笹舟
鋭くて柔らかい笹の舟の先っちょが
ぼくをめがけて降り注ぐ
とてもなつかしい気分ではあるけれど
たまにはチクッと痛いかな
みんながぼくと遊んでくれないから
ぼくはひとりで笹舟 川に流してた
みんなのいないところへ行きたくて
ぼくの気持ちがたくさん川に流れてった
かなしくなんかなかったよ
さみしさだってそんなにない
ぼくにはぼくの世界があったから
ぼくはひとりでもたのしかった
きみはぼくと遊んでくれたけど
みんながきたらぼくは他人
きみはそれがはずかしくって
そのうちみんなと一緒にぼくを嫌ったけど
ぜんぶわかっていたからだいじょうぶ
きみの気持ちを想うとき
ぼくがみんなに嫌われることよりも
きみがちょっとだけかわいそう
自分自身にのみこまれて
きみもやっぱりつらかったろう
君はあれからここまでに
随分と遠くまで来ちゃったと思っているのかな
ちがうよ、なんにもかわらない
僕は今でもあそこで笹舟流してる
たくさんの舟がこうして空から帰ってきてくれて
僕はとっても嬉しいんだ
たくさん川に流して手放した気持ちを込めて
僕はこれからまた唄を唄うんだよ
君にも聴かせてあげるから
あの川まで帰っておいで
今度は僕が君と遊んであげるから
今度は君も僕の笹舟に乗せてあげるから
2023年 夏 相川
photo by Hiropon
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