本読み感想4冊目

「自負と偏見」 ジェイン・オースティン


 ある種の年齢を経て、恋愛をするとき、それは感情や情熱だけでつっぱしっていくことはできなくなる。ちょっとした打算が絡むのはどうしようもない。この作品は、そういった恋愛の情熱、打算、結婚ともなると絡まざる得ない親との付き合いなど、何年もかかっても変わらない部分が見事に描かれている。
結婚にともなうステータス変化への虚栄心、無意識の他者へのおごりなど今でもありふれた話だ。
登場人物も、自分のステータスのことしか考えない母、母や下の娘を馬鹿にしつつ父親としての役割を果たさない父など、今でもよくいる人を描いている気がする。

 登場人物の長女ジェインなんかは、実際は深く恋情を抱いてるにも関わらず、恋愛に関して表にあまり出さないタイプのため、恋人にも恋情がないものだと誤解されて一度恋人と別れてしまう。結局、恋人と元通りになるが、ハラハラさせられた。

主人公は次女ジェイン、恋愛の情熱と少し打算ももった人間的で魅力的な人と思った。長女の幸せのためにカッとなったり、他人のために動ける気概もある。

 彼女を見ていて、恋愛は人によっては、人生をかけた「決闘」なんだなと思わざる得ない。自分とは違う相手を理解するために、お互い一時は、血を流しながら、言いたいこといって切りあったから、主人公は最後、「笑っちゃう」ことができた。個人的にはそういう切りあいは苦手なので、つっぱしる次女に困ったちゃんだなとも読んでて思ったが、逆にこういった濃い付き合いができるのはエネルギーがすごいある人なので、うらやましくも思った。

 打算的なところがありながら、こういった切りあいになってしまう次女は結局のところ、打算的になりきれていない。多分、根っこはロマンチストで情熱家なのだろう。そういう人間のもつ二面性への描写が巧みで面白かった。

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