場で繁殖牝馬となった。最初の配合相手に選ばれたのは、武豊が「恋をしている」と言っていたメジロマックイーンだった。宝塚記念の1着と2着、ファンも大いに祝福した。生まれた牝馬はキソジクイーンと名付けられ、デビュー時は武が騎乗するなどメディアの注目も集めたが、残念ながら11戦して未勝利に終わった。その後も何頭か競走馬を生んだが、自らが残した結果ほどの成果を残す馬は現れなかった。
繁殖を引退後は功労馬として同牧場で余生を過ごすこととなった。現役時代同様に元気で故障のない老後を過ごしていたが、2019年に体調を崩すと、その後老衰により32歳でこの世を去った。

「無事是名馬」の語源となった「無事是貴人」。これは「自然体の内に悟りを啓く者が高貴である」という意味の禅語であるが、現代風に言い換えれば「どんな境遇にあっても、あたりまえのようにこなしていける人こそが貴ぶべき人である」として解釈が出来る。そしてこの言葉にはもう一つの意味が隠されている。
禅語とは本来、自身の内側に向けて発せられる言葉。従って「無事是貴人」とは、「自分自身の可能性に対する信頼」を説いた言葉であるといえる。
生まれながらにして走る運命(さだめ)を背負って生まれてきた競走馬たち。ややもすると我々人間は彼らを「走らせている」と思い込みがちだ。
気をつけなければならない。彼らは自らの運命に沿って、あくまでも自分の意思で走り抜いているのだ。イクノディクタス、長い旅路を終えた彼女の生涯を振り返れば、己の可能性を信じ「鉄の意思」を持って駆け抜けた、彼女自身の物語がそこにあった。鞍上も、調教師も、我々競馬ファンも皆、一頭一頭の馬が作り出す、極上のドラマを享受させてもらっている身分に過ぎないのかもしれない。

ひとりひとりの人間に物語が存在するように、
馬たちにもまたそれぞれの物語が存在する。
そんなことに気づかせてくれた、
無邪気に駆け抜けた「鉄の女王」にひとこと。

”元気でいてくれてありがとう”

「GⅡオールカマー、まもなく出走です。」

全51戦、一度も故障なく走り抜けた「鉄の女」。
引退後も繋養先には多くのファンが訪れていた。
2019年2月に老衰で死去…R.I.P

はじめに~オールカマー展望~


お疲れ様です。夏競馬も終わり、そろそろ1か月が経とうというのになかなか(競馬的な意味で)夏が終わりません。当たらないですね笑
セントライト記念から1週でnote投稿となりました。まあまあ忙しいですがまずは公約果たせて何よりです。上位人気同士の決着となりましたが馬券を的中(馬連1点)させることが出来たのは嬉しかったです。1・2人気ですけどね…それまあれはご愛嬌ということで(^_^;)
そして前回のnoteとコラムもご好評をいただきました。ありがとうございます。
物語を読んで泣いた、というご意見も頂戴しました…。光栄すぎる貴重な感想。期待に応えるべく今後も鋭意制作して参りたいと思います!

という訳で今回はオールカマー優勝馬から一頭、イクノディクタスの物語をしたためてみました。今回村本騎手の話を盛り込みたくて、いろいろ情報収集したのですが…X上でお話を聞かせてくれた
@fwidhion さん
@aya_of_king さん
@nPjVgDqh8Op5U05 さんには
心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
無事是名馬。競走馬には勝負けよりもまずは無事でいてもらいたい…。
いつもそんな風に思っています。
さてここからは週末に控えるオールカマーの予想を、真面目に丁寧にお届けしたいと思います。どうか最後までお付き合いください。

中山、芝2200mだってよ

3歳クラシック戦線、セントライト記念に続き秋古馬重賞オールカマーも同じくして中山2200mで激戦繰り広げられます。コースの特徴は前週と同じで、なかなかトリッキー。機動力、スタミナ&パワー、そして末脚の切れ味と総合力を求められるものになっています。セントライト記念では内をロスなく回ったアーバンシックが1着、後方待機から道中捲り気味にポジションを上げてきたコスモキュランダが2着、両馬ともに鞍上の手綱捌きが光るレースとなりましが、今週は果たして…。
過去10年のデータを照らすと、頭候補は5番人気内で堅そうですが、相手以下は穴馬の激走も十分にあり得るレース。秋の夜長にじっくりと短穴、大穴を選びたいですね。

昨年のレースを振り返る

勝ち馬のローシャムパークは函館記念1着。ルメール騎手鞍上で好位につけると直線で鋭く抜け出し先頭を奪取、そのまま差し切りました。ローシャムパークはこれで完全覚醒。GⅠ戦線に名乗りを挙げる新鋭となりましたね。2着はGⅠ馬のタイトルホルダー、前走競争中止からの復帰で1人気に推されましたが仕上がりは完調と言えず。とはいえ流石の逃げ足で、スローペースに持ち込み2着に粘りました。
前半1000mは61秒1のスロー展開。走破時計は2分12秒0、例年並みとなりました。ここ数年早い時計は出ていませんが、今年は秋の開催以降早い時計が出まくっています。開催3週目となりますが今年の傾向はどうでしょう…。隊列・展開予想が大事を帯びてくる、そんなレースになりそうです。



今週も注目の"Topic5"

というわけでここから注目のトピックを5点、先週はまあまあ核心を突くような、そんなこと言えていたので参照していただければなと思います。

上位人気決着!!…その裏に隠された事実

先週末セントライト記念は1・2人気の堅実決着となりましたが、同条件で行われる古馬GⅡでは過去10年で1・2人気の馬連決着はいまだ発生していません。1・2人気の2軸は避けた方が無難と言えるでしょう。
過去5年順に遡ると…

23年【4-1人気】  22年【5-6人気】
21年【2-5人気】  20年【5-2人気】
19年【4-3人気】

での決着になっています。
上位人気同士の組み合わせですが、【1-2人気】ではないので、
5番人気以内の馬を主軸に相手を選ぶ組み立て方を推奨いたします。

人気薄が激走する、その条件とは?

6人気以下の馬の過去十の成績は【0-2-6-79】と1勝も挙げていません。複勝圏内に入った8頭のうち5頭に芝2200m重賞で3着内の実績が、また2頭に中山芝2200m条件戦での勝利経験がありました
下位人気を相手に選ぶ場合は非根幹距離である2200mの実績を重視しましょう。

重賞実績は必須

過去十の連対馬20頭全頭に重賞3着内の実績がありました。古馬重賞らしいデータですね。ポイントは前走惨敗していても2走前(前々走)で好走している馬を選ぶこと。1走分の間隔を空けて調子を上げてくる馬が多い傾向にあります。4~6番人気に該当馬がいた場合、激アツ案件と捉えて良いでしょう。

夏の上り馬より春GⅠ組

秋古馬重賞においては近年この傾向は崩れつつあるとはいえ、ここもやはり春のGⅠ戦線で大きな実績を残している馬が中心になると思います。とはいえ今回の想定1・2人気はレーベンスティールとステラヴェローチェで、夏競馬で実績を挙げた馬です。現在3番人気のサリエラが上位陣では春からの直行組ですが、期待されていた春天では12着と奮いませんでした。
またGⅠで実績を持つキラーアビリティも大阪杯では15着と散々な結果でした。しかし前々走サウジのネオムターフ(GⅡ)では2着に好走しており、この実績は軽視できません。
サリエラとキラーアビリティ、前走大敗で前々走好走というこの戦績はひとつ前の項目であげた「1走分の間隔を空けて調子を上げてくる馬」に該当します
追切り等の情報を細かくチェックし、態勢万全と判断できるなら思い印を打っても良いのではないでしょうか。この後解説しますが、個人的にはこの2頭が気になっています。

性齢別好走データに注目

過去10年においては
4歳馬の成績が【5-5-3-14】
5歳馬の成績が【4-3-5-39】
6歳馬の成績が【1-2-1-27】
7・8歳馬は0勝0連対と4・5歳馬の実績上位馬が中心になっています。また牝馬の成績に注目で、過去十で9連対しています。

今回は紅一点5歳牝馬サリエラがいます。現時点では好走条件を満たしており、想定3~5番人気であれば妙味ありとみて良いでしょう。また今回は中山巧者の戸崎圭太騎手へ乗り替りですが、初騎乗ではなく東京で走った1勝クラスにおいて勝利を挙げている点も注視したいです。


読む時間がない方へ、要点まとめましたとさ。


森タイツ式推奨馬の解説

GⅠ制覇への通過点

現在水曜時点で圧倒的1人気。ルメール騎手騎乗のレーベンスティールに注目です。
22年11月東京新馬戦でデビュー、12月2戦目の中山で初勝利を挙げました。この頃から人気と期待を背負い続け、23年ラジオNIKKEI賞で1人気から3着に終わると次走セントライト記念で待望の重賞初制覇。このレースではソールオリエンス、ドゥラエレーデら同世代のエリートたちを突き放しての快勝でした。
今回のオールカマーは昨年制したセントライト記念と同舞台の中山芝2200m。仕上りさえ問題なければ好走はまず必至と言えそうです。

レーベンスティールはリアルスティール産駒。22年に初年度産駒がデビューして以降、やや地味ではありますが着実に実績を伸ばしてきている、ディープインパクトの後継種牡馬です。本馬以外の代表産駒はデイリー杯2歳S勝ちのオールパルフェ、今年のケンタッキーダービーで3着だったフォーエバーヤングがいます。芝の適正距離はマイル以上、1800~2200mで多く勝ち鞍を挙げている一方、東京・新潟での左周りを得意とする傾向があります。直線の短い中山は不得手な印象もありますが、レーベンスティールに限っては昨年のセントライト記念を勝っているので、そんなに気にしなくてもよさそうです。ただこの産駒は軽い馬場の方が得意なため、稍重・重になるようでしたら割り引いた方が良いかもしれません(ただし不良馬場での成績は凄まじく、驚異的な勝率・回収率に跳ね上がります)。
母トウカイライフはJRAダート3勝、その父はあのトウカイテイオーです。「母父トウカイテイオー」の血統は中山大障害を制したシングンマイケルやOP馬のマイネルアウラートがいます。レーベンスティールは次世代へこの名馬の血筋を残していってほしいですね。

レーベンスティールはデビューから重賞初制覇となったセントライト記念までの6戦において、全て上がり3F最速を記録してきています。末脚の火力はこのメンバーにあって頭抜けています。前走GⅢのエプソムCでは59㌔を背負ってもなお、上がり最速をマークし勝利。格の違いを見せつけました。しかしながらその前の新潟大賞典では11着の大敗。このレースは先手を主張したヤマニンサルバムがスローペースに持ち込みそのまま逃げ切り勝ち。また新潟の芝も良馬場とはいえ若干時計のかかるコンディションになっていました。早い時計での勝負を得意とするレーベンスティールにとっては利が少なかったレースだったと思います。年末出走した香港GⅠからの復帰初戦ということで、仕上がりもイマイチでした。
今週で開催3週目を迎える中山ですが、今開催はレコードが出るなど、早い時計を得意とするレーベンスティールにとっては追い風になりそうです。
この馬の素質を考えれば、陣営は当然の如くGⅠ制覇を目論んでいると思います。オールカマーは秋天のトライアルでもありますが、レーベンスティールの獲得賞金を考えた場合出走の可否は若干微妙なので、まずはここを勝って秋の大目標へと向かいたいところ。鞍上は前走に続きCルメール騎手が務めます。先週のセントライト記念でも抜群のレースセンス見せてくれましたね。対抗馬・穴馬にも注目したいですが、まずはレーベンスティール。この馬は外せないでしょう。

ミリオンダラーの3勝馬

現時点ではいまだ3勝クラス、重賞未勝利ながら上位人気に支持されるサヴォーナです。4歳馬にして既に15戦とかなり使い込まれてきていますが、最後に勝ったのは昨年7月福島の信夫山特別(2勝クラス)で、それ以降重賞戦に挑み続けるも未だに勝ち鞍がなく、3歳GⅡの神戸新聞杯2着が最高順位です。
しかしながら、これまで獲得した賞金は1億2000万越えで、今回1位人気で重賞2勝馬であるレーベンスティールとほとんど変わりません。強いのか弱いのか、少しわかりづらい印象ですが、戦ってきた相手を見ればその戦績が、決して恥ずかしくないものであることが分かるはずです。

サヴォーナはキズナ産駒。ディープインパクトの直仔にしてダービーを制した名馬です。この産駒についての解説も今年の春戦線noteにおいて繰り返し解説してきましたね。
キズナ産駒は距離・馬場の適性を問わず、芝・ダートどのクラスでも満遍なく好走しています。昨年まではソングライン然り、中山よりも広い府中の方が戦績が良く、次いで京都・阪神と、中山での好走例はさほど多くないイメージでした。ただし今年に関してはキズナ産駒の中山での好走率が異常に高く、皐月賞ではジャスティンミラノが見事戴冠を果たしています。その他にも中山の重賞を3勝。コンクシェル、シックスペンス、パラレルヴィジョンと、キズナ産駒の勢いを感じます。
全場においても今年のキズナ産駒は非常に優秀で、現在種牡馬リーディング1位。勝利数143でその内重賞を10勝、先週のローズSでは牝馬のクイーンズウォークが中京芝2000mを制しました。今年GⅠ~GⅢに出走したキズナ産駒はのべ101頭出走しているので、勝率が約10%と驚異的な数字を叩き出しています。まさに今年はキズナイヤーです。

サヴォーナはメイクデビューから今年1月の日経新春杯まで12戦して掲示板を外したのが1度きり(青葉賞6着)と、抜群の安定感を誇っていました。大きく崩れることが少なく、相手なりに好走できる点がこの馬の強みだと、常々感じていました。特に日経新春杯では後のGⅠ馬ブローザホーンの2着と、そのポテンシャルの高さを発揮しましたね。
春は調子を落とし、阪神大賞典と天皇賞の2戦は6着に敗れましたが、ここは覚醒した古馬テーオーロイヤルの独壇場だったため、致し方のない面もあります。夏の大一番札幌記念ではGⅠクラスの強豪が揃ったなか、再び4着と好走し復調をアピールしました。
秋初戦へ向け陣営サイドは精神面での成長を大きく強調しています。もともと500㌔を超す大型馬で、完成度の高い走りを披露してきました。ここへきての精神的な成長は、なによりの朗報だと思います。
鞍上は横山武史騎手との初タッグとなりますが、ルメール騎手、戸崎騎手らと比べても遜色ない中山での戦績を考えれば、これも朗報でしょう。
1億以上稼いでいるサヴォーナですが、もう少しで神戸新聞杯賞金の有効期限が過ぎてしまいます。更なるステップを踏んでいくためにはここで好走、もとい勝利を収めることが求められます。現4歳世代の「善戦マン」返上へ向け、重賞初勝利を掲げます。

紅一点、待望の重賞初制覇へ激走を

今回の出走馬の中では紅一点、「牝馬の国枝」厩舎からサリエラが出走。前走の天皇賞春11着から一変、ここで初の重賞奪取を狙います。
サリエラは21年11月の東京新馬戦芝1800mでデビュー、2連勝を飾ると翌年の3歳馬路線では秋のローズSに出走し2着。次走のL競争白富士Sを快勝。その後もあまり使い込ませず、緩やかですが順調に成長を遂げてきました。今年に入ってから長距離戦線に名乗りを挙げ、ダイヤモンドSではテーオーロイヤルの2着と好走するも、前走春の天皇賞では期待を裏切り11着と大敗を喫しました。

サリエラはディープインパクト産駒です。今更説明不要のリーディングサイアーにして大種牡馬として、数々の重賞馬を輩出してきました。芝1400~2400mまで幅広く活躍馬を出しており。中山2200mへの適正もまず問題はないでしょう。ジェンティルドンナやグランアレグリアに代表されるよう、古馬重賞で活躍する牝馬も多く存在しています。
またスピードに優れた名馬が多いため重馬場が苦手というイメージがあるかもしれませんが、産駒の芝コースにおける成績は、長いスパンで見ても良~不良までさほど変わりなく、重たい馬場を苦にしていません。特に母系がノーザンダンサーの場合、稍重・重馬場での好走率が上がります。サリエラは良馬場しか走ったことがないうえに陣営も良馬場を希望しているようですが、重たくなっても問題ないと思います。
もう一つ興味深い統計として、ディープ産駒の牝馬は4~9月の暖かい季節を得意とする傾向があります。産駒デビューからの統計では9月の勝率が13%強と最も高く、連対率・複勝率も高い数字を叩き出しています。この傾向は買い要素の一つとして捉えて良いでしょう。

サリエラにとっての今年の春の挑戦、長距離重賞2走は結果が伴ったとはいえないと思いますが、秋古馬初戦では距離を戻し再起を図ります。中山の芝は初ですが、2200mは昨年のエリ女で走っており6着と敗れてはいるものの、勝ち馬とはコンマ3秒差で大きく敗けてはいませんでした。鞍上はデビュー2戦目で勝利したとき以来のコンビ、戸崎圭太騎手。中山芝2200mでは過去5年で連対率30%を誇る、中山マイスターのひとりです。
サリエラは馬体重430㌔ほどの小柄な牝馬ですが、純粋なスピード能力は1人気のレーベンスティールにも引けを取りません。待望の重賞初制覇へ向けた、牡馬顔負けの激走を期待しましょう。

再起を図るGⅠ馬

雌伏の時を過ごすキラーアビリティが、久々の重賞制覇を虎視眈々と狙っています。
21年6月の阪神新馬戦でデビューすると、4戦目のホープフルSでいきなりのGⅠ戴冠を果たしました。以降も大いに期待を集めましたが、クラシックでは目立った活躍はなく、同年12月のGⅢ中日新聞杯を勝ちはしたものの、当初期待されていたほどの勝鞍上げられませんでした。昨年は中距離重賞を転戦するも5戦して勝利なし、完全に低迷期に入ったかのようにみえました。
転機になったのは今年2月にサウジアラビアで行われたネオムターフCで、この芝2100m国際GⅡレースで2着に入り、復調&健在ぶりをアピールしました。しかしGⅠ2勝目を目指し出走した大阪杯では15着大敗。陣営は改めてその真価を問われるフェーズを迎えています。

キラーアビリティはディープインパクト産駒、この点は先述のサリエラと同じで説明不要でしょう。
リーディンサイアーとしてトップを走り続け、1800頭もの産駒数を誇り、記録した産駒の重賞出走回数は累計2900回以上。そのうち勝利回数293なので、2010年から日本のGⅢ~GⅠレースにおいて、産駒が出走した場合10回に1回勝っている計算になります。
過去10年のオールカマーにおいては2020年にセンテリュオ、15年にショウナンパンドラが勝っています。この2頭と先述のサリエラ、キラーアビリティの共通点として母系が米血統のノーザンダンサー系という点が挙げられますね。偶然でしょうか?

早熟として囁かれているキラーアビリティですが、クラシック年の22年はダービー6着と健闘の後、秋初戦GⅡアルゼンチン共和国杯(2500m)を8着。昨年23年はGⅢ新潟大賞典を不良馬場で5着の後、秋初戦GⅡ富士S(1600m)12着と、秋の始動戦のレース選択を誤ってきているような気がしていました。その点今回のオールカマーはこの馬にとって比較的走りやすそうな条件なので、いつも以上に期待はできそうです。また中日新聞杯を勝った団野騎手に戻る点もプラスに作用しそうです。
1週前追切では早い時計が出ており、前進気勢が今までよりも増してきてる気がします。斉藤調教師は好感触を口にしながらも、折合い面での不安を覗かせています。またゲートに課題を残している馬なので、レースでは発馬を決めてスムーズに好位を奪えるかがカギになりそう。いつも通り後方からの組み立てでは、今の中山では間違いなく届かないでしょう。
今回穴狙いの激走候補として挙げるつもりでしたが、水曜時点では想定5番人気、まあまあ人気しています。考えてみれこのメンバーの中では唯一のGⅠ馬で実績は上位。まだまだ5歳で、枯れるのは早いはず。捲土重来を掲げ再起を図る、キラーアビリティ(意:素晴らしい才能)に期待しましょう。


終りに~その他の有力馬を添えて~

ここまでお読みいただいた方、誠にありがとうございました。
少しずつですがnoteフォロワーも増えてきており、こんな長ったらしいポエム全開の競馬noteを読んでくれる方がたくさんいることに驚くとともに、感謝の気持ちでいっぱいです。
さてそろそろ今回もお別れの時間が近づいてまいりましたが、推奨馬では解説しきれなかったその他の有力馬について、何頭か少しだけ短評を添えて(添えるんかい)了とさせていただきます。

来週はいよいよ秋GⅠ初戦、スプリンターズSですね。冒頭コラムは現在一文字も書けていないですが(やばい)、ニシノフラワーの話を書こうと思っています。
ではまた…。

📝ステラヴェローチェ

エフフォーリア、シャフリヤールらとクラシック年代で激しくぶつかり合ってきたバゴ産駒です。前走札幌記念では3着と好走、以前の輝きを取り戻したかのようでした。鞍上典さんと2戦して安田記念9着、札幌記念3着と復調著しいのは間違いありません。ただ懸念要素があります。バゴ産駒であるステラヴェローチェのベスト距離は2000m、距離延長時に好走する例は非常に少ないです。特に2000からの1F延長は連対率10%を切り、今回は危険と言わざるを得ません。一つ例を挙げると代表産駒クロノジェネシスが、秋華賞を勝った後1F延長のエリ女で敗れています。
ステラヴェローチェは3歳時に2200m戦の神戸新聞杯で勝っていますが、ダービー2400からの1F短縮でした。
この馬を買うとしたら距離を戻すであろう次走かな、と個人的にはそう考えています。

📝ミクソロジー

長期休養明けでおよそ1年7か月ぶりの出走となります。最後に勝った昨年2月のダイヤモンドSまではOPを挟んで4連勝と、中長距離戦線で非常に楽しみな一頭と期待されていましたが、脚部不安で長い間休養をしていました。10戦して5勝、複勝率70%とその素質に疑いの余地なしですが、流石にここは休養明け叩きの一戦かなと見ています。
一週前追切でもしっかりと負荷はかけられたものの、併せの僚馬に先着を許しており良化はまだ先と見た方がよさそうです。
またオルフェーブル産駒の特徴として、2400m以上の距離延長時に好走している例が多く、短縮してきた今回はやはり割引。ただ長いスパンを空けていてもそれなりに走れる血統傾向もあるので、紐狙いに入れてみるのはありかもしれません。個人的には"見"したい一頭ですね。

📝ロバートソンキー

過去十データでは7歳馬以上の連対がないことは先述の通りなのですが、一昨年に連対を果たしているというのはやはり一考の余地ありかもしれません。ただ前走7月は福島のダート1700mを走っており、間隔を空けて使われていること自体は問題ないと思いますが、これはあまり効果的なローテとは思えません。
一方でルーラーシップ産駒と中山2200mは非常に好相性。1勝クラス以上のレースで連対率40%超えと、血統評価においては強く推すことが出来る一頭です。前走ダートを走らせたことがどう転ぶのか、ある意味興味はあります。
1週前追切では工藤騎手を背にかなりの好時計を叩き出しており、最終追切の内容次第では人気を集めそうな気がします。ただ以前にも当noteで指摘してきましたが、管理の林徹厩舎は追切の時に猛時計を出す傾向が強く、いざ本番で蓋を開けてみると拍子抜け…、というパターンが非常に多いです。バトルボーン、アナザーリリック、先日の紫苑Sを走ったミアネーロと、皆調教時点では各方面から絶賛されていました(ミアネーロは2着でしたが)。
この厩舎で本当に評価できたのはGⅠ馬であるソングラインだけです。これも個人的な感想ではありますが…。まあ馬券的な取捨に迷う一頭ですね。

📝ヤマニンサンパ

先に紹介したキラーアビリティと同級の斉藤崇厩舎所属のヤマニンサンパです。鳴尾記念では森タイツは重めの印を打っていました。また前走宝塚記念の9着という成績も、そこまで悲観する内容ではなかったので、ここで印を打つのもありかなと思っています。
この馬もディープインパクト産駒ということで説明は省きますが、血統面での不安要素は少ないですね。
鞍上は昨年ドイツのリーディングに輝いたシュタルケ騎手が短期免許で来日、騎乗予定です。日本で騎乗するのは4年ぶり、知らない方も多いとは思いますが17年のニュージーランドトロフィー他、JRA重賞4勝を挙げていて、日本競馬への適応は問題ないと思います。ただし勝った4つの重賞は全てマイル~1800mなので、この中距離2200mGⅡ重賞をいきなりこなせるかどうかはちょっとわからないですね…。
"ヤマニン"の冠名は土井肇オーナーの所有馬に付けられますが、かつては安田記念2連覇のヤマニンゼファーなど名馬も多く所有していました。
今年は中央で10勝を挙げており、ヤマニンウルスは久々の怪物として、敗けなしの5連賞でGⅢプロキオンSを制しました。またヤマニンサルバムが先日の新潟大賞典を勝利しており、ヤマニン軍団に往年の勢いを感じています。いまだ重賞勝ちのないヤマニンサンパも、ここで悲願の重賞制覇となれば面白いですね。


今回参照にさせていただいたサイト


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