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GⅡ毎日王冠

序文:太陽の仔

「自然崇拝」
人は古来より、あらゆる自然物を崇拝し、その中に超越的な存在を見出し敬ってきた。これは「人」だったものを「神」としてみなす、いわゆる一般的な宗教が普及され始めるより前の、太古の信仰である。厳密にいえば「自然物への崇拝」ではない。「自然」という概念が生まれる以前の崇拝形態であり、対象は空、大地、山、海。はたまた雷や嵐といった自然現象や、熊や虎のような猛獣まで。科学が生まれるよりもずっと昔、自分たちの考えでは及ばない超常的な現象や力に対し、人は畏怖と畏敬の念をもって祀っていた。
その自然崇拝の最たるものが太陽に対する所謂「太陽信仰」だろう。歳月や曜日という概念がなく、もっといえば「時間の流れ」そのものがあいまいな存在だった頃、いつも同じように昇り恵みをもたらしては、夜の帳を降ろす「太陽」という存在を、人々は神格化し天空を制する支配者として崇め祀った。
日本神話に登場する八百万の神々の中の最高神は、太陽の象徴である天照大御神である。また世界各国の古代の神話、信仰を見ても、いたるところに太陽そのものを信仰の対象とした足跡が見受けられる。
どれだけ人が長い年月を過ごし、歴史を重ねようとも太陽の存在は不変。空を見上げれば天空にはいつも燦燦と輝く太陽が座している…。

さて話は変わり現代日本の競走馬界、かつてその馬名に太陽の神の名を有する一頭の牡馬がいた。

ダイタクヘリオス
91、92年マイルチャンピオンシップを連覇。
重賞7勝。「きまぐれマイル王」の名で
競馬ファンに長く愛された。

1987年4月北海道平取町の清水牧場にてダイタクヘリオスは生まれた。
父の名はビゼンニシキ、GⅠこそ勝利しなかったが、81年のクラシック戦線においては、あのシンボリルドルフのライバルとして称される程の素質馬だった。ルドルフの斜行がなければ皐月賞を勝っていたとも言われていた。故障による引退後、85年から種牡馬として活躍していた。
母はネヴァーイチバンという馬で、JRA未勝利のまま引退し繁殖牝馬となっていた。ネヴァーイチバンの父は英国のネヴァービート。母国で10戦1勝の成績を上げたのみだったが、半兄に62年のセントレジャーステークス優勝馬、ヘザーセットがいる良血馬だった。
また母のルーツを辿ると、72年のクラシック2冠を達成したカブラヤオーの名前がある。逃げの名手として一躍脚光を浴びていた名牝である。
ビゼンニシキとネヴァーイチバン。ネームバリューこそないが、ダイタクヘリオスの血統の根底には、良馬のそれが間違いなく流れていた。

ダイタクヘリオスは母ネヴァーイチバンの10番仔として生まれた。オーナーの中村雅一は"ダイタク"の冠名を有することで知られていたが、この馬に「輝くような活躍をしてほしい」と自らの太陽ファームの屋号をとり”ダイタクヘリオス”と命名した。ヘリオスはギリシア神話に登場する太陽神ヘーリオスを由来としていた。
幼駒のころは、後に「嵐を呼ぶ男」「気まぐれマイラー」として名を馳せることなど想像もつかないくらい、大人しい性格だったという。

ある朝、調教の後に担当厩務員がダイタクヘリオスの馬体を洗っていた。ふと厩舎内で突発的な問題が起きた。厩務員はヘリオスを洗い場に繋いだまま、慌ててその場をかけ離れた。…暫くして厩務員がヘリオスのことを思い出し洗い場に戻ってくると、彼はそのままの姿勢で大人しく待っていた。これには担当厩務員も唖然としてしまった。
大きな怪我や病気もなく、逆に言えば突出したものも特にないまま、ダイタクヘリオスは順調に育っていった。この時点での彼への周囲の評価は「大人しい仔」である。
ただしそれは「レースを走っていない時」に限定されるとは、この時は誰の知る由もないことだった。

89年10月7日京都新馬戦でデビュー。管理は栗東の梅田康雄厩舎で、鞍上は同厩舎所属の岸滋彦が務めた。この時まだ2年目の若手騎手だったが、1年目から36勝を挙げる活躍を見せ、未来を嘱望されていた。
このレースの1人気は岸の1年先輩である武豊騎乗のオースミロッチ。ダイタクヘリオスは3番人気だった。デビュー戦の結果は3着、道中3番手の好位につけたが直線で差し脚を伸ばせず終わった。
ヘリオスがその才能の片鱗を見せ始めたのが同10月29日の3戦目の「新馬戦」だった。当時のレギュレーションでは「同一開催の中であれば何度も新馬戦に出走させることが可能」というルールがあったため、ダイタクヘリオスにとって3度目の新馬戦となったわけだ。ただこの使い詰め方は若駒にとってはかなりの負担。疲労とストレスがピークに達したヘリオスは、このレースで猛烈に引っかかってしまう。
出走直前になっても制御不能の状態に、鞍上の岸は手を焼いた。この岸という騎手はどこかマイペースというか、若くして達観しているようなところのある男だった。この急を要する事態に自ら匙を投げてしまう。
「もういいや、どうにでもなってくれ」
ゲートを飛び出すと猛烈な勢いで飛び出していくダイタクヘリオス。初めて大逃げを打ったことに観衆はどよめいたが、鞍上岸の胸中は裏腹で、どこかで沈んでいくだろうと諦観の域に達していた。
ところがヘリオスはこのレースをそのまま逃げ切ってしまう。まさかそのまま逃げ勝つとは、鞍上も陣営も観客も、想定外の事態に驚きを通り越して皆呆れてしまった。そしてこのレースを体感した誰もがこう思った。「ダイタクヘリオス、面白い馬だ」と。

次走11月11日のGⅡデイリー杯3歳Sに出走。前走の勝ち方はやはり微妙で、ここでは6人気と低評価だった。ヘリオスはハナを切り逃げの手を打ったが直線で粘り切れず、4着に敗れてしまった。
翌日の11月12日、ここまでヘリオスの鞍上を務めてきた岸滋彦に大きな転機が訪れる。同じ京都競馬場で行われたGⅠレースエリザベス女王杯で、岸騎乗のサンドピアリスが優勝。20頭立ての20番人気という大穴中の大穴が、直線でダイナミックに差し切り大仕事をやってのけた。19歳11か月でのGⅠ制覇は、1年前に一つ上の先輩武豊が達成した1年8か月の記録に次ぐ史上2番目の快挙だった。
この勝利に鞍上岸は大きな脚光を浴びた。もともとその素質を買われてはいたが、GⅠ騎手となればその注目度は今までの比ではない。この勝利を機に岸への依頼は一気に増えていった。
少し話が逸れる。このレースで勝ったサンドピアリスは栗東・吉永忍厩舎が管理していた馬だった。岸が所属していたのは梅田厩舎。初のGⅠ勝利は自身の厩舎ではなかったが、この快挙に誰よりも喜んでいたのが岸の師匠・梅田康雄だった。梅田は常日頃から岸にこう言っていた。
「騎乗依頼がもらえるのは本当にありがたいこと。俺の厩舎と他厩舎、同時に依頼が来たら他所の依頼を優先しなさい。梅田厩舎の馬はいつでも乗れるのだから」
この寛容な精神が愛弟子の岸へGⅠ初勝利と、以降に続く躍進をもたらしたのかもしれない。もともと勝気な性格ではなかった岸滋彦は、梅田の下で伸び伸びと競馬をこなし、成長を遂げていった。
この他厩舎の馬を優先するという岸の騎乗傾向は、ダイタクヘリオスにも度々影響した。12月のGⅠ阪神3歳Sは岸が他場で騎乗していたため、代打で武豊が務めた。結果は4人気からの2着と流石の騎乗ぶりだった。

翌年岸の鞍上に戻り4月のGⅢクリスタルカップに勝利して、重賞初制覇を飾った。次走の葵S(当時OP)で連勝し4勝目を挙げる。デビュー時から「面白い馬」と評されてきたダイタクヘリオスは、少しずつ安定した戦績を収めるようになっていった。
その後も短・中距離を走っていったダイタクヘリオスだったが、ここからは凡走が続いていた。デビュー時からの頃から掛かり気味になる気性がなかなか治らない。この頃の岸はエイシンサニーで優駿牝馬を勝利し、GⅠ2勝目を挙げる活躍。3年目にしてクラシック勝ちの騎手となっていたが、そんな岸でもダイタクヘリオスを御することは難しかった。素直に言うことさえ聞いてくれれば無類の強さを発揮する。GⅠスプリンターズSでは5着掲示板。勝ちはしなかったものの、その力が一戦級相手でも通用するところを見せてくれた。しかしそうでない時はOPクラスでも凡走。と、「面白い馬」は競馬ファンにとって”買い時の難しい馬”になっていった。

そんなヘリオスの重賞2勝目は91年2月のGⅡマイラーズカップ。久々の距離延長で臨んだ一戦は、代打で武豊が騎乗していた。
流石若くから「天才」と称されるトップジョッキー。気難しい性分のヘリオスを巧みにコントロールし、道中3番手の好位から直線では上がり最速の差し込み。逃げの一手ではなく、差しの競馬で勝利をもぎ取った。ファンは称賛の喝采を送るとともに、ダイタクヘリオスの素質を改めて見直した。
この勝利により次走ダービー卿CTは1人気に支持、鞍上は岸に戻っていた。がここでもヘリオスは岸の言うことを来てくれなかった。
距離短縮ということで、レース開始から先手を主張。勢いよく先頭に立ったが、直線で失速。結果4着に沈んでしまった。
続く京王杯SCでも岸の騎乗は継続されたが、このレースでもヘリオスと岸は期待に応えられない。前走の惜敗を反省した岸は、この日は抑える競馬を選択。道中4番手の好位につけ先頭を狙った。しかし肝心のヘリオスが途中で掛かり気味になってしまう。口を大きく開け、顔を上げてしまった。これでは勝てるはずもない。どうしていうことを聞いてくれないのか、岸は苛立ちを抑えることが出来なかった。ヘリオスはこのレースを6着と惨敗。関係者もファンも大いに失望した。
「結局、この程度の馬だったのか…。」
「面白い馬」から「難しい馬」、そして「手が出せない馬」へダイタクヘリオスは走るたびに評価を落としていった。

鞍上の岸はこの敗戦に忸怩たる思いだった。2走前のマイラーズカップでは、武豊が騎乗し華麗に勝利を攫った。今回の連敗でファンは「岸が乗ると勝てない」と囁き始めていた。悔しかった。もともと勝負根性を前面に押し出すような男ではなかったが、到底納得のいく評価ではなかった。
このまま終わりたくはない。岸の心の中に、勝利への執念が火を灯そうとしていた。
翌5月、ヘリオスはGⅠ安田記念に出走。連敗が響き10人気と低評価。かわりに前走の京王杯で勝利した、河内洋騎乗のダイイチルビーが1番人気に支持されていた。「華麗なる一族」の宿命を背負った牝馬である。
レースは6枠13番からスタートし中団外を追走、ハイペースの展開になった。この日のヘリオスは今までと違った。終始落ち着いていて、掛かる仕草を見せない。絶対に勝ちたい、そんな岸の気持ちが乗り移ったかのようだった。行けるかもしれない、直線で鞭を入れ外から先行勢ををかわす。上手く抜け出したが、さらに外から追い込むダイイチルビーにゴール手前で差されてしまった。僅か1馬身差で敗北。惜しくもGⅠ制覇まで届かなかった。

ゴール直後、岸は勝利した鞍上河内へ声をかけようとしたが、その雰囲気に圧倒されてしまった。勝者が纏うオーラとでもいうのか、気安く声をかけることがなんとなく憚られた。僅差の勝利だったはずだが、河内は岸とヘリオスのことなど気に掛ける様子もなく、かといって驕り高ぶる様子もない。終始淡々としていて、勝って当然といったような体だった。
これが勝つことを義務付けられたものの強さなのかと、岸は気圧されてしまった。
その年のオークス、岸のエイシンサニーは2着に迫ったアグネスフローラを差し切り、優勝を遂げた。あの時フローラに乗っていたのは河内洋、GⅠの舞台で一度は負かした相手である。
岸はふと我に返った。その時の自分はどうだったろうか。初のGⅠ制覇だと浮かれていたかもしれない。周囲の自身に対する称賛に、いつしか慢心していたのかもしれない。あの時負かした河内の目に、他の騎手の目に俺はどう映っていただろうか。
そしてダイタクヘリオス、今お前の瞳に俺はどう映って見える…?

競馬ファンは馬の成績にいたく正直である。「ダイタクヘリオスはやっぱり強かった」と手のひら返しで評価を上げた。
次走GⅡCBC賞でヘリオスは2番人気に支持されていた。ここも岸が継続騎乗で臨んだが、伏兵フェイムオブラスらに阻まれ5着。またしても結果を残せなかった。
続く高松宮杯(当時はGⅡ)はベテランの加用正がテン乗りで騎乗し参戦。主戦だった岸は佐山厩舎のトーワルビーの鞍上として同レースに出走した。これは「他厩舎の騎乗を優先してほしい」という梅田の教えを守ってのことだった。ここでは安田記念を勝ったダイイチルビーが圧倒的1人気、加用騎乗のダイタクヘリオスが5人気。岸が騎乗したトーワルビーが3人気に支持されていた。
レース直前、調教師の梅田は代打の加用に「最終コーナーで先頭に立ち、ダイイチルビーの差しを待たずに追い出すように」と騎乗を指示した。ルビーとの3戦目、陣営も勝ちたかった。
ヘリオスは1枠1番。スタートを決めたが主張せず、ハナをトーワルビーに譲り、2番手を追走。ダイイチルビーはその後ろの3番手、思っていたよりも前目につかれたことにより加用とヘリオスは不意を付けれた。間隔は空いているが、果たして逃げ切れるだろうか。3角に入ってトーワルビーが失速、ハイペースの展開が仇になった。代わってヘリオスが先頭に立つ。ダイイチルビー2番手、直線では支持通りすぐに仕掛けリードを広げた。外から猛烈な差し脚を伸ばしてくるルビー、2頭が並んだところでゴールイン。写真判定へもつれこまれた激戦はヘリオスに軍配が上がった。この勝利で「安田記念の雪辱を晴らした」とダイタクヘリオスは称賛された。
鞍上の加用は「代役を果たせてまずはホッとしています」とベテランらしい受け答えで、自分はあくまでも代理、という姿勢を貫いていた。
一方、主戦である岸は複雑な胸中だった。ダイタクヘリオスが勝ったことは素直に嬉しい。だがまたしても自分が乗っていない時の勝利。なにより託されたトーワルビーを勝たせることが出来なかった。

競馬メディアは勝ったダイタクヘリオスに「ベテランの加用が良さを引き出した」と書き立て、競馬ファンは「岸ではあの馬を勝たせることが出来ない」と失格の烙印を押そうとしていた。この風聞は岸の耳にも届いた。悔しさを堪えきれなかった。
このレースの後、師匠の梅田は岸を呼び出しこう切り出した。
「今後、ダイタクヘリオスの鞍上はお前ひとりだけでいく。」
今までは「他厩舎の馬を優先しろ」と梅田自身が岸にそう伝えていた。それが岸の成長につながるとそう信じていたからだ。その考え自体は変わっていない、実際広く見聞を広め経験を積んだ岸は、ひとかどのジョッキーに変貌を遂げようとしていた。
だがここに来てぶち当たった大きな壁、岸がそして梅田厩舎が前へと進むためには、ダイタクヘリオスだけが勝っても意味がなかった。そして同じように、岸だけが勝ち進んでも得られるものは少なかった。
岸滋彦とダイタクヘリオス、人馬での勝利が必要だと感じた。
岸は梅田の言葉を受け、その心遣いに深く感謝した。そして同時に大きな自信が胸の内から湧いてきた。
岸の脳裏に、あの時の、安田記念で敗れた時の河内とダイイチルビーの姿が浮かんだ。
岸滋彦は覚悟を決めた。

91年11月17日。ダイタクヘリオスはGⅠマイルチャンピオンシップに出走した。1番人気はもはや終生のライバルと言っていいだろう、河内騎乗のダイイチルビーだった。2人気にはケイエスミラクル、鞍上は南井克巳。前走GⅡスワンSでルビーとヘリオスを破っていた。続く3人気に田原成貴騎乗のバンブーメモリー、復権をかけ挑んできていた。
レース直前、岸滋彦はヘリオスと自身との日々を思い返していた。
最初は捉えどころのない馬だと思っていた。初勝利を飾った日、その底力を知るとともに「面白いやつ」だと思った。やがて勝てない日々が続いた。思い通りに騎乗できない相棒にいら立ちを隠せなくなっていた。自分は若くして重賞を勝利し、GⅠをも制覇した。そんな俺が乗りこなせないと、歯がゆい思いになった。
ダイタクヘリオスは浮き沈みの激しい馬で、自分が御さなければならない。この馬を輝かせるのは俺しかいないのだと思い込んでいた。敗戦を繰り返し、ライバルや先輩たちが勝利を飾る中、その誤りに気付かされた。ダイイチルビーに乗っている河内も、ヘリオスに乗った武も加用も、そんなことを考えていただろうか。そんなことはないはずだ。
いつの間にかどこか驕り高ぶってしまったのかもしれない。師匠の思いやりや、周囲の環境に甘えていた自分を恥じたくなった。

ダイタクヘリオスは浮き沈みの激しい馬などではなかった。

ヘリオスは太陽の神、
いつだって頭上に光輝いている。
本当に浮かび上がらなけらばならないのは、
俺の方だったんだ。

ゲートが開いた。ダイタクヘリオスは勢いよく飛び出したが、前に行く2頭がいた。加用が高松宮杯を制した時同様、梅田は岸に対しハナで競馬をしないよう指示していた。あくまで好位につけて直線で仕掛けるのだと。
師匠に従い控えた岸だったが、今までにないヘリオスの推進力を感じた。ここで岸とヘリオスは指示を破り第3コーナーで先頭に並びかけた。下り坂で加速し、一気に単独先頭に立つ。岸にもう迷いはなかった。
「この仔を信じよう」最終コーナーではさらにリードを広げながら通過、直線では独走状態に入った。残り200メートル地点では5馬身のリードを広げた。誰もが逃げ切りを勝ちを確信した瞬間、足が鈍りリードを縮められる。
後方から、ダイイチルビー、ケイエスミラクルが強襲してくる。熱狂の渦に包まれる京都、岸はただ一心不乱に手綱を振り絞った。岸の思いを受け取ったのか、ヘリオスは残り100mでさらに加速しているようにも見えた。
ダイタクヘリオスは2馬身半差をつけて入線。この大一番を鮮やかに逃げ切って勝利を収めた。
数えること25戦、その気難しさから " 買い時の分からない馬 " だと揶揄されていた「太陽の仔」は、ここにGⅠ初制覇を達成。その名に恥じない、まばゆいばかりの輝きを放ったのだった。
勝利後、全てを出し切った岸は馬上で呆然としていた。この馬でGⅠを勝ったという実感はまだ湧いてこなかった。
近づいてくる人馬があった。ダイイチルビーとその鞍上、河内だった。
「おめでとうございます」
後輩にも礼儀正しく敬語を使う河内に、少々面食らってしまった。
記憶が断片的にしか思い出せない。
「ありがとうございます」笑顔でそう返したと思う。

その後もダイタクヘリオスと岸のコンビは継続され、翌92年のGⅡマイラーズカップ、毎日王冠を勝利すると前年に続きマイルCSへと出走。シンコウラブリイ、ヤマニンゼファーら強豪を抑え見事大会2連覇を達成した。
35戦10勝、GⅠ連覇を含む重賞7勝で獲得賞金は6億7千万に上った。この時点で6億の賞金を稼いだのはシンボリルドルフ、オグリキャップ、メジロマックイーン、そしてダイタクヘリオス。史上4頭目の快挙だった。
また「嵐を呼ぶ男」「気まぐれマイル王」と呼ばれたように、周囲の期待を裏切り予測不能の走りを見せた、稀代の癖馬であり個性派でもあった。ダイタクヘリオスが1人気から1着になったのは35戦してたったの1度のみである。
主戦の岸は引退に寄せて「まともに乗ることが出来たなら、どれだけ強かったのだろうか」とコメントを残している…。

ギリシア神話に登場するヘーリオスは太陽を司る神であり、その象徴として描かれている。太陽を載せた馬車に乗り、東から西へ大空を駆け回る御者として、陽光の恵みと夜の帳を人々に届けていた。
競馬の世界ではよく「馬の力が7割、騎手の力が3割」と言われているが、実際はどうなのだろう。この議論に水を掛けるつもりはないが、馬が空に輝く太陽だとすれば、それを正しく運ぶため、人には相応の力量と資格が求められるはずだ。どんな強い馬も、良き運び手に出会わなければその才能を埋没させてしまうだろう。そして運び手である騎手を育てるのは、出会った馬の資質に他ならない。才能に恵まれた運び手も、良きパートナーに出会い共に成長していかなくては、いずれ驕り高ぶり勝てなくなってしまう。
競走馬と騎手、もとい馬と人。人馬一体になって、はじめてまばゆい光を放つ。その瞬間に立ち会うことが出来たなら、競馬を愛する者としてこんなに幸せなことはない。

佳境を迎える今年の秋競馬、毎週熱戦が繰り広げらている。出走する一頭一頭が、騎乗するひとりひとりが主役であり、太陽の輝きを放つ資格を有しているのだ。次に輝くのは誰なのか、まだまだ目が離せない日々が続きそうだ。

競馬とは馬と人の出会いが織りなす

幾重にも重なった群像劇である。

光輝くその瞬間に立ち会えたなら

その時は、心からの喝采を贈りたい。

「GⅡ毎日王冠、まもなく出走です」

ライバルであるダイイチルビーの前で何度も好走を見せた
ダイタクヘリオス。ファンは2頭の間柄を「恋人のようだ」
といつしか評していた。ダイタクヘリオスは2008年、
ダイイチルビーは2007年に死没。天国でも共に・・・R.I.P


はじめに~毎日王冠展望~

皆さまお疲れ様です。
先週、スプリンターズSは如何でしたでしょうか?
まさか骨折明けのルガルが激走するとは…。今回完全に無印で見送っていたので、正直驚きました。note的には本命マッドクールが直線で伸びず、いいところなかったですね。毎週申し訳ないです。
勝ったルガル号と西村淳也騎手はおめでとうございました。応援している騎手なので、初GⅠ制覇は素直に嬉しかったです。

という訳で今週は毎日王冠の記事をお届け、冒頭コラムは個性派として愛されたダイタクヘリオスのお話でした。タイツはどうも馬と騎手のドラマが好きみたいですね笑
いつもそんな話ばかり書いています。読んでくださった方、ありがとうございます。

うぇーい天皇賞秋、前哨戦っしょ

府中芝1800m
開幕週で高速決着が多い

秋天に向けた一戦は毎年実力馬が揃い、豪華な顔触れに。今年はどうでしょう、GⅠホースは不在ですがなかなか粒ぞろいのメンバーが揃いました。盛り上がりに期待したいですね。堅めの決着が多いレースですが、現状ではローシャムパークとシックスペンスの2強体制か。次いで昨年勝利し、連覇を狙うエルトンバローズも人気を集めそうです。
東京芝1800mは1、2コーナー中間にあるポケット地点からスタート。緩いカーブから長いバックストレッチに入ります。広いコース、少ないカーブで展開の「あや」やマグレが起きにくく、実力馬が能力を発揮しやすいコースと言えます。

昨年のレースを振り返るっしょ

昨年の覇者エルトンバローズは連覇を賭け今年も出走

勝った4番人気エルトンバローズは3歳馬。前走ラジオNIKKEI賞1着からの臨戦でした。昨年は出走12頭のうちエエヤンとこの馬だけが3歳馬。今年も3歳馬には注目したいですね。
レースは前半5F59秒5。4番手からメンバー5位の上りタイム33秒8で抜け出しました。1人気ソングライン、2人気シュネルマイスターら後続勢を完封。西村騎手の積極策が功を奏した結果になりました。
1人気に支持された安田記念勝ち馬ソングラインは、後方からの組み立てで、直線では前に壁になって追い出しが遅れたことが響き2着に終わりました。


注目のTOPIC5に注目

ここからは過去10年のデータ「過去十」をもとに気になる項目、5つのTopicを取り上げていきたいと思います。
毎回けっこう鋭いとこを突いている気がします。なのに馬券に反映させれていないですが…笑
それではいってみましょう。

📝1番人気の信頼度は「高」…だけど?

過去十【7-1-0-2】で連対率80%と信頼度は高め。特に過去6年は全馬連対しており厚く張れそうです。とはいえ1点注意したいのが、過去6年全頭が安田記念もしくは日本ダービーからの臨戦過程で好走してきた点。今年は安田、ダービーで上位に収まった馬は出走してきていません(シックスペンスはダービー9着、エルトンバローズは安田記念8着)。想定1人気のローシャムパークは前走宝塚記念からで、好走例は多くありません。
前走ラジオNIKKEI賞他、GⅡ・GⅢで上位成績を収めた馬を選ぶのも面白いかもしれませんね。

📝安田記念と日本ダービーの着順に注目

前走安田もしくはダービー上位組が、今回上位人気に支持された場合、好走することが多いです。では下位だった馬はどうなのか?
安田記念⇒
3着以内【3-4-2-3】/4着以下【0-0-1-11】

ダービー⇒
3着以内【2-0-0-0】/4着以下【0-1-0-3】

となっています。18年にダービー8着だったステルヴィオがルメール騎手騎乗で2着に入ってました。シックスペンスはどうでしょうか?
また今回上位人気に推されているエルトンバローズ、ダノンエアズロックは少々信頼度が下がりますね。

📝求む、早い上がりを出せる馬

過去5年の統計だと上がり最速を繰り出した馬が4勝を挙げています。昨年のエルトンバローズのみ上がり5位でした。好位取りからの展開を味方につけた勝利だったと思います。ここではやはり近走で上がり最速、もしくは3位以内の上りタイムを連発している馬を選定したいと思います。
東京競馬場の長い直線、求められるはその末脚です。

📝脚質は「差し・追込み」で

過去十で逃げ馬の成績は【2-2-0-6】。2人気までで3連対、もう一頭は14年の11人気サンレイレーザーでした。また先行して連対した馬は4頭、昨年のエルトンバローズは道中4番手から早めに抜け出しました。
逃げ・先行馬を選ぶ場合は基本上位人気からですね。
差し・追い込み勢は計12連対。開幕週の高速馬場で行われますが、早い上がりを繰り出すことの出来る差しタイプを重視したいです。

📝年齢別成績

●3歳馬 出走数16/1着4回・2着1回
●4歳馬 出走数30/1着3回・2着2回
●5歳馬 出走数34/1着3回・2着4回

従って、
●3歳馬 勝率25.0%/連対率31.3%
●4歳馬 勝率10.0%/連対率16.7%
●5歳馬 勝率 8.8%/連対率20.6%

となります。3歳馬に対する信頼は高めと言えますね。
ただし先述した通り、3歳馬で連対するのはダービー上位組が大半を占めており、シックスペンス、ダノンエアズロックに対する評価をどうするか?
またダービー未出走でラジオNIKKEI賞を勝ったオフトレイルは、昨年にエルトンバローズと同じ臨戦過程を踏んでおり、人気薄でも軽視は危険かも?
とこの3頭に対する評価をどうするかが、今回の分水嶺になりそうな気がします。


森タイツ式推奨馬4頭の解説

ではではここから推奨馬の解説に移りたいと思います。今週は少々多忙につき、早送りで当コラムとnoteを作成。時間の関係もありあさっりとまとめました。さくっと読んでみてください。

GⅠ制覇を見据える、未完の大器

宝塚記念5着、秋GⅠ制覇を目指すローシャムパークが始動戦の舞台に毎日王冠を選びました。
ローシャムパークは22年クラシック世代において、その素質を高く評されながらいまだGⅠへ届いていません。前々走大阪杯では戸崎騎手の好騎乗もあり2着と好走。前走宝塚記念では、重馬場に脚を取られ本来の力を発揮できないまま5着に沈みました。
この馬は幼駒時代からその素質を高く評価されてきましたが、陣営は慎重に育成に時間を割いてきました。同期がクラシックで戦っている中、3歳秋のセントライト記念で重賞初挑戦。3着に収まるとその後は条件戦を走り、昨年夏の函館記念、秋初戦のオールカマーを連勝し、一線級に名乗りを挙げてきました。セントライトからOP入りまで8か月、重賞勝ちまでは10か月要しており、順調ながら、かなり時間をかけてきたなというのがこの馬に対する所感です。

ローシャムパークはハービンジャー産駒。今年の種牡馬リーディングでは現在5位につけており、相変わらず安定した成績を残しています。重賞では牝馬のチェルヴィニアがオークスを制しました。また同産駒における母父キングカメハメハ産駒との配合は、有馬記念を制したブラストワンピース、エリザベス女王杯を制したモズカッチャンなど、非根幹距離のGⅠレースを勝っている点に注目です。毎日王冠は非根幹のGⅡ、府中1800mを獲る器としては申し分なしです。

ローシャムパークは基本使い込みが効かないタイプなので、春の大阪杯でいきなり好走したように、今回長期休養明けで臨む一戦には期待が持てると思います。毎日王冠は天皇賞の前哨戦として、重賞への叩きとして使われることの多いレースですが、この馬は叩き良化型ではないので、陣営はここでしっかりと仕上げてくるのではないでしょうか。中間の内容では好タイムを出しており、仕上がりに問題はなさそうです。1800mという距離適性に対して疑問の声もありますが、広い府中のワンターンはローシャムパークに向いていると思いますし、3勝クラスでは同条件で勝利しています。懸念材料が、宝塚記念がそうだったように、重馬場でのレースを苦手とする点。当日雨で重たくなるようだと心配です。まあハービンジャー産駒ですし、血統的には稍重くらいまでだったらこなせるとは思いますが。
5歳後半のシーズンを迎え、なんとしてもGⅠ奪取を叶えたいところ。有力馬・穴馬たちも出走しますが、まずはローシャムパークに印を打ちたいと思います。

未だ謎多き「幸運の銀貨」

日本ダービー9着、3歳馬シックスペンスが夏の成長を経て秋古馬重賞へ参戦です。3戦全勝で臨んだダービーでは9着に惜敗でしたが、ここからの巻き返しを図ります。
シックスペンスは昨年9月の新馬戦中山マイルでデビュー、1.5倍の単勝1人気に支持され難なく勝利。次走12月の中山ひいらぎ賞も突破すると、年明け初戦を皐月賞トライアルであるGⅡスプリングSに照準してきました。このレースは10頭立ての少頭数で開催され、アレグロブリランテの逃げにコスモブッドレアが続き、前半5ハロン63.1秒の超スローペースの展開になりました。シックスペンスは3番手追走から、直線では一気に抜け出すとハナを行くアレグロブリランテを文字通り「一瞬」で突き放すケタ違いの末脚を披露。3馬身半差をつける圧勝となりました。メンバーレベルは疑われていますが、それにしても見事な勝ちっぷりだったと思います。

シックスペンスはキズナ産駒。ディープインパクトの直仔にしてダービーを制した名馬です。この産駒についての解説は当noteにおいて繰り返し解説してきました。
キズナ産駒は距離・馬場の適性を問わず、芝・ダートどのクラスでも満遍なく好走しています。昨年まではソングライン然り、中山よりも広い府中の方が戦績が良く、毎日王冠の舞台は血統的には非常に合いそうです。これも繰り返しになるのですが、今年はキズナ産駒の重賞における好走率が非常に高く、クイーンCではクイーンズウォーク、共同通信杯ではジャスティンミラノが府中で勝利しています。キズナ産駒の今年の重賞勝利数は「11」で、現時点で種牡馬リーディング堂々の1位の座をキープしています。
何度も言いますが、今年はまさしくキズナイヤーといえるでしょう

シックスペンスの母、フィンレイズラッキーチャームは米のダートGⅠマディソンS他、GⅡ・GⅢ勝ちがあります。母父トワーリングキャンディも米ダートGⅠを制しており、牝系の血統はダートメインですが、スピード偏重型の北米血統の向きがあり、本馬の末脚の鋭さはこのあたりに由来する部分が大きいのかもしれません。

まだ4戦しか走っていない謎多きシックスペンスですが、現時点で言えるこの馬最大の武器は、やはりその末脚の鋭さだと思います。デビューから中山で3走、常に好位に取り付いてから早い上がりを繰り出しており、重賞初勝利を飾ったスプリングSの切れ味は出色の出来でした。またこれらのレースぶりから、末脚だけでなく立ち回りの器用さも見受けられます
日本ダービーは距離適性の問題だったっと思うので、ここで実績を積んだ1800mに戻るのは当然有利に働くと思いますし、血統面で述べた通りコースへの適正も問題はないでしょう。
ダービーの際は少しかかり気味になっていたので、その点は懸念材料かもしれませんが、管理は国枝栄厩舎。そのあたりは周到に修正してくると思われます。
このレースでは3歳馬の戦績が良いのは先述したとおり、今回は3頭が出走しますが、戦績から言ってもっとも高い評価を下せるのがこの馬でしょう。乗り替りになったルメール騎手の実績はここで言うまでもありませんね。
ダービーと夏の放牧を経て一回り成長したシックスペンス。この幸運の6ペンス銀貨が、高配当を運んできてくれるかもしれません。要注目です。

連覇をかけ挑む「雑草魂」

昨年の毎日王冠においてソングライン、シュネルマイスターら強豪GⅠ馬を抑えて優勝。4歳になったエルトンバローズが連覇をかけ出走です。
エルトンバローズは22年10月の阪神新馬戦でデビュー。当初は勝ちきれない競馬が続き、初勝利まで5戦要しましたが、以降馬体が出来上がってくると好走を連発。未勝利戦から破竹の4連勝で昨年のこの舞台を制しました。
その出自は割と地味で、決してトップファームとは言えない桑田牧場で産まれたエルトンバローズ。血統もディープブリランテ産駒で、やはり地味な印象を受けます。しかしながら重賞制覇以降は勝ち鞍を挙げることが出来ないながら、GⅠでも好走をするなどそのポテンシャルが偽りではないことを証明し続けています。

エルトンバローズはディープブリランテ産駒です。同産駒での重賞勝ちは、日系新春を制したモズベッロとGⅢで2勝を挙げたセダブリランテスがいます。産駒数、出走頭数がそれほど多くないので偏に判断できかねますが、左回りの芝1600~2200mでの好走例が多く、東京1800mの舞台は昨年この馬が同レースを制覇しているので、血統面でのコース適正に関してはまず問題ないでしょう。

エルトンバローズは昨年の毎日王冠以降、勝利から遠ざかっていますが次走のマイルCSでは初のGⅠで4着と好走。今年に入ってから少し調子を落としていたようですが、春のGⅠ安田記念では出遅れから8着まで巻き返し、前走中京記念は斤量59㌔のトップハンデを見込まれながら3着に入線。と復調の兆しを見せてきました。デビュー時からそうだったように、使い込みながら調子を上げてくるこの馬にとって、夏に全休しないで一回重賞を使ったことの意味合いは大きいと思います。中間の調教では活気十分の走りを見せており、陣営サイドもポジティブな発言を繰り返しています。
エルトンバローズの管理は栗東の杉山晴紀厩舎、昨年リーディング1位の座に輝き、ジャスティンパレスらGⅠ馬を擁しています。
つい先週はスプリンターズSをルガルが制覇、骨折休養明けでいきなりGⅠを勝たせたその手腕は間違いなく本物
です。そして鞍上はルガルに騎乗していた西村淳也騎手です。GⅠ初制覇を遂げたその勢いに、疑いの余地なしです。
杉山厩舎と西村騎手、そしてエルトンバローズの更なる躍進に期待です。

香港…ではなく福島からの刺客

ここまで人気順に解説をしてきて、このまま続けるとダノンエアズロック、ホウオウビスケッツ、ヨーホーレイクと解説をするところですが、人気馬ばかり紹介しても仕方ありません笑
3歳馬から、前走福島ラジオNIKKEI賞を勝利したオフトレイルを奨めたいと思います。
昨年10月に京都の新馬戦でデビュー。遅咲きでしたが2戦目で勝ち上がると3戦目の1勝クラスこうやまき賞で3着に惜敗。が次走のこぶし勝ですぐさま2勝目を挙げました。今年4月のアーリントンCで重賞初挑戦するも6着敗退、で次走L競争の白百合Sで2着に好走と。敗けてからの立て直しが早く、短いスパンで勝ち負けを繰り返してきているのが印象的です。ここまで7戦して5人のジョッキーが乗り替わってきましたが、初コンビとなった田辺騎手の騎乗で前走ラジオNIKKEI賞を勝利し、嬉しい重賞初制覇を飾りました。

UAEゴドルフィン所有のオフトレイルは英国馬であるFarhh(ファー)産駒、JRAに登録されている競走馬では産駒はオフトレイル1頭のみで。サンプルとなるデータが全くないため、正直なところよくわかりません笑
ただファー自身は母国英国でチャンピオンSとロッキンジSでGⅠ2勝を挙げており、それぞれ2000m、1600m(マイルの直線)のレースで芝中距離の適正はあるのではないでしょうか。
母ローズトレイルは繁殖牝馬として実戦での戦績に乏しいですが、遡るとキングマンボ×デインヒルの配合を擁しており、この血統は早熟と言われがちな反面、3歳~4歳あたりまでは馬にスピードをもたらす配合ともいわれています
この血統構成は同じゴドルフィン所有のGⅠ馬、レモンポップに少し似ているかもしれません(レモンポップはデインヒルの血は持っていませんが、その祖母Razyanaはデインヒルの全妹)。
そういった意味では大きな可能性を秘めている馬かもしれませんね。

オフトレイルは夏の休養を挟み、この毎日王冠へ照準を定めてきました。マイルのレースでも良かったかもしれませんが、敢えて距離を詰めず、重賞で勝った1800mでもう一度その素質を試そうということでしょう。古馬相手にその真価が問われる一戦となりそうです。東京コースは初となりますが、後方から差し脚を伸ばそうというのであれば、長く広い府中の直線は合うかもしれません。開幕週ということで前残りの傾向はありますが、前項目で述べた通り毎日王冠は差し・追込みが決まりがちなレース。この点でも楽しみです。
ラジオNIKKEI賞の際は、福島巧者である田辺騎手の辣腕が光ったレースでした。出遅れ気味にスタートしても、慌てず焦らず直線までじっくりと脚を溜める選択が勝利を呼び込みましたね。今回も田辺騎手の継続騎乗で挑みますが、府中で人気薄に乗った田辺の怖さは、馬券を買い続けてきた者ならよく承知しているはず。虎視眈々と上位を狙っているでしょう。
個人的にはここで勝っても負けても、このコンビは継続してもらいたいなと思っています。
穴馬の激走もしばしば見られる毎日王冠。いまだ発展途上、未知の才能を秘め進化を続けるオフトレイルの躍進に必見です。

おわりに~その他の馬について~

今回も最後までお読みいただき誠にありがとうございました。今週は久しぶりに競馬場へ行ったり、また仕事の方もかなり激務で、急ぎ足にはなりましたが、どうにかコラムまで含め完成させることが出来ました。こんなに頑張れるのも、お読みいただきポジティブな感想を投げかけてくれる方がいるからこそです。本当に感謝です。
それでは今回のnoteもこの辺りで了とさせていただき、次週秋華賞へ備えたいと思います。冒頭コラムはスティルインラブ…?んー、まだなんも考えていません(;^ω^)

しつこいようですが、書ききれなかった何頭かの短評を添えさせていただきます。では、また…。

📝ダノンエアズロック

鞍上🏇鮫島克駿
デビューからその素質の評価は高く、アイビーS・プリンシパルSで勝利を収めています。しかし重賞はいまだ未勝利。
ダービーは5人気から14着と大敗、陣営は立て直しを図られています。夏の長期休養を経て成長した感はありますが、管理の堀調教師は「まだ物足りない」と自ら辛口のコメントを残しています。ここの仕上がりは8分とみて、次走以降の激走に期待しる方が、個人的には良いかなと思っています。
新コンビとなる鮫島騎手には期待したです。

📝ホウオウビスケッツ

鞍上🏇岩田康誠
前走函館記念で重賞初制覇、勢いに乗る夏の上り馬です。前々走巴賞でもものすごく強い競馬を見せており、4歳夏を迎えて充実期に入ったようです。鞍上を務める岩田康誠騎手の激しく追うスタイルが、この馬に合っているようです。
とはいえ毎日王冠では、夏の北海道からの臨戦での好走は少なく、函館記念から馬券内に入った馬も過去10年ではいません。東京競馬場は2000mフリージア賞(1勝クラス)で勝ったことがあり、コースへの適正はそれなりに高いと思いますが、ローテ的には少し割引となりますね。

📝ヨーホーレイク

鞍上🏇岩田望来
21年1月の日経新春杯を最後に戦列を離れていましたが、長い休養を経て今年のGⅡ金鯱賞で復帰。以来3戦して全て馬券内とかつての輝きを取り戻してきています。前走GⅢで鳴尾記念では快勝、悲願の重賞初制覇を挙げています。
今年で6歳を迎えましたが、戦列を離れていたため通算して10戦と、まだまだフレッシュさを余しており、ここで上位、もしくは勝利してもおかしくないとは思っています。血統はディープインパクト産駒、府中への適正も非常に高い一頭です。

📝ヤマニンサルバム

鞍上🏇三浦皇成
前走GⅢ新潟大賞典勝ち。逃げるなら面白い一頭となりそう。なかなかはっきりとした結果が残せない鞍上ですが、府中は中距離は得意の舞台。期待はできます。

📝マテンロウスカイ

鞍上🏇横山典弘
3月にドバイターフに遠征し15着と大敗。ですが今年初戦の中山記念では勝利を収めており、軽視するには怖い一頭かと。ポツンと称される典さんも今年は戦える騎手として、結果を残してきています。
海外復帰初戦、長期休養明けでどこまでやれるかに注目です。

📝トップナイフ

鞍上🏇横山和生
函館記念10着、札幌記念6着と結果がついてきません。特に照準を合わせ挑んだ札幌記念の6着は残念でした。早熟も示唆されていますが、個人的にはまだやれる馬だと思っています。鞍上も和生Jに戻り、穴馬としてなら期待する価値は十分にあると思います。


参考にさせていただいたサイト


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タイツ・競馬ライター【無料予想と馬のお話】
いつかプロライターになることが目標です