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GⅠジャパンカップ

序文:巨人殺しのパラドックス

旧約聖書に登場する巨人ゴリアテは、身の丈290cmを超える大男だったと伝えられる。
青銅の兜をかぶり、帷子(かたびら)と膝当てを身に纏い、重さ7キロの鉄の大槍を片手で振り回した。
イスラエル王国に敵対するフィリスティア軍の大将格として、サウル王が治めるエルサレムに侵攻し、多くの敵兵を殺めてきた。
この向かう処敵なしの大男を迎え撃ったのは、ダビデという名の小柄な羊飼いの青年だった。
剣も槍も持たぬ、鎧さえも身につけないまま、ダビデはその拳に掴んだ石を掲げ、こう叫んだ。
「お前は剣と槍を頼りに戦うが、私はお前がなぶったイスラエルの戦列の神、万軍の主の名を頼りに戦う。戦いは剣と槍の力で決するものではないことを人々は知ることになるだろう。これはイスラエルの神の戦いである」
彼が放った飛礫はゴリアテの額に命中した。たまらず倒れこんだゴリアテから剣を奪ったダビデはそのまま首を刎ね、殺戮の巨人を打ち取ったのだった。
この逸話はキリスト教義に乗っ取れば、「信仰(信念)さえあれば自己よりも強大な敵を打つ倒すことが出来る」と受け取ることが出来る。
一方で、この神話が事実だったかどうかという点については現在も考証がなされており、ダビデが実在したとすれば、古代イスラエルの王として紀元前1000年頃の人物だと仮定される。聖書以外の文献資料がなく、考古学的根拠に乏しいため、史実性は議論中である。
「身の丈約3mの巨人を、石ころひとつで倒す」と聞けばただの寓話に過ぎないと思うかもしれないが、科学的な顕著から言えば全くもってあり得ない話という訳でもない。記録が残る中で最も身長が高い人物は、1940年に亡くなった米イリノイ州のロバート・パーシング・ワドロー氏で、その身長は272cm。また1909年にヘルシンキで生まれ、フィンランド軍に入隊したバイノ・ミリリンヌは250cmで歴史上最も背の高い兵士だったといわれている。巨人ゴリアテが伝承通りの背丈で存在したとしてもおかしくはない。
羊飼いのダビデが放った石礫は、紐と布で作られた原始的な投石機ではなかったかと推測される。古代において投石は主だった狩猟の方法として用いられ、この「巨人殺し」も遠心力と投射角が合わされば、充分な殺傷能力を発揮できる。決して不可能だとは言えないだろう。
こういった弱者の立場が強者を打ち倒すエピソードは世界各地の神話や寓話に散見され、現代に生きる私たちに教訓や隠喩を残してくれる。
「ダビデとゴリアテ」の逸話は「信念は強大な敵を倒せる」と受け取ることもできるし、「柔よく剛を制す」とも「知識は力なり」とも解釈することができる。


さて時は流れ現代日本の中央競馬。1984年のジャパンカップにおいて、海外からやってきた精鋭馬たち、当時の日本馬にとっての巨人の如き強敵を、その逃げ足で打倒した一頭の牡馬がいた。

カツラギエース
史上初、日本馬によるジャパンカップ勝利馬である

長い日本の競馬史において、皐月賞・東京優駿・そして菊花賞の3大クラシックレースに勝利した馬、いわゆる「三冠馬」は史上8頭存在する。
三冠馬とは競馬における真の強者であり、奇跡のような存在だがこの「奇跡」が2年連続で起こった事例が一度だけある。
83年、シンザン以来19年ぶりとなったミスターシービーと、翌84年に誕生した無敗の三冠馬「皇帝」シンボリルドルフである。
私自身がリアルタイムで観戦あるいは視聴してきた三冠馬はディープインパクト、オルフェーヴル、そしてコントレイルの3頭になるが、当たり前の話、この3頭のうち2頭でも同時に出走したレースは一度足りとてない。
しかしながら84・85年に競馬を体験した者は、この三栄冠馬が同時に出走するレースを見る機会に恵まれていた。84年以降のGⅠ重賞でシンボリルドルフとミスターシービーは3度対戦している。
1984年11月のジャパンカップはそのうちのひとつで、菊花賞を制し晴れて三冠馬になったルドルフが選んだ次走、つまり三冠馬同士の初顔合わせとなった一戦だった。

ジャパンカップは1981年に始まった国際招待競走であり、日本における初の国際GⅠレースである。毎年発表されるJRAの厩舎関係者表彰において、最優秀騎手賞と最優秀調教師賞の資格を得るにあたり「1着をとらねばならない競走」のひとつに指定され、いわゆる「八大競走」と同格の扱いを受けている。
今でこそ日本の有力馬が勝つことが当たり前となっているが、創設当時の日本馬と欧米馬の実力差は、天と地ほどの開きがあった。これは大げさな表現でもなんでもなく、日本競馬はヨーロッパよりも10年遅れていると言われており、実際過去3回のジャパンカップにおいて、日本馬は外国馬に完膚なきまでに叩きのめされていた。この先10年、いや20年は日本馬の勝利はないだろうとも言われていた。
そんな中、84年の第4回大会は今までと少し違った雰囲気で始まろうとしていた。欧州馬たちが強力なのは毎度のことだが、日本馬からも2頭、シンボリルドルフとミスターシービーという三冠馬が出走するのだ。
日本の競馬ファンたちは大いに湧いた。どうか日本競馬の夢をかなえて欲しいと。
だがこのレースを制したのはルドルフでもシービーでもなければ、欧州からの刺客でもなかった。
勝ち馬の名はカツラギエース。単勝オッズ55倍、当日は10番人気からの出走だった。同年の宝塚記念でGⅠ初勝利を挙げていたものの、前走秋の天皇賞ではミスターシービーの5着に敗戦。日本と海外の強豪たちの陰に隠れ、レース当日はほとんど期待されていなかった。この文字通りの伏兵は、いかにして日本競馬史上に残る偉業「巨人殺し」を達成したのだろうか。

カツラギエースは1980年4月、北海道は三石町の小さな牧場で生を享けた。生産者は片山専太郎。家族経営の小規模牧場の主であり、JRAで勝利を挙げる実績馬はほとんど輩出したことがない。いたとしても下級条件を勝つ程度の馬だけだった。重賞に勝利した馬は、後にも先にもカツラギエースただ一頭だけである。
エースの母はタニノベンチヤという牝馬で、実業家・谷水雄三の所有馬だった。後年タニノギムレット・ウオッカの馬主としてダービーを制することになる人物だ。この頃活躍した馬には71年に有馬記念を勝ったタニノチカラなどがいたが、タノベンチヤはJRA新馬戦で1勝しただけの馬で、繁殖牝馬としての実績も乏しかった。
父はボイズィーボーイという馬で、海外での実績は多少あるものの重賞勝利はなく、引退後は豪州で7年間種牡馬として活動しその後日本に輸入されていた。テスコボーイなどを産んだプリンスリーギフトの血統にあたるが、ボイズィーボーイ産駒でカツラギエース以外に活躍した馬は他に見当たらない。
生まれも育ちも、その血統も地味だったカツラギエースだったが、とある人物の目に留まる。名伯楽といわれた馬商の佐藤伝二がこの馬を見い出したのだ。76年のダービー馬、クライムカイザーや「白い逃亡者」ホワイトフォンテンといった名馬たちの素質を見抜き、仲介してきた人物である。
現在も色濃く残る血統「エーピーインディ系」。そのエーピーインディを91年にアメリカのセリで購入したのもこの男だった。佐藤の見い出した馬は皆よく走り、ことごとく重傷を制した。

佐藤の仲介でカツラギエースを購入、馬主となったのは野出長一という人物で「オサイチ」「カツラギ」の冠名で知られていた。カツラギエース以外のGⅠ馬では、90年の宝塚記念を制したオサイチジョージなどが有名だろう。82年春、2歳になったエースは栗東・土門一美厩舎に入厩した。土門一美はこの時35歳、前年に開業したばかりの新米調教師だった。一美の父・土門健司もまた栗東の調教師で、戦前は騎手としても活躍していた。調教師となってからはテルテンリュウで宝塚記念を勝利するなどの実績を残している。
土門親子と親交の深かった野出は厩舎の「開業祝い」として、カツラギエースを預けたのだった。
同年9月の新馬戦でカツラギエースはデビュー、育成時から脚がひょろ長く馬体が細かったエースは、直前の調教でも目立ったところがなく、当日は6人気と低評価だった。
ところがこのデビュー戦で8馬身差の圧勝を飾り周囲をあっと驚かせると、1年目で4戦2勝の戦績を残した。
翌年2月のOPで3勝目を挙げ、クラシック競争への出走権を得た。しかし同期の馬たちに比べまだ馬体がしっかりと出来上がっていなかったエースは、クラシックで大敗を喫してしまう。
皐月賞は不良馬場に脚を取られ11着惨敗。次走NHK杯で意地の勝利をもぎ取り、6人気で挑んだダービーは6着に敗退した。
秋初戦の神戸新聞杯で2着に好走すると、次走京都新聞杯ではミスターシービーに勝利し通算5勝目を挙げた。またこの時から鞍上は西浦勝一に乗り替わっていた。
秋になり馬の仕上がりに自信を持った陣営は、期待を込めて三冠目の菊花賞に送り込んだが、ここで21頭立ての20着とブービーに沈んでしまう。菊の敗因は距離適性の問題なども考えられるが、陣営もその根本的な原因をよく理解していなかった。とかく本番、大一番になると勝負弱さを露呈してしまう。ちなみにこの年のクラシックにおいて史上3頭目となる三冠馬に輝いたのがミスターシービーである。

翌年古馬になってからカツラギエースは勢いに乗った。始動戦の鳴尾記念を4着とすると、大阪杯、京阪杯、そしてGⅠ宝塚記念と春の重賞戦線で3連勝を飾る。か細かった馬体に筋肉が突き、完成されてきた。昨年から鞍上を務める西浦勝一とも上手く呼吸を合わせるようになっていた。
クラシック年代の京都新聞杯から引退までの11戦の鞍上を務めた西浦は、管理の土門一美の父・健司と関わりの深い騎手だった。幼年期を高知で過ごした西浦は、高知競馬で調教師を勤めていた父の影響で騎手を志した。父の勧めで、高知ではなく中央の門を叩いた西浦は69年にデビュー。土門健司厩舎に所属した。この年は本人を含め26人もの新人騎手がデビューした年で、西浦は88戦して僅か2勝という結果しか残すことが出来なかった。
浮き沈みの激しい勝負の世界であっても、師匠の土門はその後も西浦に自身が管理する馬の乗鞍を任せ続けた。今よりもずっと師弟関係の濃かった時代とはいえ、時には馬主関係者に頭を下げてまで弟子を乗せ続ける師匠に、西浦は忸怩たる思いを抱き続けていた。
数多くの乗鞍をこなしながら、西浦は次第に勝てる騎手へと成長していった。77年アイノクレスピンで牝馬クラシックへ参戦し注目を浴びる。80年にテルテンリュウで宝塚記念、翌81年でアグネステスコでエリザベス女王杯とGⅠを立て続けに勝利し、トップ騎手の仲間入りを果たした。
そして新たに騎乗することになったカツラギエースは、恩師である土門健司の息子である一美厩舎の馬。西浦にとっては感慨深い思い溢れる、特別な一頭だった。
10月の毎日王冠では同期の三冠馬、ミスターシービーに2度目の勝利。休養明けで本調子ではなかったシービーが相手とはいえ、完勝といえる内容だった。
しかし次走の天皇賞では、シービーに借りを返される形で5着に敗れてしまう。若駒の頃からの勝負弱さがここでも出てしまった。
宝塚記念に勝利してはいたが、あのレースにはシービーもルドルフも出ていなかった。勝負付けはまだ終わってはいない。カツラギエースを真のGⅠ馬にするべく、陣営は次戦の舞台に国際GⅠレース・ジャパンカップを選択したのだった。

4回目を迎えたこの年のジャパンカップは全14頭立て。今とは異なり、海外馬の国際見本市に出走する日本馬は4頭だけだった。シンボリルドルフ、ミスターシービー、ダイアナソロン、そしてカツラギエースである。
前年三冠馬のシービーは1人気、当年三冠馬のルドルフは4人気、前走で敗れているエースは10番人気に留まった。この時2人気に支持されていたのは英国馬のベッドタイムで、英仏で9勝を挙げている上り馬だったが、勝った重賞は全てGⅢレース。欧州における超一流という訳ではないにせよ、それでも2人気に支持される辺りに、当時のジャパンカップが日本馬にとっていかにハードルの高いレースだったかが伝わる。
そんなレースに臨むことになったカツラギエースとその陣営、鞍上の西浦は必勝を祈念し、様々な策を講じ周囲のスタッフに相談を持ち掛けていた。
最も不安だったのが距離適性の面だった。2200mの宝塚記念を制していたが2400m級のレースでは連対したことがない。たかが1Fだが、されど1ハロンである。また栗東から府中への長距離輸送があるため、普段以上にストレス面で負荷がかかる心配があった。そこで西浦は当日、通常より30cmも長い手綱を使用した。少しでもストレスを軽減させるため、馬の口にハミが当たらないようにする苦肉の策だった。
エースの厩務員は原園講二という男だった。後に栗東の名物厩務員となる人物である。原園はこの時「エースにメンコを装着させてみてはどうか」と西浦に持ち掛けた。馬をレースに集中させるため、今でも用いられる一般的な手法だが、この時原園が用立てたのは通常よりも耳の部分だけ皮を厚く張った特注品。「東京競馬場の大歓声を聞いても驚かないように」との配慮だった。

レース当日、真っ白いメンコをつけたカツラギエースを見て西浦は満足した。いつもより気合が入っている、そんな面構えに見えたからだ。
一方厩務員の原園はひとり浮かない顔をしている。西浦がどうしたのか尋ねると、こう返ってきた。
「すいません、メンコの件、まだ土門先生に話していないんです」
反対されると外さざるを得なくなるから、という理由だった。
「いやいやいや、どう考えてもこの後バレるだろう」
ほどなくして土門が遅れて装鞍所へやって来た。いつもと違うエースを見て土門は目を丸くした。白い覆面を被っている、なんだこれは。
「なんでしょうねこれは、あの、後で外すんですよこれは」
二人は必死にごまかした。ところがパドックでも返し馬になっても、エースの顔面には白いメンコが被さったままだった。
「おい原園、エースのやつまだメンコつけたままだよな。もうゲートに入るぞ。なあ聞いてる?なあ?」

レースはある一頭の逃げ足から始まった。ゼッケン10番、白いメンコに顔を包んだカツラギエースだった。いつもは好位から中団につけ、末脚を伸ばして勝利することの多いエースだったが、この日の西浦はハナを切ることを選択した。今よりも情報収集がずっと難しい時代、そんな中にあって西浦は海外馬の特徴を関係者に聞いて回っていた。
今日は逃げ馬が一頭もいない。誰が先手を奪うのか、ペースを作るのか、先行争いが激化すれば序盤から各馬スタミナを消耗する。カツラギエースにとっては好ましくない展開だ。
「だったら自分がペースを作ればいい」それが西浦の出した答えだった。
向こう正面中頃に差し掛かった時、エースは2番手に10馬身以上の差をつけていた。そして少しでも馬にストレスを与えないよう、気持ちよく走れるように、それだけを考えて丁寧な騎乗に徹した。
「頼むから持ってくれよ」直線に入り、西浦は相棒に祈るように声をかけた。
後ろに聞こえる足音が次第にうるさくなってくる。400mを切った時には怒号のように耳に鳴り響いてきた。振り返れば内にベッドタイム、外からはシンボリルドルフが迫って来ていた。ベッドタイムはもう半馬身差まで詰めてきている。
ここまでか、諦観の念が西浦の頭の中に湧いてくる。やっぱりどうしたって二流は一流に勝てないのだ。ルドルフもシービーも海外の競走馬たちも、自分には手の届かない超一流の存在。騎手も二流なら馬も二流か。いくら考えを巡らせたところで超えられない壁はある。
ところが残り200mを切ってもカツラギエースは失速する気配をみせなかった。まだ余力がある、白いメンコの効果か長い手綱のおかげか、作戦がどうとかは、もうどうでもよくなっていた。西浦は数え切れないほど激しく鞭を叩いた。
残り100mを切ったところでカツラギエースは完全に勢いを取り戻していた。後続との半馬身差は再び1馬身差に広がった。
誰よりも勝ちたがっているのはこの馬、カツラギエースに他ならなかった。
「二流だなんて思って悪かった、どうか突き抜けてくれ」

レースが始まった時の大歓声は次第に悲鳴へと変わり、終わるころには静寂となり辺りを包んでいた。第4回国際GⅠレース・ジャパンカップを制したのは、日本の三冠馬でもなければ、海外の強豪馬でもない。
10番人気「反逆のエース」と鞍上・西浦勝一はここに歴史に残る大金星を飾ったのだった。
優勝台でマイクを向けられた西浦だったが、何を話したのか全く記憶から抜け落ちてしまっていた。後年の談話で西浦はこう語っている。
「見てる人もまさかと思ったでしょう。乗ってるぼく自身が『勝った!』っていう喜びじゃなくて、『勝ってしまった』という感じでしたから。不安というか、困惑というか、そんな感じでしたね」(『優駿』1996年4月号)
この勝利は欧州でも大々的に取り上げられた。カツラギエースの鮮やかな逃げ切り勝ち。そして鞍上は「世界のニシウラ」として称賛された。

カツラギエースは次走、年末のGPレース有馬記念へと向かった。このレースではルドルフ、シービーに続き堂々の3番人気に推された。勝敗は同期のライバル・シービーを突き放したものの、ルドルフに差され2着に終わった。後の「皇帝」には敗れてしまったが、ジャパンカップを彷彿とさせる逃げ足を見せたエースのことを、誰も勝負弱いなどとは言わなくなっていた。
このレースをもってカツラギエースは引退を表明。まだまだこれからと惜しむ声も多くあったが、陣営は潔く、本人にとってピークでの引き際を選んだ。エースはジャパンカップでの勝利が評価され、同年の「優駿賞最優秀5歳以上牡馬」を受賞し、1月には京都競馬場で引退式が催された。
引退後は種牡馬として大きな期待を寄せられたが、目立った産駒を残すことはできなかった。全体的にダート向きの産駒が多く、後年は地方競馬へと転戦する馬が目立っていた。種牡馬を退いてからは三石町の中橋牧場で余生を過ごす。晩年体調を崩すと2000年7月、心臓発作によりその生涯に幕を閉じた。

鞍上を務めた西浦勝一は96年に現役を引退。97年に調教師へ転身すると、カツラギエースが亡くなった2000年、テイエムオーシャンが阪神3歳牝馬SでGⅠ初勝利を挙げた。共に世界の舞台で戦った亡き相棒へ、追悼の念が込められていたのかもしれない。
以降も06年カワカミプリンセスでオークスを制し、史上8人目となる調教師による牝馬三冠を達成。16年にはホッコータルマエでGⅠ級競走10勝を挙げるなど、晩年まで輝かしい実績を残すこととなった。
21年、調教師を定年引退する際のインタビューで、西浦は自らの挑戦の人生についてこんな風に語っている。
「失敗じゃないんですよね。何かをやって、いろんなことを経験していきながら覚えていくから、失敗じゃなくてすべて「経験」なんです。
<中略>若い子たちには、夢だけは持ち続けてがんばってほしいです。夢は大きく、日本の騎手だけじゃなくて世界の騎手を目指して、日本の一流ジョッキーが外国に行って活躍してほしいなって思いますし、そういう夢をもってやってほしいです。
日本の競馬も、世界から認められるには凱旋門賞やケンタッキーダービーを勝てるようにならないと、と思いますが、そこまできていると僕は思います。あと半世紀のうちにはなんとか、もう。そういう時代を迎えてほしいなと思います。」
netkeiba【20歳の頃、僕は】西浦勝一調教師
「引退を控えて…“馬と出会えたからいろんな人と出会えた”」


あの戦いから長い年月が経ち、世界の競馬へ追い付け追い越せと自助努力を繰り返してきた日本競馬。
調教師、厩務員、馬主、騎手、そして人気を支える大勢の競馬ファンひとりひとり。その熱意が積み重なり、いつしか海外馬に先着することが当たり前の時代を迎えた。
しかしながら日本の競馬に関わるものにとって、欧州への憧れと劣等感を拭えないこともまた事実である。なぜならパリ・ロンシャンで行われる競馬の最高峰、日本競馬の最終目標であるフランス凱旋門賞において、優勝の栄冠を授かったことが一度もないからだ。
一方独自の進化を遂げ、世界でもトップクラスの高速馬場を有し、毎週のように熱狂に包まれる日本競馬の舞台が、海外のホースマンたちにとって羨望の矛先になってきていることも間違いない。
先年引退した日本のトップホースは世界のレーティング1位の座に居座り、国際GⅠ競争ジャパンカップは巨額の賞金を懸けて争われる、世界中が注目するビッグレースへと昇華した。
巨人の顔に狙いを定めていたはずの小柄な羊飼いは、いつの間にか四方を敵に囲まれた「もう一人の巨人」へと変わり身を果たしていたのである。
お気付きの方もいるかもしれないが、冒頭で登場した旧約聖書の巨人ゴリアテ[Golyat‎]は英語表記にするとゴリアット[Goliath]となり、奇しくも今年、海の向こうからやって来る競走馬の名前に等しく合致する。
かつて羊飼いが屠った巨人が再び目覚め、立ちはだからんとしているわけだ。
私たちは巨人に槍を突き付けられた羊飼いが如き存在なのか、はたまた私たちが彼の者たちへ閃光のような飛礫を放つのか。巨人と巨人。強大な者同士のぶつかり合いとなった、パラドックスへと陥った、予測不能の戦いが始まろうとしている。
神話の中の、神の代ではない。人の世にありながら、特等席でこの戦いの行く末を見届けることが出来るのだ。競馬を愛する者にとって、これ以上ない至福の瞬間と言えるだろう。
そしてやがて気の遠くなるような時が経ち、私たちの生きる現代が、神話の中の出来事となった時に、この物語はきっとこんな風に語られる…。

「お前が如何に強大であろうとも

 私は知恵と勇気を振り絞り戦う。

 日いずる国の王にして

 万軍の主の名、その者の名は……。」

"第44回GⅠジャパンカップ、まもなく出走です"


作家の江面弘也氏はエースの勝利を「光り輝く一勝」と讃え
「凱旋門賞に勝つだろう馬にも負けない偉業」と記している
世界を驚愕させた「反逆のエース」よ永遠なれ……R.I.P

~はじめに~JCが今年もやって来た

お疲れ様です。毎週言っておりますが、敢えて今週も言います。いやあ、一週間て早いものです。本当に毎週あっという間。
先週のマイルCSはいかがでしたか?当noteでは外国馬チャリンの激走に期待を込めて推奨していましたが…。
 撃 沈 (;^ω^)アレレ?
(まったくいないとは思いますが、たぶん0人だけど)参考にしていただいた方には申し訳ない気持ちでいっぱいです。本当にスイマセン。
さて今週はジャパンカップということで、歴史的な勝利を挙げたカツラギエースとその周囲の方々へ、リスペクトを込めた物語を綴ってみました。
日本馬の勝利が当たり前になった現在、昔を振り返り先達の努力と挑戦
の日々に想いを馳せるのも、競馬の楽しみ方の一つだなと改めて思いました。
カツラギエースと西浦騎手マジでかっこ良すぎます。
あと某ウマ娘のなかではカツラギエースは滅ッ茶好みですね。すごく可愛くデザインされたキャラクターだと思います。いや俺の好みとかどうでもいいよね笑

ではここからは第44回を迎えた国際招待GⅠの攻略記事を書いていきたいと思います。最後までどうかお付き合いくださいませ。

東京府中は芝2400mがその舞台

「競馬の祭典」日本ダービーと同距離で行われる国際GⅠレースです。正面スタンド前からスタートして約1周、2400mという距離と坂路に耐えうるスタミナ、長い直線では末脚の爆発力という、競走馬にとって高い総合力を求められる屈指の難コース。スローペースになればカツラギエースのような逃げ馬が勝つこともありますが、それはレアケースで実際は差し・追込み脚質の馬が直線で台頭するケースがほとんどです。実績のある上位の馬が、実績通りの実力を発揮する、ある意味分かり易いコースとも言えますね。

昨年のレースを振り返る

勝ち馬のイクイノックスは前走天皇賞秋1着からの臨戦。日本競馬史に残るグレートホースは圧倒的人気の単勝1.3倍に支持され勝利。有終の美を飾りました。2着は当年3冠牝馬に輝いたリバティアイランド。3着に入ったスターズオンアースは前走VMから臨戦で、適正距離に戻って好走を見せました。同コースでの実績や距離適性はやはり重要になってくると思います
前半5F57秒6と、逃げたジャックドールがハイペースを作り上げましたが、イクイノックスは好位3番手から上がり3Fメンバー最速の33秒5でGⅠ6連勝の快挙。イクイノックスがいた昨年は例外として、逃げ馬がハイペースを作った際は、後続からの差し脚も決まりますので、今年も展開にはよく注意して予想しましょう。


今週もTOPIC5を拾っていくんだ

ここからは過去10年のデータをピックアップしてブラッシュアップしていくコーナーです。よくわからないけどそこそこ役に立つとは思います。
ではどうぞ。

1番人気の実績はかく語りき

過去10年のデータ"過去十"における1人気に支持された馬は【5-1-2-2】で連対率60%と信頼度は割と高いです。これが単勝1倍台になると【3-0-0-0】で勝率100%です。イクイノックス、コントレイル、アーモンドアイと歴史に残る名馬ばかりですが…。今回ドウデュースが1倍台に支持されるなら、妙味は減りますが堅いと言えそうです。ただおそらくチェルヴィニアと2倍台で人気を分けると思います。そのチェルヴィニアですがその年のオークス馬が1人気なら【3-0-0-0】というデータもありますので、チェルヴィニアが1人気になるようでしたら面白いかなと思います。

穴狙い向けのデータもあるよ

6番人気以下の馬のデータは【0-1-2-115】で、馬券内に入った確率は2.5%とかなり少ないです。この3頭はGⅠ3着内もしくはGⅡで2勝を挙げていた過去があるので、今回下位人気になりそうなソールオリエンス、ドゥレッツァ、スターズオンアースあたりには相応な期待値が発生しそうな気もします。

東京芝2400mの実績に注目なんだな

連対馬全20頭のうち14頭にGⅠ勝利経験、3頭にGⅠ2着経験がありました。またダービー、オークスで連対した馬が11頭JCで連対しています。ハイレベルな一戦につきGⅠでの実績が重要ですが、例の少ない東京2400m戦で実績を残している馬はさらに重要視すべきですね。もちろん騎手の実績と経験則も重要性が高いでしょう。ダービー馬で武豊騎手騎乗のドウデュース、オークス馬でルメール騎手騎乗のチェルヴィニア、牡馬と牝馬で文字通り雌雄を決する一戦になりそうで燃えます。

カギを握るのは牝馬だったり?

過去20頭の連対馬の内、牡馬が15連対、牝馬が5連対しています。ただし牝馬が5人気以内だった場合は【3-2-2-7】で複勝率50%まで上昇します。今回は上位人気にチェルヴィニアがいるだけでなく、スターズオンアースがおそらく5人気内に入ってくるでしょう。「人気馬の牝馬は堅実」というデータがある以上無視できない存在といえそうです。

気になる?!海外馬のデータは?

JCの賞金額は5億円と超ビッグマネーですが、意外と知られていない「指定海外競争の勝ち馬には報奨金」という制度があります。ざっくり、1着になった海外馬には5億円+300万米ドルがボーナスでもらえるという夢のようなお話です。ちなみに昨年のイクイノックスはこの制度の対象馬でした。凄いですよね。
何が言いたいかというと、今回海外から出走する馬は皆この制度の対象になるので、本気度も120%ということになります。日本馬に地の利があるとはいえ、今回日本の出走馬でGⅠに勝っている馬は、除外があったため数頭しかいないわけですから、勝算ありと踏んでいるのでしょう。もちろん勝てなくとも着順応じた額が支払われるので、無理はさせないとは思いますが。
やっぱり勝負事ですから。最後はお金なわけで、決して侮ってはいけないと思います。


時間のない方のための画像だってさ


森タイツ式推奨馬の解説

ここからは恒例のイラスト付き推奨馬の解説です。
とりあえず2頭紹介いたしますので、どぞ。

令和の日本総大将

前走天皇賞秋で圧巻の末脚を披露した「絶対王者」ドウデュースが、秋古馬2冠目に挑戦です。

有力馬につき何度も解説してきましたが、ドウデュースはハーツクライ産駒。07年に種牡馬入りしてから数々の産駒を世に送り出してきました。昨年にこの世を去ったため、23年度のデビュー馬がハーツクライのラストクロップとなりました。ハーツクライの産駒からはスワーヴリチャードなどが種牡馬入りし結果を残しているので、その血統はこれからも続いていくでしょう。母のダストアンドダイヤモンズは米GⅡ勝ちの実績があります。牝系の近親馬には凱旋門賞勝ちのダンシングブレーヴがおり、大一番での底力、脚を溜めてからの爆発力には大きな魅力を感じさせます。

ドウデュースは現在GⅠ4勝の実績で、まさに日本総大将の名にふさわしい現役№1ホースといえるでしょう。少し難しい、扱いづらいところはあり、荒天の重馬場、海外での実戦、武豊騎手の不在というアクシデント発生時においては簡単に馬券外に飛んでいますが、古馬一線級が顔を揃えた昨年末の有馬記念と前走の天皇賞秋では、並ぶ者なき走りを見せています。府中での急坂をものともしないパワーと抜群の末脚。中山の3コーナーからポジションを押し上げることの出来るその機動力の高さも最大限評価できます。
また前走の天皇賞秋はかなりスローペースでした。このレースで無駄に体力を消耗しない「省エネ」の競馬が出来たことは非常に大きかったと思います。短いローテですが余力をもって臨むことが出来るはずです。
原則として良馬場が好走の第一条件になる馬ですので、重馬場以上の道悪になるようでしたら、素直に割り引いた方が良いでしょう。開催終盤で馬場に荒れている点にも十分な注意が必要です。ただし、外枠でも割り引く必要はなさそうです。
鞍上はもちろんレジェンド・武豊騎手が継続します。間近に迫るラストランへ向けて一戦も無駄にできません。秋古馬三冠達成へ向けた、王者の走りを信じましょう。

3歳女王の凱旋

今年のオークス・秋華賞を制した3歳2冠牝馬、チェルヴィニアが古馬との一戦に満を持して出走です。
昨年秋のアルテミスS勝利後から長期にわたり戦線を離脱していました。ほぼぶっつけ本番で挑んだ桜花賞では13着に敗戦。期待を裏切りましたが、クラシックの2冠オークスで樫の女王を戴冠。前走秋華賞も制し、改めてその素質が本物であることを証明しました。

チェルヴィニアはハービンジャー産駒。この産駒はディアドラが秋華賞、モズカッチャンがエリザベス女王杯を制すなど、秋の牝馬GⅠでの活躍が多数、ここでも期待が持てそうです。母チェッキーノの父はキングカメハメハで、ハービンジャー×キンカメの肌は有馬記念勝ちのブラストワンピースがいます。また半兄ノッキングポイントは3歳の夏に、古馬相手に新潟記念で勝利しており、血統的には期待できるものは大きそうです。

前走の不安要素に木村厩舎の関西での不安定さを記載しましたが、いい意味で期待を裏切ってくれる快勝でした。東京に戻って好調を維持できることは言うまでもないでしょう。またジャパンカップにおける3歳牝馬の出走例は、近年ではアーモンドアイがいますし、データ上は好走例が多く、不安材料とは言えないと思います。今回54㌔の斤量で走れることも大きな強みといえるでしょう。
オークスを勝利したこともそうですが、秋華賞にも勝ったため2000m以上のレースにおける勝率は、2走だけですが100%と距離適性にも信頼が置けそうです。東京コースも3戦して連対率100%を記録中です。唯一不安な点は古馬との牡馬牝馬混合戦という点で、本馬にとって混合レースは未勝利戦の1走だけですし、心配ではありますね。
しかしながら血統面で説いたようにプラスに捉えられる要素はあるわけですし、大きな問題とはならない気もします。
そして鞍上ルメール騎手にとって東京の中長距離は「庭」のようなもの。過去5年において芝2400mでは132戦走って連対率60%超えと、まさに驚異的な実績を残しています。2位の川田将雅騎手をも大きく離す数字です。
近走では案外な走りでルメール騎手に避難が向かいましたが、そもそもGⅠレースで勝つことが義務付けられているような人は彼しかいませんし、得意の東京での失敗は考えにくいでしょう。
古馬たちをひれ伏させる、3歳女王に要注目です。


その他の馬について解説

いつもであればもう2~3頭推奨馬を解説するのですが、今回は上記2頭の他にそこまで強く推せる馬はいないかな、というのが率直な感想。好きな馬はいっぱいいますけどね、まあ「推奨馬」は2頭となります。その他の馬について少し簡素ですが短評を添えていき、今回のnoteを了とさせていただきたいなと思います。どぞ。

上記2頭に対し、最も逆転を起こせそうなのがジャスティンパレスでしょうか。前走は休養明け初戦の天皇賞で4着。距離が不足していた点に加え、直前の追切では、最終追いで坂路単走のみと調整不足の感があったにもかかわらずあの走りでした。全然悪くなかったと思います。今回は追切りの内容によっては評価を上げるべきかなと考えていました。
で今回は最終追いで、坂路の単走追い54秒6―12秒6のタイム。あっさりとした感じでしたが、中間ではCデムーロ騎手が騎乗してしっかりと負荷をかけており、陣営は仕上がりに自信を持っているようです。管理厩舎は杉山調教師ですから、いまや栗東のトップステーブルとしてやっぱり怖さはありますね。Cデムーロ騎手騎乗も心強いですし、今回の距離延長は間違いなくプラスに作用します。当日良馬場であれば重めの印を打ってもいいかもしれないですね。期待できそうです。


スターズオンアースは前走ドバイシーマCで8着に敗れた後、両前脚に浮腫の症状が出たため今秋まで休養していました。復帰初戦でいきなり大一番を選択してきましたがどうでしょう?
最後にレースに出たドバイが3月ですから、8か月も間隔があいているということで、これは彼女にとって初めてのこと。復帰は嬉しいですが、いきなり好走するかどうかは何とも言えないところですね。
今までの戦績は【3-5-4-1】で馬券外に飛んだのは乗り替りで海外で走った前走だけ、故障さえなければその安定感には「◎」の評価を与えたいくらいです。有馬記念を大外から3着と、牡馬相手の混合GⅠでも結果を残していますから、そこは素直に評価したいです。
ドゥラメンテ産駒ということで東京コースへの適正は申し分ないと思います。ミスプロ4×3のクロスを持っていますね。
鞍上は川田騎手に乗り替り。JCでの勝ち鞍は未だないですが、日本のトップ騎手ということで問題は全くないですし、このコンビは桜花賞も制しているのでむしろ楽しみですね。

ドゥレッツァですが、まず春天で15着と不可解な敗戦。その後、英インターナショナルに参戦するも直線でキレ敗けして5着と。近走ではあまり良いところがなく、今回も人気はしなさそうです。今回は東京芝2400mということで、直線の瞬発力勝負になると劣勢に陥りそうな気はします。一方で菊花賞に勝利するくらいスタミナは豊富ですから、時計のかかる馬場で消耗戦になればしぶとさを発揮できると思います。
血統はドゥラメンテ産駒なのでスターズオンアースと同じですね。母のモアザンセイクリッドは豪州産の馬で、現役時代はニュージーランドオークス他、ニュージーランドの重賞を2勝している、なかなかの素材だと思います。
鞍上はWビュイック騎手です。英国の騎手ですが出身はノルウェー。
昨年のJCではスターズオンアースを3着に持ってきました。実績はそれなりにあるので、鞍上で評価を下げる必要はないでしょう。日本での重賞は過去6勝挙げており、GⅠ勝ちは18年のマイルチャンピオンシップでステルヴィオに騎乗した時、ちょっと懐かしいです。

ブローザホーンは今年の宝塚記念を制し念願のGⅠ馬になりました。
エピファネイア産駒なので本馬の他にダノンデサイル、ステレンボッシュなど今年GⅠ4勝を挙げていて、産駒的には当たり年です。
非情に小柄な牡馬ですが、ファイティングスピリットに溢れ、天皇賞春・宝塚記念と既に古馬GⅠで結果を残している点も好感触です。ただ秋初戦の京都大賞典では全く進んでいかず11着大敗。陣営サイドから故障等の発表はなし…。
この馬はエンジンのかかりが遅いのが玉にキズですね。仮に前走が叩きで万全でなかったとしても、あの負け方はよろしくないかなと。新馬戦以来の東京コースで、歴戦の古馬たちともう一戦となると不安が大きいです。まずは無事に帰ってきて右回りの有馬記念で本番、と考えた方が無難そうです。ここは正直買えないかなあと思います。


📝ソールオリエンス
🏇鞍上:横山武史

天皇賞は7着といえど0.4秒差の着差ですから、大きく悲観する内容ではなかったと思っています。現4歳世代はその資質を疑われてきていましたが、近走でそのレッテルを返上しつつあります。大きな成長はないと思いますが、距離延長はプラスでしょう。この馬こそ短期の外国人騎手に乗って欲しかったなと思います。武史騎手がダメという訳ではないですが、海外騎手の方が合いそうなイメージなので…。良馬場なら割引、一雨来て時計がかかりそうなら思い切って買ってみたい一頭です。

📝シンエンペラー
🏇鞍上:坂井瑠星

前走は凱旋門賞で12着、夢への挑戦は儚く散りました。
帰国初戦に大一番を選択してきましたが、どうでしょうか。
その履歴をみるとまるで古馬のようですが、まだ3歳馬です。1年前の京都2歳Sに勝ってから勝ち鞍に恵まれていないですが、デビューから前々走のアイリッシュチャンピオンSまでは掲示板を外していなく、安定感はあります。また5着に敗れた皐月賞以外は上がり3Fで常に早い末脚を見せており、今回も切れ味なら古馬たちに決して劣らないと思います。とりわけ東京優駿3着は評価に値すると思いますので、今回も同コースということで、海外帰りの一段成長した走りを見せてくれれば上位も現実的です。
逆に「海外帰りあるある」で調整に失敗しているようだと大敗もありそう。調教の内容と矢作先生の発言を見た限りでは問題なさそうですが…。
若駒と若手エースの激走に期待するのも面白いかもしれませんね。

~おわりに~海外馬について


ここまでお付き合いくださいまして、誠にありがとうございました。いつもいつも好意的な感想やご意見を頂戴し感謝いています。
私事ですが、この時期は仕事の方も忙しくってなかなかnote作成に時間を割けない中、どうにかやり繰りして書いているのですが、これも偏に愛読してくれる方がいるからに他なりません。改めて御礼申し上げます。

それでは、最後になりますが注目されている今年のJC海外からの参戦馬についてちょこっと解説して(というかそんなに詳しくないのですが)終わりにします。

先述した通り、JCには指定海外競争に出走した馬は順位に応じてボーナス、という制度があるため、海外勢はみな本気度MAXだと思います。今の外国為替は良く知らないですが、外国馬が勝てばやく10億円貰えるわけですから、そりゃ是が非でも勝ちたいでしょ笑
「日本の馬場には向かない」という態勢の見解には逆らいませんが、お金の力を侮ってはいけないのもまた事実。どの陣営も目の色変えて勝ちに来ると思っているのは私だけでしょうか?まあ勝てなくても報奨金は出るので、勝ったらラッキー!くらいのつもりなのかもしれませんが…。

海外馬3頭に対する森タイツ式短評は以下の通りです。

📝オーギュストロダン
🏇鞍上:Rムーア

欧州でGⅠ6勝の実績。出走馬中最上位なのは間違いないです。アイルランドの馬ですが、ディープインパクト産駒なので日本の馬場への順応力はそれなりにあるのでは、という見方が出来ますね。
とはいえ海外でもムラ駆けが多く、走らない時はとことん走らないので(英2000ギニー1番人気12着/キングジョージ&クイーンエリザベス1番人気10着/ドバイシーマC2番人気12着)と全てGⅠレースですが華麗に飛んでいます。
馬場適正もそうですが、まずは走る気になってくれるかどうか、買う気のある方はパドックまで待った方が良いかもしれません。
これが引退レースらしいので、有終の美を飾ってもらいたいとも思います。勝ったら面白いですよね(;^ω^)

📝ゴリアット
🏇鞍上:Cスミヨン

場外パフォーマンスが注目を集めていますがその実力は本物。精鋭が揃った今年のGⅠキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(長い)に勝っていますから。このレースではオーギュストロダンに先着していますし、今年の凱旋門賞馬ブルーストッキングにも勝っています。今年のBCターフ勝ちのレベルズロマンス、GⅠ4勝のルクセンブルグにも勝っている
このレース結果だけ見ると相当ヤベエえのが来るんだなと笑
前走のロンシャンでのGⅡもしっかり勝ってきており、今回のJCでは60㌔から58㌔の斤量で出れるわけですから、やっぱり少しは夢見たくなってしまいますね。血統的にはバリバリの欧州血統なので日本の馬場は向いていないとは思います。雨が降って重馬場にでもなれば、より一層楽しめそうな馬です。

📝ファンタスティックムーン
🏇鞍上:Rピーヒュレク

雨降りで重馬場だった凱旋門賞で9着と惨敗。出走直前まで、出る出ないともめていた経緯があったとか…?ドイツ系の血統で重馬場は得意そうな気もするのですが、陣営はここ日本でも良馬場を希望しているようです。
2度凱旋門賞に挑戦していますが惨敗中。勝った重賞は地元ドイツが中心なので、遠い異国の地でどこまでやれるかは…3頭の中では最も手を出しにくい一頭ですね。


今回参照にさせていただいたサイト


『ダビデと対峙するゴリアテ』

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タイツ・競馬ライター【無料予想と馬のお話】
いつかプロライターになることが目標です