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障がいと共に生きるアーティスト達とそこにある世界を発信するフリーペーパーHugs 2022年秋号 vol.2
「Hug」という言葉には、“愛情をもって抱きしめる” “こだわりを守り続ける” “自分自身を幸運だと思う” などの意味があります。フリーペーパーHugsは、障がいと共に生きながら創作や表現活動をしている方々や施設を取材し、その活動の様子や日々の思い、そこから広がる豊かな世界を伝えていくことを目的にしています。
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Hugs 2022年秋号 vol.2 メインビジュアル使用作品
場をつくる大切さ、場を続ける大切さ
30年以上にわたり障がいのある方のアート活動に取り組んできたもみの木福祉会(以下、もみの木)。その人にしか描けない表現が引き出されつつ画面いっぱいに緻密さを誇る作品たちは、圧倒的な説得力で観る人の心をとらえてきました。これらの作品を生む土壌にはどんな秘密があるのか?そんな好奇心を胸に、20年以上担当者として現場を見守ってきた北村康弘さんを訪ねました。
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-もみの木さんは、県内で最も早い段階からアート活動に取り組まれた施設だと聞いています。アート活動を始めた具体的なきっかけを教えてください。
北村:1990年くらいに入所された人が、ご家族の影響もあり油絵の画材を持って来られたんです。自由時間にどんどん描いていかれるので作品が増えていくわけですよね。それで時々展覧会を開くようになりました。大きな契機は、1996年に奈良にある施設「たんぽぽの家」さんがトヨタ自動車さんとされていたエイブルアートフォーラムにもみの木が関わったこと。会場となった米子で初めて他県の取り組みを目の当たりにして良い影響を受けて、自分達の活動の幅を広げていくことにしたんです。私が別の部署からアート活動に配置換えになったのもその動きからでした。
-北村さんご自身、アート活動の担当になり何か変化はありましたか?
北村:正直、傍から見ていた時は「あの人たちは部屋に籠って何をしているのだろう」と思っていて。でも最初に作品を見たときは「この人がこんな絵を描くのか!」と衝撃でしたね。普段大きな声を出して動き続けていたり、一言もしゃべらずにいたり、手足を動かすのも大変という人たちであっても、アートの時間には長い時間集中して思い思いに描かれているのを見て、すごいと思ったんです。とても楽しそうに、生き生きとした姿が新鮮でした。福祉の世界自体とても面白いのですが、さらに関わるのが楽しくなりました。
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-長く活動される中で、表現活動を行うことがそれぞれの人にとって大事なものになっていると思うのですが、北村さんからみて大切だと思うことはどんなことでしょうか。
北村:やはり、場の雰囲気をどのようにつくるかでしょうか。昔は時間を決めていたのですが、今は朝9時半から夕方4時までアトリエを開放していて、誰でもいつ来ても好きな時間に好きなだけ活動して良い状態で迎えています。短時間だけ描いて帰る人もいれば、自分は描かないけど描いている人をずっと見ている人もいる。見ていると後から自分もやってみようって変化する人が結構いるので、やっぱり場をつくって続けるって大事なことだなと感じています。
伊藤奨さんは、元々は紙の端っこに落書き程度に描くだけだったんです。途中何年かは全然描かない時期もあって。でもここ2,3年は、大きい画用紙にも描けるようになったし、色も使えるようになった。今は毎日絵を描きに来るようになってどんどん作品が増えています。
一方的に与えられた枠での活動ではなくて、あくまでもそれぞれの人が自分の意志で自分の関わり方を選べる環境が出来てきたのは大きいですし、長年やってきたからこそだと思います。
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-どの作品もかなり緻密に描かれているのは、活動に関わっておられる絵本作家で画家の玉井詞さんの影響も大きいのかなと感じています。
北村:玉井さんは、私が職員になるのと同じころか、それよりも少し前から関わっておられます。玉井さんはもともと緻密な絵を描かれる作家ですが、強制的にそのように指導しているわけでは決してなくて、玉井さんもみんなと一緒にアトリエで絵を描いて過ごしているんです。玉井さんが描く様子をみんな見ているから、そこですごく刺激されるんでしょうね。指導者というよりメンバーの親分みたいな感じ(笑)。それはそれでいい関係が出来ていると思います。玉井さんから提案もあれば、本人がいいと思うところで仕上げるものもあり、お互いがお互いのことを認め合いながら進めています。
-今後、力を入れたいことはありますか。
北村:県西部では古くから活動している施設として認知されていますが、全県的、全国的にはまだまだ知名度は低いですよね。今回認定された4つのギャラリーで協力して県外へアプローチしたり、相互に学んだりすることもきっと大きな意味があると思うので、今後は上手に連携していきたいです。
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2010年より突然絵画活動を始め、沢山の色を重ねることに夢中となり、以降、毎日午前中のみ描かれるのが日課になっている。最初は色鉛筆、最近ではゲルインクボールペンで制作。県内外の公募展で多数入選
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2012年頃から急に絵を描き始められ、「木」をモチーフに、ゲルインクボールペンだけでカラフルな作品を仕上げられる。入選・受賞多数
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1999年より活動開始。独特な点描で多様なモチーフを描く。後年は実線で文字を緻密に配置した作品を手掛けた。2020年の退所後は、作品管理をもみの木が担う
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当初より活動するメンバーの一人。初めは図鑑を見ながら描いておられたが、現在は井村流にデフォルメされた植物などを色鉛筆で力強く塗り込む
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社会福祉法人もみの木福祉会
入所施設利用者が余暇に油絵に親しんでいたことを契機に、県内では最初期となる1990年から障がい者アートに力を入れてきた。1992年より画家で絵本作家の玉井司氏をアドバイザーに(当初はボランティア、2000年より職員)迎えている。2021年に「もみの木アートギャラリー」として鳥取県はーとふるアートギャラリー第2号認定を受けた。
アート作品を発表したい人のためのプチコラム 知ろう著作権!
02:他の人の作品に気をつけよう!
既存のアニメキャラクターなどを描いた作品を勝手に販売したり、許可なく発表することはできません。自分の楽しみとして描くのは大丈夫!
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Hugs 2022年秋号 vol.2
2022年9月1日発行
発行/あいサポート・アートセンター
〒682-0821 鳥取県倉吉市魚町2563
TEL:0858-33-5151
FAX:0858-33-4114
E-Mail: tottori.asac@gmail.com
HP: https://art-infocenter.jimdofree.com/
企画・製作/一般社団法人アートスペースからふる
編集/水田美世
撮影/村上伸明、水田美世(*印のみ)
デザイン/森下真后
協力/鳥取県
「鳥取県はーとふるアートギャラリー」とは、障がいのある方の文化芸術作品の発表の機会·場所を確保する制度。障がいのある方の作品展示を積極的に行っているアートギャラリーを県の認定ギャラリーとしています。