GⅠエリザベス女王杯
序文:百錬製鋼の姫君
人が最も大きく成長を遂げるとき、とはどんな瞬間だろうか。
自らが課した試練を乗り越えた時。
困難に直面し、その壁を打ち破った時。
愛する者との悲しい別れを克服した時。
順風満帆なだけの人生を歩めるのならそれに越したことはないが、そうもいかないのが人の生涯である。
いい時もあれば悪い時もある、連綿と繰り返される喜怒哀楽の狭間に、人は幸せを得るためもがき続け、その中で成長を遂げていく。
成長をするためには人の助けと出会いもまた重要だ。
自分の資質を見抜き、才能を伸ばしてくれる相手と出会った時、人は大きく飛躍するための機会を得ることができる。
「助長」という言葉があるが、この漢字二文字には読んで字の如く「能力を伸ばすように助けること」という意味がある。
だがこの言葉の原典を辿ると、実は全く真逆の意味をなしており「無理やりに成長させようとする、余計なことをしてかえって害を招く」という本来の言葉の意味を知ることが出来る。
中国戦国時代の儒学思想家・孟子の教えにこんな逸話がある。
成長を促すために良かれと思って行ったことも、転じて悪しき結果を招いてしまう。成長には助けが必要だが、不必要な力添えはかえって害になり得る。
偏に「成長」といってもそんなに単純な話ではない。良き出会い、良き相手に恵まれ、己の中に克己心が芽生えてはじめて成すことが出来る、人にとっての一大事なのである。
「成長」とは運命に左右されるような、時として奇跡的な事象なのかもしれない…。
さて時は流れ現代日本の競馬界、幾度となく困難にぶつかりながら、成長を遂げ、頂きへと登りつめた一頭の牝馬がいた。
馬の名はダイワスカーレット
07年JRA賞最優秀3歳牝馬に輝き
08年37年ぶり牝馬による有馬記念制覇を成し遂げた
ダイワスカーレットは今から20年前の2004年5月、北海道は千歳市の社台ファームにて生を享けた。母の名はスカーレットブーケ、90年にデビューを果たすと、92年末までに重賞4勝を含む通算21戦6勝の成績を残した。93年より繁殖牝馬となり、2010年の繁殖引退までに14頭の仔を産んだ。その第10仔がダイワスカーレットである。ちなみにブーケの第7仔でサンデーサイレンスと間に儲けた牡馬が、GⅠ競走5勝を挙げたダイワメジャーである。
スカーレットが生まれた04年には兄ダイワメジャーが10番人気から皐月賞を制覇。スカーレットブーケの産駒としてGⅠ初勝利を挙げた。スカーレットブーケの兄弟にはスカーレットブルーやスカーレットリボン、スカーレットローズらがいたが、彼らの産駒もまた重賞勝利やGⅠでの好走をみせ、次第にその牝祖であるスカーレットインクに注目が集まる。やがてこの牝馬を祖とする血統を、競馬ファンは「スカーレット一族」と呼び始めた。
ダイワスカーレットの父はアグネスタキオンで、ダイワメジャーの父サンデーサイレンスの産駒として同じく皐月賞を制したクラシックホースだった。屈腱炎により悲運の引退に泣いたが、同産駒のディープインパクトが翌05年にクラシック三冠を達成するまでは「サンデーサイレンスの最高傑作」と謳われていた。
サンデーサイレンスから連なる名馬の血統を紡ぎ、スカーレット一族の一員として名牝の血を約束されたかのように生まれてきたダイワスカーレットを、競馬関係者やファンは早くから大器の到来であると大きな期待をかけていた。
06年11月、ダイワスカーレットは京都の新馬戦・芝2000mでデビューを果たした。当初は調教までこなしていた武豊が騎乗予定だったが、同レースに出走する池江厩舎のウインスペンサーに騎乗をすることになっていた。武は先約だったウインスペンサーの騎乗を選択したため、ダイワスカーレットには急遽代役が立てられた。
騎手の名は安藤勝己、03年に地方競馬の笠松から中央に移籍してきた歴戦のジョッキーだった。地方時代同様に中央でも無双する姿に、移籍3年目にして名手としての地位を既に築き上げていた。デビュー戦2週前の追切に騎乗した安藤は、スカーレットが持つ才能の片鱗にすぐに気が付いた。血統は言うまでもなく一流だが、フットワーク、身のこなしまでも2歳馬のそれとは到底思えなかった。一方で少し前向きすぎる嫌いがあり、テンションの高さに気性の難しさを感じていた。
「これはきっとスプリンターだな」安藤はそんなファーストインプレッションを感じていた。
ところが初戦の舞台に陣営が選んだのは中距離である芝2000m、安藤はこの選択に少々面食らってしまった。
ダイワスカーレットを預かった管理調教師は松田国英。日本ダービーを制すること2回、栗東のトップステーブルとしてリーディング上位の常連だった。
安藤にとっていきなり難解なミッションとなった新馬戦だったが、スタートは出遅れながらもしっかりと好位を確保、3コーナーで早々と先頭に立つと、後続の追撃を振り切り危なげなく勝利を飾った。武豊の代役どころか一発回答で満点の騎乗をこなした安藤は、スカーレットが引退するその日まで鞍上を継続することとなった。
2戦目の報知杯中京2歳OPでは、初戦とは打って変わって綺麗なスタートを決めた。好位に取り付き直線でゴールドキリシマを交わすと、1人気のアドマイヤオーラを突き放し連勝。鞍上の安藤は、その素質がやはり本物であることに確信を抱き始めていた。
ところが次走のGⅢシンザン記念では前走で下したアドマイヤオーラの逆襲をくらい、初めての敗戦を喫してしまう。前2走とは異なり、道中3番手につけた少々中途半端な競馬が仇になってしまった。
安藤はこのレースでスカーレットの脚質について一人逡巡していた。行きっぷりの良い競馬で先行勝ちを拾ったが、脚質に幅を持たせてもいいのではないか?後ろからの競馬を試したらどうなのだろう。ポテンシャルの高い馬故に、戦い方が限定されることがもったいないと思っていた。
ダイワスカーレットといえばその逃げ脚こそが代名詞であるが、この頃はまだ脚質は開眼されていなかった。名手・安藤勝己とダイワスカーレットは走る毎に絆を深め、自分たちの競馬を暗中模索しながら戦い抜いていった。
話が前後するが、ダイワスカーレットを預かった調教師の松田国英もまた、この素質馬といかにして向き合うべきなのか、苦悩の日々を送っていた。
松田は02年にタニノギムレットで、04年にはキングカメハメハでダービーを制していたが、その前走においては両方ともNHKマイルカップを走らせていた。いわゆる「松国ローテ」といわれる変則ローテーションである。
タニノギムレットの前年には外国産馬のクロフネで変則ローテに挑戦。NHKマイルを勝ったもののダービーでは5着に終わっていた。反省を生かし臨んだタニノギムレットは皐月賞3着、NHKマイル3着の次走、ダービーで優勝。そしてキングカメハメハによる挑戦で、ついにNHKマイルとダービー両レースを制覇という快挙を達成した。以降の年もフサイチリシャールで同ローテーションに挑戦するなど、松田はこの自らが課した変則ローテに対し、並々ならぬ執着を持っていた。
この「馬の調子がいいときにはどんどん使う」という松田の考えは、短期間で多くの重賞優勝馬を輩出した。ただそれは一方で、ハードなローテーションとして管理調教馬に重圧として負担を強いることになっていった。
過去のクロフネ、タニノギムレット、キングカメハメハは皆、古馬になる前に故障で引退してしまっていた。こうした傾向から、競馬ファンの一部からは「クラッシャー」の一人として名指しで批判されている。「松田が預かると馬が壊れる」と。もちろんその華々しい戦績に多くのファンが称賛を贈ってはいたことは間違いないが…。
松田自身も管理馬の故障については十分自覚を持っていた。後のインタビューではこう語っている。
「もっと馬を強くしようと思ったら、調教で壊れるか壊れないかのギリギリのところまで負荷をかけなければなりません」
松田はもともと競馬専門紙のトラックマン(競馬新聞記者)からこの世界に転身した身。過去の職歴時代から勝てなくなった馬、負けて居場所がなくなった馬がどんな悲惨な目に合うか、身をもって知っていた。
生まれてきた命を無駄にしないために、競走馬には時として厳しく負荷をかけていかなければならない。そんな確固たる意志が、松田の心中にはあった。
手探りで勝つための道筋を見つけようとする安藤。
厳しくも己の信念に基づき競争馬と向き合う松田。
この二人の思いを背に、ダイワスカーレットは激動のクラシックロードを歩んでいくのだった。
3月、チューリップ賞。桜花賞トライアルの一戦では後に終生のライバルとなるウオッカとの初顔合わせとなった。ウオッカはかつて松田厩舎で調教助手として働いていた角居勝彦厩舎の管理馬。また自身がダービーで勝利したタニノギムレットの産駒でもあり、松田とは浅からぬ因縁があった。
前走までの反省を活かし、スカーレットは発馬を決めると逃げの一手を打った。ただこれは鞍上の安藤にしてみればスタートが上手くいっただけで、押し出されるような形で先頭に立ってしまった。安藤は後悔したが、時すでに遅し。直線でウオッカが差し迫ってきて、最後には差し切られてしまう。不満の残るレース内容だった。ウオッカは阪神JFでGⅠを制した逸材。ダイワスカーレットは誰の目に見ても、力負けの完敗に映っていた。
迎えた牝馬クラシック一冠目の桜花賞では、チューリップ賞同様に安藤は逃げの構えを見せた。前走と異なり押し出されるような形でハナに立つのではなく、素早く自らポジションを取りに行きペースを作りに行った。スロー展開で脚を溜めるのではなく、ある程度早い流れを自らが作り、その流れに乗ったまま押し切り勝ちを狙いに行った。
通常流れが早くなれば、先頭に立つ逃げ馬にとっては不利な展開になりやすい。だがこの馬のスタミナと脚力であれば逃げ切れるだろうと、半ば確信を持っていた。
結果ダイワスカーレットは桜花賞を勝利。ウオッカへ前走への雪辱を見事晴らして見せた。
またこの勝利により、スカーレット一族の届かなった牝馬クラシックを制覇。さらに05年に皐月賞を制したダイワメジャーとともに、兄弟によるクラシック戴冠という快挙を達成したのであった。
このままオークスへ向かう予定だったスカーレットだったが、本番直前に発熱を発症。敢え無く断念することになった。一方ライバルのウオッカはオークスではなく日本ダービーを選択。このレースに見事勝利すると、64年ぶりの快挙に競馬界は大いに沸き立った。
夏の休養を経て、スカーレットはGⅡローズSで始動する。この牝馬の騎乗を手の内に収めた安藤の好騎乗により、ここを逃げ切って快勝。自信を持ってクラシック最終戦の秋華賞をへ駒を進めた。
このレースでスカーレットはウオッカと三度相まみえることになった。また他にもアストンマーチャン、クーヴェルチュールが出走し、近年稀にみるハイレベルな一戦として注目を浴びていた。
ゲートがオープンするとハナこそヒシアスペンに譲り道中2番手につけたが、3コーナー付近から早々と先頭に立つ。前走同様ウオッカが仕掛けてくる前にロングスパートを開始すると、大外から追込んできたライバルを寄せ付けず1馬身半差で入線。牝馬GⅠ二冠を達成した。
名実ともに3歳牝馬の頂へと昇ったダイワスカーレット。この勝利により鞍上の安藤勝己はスカーレットの走りにさらに自信を深めていた。
「自分のレースを走らせることができれば、自然と結果は付いてくるだろう」
この自然体を引き出して勝つ、という考え方は安藤の競馬哲学でもあった。「夢を持って乗るとロクなことがない」と普段から冗談めかして吹聴しており、貪欲に勝利を狙いに行くのではなく、あくまで自然体の心持ちで騎乗する馬たちと向き合っていった。
古馬との一戦となったエリザベス女王杯は、ライバル・ウオッカとの再戦の舞台でもあったが、直前の跛行のため前日に出走を取消し。ライバル不在の中でのGⅠレースとなった。ウオッカに代わりスカーレットを迎え撃った古馬勢にはフサイチパンドラ、スイープトウショウらがいたが、スカーレットは難なくここを突破。暮れの大一番、有馬記念へ向かっていった。
この年の有馬記念は天皇賞を制したメイショウサムソン、ジャパンカップ2着のポップロックら古馬の精鋭勢が揃ったレースとなった。またジャパンCを4着で終えたウオッカ、さらには兄・ダイワメジャーも出走していた。この時のダイワメジャーの主戦騎手も安藤が務めていたが、将来性を見込みダイワスカーレットの騎乗を選択。堂々とグランプリGⅠへ挑んでいった。
レースはチョウサンにハナを奪われ、離れた2番手で終始追走をすることに。第2コーナーまでは折り合いがつかないまま進んでいき、最終コーナーで外に持ち出し追い上げを開始。ところが空けた内側から3番手を追走していた伏兵、マツリダゴッホが突いてくる。そこから突き放されて独走を許すと1馬身半差をつけられ、2着で終戦。悔いの残る負け方だったが、それでも3歳にして大一番である有馬記念に挑んだスカーレットにとっては、3着に終った兄・ダイワメジャーに2馬身半差をつける、価値のある敗戦となったのだった。
結局この年のJRA賞表彰では、最優秀3歳牝馬と最優秀父内国産馬を受賞。年度代表馬こそドバイGⅠなどを制したアドマイヤムーンに譲ったが、ダイワスカーレットは大きな戦績を手にし、激動のクラシックイヤーを終えた。
年が明けると海外への挑戦としてドバイワールドカップへの挑戦が表明された。その叩きの一戦としてダートGⅠ・フェブラリーステークスへの出走を発表、以外すぎるローテにファンは驚いたが、今こそ挑戦の時と松田は堂々と臨んでいった。
ところがこの計画は直前で暗礁に乗り上げることになる。レース1週間前、調教中にウッドチップが眼球を傷つけるというアクシデントが発生。これによりフェブラリーS及びドバイGⅠへの挑戦は頓挫することになってしまった。
結果、年内の始動戦はGⅡ大阪杯に決定。ここではメイショウサムソンやインティライミ、ドリームパスポート、さらに皐月賞ヴィクトリー、菊花賞馬アサクサキングスら10頭の牡馬と共演。堂々の1番人気に支持されると、ここも鮮やかな逃げ切り勝ちで勝利を飾った。海外への挑戦こそ叶わなかったが、古馬になり一段と成長したダイワスカーレットは順風満帆の再スタートを切ったかのようだった。
ここから宝塚記念、ひいては海外への再挑戦という青写真を描き始めたスカーレットに新たなる困難が立ちはだかる。完勝のようにみえていた大阪杯の陰で疲労が蓄積。レース後1週間経っても腫れが引かなく、ついには調教不能の状況にまで陥ってしまった。結果として管骨瘤であることが判明。春の予定は全て白紙に戻り、全休に充てられることになった。
この時、管理の松田のもとへは少なからず批判が集中していた。昨年からの強行軍と過酷な調教が彼女を苦しめたのではないかと、一部のファンは憤慨した。むろん松田にも自覚はあったが、現状を誰よりも嘆いていたのは他でもない松田自身であった。
「こんなはずではなかった」と声を大にして叫びたかった。それと当時に、自身の馬への向き合い方に少しずつ疑問が沸き上がってきていた。本当にこのままでいいのだろうか…。
夏の休養を経て、秋への復帰準備が進められた。予定よりも早く回復メニュが進み、復帰初戦に選ばれたのは秋の天皇賞。ライバル・ウオッカもこのレースを選択し、昨年末以来、5度目の対戦を迎えることとなった。そしてこの大一番で、二頭は歴史に残る名勝負演じてみせることになる。
この年の天皇賞の出走メンバーは14頭。各馬に重賞優勝経験があった。そんな中ライバルのウオッカは、昨年の有馬記念後にスカーレットが断念したドバイ遠征を実施し4着。帰国してヴィクトリアマイルで2着と、ダービー以降勝利から遠ざかっていたが、安田記念で復活を果たしGⅠ3勝目を挙げていた。叩きの一戦だった秋初戦の毎日王冠では、スーパーホーネットに敗れ2着となるも、天皇賞の巻き返しは必至とみられ、府中を得意の舞台とするウオッカと、長期休養明けで東京初参戦となるダイワスカーレット、という構図になっていた。ウオッカは単勝2.7倍の1番人気、ダイワスカーレットは3.6倍の2番人気。このライバル対決に割って入ったのが3番人気に続いた単勝4.1倍のディープスカイ。毎日杯、NHKマイル、日本ダービー、神戸新聞杯を4連勝中のクラシックホースだった。
休養明けで臨んだダイワスカーレットにとって、決して本調子ではないまま本番を迎えていた。これまでは休養明けで栗東に帰ってくると落ち着きを増していたにもかかわらず、今回に限っては調教の段階ですでに我慢が効かなくなっていた。当日を迎えゲートの中に収まっても、スカーレットは昂ったまま。明らかに平常心を欠くなかで、馬上の安藤もまた不安を募らせていた。もともと欲をかくことのない騎手である「今日はちょっと不味いことになりそうだな」と俯瞰して今の状況を捉えていた。
ゲートを出た直後、安藤の不安は的中した。いつもは徐々に、かつスムーズに加速していくスカーレットがこの日は一気にトップスピードへと加速する。向こう正面に入っても力み通しで「ああ、これはもたないな」と早々に諦観の念が入ってしまう。これは見てる側にもしっかりと伝わっていた。いつもとは異なるハイペースになり、誰しもが直線に入れば失速必至だと感じていた。
だが失速するどころか、ダイワスカーレットは誰しもが予想をしていなかった粘り腰を発揮する。直線進入時には捨て身のトーセンキャプテンに寄せられてさらにスタミナを消耗していたスカーレット。「どんなに頑張っても3着までだろう」と安藤は最内を走り、逃げ切り体制へと入った。
それを追って馬場中央からダービー馬ディープスカイ、さらにその外からウオッカが追い上げを開始する。
3頭が横一線に並んだ。ここでハイペースが祟ったスカーレットの脚が鈍る。残り200mで外の2頭が追い比べを始める、ディープスカイが抜けるかのようにも見えたが上がって来たのは先輩ダービー馬のウオッカ。それでも決め手に欠けたまま残り100mを切ると、僅かながら最内ダイワスカーレットが盛り返してきた。ディープスカイの末脚も衰えない。3頭は再び横一線となった。残り50m後続からカンパニーとエアシェイディが上がってくる。もはやだれが勝ってもおかしくない状況。大接戦の決勝線上、5頭ほぼ横一線となって通過。1着はおそらくウオッカとダイワスカーレット、その時レース見た者によって異なる答えを吐き出しそうな、そんな僅差の決着となった…。
13分にも及ぶ写真判定の結果、軍配が上がったのはウオッカだった。この世紀の決着にダイワスカーレットは敗れてしまった。それでもまさしく「敗けて強し」の競馬を見せたスカーレット、誰よりもその強さを実感していたのは馬上の男、安藤勝己その人だった。スタートから直線に入るまでの道中、どう考えても優勝争いが出来るようなレースではなかった。あれだけ集中力を欠き、力んだうえハイペースになってしまった。それでありながら、直線で見せた脅威的な粘り。もし100%の状態で走ることが出来たなら、どんな結末を迎えていただろうか、いや考えるのはよそう。おそらく今日のレースは、後年名勝負として長く語り継がれるだろう。歴史の一部を形作ることが出来たのだ、そう考んがえれば悪い気分ではなかった。
ダイワスカーレットは次走でジャパンカップの出走を見送り、有馬記念へと向かった。一方でウオッカとディープスカイはジャパンカップへと向かう。暮れの有馬記念ではウオッカが出走を見送ったため、スカーレットとウオッカ、ライバル2頭の直接対決は秋の天皇賞が結果として最後となった。それでもメイショウサムソンやジャパンカップ勝ちのスクリーンヒーロー、前年度覇者のマツリダゴッホが顔を揃えた暮れのグランプリは、大きな盛り上がりをみせた。そして単勝1番人気に支持されたダイワスカーレットはこのレースを制し、37年ぶりとなる牝馬による有馬記念制覇を達成したのであった。
翌年、調教師の松田は再びスカーレットの海外遠征を企図。ドバイ、イギリス、アメリカ、そして日本の4か国を転戦する一大プランを計画したが、前哨戦に定めたフェブラリーS直前で再び発熱を発症。翌日屈腱炎と診断されると、海外遠征を断念、ついには引退を表明するまでに至った。
通算成績12戦8勝、デビューから連対し続ける「生涯連対」を達成。シンザンの19戦15勝2着4回に次ぐ、史上第2位の「生涯連対」記録だった。
故障による引退ではないものの、またしても志半ばで馬を引退させてしまったことにより、再び松田のもとに一部批判的な視線が向けられたが、この引退を誰よりも悲しんでいたのは松田本人だった。万全の状態で海外に挑戦することが出来ていたのなら、今まで日本馬では到達することの出来なかった高みまで行けただろう…。
後年、松田厩舎は成績低迷の時期を迎えることとなる。理由は様々あるが「段々と馬が壊れることが怖くなってきた」と、松田自身が以前と比べ調教をセーブし始めたことが原因ではないかと言われている。
しかしクロフネ、タニノギムレット、キングカメハメハと、早々と引退した名馬たちは数々の後継馬を輩出し、種牡馬として新たな役割を果たした。特にキングカメハメハ産駒は10頭以上のGⅠ馬を送り出し、大種牡馬として後の競馬界に大きな足跡を残した。松田国英は2020年にタイムフライヤーでエルムSを制するとそれが最後の重賞制覇となり、翌21年2月にJRA調教師を定年で退いた。松田の弟子でウオッカの管理調教師を務めた角居勝彦も、エピファネイア、キセキといった名馬を手掛け同年に現役を退いた。
現在松田の門下生ではジャンタルマンタルの調教師・高野友和。ドウドュースの調教師・友道康夫が、栗東のトップステーブルとして日本競馬界を牽引し続けている。名馬を育てた調教師は、人材教育の名人でもあったのだ。
主戦騎手を務めた安藤勝己は、09年に今度はブエナビスタ騎乗で牝馬二冠を達成。翌2010年1月には、中央競馬史上24人目となる騎手通算1000勝を達成。これにより史上初の中央・地方双方での1000勝を合わせて達成した。その後、2012年11月24日の京阪杯でパドトロワに騎乗したのを最後に、レースでその姿をみせることがなくなる。
翌13年に現役引退を表明。「自分自身が満足できる騎乗が出来なくなった」という、彼らしい引退理由だった。現在は競馬メディアに出演しTV・ネット等で競馬解説に努めている。
ダイワスカーレットは引退後社台ファームにて繁殖牝馬となった。毎年仔を儲けていたが、第8仔のアンブレラデートがフィリーズレビューで4着に入った程度で大きく活躍する馬は現れなかった。また1仔~10仔まで連続して牝馬を産むという珍しい記録を保持している。21年、11仔目にして初の牡馬を出産。昨年23年に繁殖牝馬としての活動に幕を下ろした。
決して長いとは言えなかったその競走生活において、ダイワスカーレットは圧倒的な走りを見せつける一方、多くの困難・苦難に直面し、その度に成長しては名勝負を繰り広げてきた。それは自身の才覚だけでなく、終生のライバルの存在と、調教師と鞍上という、優れた導き手の助けがあってこそ、成し遂げられたことに異論を挟む者はいないだろう。
冒頭の「助長」の逸話を語った儒家・孟子は性善説を主張し、仁義と民本による王道政治を目指す中で数多くの名言・言説を残してきた。
その中にこんな一説がある。
"自ら反みて縮くんば、千万人と雖も吾往かん"
(みずからかえりみてなおくんば、
せんまんにんといえどもわれゆかん)
これを現代語に訳すると、以下のようになる。
自分が正しいと確信が持てるなら、
阻む者がどれほど多かろうと、
信じた道をわたしは進む。
「GⅠエリザベス女王杯、まもなく出走です」
~はじめに~
⚔東西統一最強牝馬決定戦⚔
皆さまお疲れ様です。中一週明けてのお届けとなります。あっという間のような、久しぶりのような、なんかよく分からない感じですが、毎日忙しくはあります。小忙しいです。
そんな中、当noteに目を止めていただいたそこのアナタ、誠にありがとうございます!秋競馬も佳境に入ってきましたが調子はいかがでしょうか?
タイツ式は今年もメタメタです笑このままいくと回収率80%割りますね、トホホ。
まあこの事はXでは大々的に言いません、恥ずかしいから(;^ω^)笑
そして今回は数いる名牝の中でも未だ高い人気を誇るダイワスカーレットのお話を書いてみました。有名馬ということで、ちょっと長くなってしまいましたね。また今回は投稿が遅くなってしまい申し訳ございませんでした。来週以降はペースを上げて、年末まで駆け抜けていきたいと思っています。
それではここから、本格的なGⅠエリザベス女王杯の予想と推奨馬の解説をお届けしたいと思います。どうぞ最後までお付き合いくださいませ。
舞台は京都!芝2200m
スタンド前からスタート、外回りを約1周するコースです。
高低差の大きい3コーナー「淀の坂」を擁する特殊コースでは、京都での好走経験のある馬の活躍が顕著です。京都巧者やリピーター馬を積極的に選定したいところ。4コーナーにかけてスムーズに加速した馬が直線で末脚を伸ばしてきます。馬だけでなく騎手にもタイミングを計る勝負勘が求められますね。20~22年阪神で行われた同レースは差し追込みが決まりましたが、過去10年の京都開催では先行馬の活躍が目立っています。
外回りで差し追込みも決まりますが、直線が平坦な京都ではスピードに乗ったまま前が残る点も注意が必要です。
昨年のレースを振り返る
勝ち馬のブレイディヴェーグは前走ローズS2着でした。最内スタートで出遅れてしまいましたが、道中押し上げて番手を確保。直線では内から抜け出し勝利。恒例ですが、ルメール騎手の辣腕光る好騎乗でした。
2着はルージュエヴァイユ。エプソムカップ、府中牝馬Sに続き3戦連続での2着に泣きました。3着はハーパー、好位での立ち回りが巧妙な走りでした。
前半5F61秒1でけっこう緩い流れに。ブレイディヴェーグの上がり3Fタイムは34秒4はメンバー5位。この年もやはり、好位に上手く取り付いた馬が上位に入ってきています。上がり最速の切れ味よりも、馬群やインコースを突ける器用さ。スタートから先団に付ける立ち回りの上手さが求めらる気がします。
女王戴冠へ!注目TOPIC5
ここからは勝利への方程式(?)かどうかは分かりませんが、過去10年のデータに基づいた…と言いたいところですが今回は阪神開催を除く京都競馬場で行われた7年間のデータをもとに、TOPICを5点紹介させていただきます。
📝まずは重賞実績に注目
過去7年で連対した14頭のうち9頭にGⅠでの、4頭にGⅡでの連対経験がありました。昇級で挑んでくる馬もいますが、基本GⅡ以上のレースでの実績がないと通用しません。近年はローズS他前走GⅡで3着以内に入った馬が本番でも馬券内に入ってくることが多いです。
📝1番人気の実績は?
阪神3年間を含む過去十で見ても【2-2-2-4】で連対率40%。過去10年で2勝しか挙げていません。大阪杯勝ちレイパパレ、3冠牝馬デアリングタクト共に6着でした。ハイレベルなレースでの実績は必須ですが、一方でGⅠ馬だからといって結果を残せるかというと、必ずしもそうではないですね。荒れるレースというのも納得です。前走4着以下の成績で今回1人気になった馬の成績は【0-0-0-3】と不振に終わっています。想定1人気のレガレイラは果たして…?
📝逃げ先行馬の粘り込みに注意
穴馬の激走多いGⅠ。7年間で6人気以下から連対した馬は5頭。その5頭のうち4頭が道中3番手以内につけていました。クロコスミアが17年から3年連続で粘り込みましたね。
阪神で行われた3年間では比較的差し・追込みも決まりましたが、京都開催7年の内5年(5回)道中3番手以内につけていた馬が連対しています。京都外回りは差しにも向いていますが、直線が平坦なため前残りも起きやすい点に注意です。
特に穴馬の逃げ先行タイプの注意、というより期待したいです。
📝お前、前走なんだった?
前走混合古馬GⅡに出走した馬は
オールカマー【3-1-0-13】
札幌記念 【1-1-1-1】
京都大賞典 【0-0-0-12】
となっています。3歳馬なら前走秋華賞に注目と行きたいところですが、今年のエントリーの中で3歳馬はレガレイラのみ、そして周知の通り秋華賞には出走していません。
前走6着以下からの激走パターンは?
連対馬全14頭のうち前走6着以下の馬は4頭。秋華賞6着以下から連対した2頭と、その他府中牝馬Sで7着に敗れた2頭。16年シングウィズジョイと、21年の勝ち馬アカイイトです。府中牝馬S組は凡走からの巻き返しが多いので、要注目です。
時間のない方へまとめ画像だよ
森タイツ式推奨馬の解説
才能の証明を
2歳中距離女王レガレイラが3歳にして古馬女王の座へ挑みます。
昨年7月函館新馬戦でデビュー勝ちを果たすと、12月の2歳GⅠホープフルSへ参戦。シンエンペラー、サンライズジパングら牡馬の精鋭を抑え、史上初の牝馬となる勝利を飾りました。このレースでは大きく出遅れ道中はほぼ最後方に位置、スローペースから直線では大きく外を回し一気に加速、器用に立ち回ったシンエンペラーを豪快に差し切りました。
レガレイラはスワーヴリチャード産駒、当noteで何度も解説しましたが、昨年新種牡馬リーディング1位の実績で、今年も20位と比較的上位につけています。昨年から新種牡馬として活躍していますが、産駒の重賞勝利数は5頭いて6勝を挙げており、アーバンシック以外の4頭はこの馬を含めすべて牝馬です。
またこれも何度も解説しましたが、産駒の特徴として関西よりも関東圏において強さを発揮しています。昨年より通算54勝挙げていますが、京都より西の競馬場で勝ったのは9勝のみ。今年に入ってからは京都で4勝だけで、その傾向は顕著です。しかしながら先日のクラシック菊花賞では産駒のアーバンシックが同じくルメール騎手騎乗で勝利を飾りました。傾向があるのは間違いないですが、今回も名手の騎乗ということでそこまで気にしなくてもいいかもしれません。今回距離は異なりますが、むしろ楽しみです。
レガレイラは現在6戦して2勝を挙げていますが、ここ3戦では全て馬券外に飛んでいます。2歳時の頃の期待値から考えれば、不十分といえる結果だと思います。気性が難しく、発馬にも難があるため、ルメール騎手の手腕をもってしても高確率で出遅れてしまいます。エリ女の舞台は前残り傾向が強いことは先述しましたが、出遅れからの追込みにかけるレガレイラの競馬に、展開が向かないことは言うまでもありません。しかしこの馬は、過去出走した全てのレースにおいて上がり最速を叩き出しており、スピード勝負になれば歴戦の古馬たちにも引けを取りません。中山・東京、そして中京と異なる性質を持ったコースで常に最速の末脚を披露してきました。舞台が変わる京都でも、そのスピードと瞬発力は間違いなく活きてくるでしょう。
今度こそ、自らの素質と才能を証明する機会がやってきました。
新女王誕生へ、レガレイラの末脚に期待しましょう。
復活の狼煙を
昨年の好走馬、ハーパーの復活に期待します。
ハーパーは昨年のGⅢクイーンカップを勝利すると、クラシック3走全てに出走。桜花賞4着、オークス2着、秋華賞3着、そしてエリザベス女王杯で3着。と勝ちきれないまでも安定した走りを続けていました。が今年に入り古馬の仲間入りを果たすと凡走を連発。前走府中牝馬Sでは最下位に敗れ、今回もだいぶオッズを落としそうです。
ここで当でnoteでは昨年好走を果たした舞台で、復活の狼煙をあげることが出来るか注目してみたいと思います。
ハーパーはハーツクライ産駒、この産駒の特徴は母父トニービンの影響が濃く、中距離から長距離まで幅広くこなせる印象です。潜在的なスタミナに可能性を感じます。そこに加え母セレスタはアルゼンチンのマイルGⅠ勝ち、母父Jump Startは米単距離重賞制覇の実績があり、この影響からマイル戦でも戦い抜けるようなスピード・追走力にも秀でています。万能タイプといった表現がぴったりですね。
この馬には相手なりに立ち回れる器用さがあり、一方でクラシック戦線では馬群を割るなど、要所では勝負強さも見せることが出来ます。古馬になり馬自身に走る意欲が無くなったかのような感もありますが、エリ女はリピート好走や素質馬の復活を多く目にすることが出来るレースです。
思えば昨年のエリ女以降いきなり有馬記念に参戦で、これはいくらなんでも「無理ゲー」だっと思いますし、年明け大阪杯は古馬になっていきなりの混合重賞。府中GⅠのVMは距離に問題ありと、適性外のレースを走らされてきた経緯があります。それ故に前走府中牝馬での凡走は残念、且つ不可解ですが、であるからこそ妙味も発生するのではと、もう一度ここで印を打ってみたいなと思っています。
立ち回りが得意な反面決め手に欠ける、このタイプは同世代の牡馬でいうとタスティエーラに似ている気がします。彼もまた適性外のレースを走り続け凡走を繰り返してましたが、得意条件に戻った東京、秋の天皇賞では見違えるような好走をみせました。こういったタイプは混戦ムードや他馬にミスがあった場合などに、必ずといっていいほど台頭してきます。
戦前から荒れ模様が予想されている今年のエリザベス女王杯、単勝馬券とは言いませんが、単穴・複穴候補としてピッタリの一頭だと思い推奨させてもらいます。
血統の正当性を
「牝馬の国枝」厩舎からサリエラが出走。前走のオールカマー12着から捲土重来、初の重賞奪取を狙います。
サリエラは21年11月の東京新馬戦芝1800mでデビュー、2連勝を飾ると翌年の3歳馬路線では秋のローズSに出走し2着。次走のL競争白富士Sを快勝。その後もあまり使い込ませず、緩やかですが順調に成長を遂げてきました。今年に入ってから長距離戦線に名乗りを挙げ、ダイヤモンドSではテーオーロイヤルの2着と好走するも、以降2戦春の天皇賞・秋古馬初戦GⅡオールカマーでは共に12着と大敗を喫しました。
サリエラはディープインパクト産駒です。今更説明不要のリーディングサイアーにして大種牡馬として、数々の重賞馬を輩出してきました。芝1400~2400mまで幅広く活躍馬を出しており。京都2200mへの適正もまず問題はないです。ジェンティルドンナやグランアレグリアに代表されるよう、古馬重賞で活躍する牝馬も多く存在しています。
牝馬限定の重賞路線は2000m以上のレースが少なく、出走する馬にとってその距離適正は最も重要といえます。中~長距離適性の高いディープインパクト産駒にとってエリ女はおあつらえ向きの舞台です。
コースを限定することなく芝2000m~2400m戦の種牡馬別実績を順に並べると、ディープインパクトが圧倒的な連対率を誇ります。ちなみに2位はディープ産駒のキズナ。血統を背景とした舞台適正でいえば、今回ディープ産駒ただ一頭で出走するサリエラにとっては、この上ない舞台だと言えるでしょう。
サリエラにとって再起を図った秋の初戦、オールカマーは大敗に終わりました。同距離のエリ女で再度復活を期すわけですが、昨年のエリ女では6着に敗れてはいるものの、勝ち馬とはコンマ3秒差で大きく敗けてはいませんでした。出遅れることなく好位に取り付けば十分チャンスは巡ってくるでしょう。そして、鞍上には世界のトップ騎手であるR・ムーア騎手を迎えることが決まっています。短期免許を取得し、JRAの重賞には2010年から91戦に参戦し17勝を挙げています。勝率19%、複勝率に至っては33%と驚異的な実績です。海外の名手に導かれ、一度は失った輝きを再び取り戻すことが出来るかどうか、要注目です。
極上の逃げ足を
今年3月の中山牝馬S勝ち馬、コンクシェルの大逃げに期待です。
デビュー時は差しの競馬を覚えていたコンクシェルですが、昨年夏、坂井瑠星騎手が初めて手綱を取った1勝クラスで逃げの競馬を敢行。これがハマり条件戦を2連勝とすると、今年乗り代わった岩田望来騎手が、再び先行策からの逃げ切りでその才能を開花させました。
コンクシェルはキズナ産駒、現役時代も種牡馬になってからもその名は広く知れ渡っています。サリエラの項目で解説したように、ディープインパクト同様、産駒の距離適性はまず間違いないです。また今年に入って幾度となく解説いたしましたが、今年はキズナイヤー。11月現在、重賞勝利数14で、種牡馬のリーディング1位はキズナです。またコンクシェルの牝系を辿るとガリレオの名前がありますが、この名前の入ったキズナ産駒にはバスラットレオンやキャリックアリードなどがいます。私見ですが、キズナと欧米血統の配合はジャスティンミラノ然り、良馬が多い気がしており、その傾向は牝馬であっても変わらないでしょう。
この馬はデビュー当時から周囲を気にする素振りを見せるなど、気分屋の一面を持っており、基本馬群はNGだと思います。岩田騎手も「先行するとすごく楽しそうに走る」とコメントしており、ここも恐らくハナを主張してくるでしょう。近走は1600~1800mで逃げ切れず凡走を続けていますので、距離延長のここでどうかという疑念も湧いてきますが、今回は他に逃げ馬も見当たりません。またエリ女の舞台が逃げ先行に適しているのは先に解説した通り。上手く逃げることさえ出来ればその可能性は一気に広がります。先日の天皇賞においては、ホウオウビスケッツで見事な逃げ足を披露した岩田騎手です。鞍上のGⅠ初制覇も含め、期待をかけてみても面白いのではないでしょうか。
おわりに~その他の推奨馬について~
ここまでお付き合いいただいた方がいらっしゃいましたら、誠にありがとうございます。既に金曜午後、予想を上げるにはあまりにも遅すぎるタイミングに、もう読んでくれる人はそんないないんじゃないかなと思っています。言い訳ですが今月はなかなか多忙でして、思うように時間を割けていない現状です。
ここから最後にその他の有力馬について解説を添えて了とさせていただきます。あなた様の馬券が的中することをご祈念しています…。
そして来週のマイルCSでは、モーリスの話でも書こうかと思っていますのでそちらも宜しくお願いいたします。
では、また…。
📝ルージュリナージュ
🏇鞍上:池添謙一
前走府中牝馬S5着、内容的には悪くなかったのでこの人気なら逆に推しても良いのではないかな、と穴馬候補に推奨したい一頭です。
前走は出遅れ最後方から追い込みをかけてきていますので、同じような競馬だとまず上位進出は難しいでしょう。ただここで池添騎手に乗り替りということなので、和生騎手から劇的な鞍上強化という訳ではないものの、京都の乗り方をよく知ったいまだ前進気勢の強い騎手ですから、脚質転換で前目の競馬が出来るのなら台風の目になる可能性もあるかなと。府中の直線では上がり2位の末脚を繰り出しています。スピードは出走馬中上位にあると思いますので、期待してみても良いのではないでしょうか?
ちなみスピルバーグ産駒はあまり見かけないですが、その父はディープインパクトですから、目立ってはいませんが血統評価でもそれなりに推せそうです。
📝ホールネス
🏇鞍上:坂井瑠星
マーメイドSで3着に入った他、下級条件では既に4勝を挙げる素質馬です。鞍上を務めてきた西塚騎手から坂井瑠星にここで乗り替わっています。
個人的には西塚君騎乗で見たかった馬ですが、ゴドルフィンの所有馬ということでオーナーサイドの意向が強いのでしょう。仕方なしですね。
2勝クラスまでは早い上がりを使って快勝、マーメイドSでも自慢の末脚を披露しており、メンバー落ちの感がある今年のエリ女であればやれそうな雰囲気はあります。とはいえいくら近走が良かったのと、GⅠ騎手への乗り替りとはいえ、2番人気では少々やり過ぎかなとも思います。正直通用するかどうか未知数なので、このオッズでは厚く張れないというのが私個人の見解です。
📝スタニングローズ
🏇鞍上:Cデムーロ
一昨年の秋華賞馬、仏のローズインメイを祖とするいわゆる「薔薇一族」の末席にいる一頭です。また父キンカメ×母父クロフネの肌も持っているので血統的な評価は申し分なしと言えるでしょう。GⅠ実績はありますが近走では目立った好走履歴はありません。短期免許のCデムーロ騎手鞍上ということで、かなり期待できるかなと思っていましたが、こちらも想定3番人気と思いのほか評価されていますね。ホールネス同様、このオッズでは手が出しにくいなあと思ってしまいます。とはいえ追切の内容が良く、近走もスランプ期に比べれば走れるようになってきているので、好走激走を見せても不思議ではないと思います。オッズ妙味という点から自分は評価を下げましたが、全然アリだとは思います。
📝シンリョクカ
🏇鞍上:木幡初也
前走GⅢ新潟記念で待望の重賞初勝利を挙げたサトノダイヤモンド産駒。
デビュー当時からその素質を評価され、重賞戦線に頻繁に顔を出すも1勝クラスのままなかなか結果を残せないでいましたが、前走でようやく覚醒した感ありです。ゲートの出と先行脚質が持ち味なので、発馬を決め好位取りが叶えばここでの好走も見込めそうです。前残り傾向が強いことは先述した通りです。前走はGⅢといえどそれなりのメンバーが揃った混合重賞でしたので、前走並みかそれ以上の出来と判断できるなら重たい印を打つのも良いかもしれません。
📝ラヴェル
🏇鞍上:川田将雅
想定5番人気、この人気の馬に川田騎手が乗ることもまあ珍しいことだと思いますし、彼が乗らなけらばもっと人気を落としているでしょう。そのくらい近走は走れてないイメージです。21年に2歳重賞アルテミスS勝ってからは勝鞍に見放されています。素質は間違いないと思いますが、馬自身に走る意欲がなくなってきているのが大きな要因かと思われます。陣営も四苦八苦しながら対策を練っていますが、結果に結びつきません。個人的には若駒の頃から期待している馬なので、買い続けてきていますし、ここで川田Jに乗り替りということで良い化学変化が起こればと思っています。
穴馬の激走だけでなく、復活劇の多く見受けられるエリ女の舞台なので、その点にも期待して印を打とうと思います。
📝モリアーナ
🏇鞍上:岩田康誠
この馬も買い続けている一頭なので、ここも印を打ちたいと思っていましたが、典さん鞍上で見たかったというのが本音です。岩田父ももちろん悪くないと思いますが…。
基本後方からの追込み脚質なので、展開が向かなそうな気がします。岩田騎手騎乗ということで伝家の宝刀インコース突きを期待したいところです。比較的内寄りの枠を引けたので、そこは賭けてみてもいいかも…?
ただし近2走では上がり3ハロンのタイムが落ちており、展開の"あや"もあったかもしれませんが、以前のような切れ味を失っているのだとしたら危ういですね。重い印は打たない方が良いのではないかと考えます。
📝シンティレーション
🏇鞍上:Tマーカンド
前走府中牝馬Sで10人気から2着に激走。上がり最速を計測しており、強い競馬を見せてくれました。
穴馬候補として強く推したいな、と思っていた一頭ですが…。
戸崎騎手が降りたということで、少し評価を下げました。鞍上はマーカンド騎手ということでぶっちゃけ不安です笑
まったく低評価という訳ではないのですが、追込み一辺倒の騎手といった感じなので、広く長い前走のような府中の舞台なら推せると思いますが、追込み馬にとって仕掛け所が重要になってくる、前残りの京都外回りの舞台では立ち回りに不安が残ります。
直線に進入してから剛腕で鞭を振るうも届かず、なんかそんな結果に終わりそうで、印を打つとしたら紐までにしておきます。
今回参考にさせていただいたサイト
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