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未来から警鐘を鳴らしに来たガール


 先日、有給を使って行きつけの美容院に向かっている途中の出来事。

 電車に乗っていると、対面の斜め向かいの席の女の子からの視線を感じた。
 その子はラフな私服を着ていて、容貌はロングヘアーだった頃のmiwaをさらにあどけなくさせた感じ。大体18~20歳ぐらいの年齢だと思うが、平日の昼間に私服で電車に乗っていることを鑑みるとおそらく大学生だろう。

 僕は彼女の方をちら、と見やると、彼女は僕の方に顔を向けていたので思いっきり目が合ってしまった。反射的に目をそらす。ここまではたまにある流れだ。電車内で何の気なしに他人と目が合ってしまい、気まずくなってすぐに目をそらすというパターン。

 しかし、今回はその後の流れが違った。

 彼女は一番端の座席に座っていたので端っこに寄りかかるような体勢をとっており、僕の方をじっと見ていた。心なしか口角が少し上がっているような、口を閉じたまま薄ら笑いを浮かべているような気もする。

 え、何?なんかずっとこっち見てる!

 僕はだんだん不安になって来た。というのも、相手が薄ら笑いを浮かべているような気がするのみならず、その子がずっと、そう、結構な長い間こっちを見ているからだ。

 普通であればそういうシチュエーションでもある程度時間をおくとスマホを触ったり、目を閉じて寝たりしていて、こっちのことにはもう見向きもしないというケースが多い。

 だが、今回のケースでは目をそらした後にこっち側が3分間ぐらいスマホを弄っても、ふとまた対面の座席に目を見やればその女の子はスマホを触ることもなく、イヤホンをして音楽を聴くこともなく、ただじっとこちらを見つめているのである。しかも多分少しだけニヤつきながら。 

 これは一体どういうことなのだろう、と落ち着かない心持ちになった僕は、急遽頭の中でいくつかの可能性を列挙してみた。

・顔に何かがついていた

・遠目からでもわかるぐらいの長さで鼻毛が突出していた

・昔どこかで会ったことがある

・相手側が僕のことを僕と似ている誰かだと勘違いしている

・彼女の正体が実は『未来警察』で、僕を何らかの罪で取り締まりにやって来た

 順を追って検証してみよう。

 まず、1つめの「顔に何かがついていた」という説。真っ先に考えられたのがこれなので、僕はすぐさま手で頬や額のあたりを触って、何か異物がついてないか確認した。iPhoneのインカメラでチェックもしたが、特に異常はない。いつも通り、生気の抜けた冴えない独身男性の顔面があるだけだ。

 とすれば2つめの可能性もない。インカメラでチェックした時に鼻毛は確認されなかったからだ。それに僕は外出前は必ず鼻毛処理用バサミで伸びかけの鼻毛をカットするようにしている。
 たまにミイラ取りがミイラになるみたいな感じで、鼻毛処理用バサミで鼻の穴の中を掻き回した結果逆に奥の方に眠っていた新たな鼻毛が呼び覚まされてしまい、鼻毛を切ったつもりでも切る前より鼻の穴の中が荒れてしまって結局とんでもない存在感を放つ鼻毛が出てしまうということもあるものの、今回は特にそういうことはないようだった(このnote本題と違うところで文字数使いすぎなのよ。ミイラ取りのことわざも多分使用法合ってないし)。

 続いて3つめ。記憶を辿っても、特に思い当たる節はない。もしかしたら昔どこかで会ってた可能性もそりゃ確かになくはないが、僕は中高を男子校で過ごしたから異性の知り合いというのがめっぽう少ない。
 大学での知り合いだとしたら卒業してまだ5年ぐらいしか経ってないから流石に覚えてるだろう。逆に小学校の同級生なんかはもうほぼ覚えてない。顔も経年変化してるだろうし会ったとしてもお互いにわからないだろう。なのでこの線は薄い。

 4つめ。あくまで現実的にかつ真面目に考えれば、これが一番可能性が高い気がする。
 たぶん彼女と仲の良い知り合いに僕と似た顔面の奴がいて、そいつと勘違いされているんだろう。
 直接話しかけてこずに半笑い状態なのは、彼女の中でも多分「これ本当にアイツか?」と半信半疑だからだ。「これ本当にアイツか?まあ確かに顔は瓜二つだけれど、目に光が宿ってなさすぎやしないか?アイツは元気ない時だとしても漁船に打ち上げられた直後ぐらいの活きの良い魚の目をしてるけど、今私の対面に座ってるコイツの目は完全にスーパーの鮮魚コーナーで売れ残ってる死後長時間経過した魚の目をしてるんだが」と思われていることだろう。誰の目が売れ残ってる魚の目だよ。
 でもまあよくよく考えると、僕みたいな人間がこんなmiwa似のティーンガールと親密な関係が構築出来るわけがないのであり(そもそもティーンだと考えると3つめの説は最初からなかったな)、そう考えると辻褄が合う気がする。

 だからこの4つめの説で納得するのが賢明なのだろうが、一応5つめの説についても検証しておこう。なぜなら、リアルタイムでは僕の脳はこの説を真剣に検討し始めていたからだ。
 なんだかその時の僕には、彼女が「未来から来た人間」のように思えて仕方なかった。僕の仮説ではこうだ。

 今僕の斜め向かいに座っている彼女の正体は、実は「未来警察」である。「未来警察」とは、遠い未来に誕生しているであろう職業のことであり、将来的に犯罪を起こす可能性の高い人間のその犯行動機となる核の部分を過去にタイムスリップして取り除くことにより、起こり得る可能性の高い事件を未然に防いでいる、というものである。
 アニメの『PSYCHO-PASS サイコパス』をご存じの方なら、僕の想像する世界観がなんとなくおわかりになると思う。

 では、なぜその未来警察が僕のもとにやって来たか?それは僕がタイトルに『人妻』というワードが入った成人向け動画を大量に購入していたからである。

 いや、ちょっと待ってくださいね、今からちゃんと真面目な話になりますから、だから呆れてブラウザバックしたり「自分は一体何を読まされてるんだ」という怒りに震えてお手持ちのスマホをブン投げたりすることなく最後まで読んでいただきたいんですけどね、はい。

 遠い未来、今よりもコンプライアンスとかレギュレーションとかその他諸々のことが厳しくなってきて、道徳的倫理観を少しでも逸脱しているコンテンツはすぐさま排除されるようになる。
 すると当然そういったポルノ系コンテンツも排除の対象となり、純愛を基軸とするポルノコンテンツ以外は流通が認められなくなって、俗に言う『人妻不倫モノ』『風呂上がりの義母の艶やかなうなじから滴り落ちる一粒の汗モノ』とかの、背徳的なものや異常性癖的なものを嗜好することは違法ドラッグを所持しているかの如く扱われるようになる。

 こういう嗜好を持った人間は倫理に背いた行いをする潜在性を高く秘めているということで、政府が過去に「未来警察」を送り込んで、この世から『人妻モノ』や『義母モノ』などのアダルトコンテンツを淘汰しようと目論んだのだ。

 だから僕の斜め向かいに座ったこの女の子は、未来から僕に『人妻』と名のついたアダルトコンテンツを視聴するのをやめろ、と警鐘を鳴らしにやって来たのだ。
 半笑いなのも「コイツこんな澄ました顔してるけど『欲求不満ママ友たちの性欲暴発!肉食獣だらけのサファリパークと化した酒池肉林のパーティー会場!』みたいなタイトルの動画観てんだよなぁ~、キモすぎてウケる~、やめるなら今のうちだよ、プークスクス」という思いが頭にあったからなのだろう。
 直接交渉はしてこないまでも、僕をじっと見つめてくることにより、僕の脳内には彼女がそういう意味を含んだ笑みを浮かべているようにしか見えなくなってきたので、僕が彼女が「未来警察」だと気付いたのももはや最初から仕組まれていたことだったのだろう。

 なんだか急に気まずくなってきた僕は寝たふりをして、しばらく経っていつもの駅を降りた。彼女がその後どうなったのか、結局なぜ僕のことを見つめていたのかは今でもわからない。

 美容院から帰宅後、僕はあらかじめ予定されていた行動かのようにiPad miniで例のタイトルに『人妻』という文字が挿入されている成人向け動画を再生した。そして事に及び終えると、すべてがどうでもよくなった。


 すべてがどうでもよくなった状態であらためて今自分が書いてる文章を読み返してるんですが、この筆者はポルノ動画の見過ぎで脳細胞を破壊されまくり、頭がおかしくなってしまいました。

 え~定期的にこのnoteを読んでくださっている読者諸賢の皆さんごめんなさい、筆力を上げるために文章修練の意も込めて頑張って書くぞ、と一念発起して書いた記事がこれです。この絶望的なまでにくだらない思考回路に震撼せよ!!

 はい、ということでここまでお読みくださりありがとうございました。申し訳ないですが時間を返せというクレームには一切対応しかねます。

 おしまい

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