「前のめりに倒れることは、もう辞めました」freeeラジオvol.2 メディアリサーチャー/編集者・武田俊さん
3月27日に下北沢「BONUS TRACK」で開催されたイベント、「フリーランスゆるつな会〜オールfreeeデイspecial〜」。確定申告を無事に終えたであろう個人事業主やフリーランスが集まり、“ゆる”〜く“つな”がって一年の労をねぎらうことをテーマとした本イベントは、当日約400名もの方々が集まり大盛況となりました。
イベントでは様々な職種のフリーランスをゲストに迎えたトークイベント「freeeラジオ」を実施。履歴書を書く機会がほとんどないフリーランスの方々に「フリーランスの履歴書」を作成していただき、これまで歩まれてきた人生の変遷を振り返りながら、仕事、お金にまつわる話を聞きました。
本記事では「freeeラジオ」の、当日のトークの様子をお届けします。
二人目のゲストはメディアリサーチャー / 編集者の武田俊さん。聞き手はme and youの野村由芽さんです。
それではfreeeラジオ、オンエアです!
替えが効かないからこそ、無理をしない
─よろしくお願いします。俊さんはいろんなメディアの編集長を経験されていますが、今の経歴に至るまでの経緯について教えてください。
大学時代に雑誌を作っていて、その仲間たちと一緒に仕事をしようという約束をしたんです。3年後までに会社を設立するという目標を掲げ、ぼくは卒業して1年間、フリーランスのライター・編集者として仕事をしていました。そうして3年後に再集結し、無事に会社を立ち上げることができました。
─友達との約束からフリーランスになって、会社の立ち上げまでに至ったんですね。
そうなんです。フリーランスになったのも、とにかく最短ルートで会社を設立したかったからで、就職するよりも、とりあえずフリーを選択したという感じですね。
─会社を経営することとフリーランスでやること、何か違いはありましたか?
最初の会社以降、これまで他にも複数の会社経営をやってきたのですが、今、自分の中で決めているルールがあるんです。それは法人にしたとしても、「人は雇わない」ということです。
ぼくは人を雇うと、従業員の人生が一番大事になります。自分がやりたいことと、従業員の人生を引き受けること、その両立が無理でした。経営に軸足を置くと、作品やコンテンツを作る現場にコミットできる機会が減ってしまうということもあり、今はもう引き受けすぎない。そう決めています。
─引き受けすぎることがあったからこそ、辿り着いた選択なのですね。
最初に立ち上げた会社で代表として働いていたとき、体を壊してダウンしてしまったんです。その後なんとか元気になり、ウェブメディアの新規立ち上げなど色々やったのですが、また引き受けすぎてしまって。一時期、4媒体ものメディアの編集長を同時にしていたら、再度倒れてしまいました。それでいよいよ、やり過ぎはいけないと。
─そこで初めて気がついたのですね。
それまでは、やれると思っていたし、やりたかったんですよね。自分の限界って見えないですし、できてはいたんですよ。でも、続かなかった。メンタルが壊れてしまいましたね。
─俊さんだけではなく、フリーランスとして働いていると頑張りすぎて、心身の不調が出てしまう人もいると思います。今は仕事とどう向き合っていますか?
フリーランスって自分の名前で仕事をしているから、替えが効かないですよね。でも、だからこそフリーランスは積極的に無理をしてはいけないと、やっと気がつきました。
─替えが効かないからこそ、無理をしない。
しっかり土日は休むとか、規則正しい生活をしなければ、どうにもならなくなっていきます。
若い頃はなぜか、いつ死んでもいいくらいの状態で生きる必要があると思い込み、120%の出力をし続けていました。今は80%くらいの出力を、楽しめるように。前のめりに倒れることをかっこいいと思うことは、もう辞めました。
自分がないから、面白いことに合わせられる
─現在は大学講師やポッドキャストのパーソナリティなど、話す仕事もされていますよね。
おしゃべりや会話自体をメディアと捉えるようになったんです。そしたら大学の先生の話やポッドキャストのパーソナリティなど、新しい仕事が生まれました。ここ10年で、流れに合わせてやりたいこと、やれることが変わってきたなという印象ですね。
─その仕事の広がり方は、どのように生まれているんですか?
最近気づいたんですけど、ぼく、自分があんまりないんです。これだけ色々やってはいますが、実は空虚。ただ、おもしろいと思うことはたくさんあります。
そういうおもしろいことに合わせて、自分の形を変えられるんです。アメーバのようなメディアとして、自由自在になんでもできる。昔はなんでもやるのは節操がないかもと思っていたのですが、今はやりたいことに携われるこのスタイルが、自分には合っている気がしています。
─自分のスタイルができたんですね。
自然とそうなっていきました。
─昨年10月にはお子さんが生まれたとのことで、子育てしながらフリーランスというのは、どうですか?
育休取り放題だけど、がんばった分に応じて収入が減ります(笑)。妻が大学の先生をやっていて早期復職を希望していたので、僕が基本的な家事や育児を担当しています。フリーランスでよかったと思いつつ、フリーランスだからこそ収入がなくなる。今は仕事をほぼしていない状態で正直痺れますが、子供との日々を発信をすることで、新たな気づきをたくさん得ています。
苦しみや悩みを、積極的に発信する
─ではここで、freeeユーザーのぷりっさんからお便りが届いています。「たまに、息ができないくらい閉塞感を感じます。どうしたらよいでしょう」。
うーん、どうしたらいいんですかね……。僕もうまく対処できないんだけど、一旦、その場から離れることかな。
場所を変えるだけで、意外と解決することがあるんです。悩んでいる空間から、出てみる。デスクの前でパソコンを開いているときだったら、パソコンを閉じて、外に出てみる。結局、思考って自分の頭のなかで起きていることなんですよね。だから物理的な状況を変えると、不思議とスッキリすることがあります。着替えてみたり、シャワーを浴びてみたりするのもおすすめです。
─たしかに、場所や空間によって、感情や気持ちに変化が訪れることがある気がします。
人間も動物ですからね。本人は深い悩みだと感じていても、意外と単純なことで切り替えられることがあると思います。
─俊さんは苦しいことや悩みなどをSNS等で発信されていますが、それはどうしてですか?
2011年に会社を作り、2014年に倒れて会社をやめたとき、本当に心細くて、もう人生終わったという絶望感があったんです。でもそのとき、同じような病で苦しんでいる人のナラティブ(物語)に、すごく救われました。だから僕も積極的に発信して、同じように苦しむ人の救いになりたい、という思いがあります。恥ずかしいことも書いていこう、というのがライフワークですね。
─素敵なお話を、ありがとうございます。それでは最後の質問です。経理作業のとき、どんな音楽を聴いていますか?
実は僕、ほとんど経理作業に時間を割いていないんです(笑)。というのもfreeeのおかげ。入金と出金は、各口座とクレジットカードを紐づけているので、自動化がほぼできています。作業するのは請求書を作るのと確定申告の見直しだけ。
で、そのときに聴いているのは「Ana Frango EletricoのElectric Fish」です。普段ことばの仕事をしているので、歌詞がついている曲をなかなか聴けません。だから事務作業のときだけ、ボーカル入りの曲を解禁にしています。
─武田さん、ありがとうございました!次は古性のちさんにお越しいただきます。おたのしみに!
〈オールfreeeデイ〉
毎月最終水曜日は『オールfreeeデイ』
確定申告の提出期限ギリギリの3月に、領収書の山を取り込んだ経験はありませんか?
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開催日:4/24(水)・5/29(水)・6/26(水)
開催時間:AM10時〜AM12時
お申し込みは下記のURLから
〈武田さんの履歴書〉
〈プロフィール〉
武田俊さん(メディアリサーチャー / 編集者、法政大学文学日本文学科兼任講師)
2011年、KAI-YOU,LLC.を設立。その後「TOweb」、「lute」、「M.E.A.R.L.」などのWebメディアにて編集長を歴任。2019年より法政大学「情報メディア演習」を担当。近年は、ラジオやpodcastなどのパーソナリティの顔も。多様なメディアを横断し、ナラティブで繋ぎ合わせる手法を探究中。