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序文

" Omnia vincit Amor "-今でも愛してる-


表題「Omnia vincit Amor」
" オムニア・ウィンキト・アモル "と読む。
ラテン語で「愛は全てに勝る」という格言である。
主語の"Amor"は小文字で表記されると「愛」だが、大文字で表記されるとより大きく「愛の神」を意味する言葉となる。従って「Omnia vincit Amor」とは、正しくは「愛の神は全てを打ち負かす」という意味である。
この言葉は一般的な意訳として「愛さえあればどんな困難も乗り越えられる」として解釈されることが多い。その理由は、原典となった帝政ローマ時代の大詩人・ウェルギリウスの詩編『牧歌』の中にある。

しかし、森の精たちも、詩も、
もはやおれを楽しませはしない。
森よ、やはり去ってくれ。
おれがどんなに苦しんでも、
恋の神は動かせない。
たとえおれが冬のさなかに、
ヘブルス川の水を飲み、
みぞれ降る冬のトラキアに身をさらそうとも、
たとえ高い楡の木が、
芯まで乾いて枯れる時期に、
蟹座には行った太陽の下で、
エチオピア人の羊を一心に追おうとも。
愛はすべてを克服する。だからおれも、屈しよう。

河津千代訳『牧歌・農耕詩』(未来社_1981)

この『牧歌』は紀元前42年に編纂された。永遠の桃源郷アルカディアを舞台に、牧人たちが繰り広げる歌の世界である。中略するが、この一節は愛する女性リュコーリスを失った農夫ガルスの嘆きの言葉である。ストーリーの前後の流れを汲み意訳すれば、上記の通り「愛の神は全てを打ち負かす」ではなく「愛は全てを克服する」と拡大解釈されている。
ラテン語訳においてこのような翻訳はあながち間違いとは言えない。文法的に無理がない限り、ラテン語の表現はしばしば多様な解釈を許容するからだ。
古の昔よりは「愛」は永久不変であり、いかなる困難をも打ち負かす、人間の根源的な力として考えられてきた。目には見えなくとも必ずそこに存在する「愛」という概念を、われわれ人間は悠久の時を経てもなお、頑なに信じ続けているのだ。


そして時は流れ、現代は日本の中央競馬。その名に愛の一文字を宿し、困難に打ち勝った一頭の牝馬がいた。

スティルインラブ
2003年桜花賞、優駿牝馬、秋華賞を制覇。
86年メジロラモーヌ以来史上2頭目の三冠牝馬である

2000年5月、スティルインラブは北海道門別町の下河辺牧場で産まれた。下河辺牧場は1933年開業の老舗牧場である。開業当時は千葉県香取郡(現・成田市)に構えていたが、66年から門別町にも開場。以降多くの重賞馬を世に送り出してきた。特に2000年代に入ってからの躍進は目覚ましく、牝馬3冠を達成したスティルインラブの他にも、オークスを制したダイワルシエーロやグレイスティアラなどの牝馬を中心とした活躍。2010年代もアユサン、ダノンシャークらGⅠ馬を輩出。2024年10月現在、今年の生産牧場リーディング6位につけている名門だ。
スティルインラブの父はサンデーサイレンス。言わずと知れた大種牡馬である。90年に米競馬を引退すると、日本の社台スタリオンステーションで種牡馬入りし、初年度産駒がデビューした翌年、1995年から13年連続で日本のリーディングサイアーを獲得。その後も日本競馬における、種牡馬に関する記録を次々と更新した。サンデーサイレンスを起点とするサイアーラインは日本競馬界における一大勢力となり、サンデーサイレンス系とも呼ばれている。その最も有名な産駒が05年に3冠を達成した、名馬ディープインパクトである。

スティルインラブは02年11月、阪神競馬の牝馬限定の2歳新馬戦に出走。その血筋の良さから1人気に支持された。このレースには後の天皇賞秋を制するヘブンリーロマンスら素質馬が揃っていたが、直線で前を行くキタノスザクを差し切り勝利。デビュー戦を勝利で飾った。
この時スティルインラブの鞍上を任されたのが、デビュー9年目を迎える幸英明だった。幸は94年に競馬学校10期卒業生として騎手免許を取得、栗東・谷八郎厩舎に入厩した。同期には吉田豊、渡辺薫彦らがいた。
幸は94年のデビュー年に23勝を挙げる活躍を見せ、翌95年には天皇賞秋でGⅠ初出走。以後もコンスタントに活躍を続け、関西を代表する中堅騎手へと成長していた。
この時の新馬戦、幸はその将来性を高く評されているスティルインラブに乗れるなどと、はじめから思っていなかった。スティルは名高きサンデーサイレンスの産駒、そして所有オーナーはノースヒルズで、管理は松元省一厩舎が請け負っていた。当時、松元省一厩舎でノースヒルズの主戦と言えばベテランの松永幹夫と相場が決まっており、若手である幸に出番が回ってくるはずがない。ところが縁は異なもので、松元省一の息子で調教助手を務めていた松元靖雅と幸は旧知の仲、この靖雅の勧めで幸はスティルインラブの調教に携わっていた。
「すごくいい馬がいるから乗ってみたら?」きっかけはその程度のものだった。幸が跨ると、スティルはすっと素軽く動き出した。
凄く良い牝馬だ。幸は4年前に自身が騎乗した、トゥザヴィクトリーという馬のことを思い出した。彼女も同じく素質を見込まれた牝馬で、共に桜花賞を戦っていた。
あくる日も、そのまた翌日も幸は時間が許す限りスティルインラブの調教に携わった。この馬に乗ってレースを戦えるとは考えていなかった。ただ単純に彼女のことを気に入ったからだった。
調教助手の靖雅は、この出来事を父・松元省一とオーナーであるノースヒルズ代表の前田幸治へ報告していた。前田は付きっ切りで乗ってくれる幸に感銘を受けた。そしてそんな折、スティルインラブのデビュー戦へ向けた話が持ち上がる。同じレースで主戦の松永は同じノースヒルズのヘブンリーロマンスへ騎乗予定。前田は迷うことなくスティルインラブの騎乗を幸に依頼した。

幸英明とスティルインラブ、
三冠制覇への物語はこうして幕を上げた。

年明け03年始動戦となった紅梅ステークスで、シーイズトウショウなどの実績馬を下して2勝目を挙げた。このレースに完勝したことで、スティルインラブはクラシック候補として一躍知られるようになった。そして鞍上の幸も自信をつけていった。
2か月後の3月、幸とスティルインラブは桜花賞トライアル、チューリップ賞へと参戦。ファンの期待も高く、このレースでは単勝オッズ1.7倍の1人気に支持された。
幸は気負っていた。ここを勝てばGⅠである桜花賞への道が開かれる、だがもし負ければ自分に次はないだろう。もともと"棚ぼた"で貰ったような乗鞍だ。なんとしても勝たなければならない。

スティルとは実戦でまだ2走しかしていなかったが、幸はこの牝馬の強みをよく理解していた。相手も皆強い、だがこの馬の末脚なら間違いなく勝てるはず。狙いはインコース、内が開くその瞬間を狙い澄ますのだ。
チューリップ賞レース終盤、ロスなくインコースを回り幸の思惑通りにレースを運ぶことが出来ていた。最後の直線に差し掛かかったとき、最内にスペースが生まれた。ここで勝負に出る、と思った矢先進路を閉ざされた。壁になったのはゼッケン10番オースミハルカ、鞍上はアンカツこと安藤勝己だった。この百戦錬磨のベテランには「後ろに目がついている」と言われていた。
慌てて進路を外に持ち出そうとしたが、時すでに遅し。安藤の術中にハマったスティルインラブは、懸命に追いすがるもクビ差届かず。痛恨の敗戦を喫してしまった。

「終わった」素直にそう思った。馬の仕上がりに問題はなかった。明らかに自分の騎乗ミスで敗けたのだ、乗り替りは必至だろう。幸は覚悟していた。
検量室へ戻る最中、幸はこんなことを考えていた。
「このまま、この仔と一緒に遠くまで逃げてしまいたい」
バカな考えだが、この時は本気でそう思った。それほどまでに幸はスティルインラブへ愛情を一身に注いできた。
沈んだ気持ちのまま検量室へ戻ると、笑顔で出迎える男がいた。他でもない、調教師の松元だった。
「本番じゃなくて良かったな」
そう言って松元は幸の肩をぽんと叩いた。思い掛けない温かい言葉に、幸の瞳から涙がこぼれそうになった。
今までトライアルレースの騎乗ミスで、有力馬から乗り替りになる若手騎手を何人も見てきた。もちろん自分がその憂き目にあったこともある。今回もご多分に漏れず降ろされるだろう。そう思っていたが、翌日以降も幸に乗り替りの指示が下されることはなかった。松元もオーナーサイドも幸の努力をよく見てきた。もう一度この男に託そうと腹に決めたのだ。

GⅠ桜花賞。幸とスティルインラブにとって
絶対に負けられないレースになった。

迎えた桜花賞、幸は並々ならぬ覚悟でその場に臨んでいた。
騎手をはじめて10年目を迎える。GⅠレース勝利の栄冠を授かったことはいまだかつてない。
最初の頃はいずれ勝てるだろうと思っていた。そのための努力さえ怠らなければ、チャンスはやって来るはずだと。
年月が流れていくなか、同期のライバルや後輩たちが重賞を、そしてGⅠ勝利を飾っていくのを尻目に見ていた。己の将来に対する根拠のない展望に、次第に焦燥感が募っていった。
GⅠを勝った同期には皆、相棒というべきパートナーがいた。吉田豊にはメジロドーベルが、渡辺薫彦にはナリタトップロードがいた。幸には馬上の二人が輝いて見えた。自分も良馬と出会うことさえ叶えば、同じ舞台に立てるのだと信じていた。
そして迎えた邂逅の時、スティルインラブと出会うことが出来た。
このチャンスを活かしたい。幸は不退転の意志を持って桜花賞へ挑んだ。

桜花賞当日、前走で敗けたスティルインラブは2番人気だった。この日単勝オッズ同率の3.5倍に支持されスティルの前に立ちはだかったのが、同じサンデーサイレンス産駒のアドマイヤグルーヴだった。鞍上・武豊である。
同世代であってもこれまでの臨戦過程が異なり、スティルとアドマイヤグルーヴはこのレースが初顔合わせとなった。相手は同産駒ということだけでなく、「女帝」エアグルーヴの血を引く超良血統、間違いなく強敵といえた。

そこから3年前の桜花賞、幸はトゥザヴィクトリーに乗り参戦していた。どうしても勝ちたかった、ただ己のためだけにGⅠ制覇の名誉を欲していた。
この時は結果としてその思いが仇となってしまった。気持ちが空回りするあまり凡走、桜花賞に敗れた幸はトゥザヴィクトリーを降ろされ、その年のクラシックを走ることはもうなかった。その後トゥザヴィクトリーの主戦騎手は武豊が務めた。

だが今回は違った。自分のためだけじゃない、自分を支えてくれた人たちの気持ちに応えるため、チャンスを与えてくれた人たちのため、走ろうと思っていた。こんな感情になったのは初めてだったかもしれない。
桜花賞、スティルインラブはスムーズにレースを進め好位を奪った。桜花賞特有の速い流れに戸惑ったが、どうにか落ち着きを保った。残り600mを過ぎたところで前にいる2頭、シーイズトウショウとヤマカツリリーが進路を塞ごうとしていた。幸は冷静に、且つ素早く2頭の間に割って入っていった。前回と同じ失敗はできない。スティルインラブはそこから加速して一気に抜け出すと、残り200mで先頭に立った。後ろからアドマイヤグルーヴがものすごい勢いで追い込んできたが寄せ付けなかった。
ゴール直後、後ろから「おめでとうございます」と大きな声が聞こえた。2着に競り負けたシーイズトウショウの鞍上、池添謙一が笑顔で近づいてきた。馬上でハイタッチを交わした。
幸とスティルインラブは桜花賞を制した。幸にとっての初GⅠ勝利はクラシック制覇となった。

たった一度の勝利であっても、GⅠ勝利の栄光は騎手を大きく成長させる。すっかり自信を取り戻した幸英明は、スティルインラブと牝馬2冠目オークスの舞台へ堂々と乗り込んでいった。
オークス当日、スティルインラブはまたもや2番人気の支持だった。1人気は桜花賞で下した相手、良血馬アドマイヤグルーヴだった。スティルの単勝オッズ5.6倍に対しアドマイヤグルーヴは1.7倍の断トツ人気。幸と陣営はこの格差に少々納得がいかなかったが、競馬ファンは皆いたく冷静だった。
オークスは府中2400mが舞台。多くの牝馬が初挑戦となる長距離レースだ。今までマイル1600mまでしか走ったことのない、スティルインラブにとってもまた未知の領域。対するアドマイヤグルーヴはデビュー戦以降2000mの条件戦を勝利している。そして母はオークスを圧勝したエアグルーヴである。ましてや騎乗するのはトップ騎手の武豊。出遅れたまま届かなかった、桜花賞と同じミスをするはずがない。

今までの幸であれば、いつも通り好位を奪いに行って先行ポジションから早めに勝負を仕掛けていたかもしれない。ただ桜花賞を勝利したことにより、幸は自身の騎乗に対する自信を深めていた。
スタートを決めてゲートをスムーズに出た。前に行けなくもなかったが、敢えて中団馬群やや後方に位置を取った。府中2400mの舞台、焦って先行してしまえば直線でバテてしまうかもしれない。幸は終始冷静に勝機を窺っていた。
この仔の脚なら直線で届くだろう。前方に行く馬たちに恐れはなかったが、むしろ怖いのは出遅れたアドマイヤグルーヴである。桜花賞で見せた追込みは本物だった。追い比べになれば分が悪い。
直線を向いた、府中はここからが長い。どこで仕掛けるか、アドマイヤグルーヴはいまだ後方でもがいているようだった。幸はここでスイッチを切り替えた、後ろにいるライバルを気にしていても仕方がない。大外から先団を捉えにかかる。鞭を入れると、溜めていた脚を爆ぜたスティルインラブはぐんぐんと加速していった。
残り100mを切ったところで先頭に躍り出た。府中2400mも全く問題なし。この仔の素質はやはり本物だ。幸とスティルインラブは危なげなく2冠を達成した。

スティルインラブの調教師、松元省一はかつてあのトウカイテイオーの管理を任されていた。3冠達成は確実と目されていたが、骨折のため菊花賞に出走することが叶わなかった。あの日以来悔しさを噛み締め、いつの日かまたという思いでここまでやってきた。
そしてこの年はあの時以来、今度は牝馬クラシックで3冠達成に王手をかけた。馬も順調、鞍上も騎乗を重ねるごとに成長を遂げている。
クラシックトライアルのチューリップ賞で敗けた時は、正直不安がよぎった。それでも幸の悔しそうな表情を見て続投を決めた。かつての自分がそうだったように、悔しさは人を強くさせる。彼なら同じ過ちを繰り返さないはずだと信じ、笑顔で励ました。
秋華賞前哨戦のローズSを秋初戦の舞台に選んだが、スティルインラブは5着に敗れた。叩きの一戦で万全の仕上がりではなかったことは事実だが、良いところなく敗れた2冠馬に、松元も「ちょっと敗けすぎでは」と不安になってしまった。
敗戦を深刻に捉えていた陣営とは真逆に、鞍上の幸はこの負けをほとんど気にかけていなかった。久しぶりのレースだったことが敗因だと踏んでいた。むしろスティルインラブ自身は好調であるとさえ思っていた。「久しぶりだったから、まだまだ走り足りないんですよきっと」屈託なく話す幸に押され、松元は本番に向けた調教を強化。幸の言う通りスティルはメニューをけろっとした顔でこなした。カイバの食いも落ちることなく、それでいて馬体は絞り込まれていき、この短い1か月でさらなる成長をしているようにさえ思えた。松元が驚いていたのは馬の成長だけではなかった。スティルインラブの気持ちを理解し、どうどうとした振る舞いををする幸の存在がなにより頼もしかった。半年前、泣きそうな顔で悔しがっていた男とはまるで別人のようだ。

秋華賞はローズSを圧勝したアドマイヤグルーヴが1人気に支持されていた。2冠牝馬でありながらスティルインラブは三度目の2番人気である。
ファンはこの2頭の一騎打ちになることを想定、というより期待していたようである。鞍上の幸自身もアドマイヤグルーヴしか見ていなかった。前走で完全に覚醒している、もし負けるとしたらこの馬以外ありえないだろう。
とはいえ、相手のことばかり考えていては己を見失ってしまう。
幸は冷静に、ただスティルインラブの走りを追求することだけに努めようとした。この馬の持ち味を引きだすこと、すなわち勝利であると疑っていなかった。
ゲートが開いて各馬一斉にスタートした。クラシック過去2戦、先頭に立つのは逃げ馬のヤマカツリリーだったがこの日は違った。リリーのハナを叩き、マイネルサマンサが先頭に立つとそのまま淀みのないペースでレースを引っ張った。いつもとは違う事態に幸は少々面食らった。逃げ馬の力量がはっきりとしない、仕掛けどころが難しくなったな。スティルインラブは今のところ折り合いを欠くようなこともなく、気持ちよさそうに走っている。前哨戦で一叩きした効果が良く表れていた。
レース中盤に差し掛かり、少しペースが落ち着いてきた。そろそろだろう、3コーナーの下りから捲り気味に仕掛けようとする、がいまいち反応が良くない。
幸は冷や汗をかいた。ズブくなっているのではと、背筋が凍っていくのが分かった。
だが直線を向いた瞬間、スティルインラブにいつもの気勢が戻ってきた。
先行勢がまだ粘っている。幸は鞭を入れた。
「まったく、冷や冷やさせるなよ」
こんな状況になっても、幸はこの馬のことが愛おしくて仕方なかった。
2冠制覇の時の感触が戻ってきた、この感じだ。スティルはその末脚を爆発させた。アドマイヤグルーヴも猛然と追込んできたが、幸は半ば勝利を確信していた…。

周囲から寄せられる祝辞と握手に丁寧に応えながら、松元はスティルインラブを迎えに行った。万感の思いだった。トウカイテイオーの時、成し遂げることの出来なかった3冠制覇の夢を、今日この時に叶えることが出来たのだから。
馬が帰ってくる。馬上の男は、満面の笑みを浮かべていた。春のトライアル、負けを背負い込んで泣きそうな顔をしていた、あの時の男はもういなかった。
肩で息を切らせながら彼は言った。
「やりました」
「ああ、お前ならやってくれると思ったよ」
ふたりは堅く右手を握り交わした。

2003年、スティルインラブは牝馬三冠を達成。86年メジロラモーヌ以来、17年ぶりの快挙だった。メジロラモーヌが牝馬三冠を達成した当時は、中央競馬の番組体系が異なっていた。秋華賞がなく、エリザベス女王杯が旧4歳(現3歳)牝馬限定戦であり、牝馬三冠の最終戦であった。このためスティルインラブは、96年に牝馬三冠が現行の3戦になってから初めての、牝馬三冠達成となったのだった。
その後も活躍を期待されていたスティルインラブだったが、古馬になってからは思うような走りが出来なくなっていった。金鯱賞8着、紅一点として出走した宝塚記念でも8着に敗れた。以降も重賞で連敗が続き、復活をかけ挑んだGⅠエリザベス女王杯でも9着に終わった。
クラシック戦でライバルとして立ちはだかっていたアドマイヤグルーヴが、あの時の雪辱を晴らすかのように、エリザベス女王杯で連覇を飾っていた。
翌年も現役を続行したスティルだったが、3戦して全敗。10月の府中牝馬Sへの出走を以って引退となった。
結局、三冠を達成した秋華賞以降、スティルインラブが勝利を挙げることはなかった。

引退後は繁殖入り。07年にキングカメハメハとの間に一頭の産駒を設けたが、同年7月に小腸捻転を発症。翌8月に腸が二重になってしまう腸重積という病気により、わずか7歳でこの世を去った。

幸英明は2024年現在も現役を続けている。
スティルインラブ以降も、ブルーコンコルド、ホッコータルマエなど、多くの名馬と出会い、重賞勝利を重ね続けた。
そして今年2024年8月10日、中京3Rでエデュースに騎乗して史上2人目のJRA通算2万4000回騎乗を達成。デビューから30年48歳での達成は、武豊の記録(36年54歳)を更新する史上最速、最年少記録となった。

どれだけ歳を重ねても、大きな事故を起こすこともなく淡々と騎乗をこなしていく幸のことを、いつしかファンは「鉄人」と称するようになった。
JRA史上最多勝利の記録を更新し続けるレジェンド武豊も、騎乗回数だけはこの男に勝てないと、早晩記録を抜かれる覚悟を決めている。
そしてどんな時も、どんな馬に対しても情愛の念を持って接する幸の姿勢に、馬主や厩舎関係者は全幅の信頼を寄せる。
「うちの馬に乗ってもらいたい」
「幸さんに見てもらいたい馬がいる」
幸はいつも笑顔で快諾する。騎乗機会が得られる事がどれだけありがたいか、誰よりも分かっているつもりだ。
そしてまたあの時の、自身が最も愛した馬、スティルインラブと出会った時のような、思い掛けない邂逅が待っているかもしれない。
GⅠ勝利をくれた、騎手としての自信を取り戻させてくれた彼女。天国へ先立たれた今も、その思いは決して消えることはない。あの時の走りに報いるため、全ての馬に対して愛情をもって接していこう。


「Omnia vincit Amor」
"Amor"は愛の神を指す言葉だが、ラテン語の表現は多様な解釈を内包する。
ラテン語辞書で"amor"を引くと、そこには「愛」の他に「情熱」という語訳が記されている。
「愛の神は全てを打ち負かす」という言葉が「愛さえあれば困難も乗り越えられる」と意訳されるのであれば、「情熱はどんな困難をも打ち砕くことができる」と解釈しても構わないだろう。
愛すべきパートナーと出会い、情熱をもって突き進んだ一人の騎手の物語。
我々ではきっと計り知れない、重圧や葛藤を抱えなければならない勝負の世界において、そこに利害を超えた相思相愛の姿が見えるのであれば、私は涙を流すことを禁じ得ない。
どうかこれからも、健やかに騎手人生を歩んでいってもらいたい…。

人に情熱を。

困難には決意を。

そして全ての馬に、愛情を…。

「GⅠ秋華賞、まもなく出走です。」

「鉄人」幸にとって最も忘れられない一頭となった
スティルインラブ。2007年にわずか7歳でその生涯に
幕を閉じた。「今でもずっと愛してる」・・・R.I.P

~はじめに~秋華賞展望

えー、皆様お疲れ様です。早いものでもう一週間が経ちました。なかなかハイペースではありますが、今週は秋華賞noteをお届けでございます。
冒頭コラムは今もなお現役バリバリ「鉄人」幸英明騎手と3冠牝馬スティルインラブの物語を綴ってみました。いかがでしたでしょうか?
スティルインラブといえばライバル・アドマイヤグルーヴとの関係が熱いですが、鞍上を務めた幸騎手との間にもまたドラマがあったのではないかと思い、こんな感じのお話になりました。
今年の競馬界は悲しい事故や残念な出来事が多いような気がしていますので、ベテランの幸騎手におかれましては、どうか事故なく健やかに現役を続けていってもらいたいです。人馬無事が何よりです。
まあ幸さんはSNSやっていないだろうから、このnoteを読むことは100%ないでしょう。今回も自由に書かせてもらいました笑

京都芝2000mどすえ✿

牝馬3冠最終戦にして、秋の京都GⅠ初戦は芝2000m。正面スタンド前からスタートし内回りを約1周します。コーナー数が4か所ということで、必然的にスピードが上がらず、スローペースになり勝ち。コースの統計だけみると逃げ・先行馬の粘り勝ちが散見されます。一方で秋華賞になると過去10年で逃げ馬の成績は1連対のみで、差し追込みが決まっています。コーナーが多く、直線が短いといえどそこはGⅠ、タフなレースになりそうです。
コーナーをこなせる機動力、短いスパートでも加速できる瞬発力を兼ね備えた馬を選定したいですね。

昨年のレースを振り返りんす✿

勝ったリバティアイランドは単勝1.1倍に支持され、好位から早めに抜け出す正攻法で勝利。史上7頭目の牝馬3冠を達成しました。
前半5Fのタイムは61.9秒。リバティアイランドは6番手目から早めに押し上げて、メンバー2位の上り33.6秒で勝利。2着は前走ローズS勝ちのマスクトディーヴァ。後方12番手から上がり最速の33.5秒で差し脚を伸ばしてきました。3着は終始好位につけて回ってきたハーパー、立ち回りの器用さが光った好走でした。

今週の”Topic5"でおわします✿

ではここから恒例のTopic5をお届け。
過去10年のデータ「過去十」をもとに解析しております。
秋華賞必勝へ向けた重要な5つのファクターとは…?

📝"オークス馬"は複勝率100%

1番人気の成績は過去十【4-1-1-4】で連対率50%です。
桜花賞3着以内だと【3-1-1-1】で連対率66.7%まで上昇。
さらにオークス勝ち馬が1人気の場合【4-1-1-0】で複勝率100%にまで昇ります
。今回はチェルヴィニアとステレンボッシュが人気を分け合うと思いますが、どちらかを軸に据える馬券戦略以外ないでしょう…?

📝穴馬激走条件

6人気以下の成績は【0-1-4-118】で基本上位人気決着と考えてよさそうです。穴人気から3着内に入った5頭は、前走でメンバー2位以内の上りを計測し、4着内に入っていました。トライアル組から前走紫苑Sで上がり最速を記録した、ミアネーロ・ボンドガールには注目の価値があると思います。

📝前走トライアル組の成績は?

前走がローズSだった馬は【1-4-6-48】で15年にミッキークイーンが勝利しています。1人気でした。前走紫苑Sは【3-4-0-32】で3勝挙げています。ショウナンパンドラ、ディアドラ、スタニングローズですね。3頭ともに3番人気、トライアル組を推す場合はやはり上位人気から。早い上がりを出せる馬に注目したいと思います。

📝脚質は"差し・追込"みから

先述した通り逃げ馬の成績は過去十【0-1-0-9】で1連対のみ。先行馬も2連対のみです。21年アカイトリノムスメ、22年スタニングローズが好位から勝っています。その他、差し・追込みで17連対と圧倒的後方勢が優勢ですね。直線が短い内回りコースであっても、タフな展開となりやすいです。

📝馬体重別成績

439㌔以下での成績は【2-2-2-25】で連対した4頭はそれぞれ1、3、4、10人気からでした。小柄な馬は上位人気なら推せそうです
好成績は平均的な馬体重440~460㌔に集中していますが、480㌔~499㌔までで5連対挙げており、3番人気以内なら【4-1-1-3】とまずまずの成績500㌔超の大型牝馬になると【0-1-0-14】で振るわなくなります。大型の馬は上位人気でも要注意です。


時間のない方へ要点まとめました

参考にしてね♪

タイツ式推奨馬の解説

ではここから恒例の推奨馬の紹介です。今回は時間の関係上4頭までとさせてもらいました。

東京の借りは京都で返す

前走オークス2着、桜花賞馬ステレンボッシュが敗けた借りを返すために京都へやってきました。
ステレンボッシュは昨年7月の札幌競馬場の新馬戦でデビューしましたが、この時は2番人気。次走中山のサフラン賞に挑んだ際は1人気でしたが2着に敗れました。この時点では翌年春にクラシックGⅠの筆頭候補に上がるとは、誰も思っていなかったかもしれません。同時期に重賞を賑わせていたボンドガール、チェルヴィニアといった牝馬の方が、クラシックへの期待を感じることが出来ていたのが正直な感想です。転機となったのは5番人気で迎えた阪神JF、ここで絞り込まれた馬体を披露すると上がり最速で2着、一気にクラシック候補へと躍り出てきました。

ステレンボッシュはエピファネイア産駒。今まで当noteでも何度か取り上げてきました。芝の中~長距離、左回りコースでの好走が多く、下級条件からGⅠクラスまで幅広く産駒が活躍しています。秋華賞の舞台に臨むにあたっては、デアリングタクトが3冠達成時に制しており、血統の面での問題はないと思います。翻って牝系の血統もまた京都向きで、母父ルーラーシップの血統はスタミナ量豊富、芝2000m以上のコースでは非常に優秀な成績を収めています。直近では夏の上り馬ホウオウビスケッツが、同じ母父ルーラーシップの血統で目覚ましい活躍を続けています。
エピファネイア産駒は今年の春に、この馬の桜花賞を含めGⅠを4勝という活躍を見せています。GⅢまで含めれば重賞9勝で、距離もマイルから2400mまでと、多岐にわたる万能性を発揮しています。
前走2400mからの距離短縮データではやや凡走傾向にありますが、産駒の京都2000mの連対率は非常に優秀です。そこまで心配しなくても良いでしょう。

今年は3歳牝馬が豊作です。マイル路線で活躍するアスコリピチェーノは京成杯AHを勝利し、豪ゴールデンイーグルに向かう予定。ダービー5着だったレガレイラはローズSで惨敗し今回は回避。ということで、ライバル・チェルヴィニアとの一騎打ちの雰囲気が強まってきました。
管理の国枝厩舎は牝馬の育成には以前から定評があり、アーモンドアイら一流馬を手掛けてきました。3歳馬のGⅠ連対率は過去5年で21戦して33.3%を記録しており、木村哲也厩舎に次ぐ2位の実績です。また美浦所属であっても関西圏で結果を多く残しており、その手腕から今回の輸送・遠征には心配の必要はないでしょう
また本馬は前走のオークスを含め、過去6戦の内4戦で上がり最速をマークしており、その末脚は抜群の切れ味を誇ります。直線の短い京都内回りコースですが、差しが決まりやすいことは先に述べました。鞍上は戸崎騎手の継続騎乗ということで、美浦所属の騎手に少なからず不安が集まりそうですが、彼は21年アカイトリノムスメで秋華賞を制覇しています(阪神施行時でしたが)。オークスではライバルを目の前にして屈辱を味わったステレンボッシュ。牝馬3冠最後のレースでスカッと晴らしてもらいましょう。

秋華の季節に女王の闊歩

前走、中京開催のローズSを勝利。馬体重520㌔を超える、サンデーレーシング期待の大型牝馬クイーンズウォークを解説します。
デビューは昨年11月京都の新馬戦と遅咲きでしたが、2戦目の未勝利戦を完勝すると、クラシックを目指し年内始動戦をGⅢクイーンCに選びこれに難なく勝利。続く桜花賞、オークスでは8着・4着と奮いませんでしたが、前走前哨戦のローズSを快勝。上がりメンバー2位の33・5秒、勝ち時計1分59秒9と優秀なタイムで勝ちを収めました。

大型馬らしく、歩幅の大きい悠然とした走りが特徴のクイーンズウォークはキズナ産駒。同じ母を持つ朝日杯を勝ったGⅠ馬、グレナディアガーズの妹にあたります。キズナ産駒は牝馬が良く走るともいわれていますが、GⅠ勝ち馬は2頭、アカイイトとソングラインがいます。2頭とも古馬になってからの活躍が目立ちますが、クイーンズウォークは2歳時から完成度の高い馬体を評価されており、クラシックを走り抜ける資質は十二分に備わっていると思われます。また今年に入ってから、キズナ産駒が重賞を12勝を挙げています。毎日王冠を勝ったシックスペンスもキズナ産駒でした。当noteでは何度も申し上げていますが今年は「キズナイヤー」です。

オークスの2400mを走る前までは1600~1800mの距離しか走っていなく、2000m走には一抹の不安も感じてましたが、前走ローズSの勝利でその不安も払拭されました
そして鞍上はデビューからトップジョッキーの川田将雅騎手が務めています。これも本noteで繰り返し述べてきたことですが、中内田厩舎の管理馬に川田騎手が騎乗することは鉄板中の鉄板。まさに水を得た魚です。
23年はこのタッグで26勝、勝率34.7%、リバティアイランドでの牝馬3冠をはじめ、目覚ましい活躍をみせました。
今年に入ってからもこの関係はもちろん継続され、中内田厩舎の現時点における35勝のうち13勝を川田騎手で挙げています。
また過去5年の京都2000mにおける川田騎手の連対率は、64.4%とまさに驚異的な数字を記録しています。3回に2回は連対している計算なので、ここも馬券内に組み込んでおきたいところです。
牝馬クラシック最後の座をかけて万全の状態で臨んでくる、女王の歩みに再度注目しましょう。

樫の女王、見参

今年のオークスを制した樫の女王・チェルヴィニアが2冠をかけて秋の京都へ出陣です。
もともとその素質を早くから評価されていたチェルヴィニアですが、昨年秋のアルテミスS後から長期にわたり戦線を離脱していました。ほぼぶっつけ本番で挑んだ桜花賞では13着に敗戦。大きく期待を裏切りましたが、前走オークスではルメール騎手に戻り、見事樫の女王を戴冠。改めてその素質が本物であることを証明しました。短い期間で立て直しに成功した木村厩舎の手腕は、流石の一言に尽きますね。

チェルヴィニアはハービンジャー産駒です。この産駒はディアドラが秋華賞、モズカッチャンがエリザベス女王杯を制すなど、秋の牝馬GⅠでの活躍が多数。期待が持てそうです。母チェッキーノの父はキングカメハメハで、ハービンジャー×キンカメの肌は有馬記念勝ちのブラストワンピースがいます。また半兄ノッキングポイントは3歳の夏に、古馬相手に新潟記念で勝利しており、血統的には期待できるものは大きそうです。

オークスでは前走桜花賞2桁の大敗から巻き返し、見事戴冠を果たしました。木村厩舎の辣腕ぶりには目を見張るものがありますが、オークスで騎乗したルメール騎手との相性も抜群でしょう(桜花賞ではルメールは怪我、短期のムルザバエフ騎手が代打ち)。過去10年ルメール騎手はディアドラとアーモンドアイで秋華賞を勝利、またファインルージュ、スターズオンアース、ハーパーで馬券内に入っており。騎手としての複勝率は過去十で50%記録しています。データ分析の項で述べた上位人気の成績を考えれば、余程のことがない限り馬券内には入ってくると思うのですがどうでしょう?
不安要素としては管理の木村厩舎のGⅠ成績が挙げられます。過去のGⅠ9勝のうち7勝が関東圏内、関西圏との相性は悪いと言わざるを得ません。
とはいえ、というか、そもそも牝馬クラシック戦はマイル前後の距離が多く、2400mのオークスで連対した2頭には初めから重く信頼を置くことが出来ます。今年の3歳牝馬はレベルが高く、だからこそ大一番においては波乱は見込みづらいと感じます。オークスで連対を果たしたステレンボッシュともう一頭、このチェルヴィニアには印を打たざるを得ませんね。

黄金色に染まる京都の空へ

なんかこれも恒例なのですが、本命決着と思っていて本命馬ばかり解説していてもしょうがないので、穴馬を一頭推奨します笑
前走、札幌のGⅢクイーンSを勝利したコガネノソラです。
今年の3歳牝馬路線を生産牧場別にみると、ノーザンF生産馬が他場を圧倒。例年のことではありますが、例年以上に結果を残しています。また2大勢力のもう一方の社台ファームも同様で、ジャンタルマンタルがNHKマイルで盤石の競馬を披露すれば、テンハッピーローズとダノンデサイルがGⅠの番狂わせを演じています。
そんななか解説するコガネノソラは、反主流のビッグレッドファーム出身。北海道は新冠町の古豪から、楽しみな一頭が出てきました。現3歳世代ではコラソンビート、コスモキュランダも同牧場出身。ユーバーレーベン以来となる、クラシック戴冠へ向けた機運が高まっているような気がします。

コガネノソラはゴールドシップ産駒、言わずと知れた超有名馬で現役時代にはGⅠ6勝を挙げています。同産駒では目黒記念を勝ったウインキートスや、マーメイドS勝ちのウインマイティーなど牝馬の活躍馬も散見されます。母父ローズインメイはオークスを制したユーバーレーベンと同じで、今回牝馬ゴールドシップ産駒はゴルシ自身がそうだったように、トップスピードでの勝負になると分が悪く、スローからの上り勝負や、高速馬場の速いラップを刻むレースは苦手としています。前走クイーンSでは後ろから追い上げるボンドガールらの追跡を凌ぎましたが、稍重の洋芝札幌コースという地の利があったことは否めません。しぶとく脚をを使う展開では優位に立ち回ることが出来る訳ですね。クラシック戦を狙う器としては申し分ないと思います。

前走クイーンSの際には斤量51㌔というハンデに恵まれた感はあったものの、古馬相手に堂々の立ち回り。3歳馬であるコガネノソラにとって大きな成長材料になったことは言うまでもありません。不安要素としては今まで関西圏への輸送経験がなく、京都競馬場は初となる点でしょう。仕上りは悪くないようですが、どこまでコンディションを維持できるかは正直未知数です。
一見すると秋華賞の舞台には不向きな気もしますが、この馬は3走前の東京1800m戦を勝った際に、逃げの手を打ったにもかかわらずメンバー内3位の上り34.1秒で勝利を収めており、早い上がりを使える一面を持ち合わせています
事前の会見で鞍上の丹内騎手はやや控えめながらも、コガネノソラの強みを丁寧に発言していました。同期の川田騎手は今や日本を代表するトップ騎手として活躍し、藤岡佑介騎手もそれに続いています。さらに今年は津村騎手が念願のGⅠを初勝利、障害の上野騎手も活躍しています。
24年度のGⅠレースにおいては「同一の騎手による勝利がない」というジンクスがいまだ破られておらず、GⅠ初勝利を飾る騎手も多くいます。
若手時代から常に全力で、多くの騎乗をこなすタフなジョッキーとして知られる丹内騎手ですが、ここで待望のGⅠ勝利を期待してもいいか
もしれません。
京都の空を黄金色に染め上げる激走に期待です。

~おわりに~短評を添えて

皆さまここまでお付き合いいただき、今回も誠にありがとうございました。
なかなか多忙な日々が続き、満足に執筆をこなせない中、気づけば金曜の夕方になっています。昨夜からほぼ徹夜で書き上げ、仮眠をとりながらですが、なんとか完成に漕ぎつけることが出来ました。
投稿が遅くなってはレースまでに読んでくださる方もいないかもしれませんが、自分の中の公約を果たせているので、来週も頑張りたいと思います。
それでは恒例のその他の馬について(以下略)。
来週は菊花賞ですか…早え~な~笑
何の話を書きましょうか…?
ではまた…。

📝ボンドガール

鞍上🏇武豊
シンエンペラーで凱旋門賞に渡来した藤田オーナーの所有馬。
前走札幌のクイーンSではコガネノソラに敗れましたが、馬群を割って差し脚を見せる内容の濃い競馬をみせました。前目の競馬もこなせ、自在性高い立ち回りが魅力です。鞍上は名手武豊。クイーンズウォークと共に先行でレースを作りそうな気がします。一発があっても不思議ではないと思います。

📝タガノエルピーダ

鞍上🏇団野大成
こちらもキズナ産駒ということで血統的には面白そうな一頭。特に父キズナ×母父キンカメはハピやダート3勝のメイショウゲキリン、さらには長距離戦が得意なアームブランシュなどスタミナ自慢が揃っています。半兄には万葉Sを勝ったタガノディアマンティもいますね。
2歳時にはGⅠ朝日杯で牡馬相手に3着という好成績を残しており、先行力と機動力を兼ね備えた本馬は京都内回り向きだと思います
とはいえ切れ味では上位陣に劣るため、瞬発力勝負になった際は劣勢に陥ると思います。展開次第といったところでしょうか。

📝ミアネーロ

鞍上🏇津村明秀

ドゥラメンテ産駒なので昨年はリバティアイランドが秋華賞を制しており、血統面での問題は全くないです。フラワーCを勝利した際はインコースをロスなく立ち回り、直線で抜け出し。器用な立ち回りが武器なので京都内回りは合うかもしれません。一方2400mのオークスでは直線で伸びを欠き、距離適正への課題を浮き彫りに。今回の2000mでどこまでやれるかには少々不安もあります。
また以前から繰り返し言っていますが、林厩舎は追切で仕上げてくる傾向が強く調教の際の時計に目が行きがちになってしまいますが、実戦になるといまいちな結果に終わることが多いです。オールカマーの際のロバートソンキーも各方面の調教評価は高かったです。
この厩舎でGⅠを制したのは昨年引退したソングラインのみで、主戦は戸崎騎手かルメール騎手でした。この2人の場合は本気度が違います。今回京都を苦手とする津村騎手でどうかというと…。個人的には推せない一頭です。

📝アドマイヤベル

鞍上🏇横山武史
オークスに引き続き横山武史騎手が鞍上を務めます。アドマイヤベルはスワーヴリチャード産駒です。この産駒は昨年からデビューをしていますが、23年新種牡馬リーディングでは堂々の1位を獲得しており、GⅠ勝ちのレガレイラなど牝馬の活躍も目立っています。ただし大きな注意点として、スワーヴリチャード産駒は関東から北の圏内で多く勝利しており、関西から西のエリアではあまり結果を残せていません。なぜかは分かりませんが傾向は間違いなくあります、輸送をこなす今回は要注意です。
これまでの5戦では4人の騎手が乗り替り、安定した成績を残してきています。誰でも乗れる。これはこの馬の操作性が高いことの裏付けに他なりません。混戦になるようであればこの馬の台頭も十分に考えられますので、積極的に馬券に組み込むことは大いにアリだと思っています。穴党向きの一頭ですね。



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