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宗教サロンでアフタヌーンティを【オンガク猫団コラムvol.22】

10年位前から、年老いた両親が奇妙な宗教にハマッている。対外的には高度に洗練された道徳であることを謳っているけれど、インチキ千万な宗教であることは言うまでもない。オイラは他人に干渉するのが嫌いなので、放っておくしかないと諦めているし、それでもし両親が痛い目にあったとしても仕方のないことだと思っている。恋愛も宗教も一旦熱に浮かれてしまった人には、つける薬がない。4年前妹が永眠した時、その葬式にインチキ宗教関係のお友達から弔電が何通も来ていて、それをセレモニーホールの司会者が逐一読み上げているのを聞かされて、やれやれとため息をついて辟易した。

両親が宗教団体といかに接触していったのかは、最初はご近所付き合いからだったようだ。
そのうち「偉い方」が地元の公民館にやって来て、有難いお話をされるので観にいきませんか、ということでまずオフクロがターゲットにされた。宗教をやっている人たちは、商売道具は何といってもコミュニケーション力である。どんな手練手管を弄したのかは分からないけれど、教養のない年寄りを掌中に収めることなどたやすいのだろう。

両親が不穏な動きをしているのを初めて知ったのは、実家に帰省した際に見かけた居間のカレンダーに、サインペンで何やら書き込みがしてあるのを見たからだ。講演会の開始時間と、聞きなれない団体名がそこにあった。嫌な予感がして、携帯電話からネット検索でその名前を調べてみると、肯定派と否定派に分かれて激しい談論風発をやっている。公平に見て肯定派はかなり形勢が不利に見受けられた。

仄聞なのだけど昨今、宗教法人も少子高齢化のおありを受け、運営するにあたり悪戦苦闘をしているらしい。宗教法人が母体となっている保育所や保育園、それから駐車場経営なんていうのは昔から有名だけど、今じゃ老人ホームとか介護老人ホームなんてのも手掛けているそうだ。老人ホームといえば、次に待っているのはそう遠くない死である。人が亡くなれば、葬式は当然老人ホームの宗教法人がらみになることは請け合いだ。もちろん霊園に至るまで。他にももっと意外なものが、きっと自分の身の回りにあるんだろうね。

つまり、以前のようにお布施や寄付といった形で賄われていた宗教法人の在り方が少しずつ形態が変わって来ているらしい。やり方が巧妙になったのか、スマートになったのかは分らないが、従来のように信者の数さえストックしておけば安泰という既得権益が危うくなっているのだろう。例えばパソコンのソフトのライセンスのように、使った分だけ支払うというサブスクリプション方式のような、錬金術のパラダイムが必要になってきているのかも知れない。

高齢化の孤独死解消に、宗教が有効だという意見があるようだ。現に、孤独な老人が話相手を求めるあまり、宗教なんてホントはどうでもいいんだけど形だけでも入信するという話を聞いたことがある。日々の無聊を託つより、昼間解放している宗教団体のサロンで老女老男がウキウキと駄弁っているとか。要するに茶飲み友達を得るために積極的に宗教を利用しているということだ。オイラの両親もそういうイージーなものだったら全く問題はないのだが。

数年前、ある漫画家が不慮の事故で亡くなった。デビュー当時それなり活躍していたが、作風が時世に合わなくなったのか徐々に仕事が減り、晩年はブログで全く仕事がない現状を憂い、憤懣やるかたない思いを綴っていたそうだ。人気が凋落したせいか渾身のブログもあまり読まれることもなかったが、来る日も来る日もブログをアップしたらしい。当然、死の直前にもエントリーがあったらしい。オイラはつい最近その事実を知ったのだが、現在、死後にブログの管理人になった人の裁量で、過去のブログに鍵がかかっていて閲覧出来なくなっている。こうなると余計に中身が気になるのが人情だ。

そういえば、最近気になっている本がある。故人サイトという本だ。以下、アマゾンより転記///更新直後に殺害・ツイート直後に事故死。リアルタイム闘病記録・自殺実況中継・ファン巡礼慰霊碑サイト。それは遺書なのか、あるいはダイイングメッセージなのか!?漂い続けるネット墓標を徹底調査!!///ゾッキ本が流通したら、買ってみるのも手だなあ。

30年以上前に亡くなった物集高量という国文学者がいる。以下、wikipediaより転記///体調を崩して板橋区の老人施設に収容されたが、老衰で死去する前日、若い看護婦のスカートに手を入れて婦長から叱責された。106歳で逝去した時は、東京都内の男性で最も長命だったことから、当時の東京都知事鈴木俊一が弔辞を読んだ。墓所は東京都豊島区の雑司ヶ谷霊園にある。///

まあ、なんにせよ、矍鑠として生きるということは尊い。近いうち、雑司ヶ谷霊園にでも行ってみようと思う。その頃はもう桜が咲いているのかなあ。

オンガク猫団(髙田 ナッツ)

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