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F.C.G.R.オリジナル・ピックアップ開発

初めまして製造部の “江成(えなり)” です、よろしくお願い致します。

今回はピックアップ開発の話をさせて頂きます。

開発は弊社代表:深野とコンビで取り組んでおります。

前提として F.C.G.R.オリジナル・ピックアップ に込める意思があります。

“自分らしさを、音として表現する為に”

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第四回 理想のピックアップを追い求めて

社長はもっと語りたい!

“計画を立てる”

其の一:PUのコンセプトを決める

例えば・・・

  • ロー、ローミッドの押し出し感が強くワイドレンジで倍音を含んだベースPU

  • ローからハイまでバランスよく倍音を含みピッキングニュアンスが出しやすいシングルPU

といった具合です。


其の二:ボビンを決める(コイルを巻くための土台)

コイルが納まる箱の様な物です。

スタンダードなPUは既製品のボビンを使います。

初段、想定した音に落とすべくマグネットや、ワイヤーの品種、巻き数がザックリ設定されます。

ワイヤーの納まりが悪い場合や完全オリジナルPU等、場合によってボビンの開発もいたします。


其の三:磁石を決める

PUに使用される磁石は幾つかありますが、F.C.G.R.では主にアルニコを使用しています。

アルニコとはアルミ、ニッケル、コバルトを主成分とした合金で、各成分の混合率の違いにより “Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴ” 等の種類があります。

各々の違いは “磁力” です。

音への影響としては・・・

  • 高磁力:高出力、パワーがある、オーバードライブが得やすい方向に。一般的にHBのリア、ST,TEで使われます。

  • 低磁力:高磁力とは逆な傾向、ナチュラルでクリーンな方向に。一般的にHBで使われます。

等々、磁力の違いで音像の構築の仕方は大きく変わってきます。それぞれの特徴を活かし開発を進めていきます。


其の四:コイルの材料 “ ワイヤー(銅線) ” を決める

音の核となるコイルの材料です。

ワイヤーのコーティング材の種類は・・・

  • ヘビーフォームバー

  • ブラックエナメル

  • ウレタン

等があり

音への影響としては・・・

  • ミッドのピークが出しやすい

  • 全体的な倍音を出しやすい

  • ハイが出しやすい

等々の特性があります。


其の五:コイルの巻き方を策定する

コイル巻き・・・

「PUのキャラクターを決定付ける重要なポイントです!」

※少しの変化で音に影響するので大変苦労します。

この作業では以下の点に配慮します。

  • 基音をどこまで出すか

  • 倍音をどこまで含ませるか

  • 出音の主体となる周波数帯

  • 音(低音~高音)をどこまで出力させるか


★ポイント①:巻き付けパターン

巻き付けパターン例

  • ボビン全体に均等に並べていくように巻いていく

  • ボビン全体にランダムに巻いていく 

  • 部分的に分けて巻いていく

等々、ひとつのパターンで巻くことは少なく、複合させてコイルを作製します。


★ポイント②:巻き数

巻き数例

  • シングルコイルで約8000回転

  • ハムバッカーの片側のコイルで約4000~5000回転

音への影響としては

  • 巻き数が多い⇒出力が上がり、出音のレンジは狭くなる方向に

  • 巻き数が少ない⇒出力は下がり、出音のレンジは広くなる方向に


★ポイント③:ワイヤーを巻き付けるテンション(キツいor緩い)

  • ワイヤーを巻き付けるテンション➡出力、倍音に影響

といった傾向があります。


先に紹介したマグネットとのマッチングを考えただけでも・・・

“ 無限の音像構築の選択肢がある ”

ことがお分かりいただけると思います。

ザックリではありますが、ここまでがピックアップの構成要素を踏まえた “ 計画 ” の話となります。


ここから先はいよいよ

“ 実作業 ”

コイル巻きの方法は2通りあります。

各々の特徴を活かし、以下の様に作業を進めていきます。


作業1、 【手巻き】 自作の巻き線機などを使い、手で巻いて行きます。

ここではコンセプトに対して “80点以上の物” を製作します。

【手巻きの長所、短所等】

  • ルーズに巻ける。イメージ、感覚等、狙った音を作りやすい。

  • 複数個巻くと多少の誤差が出る


作業2、 【機械巻き】 自動巻き線機を使って巻いていく

残りの20点を埋めるべく “100点の物” を目指します。

※プログラミングは手巻きパターンを自動巻き線機で再現すべく想定し、構築します。

【自動巻き線機の長所、短所等】

  • 複数個巻いても同じものが作れる。⇒バラつきの無い製品を提供できる

  • 電気的にキッチリしたコイルを作る機械なので、通常仕様ではハンドワイヤリングの様にルーズさを取り入れるのが困難。

※本来、自動巻き線機はワイヤーを綺麗に並べたコイルを作る機械ですが、F.C.G.R.では敢えて手巻きの様なルーズさを再現、コントロールできるよう、機械に工夫を加えているのがミソ!

“ なぜ“手巻き”で100点のPUを作らないのか??? ”

先にも触れましたが、“ 手巻き ” は・・・

  • ほぼ想定通り直ぐ作れる利便性がある

  • 毎回100%同じ物が作れない

  • 巻く人が変わると、音も変わる

“ 製品のバラつき ”、これでは困ります。

そこで毎回製作しても100点の物が出来る “機械巻き” で開発を詰めていきます

製品化までの流れは・・・

話し合い→試作→サウンドチェック→話し合い→試作→サウンドチェック→・・・100点の物が出来るまで

の繰り返しです。

見直し再製作の際は以下の点を変更します。

  • ワイヤー

  • マグネット

  • 巻き付けパターンプログラム

1つのPUは100の程の巻き付けパターンから構成されています。

諸々踏まえた “ 要素の組み合わせ=出音 ” は無限大と言っても過言では無いです。

今まで培った様々な経験、知識を活かし、完成形を想定し試していきます。

何個かの試作を作ると、コンセプトで決めていた音がより鮮明に頭の中で鳴ってくるようになります!!!

ここからが完成に近いようであり、遠い道のりの始まり・・・。

今まで製作しボツになったPUは数知れず・・・(汗 涙)

ピックアップ開発、何はともあれ・・・

F.C.G.R.ピックアップ、是非お試し頂きたく思います!」

何かを感じていただければ開発に携わった者として、喜びも一入です。

“ 求める音の為に ”、これからもオリジナルPU開発は続きます。

よろしくお願い致します。

製造部 江成伸夫


*当記事は2017年6月12日の投稿記事を再掲載したものとなります。登場する人物・製品名・各種名称等は現在とは異なる場合がございます。

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